「観客のみなさんがナツオとハルの動向を知っているだけで劇中での2人はすれ違ってばかりなんです。もどかしい2人をぜひ劇場で体感して下さい」
女優として躍進する木嶋のりこさんが出演の最新映画『DEVOTE〜捧げる〜』が7月2日より公開。モノクロの無声映画となる本作へのヒロイン出演が彼女に教えたこと、成長させてくれた点、そして現場にいなければ知りえないエピソードなど、撮影秘話を聞いた。
風俗での仕組みを取材して台本の流れが変わりました
──本作は白黒サイレント映画ですが、役者としてハードルが高い作品だったのでは。
「伝える術が表情と身体しかないので確かにハードルは高かったんですけど、経験のない役を演じたい私としてはぜひ、やってみたい作品でした。田島(基博)監督はこのテイストの作品は3作目で、熱い思いとこだわりを持っていらっしゃる方なんですね。監督にチャップリンをオススメされて初めてきちんと観てみたら、台詞がない分、表情に注目できるし想像力をかきたてられるし、予想以上に面白くて。ただ演じてみたら〝目は口ほどにものを言う〟じゃないですけど、台詞はただの道具だと思い知らされて、常に感情をどう伝えるかという課題と向き合っていました」
──ギャンブル好きの父親のために生活費を稼ぐハル役も難役かと。
「最初はコンビニで仕事をしていたのに、借金を返済するためにハルは風俗嬢になってしまいますからね。この作品に限らず役作りをする時はできるだけ役と近い体験をしたいと思っているんです。コンビニには実際に行って店員さんのリアルな動きを観察したんですけど、風俗は体験するわけにいかないので、男性から話を聞きました。結果、最初の台本から少し変更になったんです」
台詞がないのに片山さんが沢山喋って怒ってくれて…
──具体的に変更したのは?
「風俗に行ったことがある何人かの男性に、働いた経験がない私たち女性には絶対に分からない、店内でのステップを聞いたんですね。最初の台本では最後にお金を払う段取りになっていたんですけど、聞いた話では最初にお会計を済ませて、タイマーをセットしてから風俗嬢が仕事を始めるんです。『調べてくれてありがとう』とお礼を言ってくださったんですけど、田島監督はそういう場所には行かないピュアな方なんだなと、とても印象に残っています」
──ほかに印象深いシーンは。
「片山さんが演じたナツオが自宅に風俗嬢を呼ぶんですけど、来るのが偶然にもハルなんです。その前にハルは自分に好意を持ってくれていたナツオから姿を消すので驚きの再会でもあるんですけど、ナツオはひどく怒るんですね。サイレントだから台詞はないんですけど現場では片山さん、すごい勢いでしゃべって怒ってくださったから、ハルとして込み上げてくるものがありました。片山さんのその場で生まれてくる台詞だからこそ私はハルとして涙を流せたんです。しかもあのシーンが撮影初日でしたから、より入り込みやすかったです。演じながら、ナツオもハルももっと上手に生きればいいのに、とも思いましたけど」
ハルは可哀想なコではなく下心を持っている女の子…
──そういうご自身も自己犠牲が強すぎると言われたとか。
「私の人生のテーマは愛なので、好きな人やもののためなら自分を削ってでも捧げてしまうんですよね。そして周囲が幸せになっているのを見れば自分も幸せになるっていう。Mなんでしょうね、私(笑)」
──それはハルとの共通点では。
「少し似てる部分はあるかもしれませんけど、私ならもし父親がギャンブルばかりしていたら、もっと怒ってケンカもすると思います。それにハルは単に可哀想な女のコではなくて、自分だって幸せになりたいんだっていう誰しもが持っている下心を持っているんです。だから私も撮影中は下心を持って片山さんに接していましたけど(笑)観客のみなさんがナツオとハルの動向を知っているだけで劇中では2人はすれ違ってばかりなんです。そんな2人をぜひ劇場で体感して頂きたいです。一緒に観た方とそれぞれ、想像した未来を話し合うのも楽しいかもしれませんね」
INFORMATION
■映画『DEVOTE〜捧げる〜』
INFO&STORY
アシスタントをしながら漫画家デビューを目指している29歳のナツオ(片山享)は、思うように筆が進まず、鬱々とした日々を送っていた。そんなナツオの唯一の楽しみは近所のコンビニへ行き、店員のハル(木嶋のりこ)に接客をしてもらうことだった。ハルからの応援を得て、張り切るナツオの前から、ハルがある日突然姿を消す。ハルは父親がギャンブルで作った借金返済のために風俗へと身をやつしていた。なんとかハルを手助けしたいと考えるナツオが耳にしたのは、売れない2人の漫才師によるコンビニ強盗の計画だった…。
CAST&STAFF
出演/片山享・木嶋のりこ・麻生羽呂・菅原大吉ら
監督・脚本・編集/田島基博
製作・配給/田島オフィス
公式HP
7月2日(土)から新宿K’s cinemaにて公開
PROFILE
木嶋のりこ(きじま・のりこ)
1988年3月22日生まれ生まれ 長野県出身
「ミス東スポ2012」などグラビアで人気を博し、映画やバラエティに多数出演。映画出演はほかに「片腕マシンガール」「ピョコタン・プロファイル」「ユリ子のアロマ」「こたつと、みかんと、ニャー。」「ちょっとかわいいアイアンメイデン」「Z〜ゼット〜果てなき希望〜」などがある。
公式ブログ
公式Twitter
■映画『DEVOTE〜捧げる〜』
INFO&STORY
アシスタントをしながら漫画家デビューを目指している29歳のナツオ(片山享)は、思うように筆が進まず、鬱々とした日々を送っていた。そんなナツオの唯一の楽しみは近所のコンビニへ行き、店員のハル(木嶋のりこ)に接客をしてもらうことだった。ハルからの応援を得て、張り切るナツオの前から、ハルがある日突然姿を消す。ハルは父親がギャンブルで作った借金返済のために風俗へと身をやつしていた。なんとかハルを手助けしたいと考えるナツオが耳にしたのは、売れない2人の漫才師によるコンビニ強盗の計画だった…。
CAST&STAFF
出演/片山享・木嶋のりこ・麻生羽呂・菅原大吉ら
監督・脚本・編集/田島基博
製作・配給/田島オフィス
公式HP
7月2日(土)から新宿K’s cinemaにて公開
PROFILE
木嶋のりこ(きじま・のりこ)
1988年3月22日生まれ生まれ 長野県出身
「ミス東スポ2012」などグラビアで人気を博し、映画やバラエティに多数出演。映画出演はほかに「片腕マシンガール」「ピョコタン・プロファイル」「ユリ子のアロマ」「こたつと、みかんと、ニャー。」「ちょっとかわいいアイアンメイデン」「Z〜ゼット〜果てなき希望〜」などがある。
公式ブログ
公式Twitter
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一