唯一無二の過激なパフォーマンスで海外からも熱視線を浴びている電撃ネットワークのギュウゾウさんが今月のパイセンゲスト。外見は強面だが中身は優しいキャラクターである彼が手掛けるギュウゾウ農場や、10月30日に控える「大きな目標だった」と語る『ギュウ農フェス』について話を聞いた。「楽しさ、元気、癒やしを生みたい」と語る真意とは——。人生で築いた美学と物差しにも迫る!
他人を許せば自分に返ってくるし半分シェアしても半分〝も〟残る
──ギュウゾウ農場のHPを見ましたが、女性の参加率が高いですね。「女の子が増えすぎちゃって、こりゃマズイなって時期もありました。しかもわりと可愛い女の子たちが多いんですよ」
──いずれ婚活農場になるかも?
「そうなると良いのですが、これがなかなか、カップルは誕生しないなあ。ギュウゾウ農場に来てる男子は、モテないんだよねー(笑)夏本番のこれからは草むしりなどの地味な野良仕事が大変な時期に入りますので、男子はぜひ作業会に来て下さい。そして背中で語ってモテて下さい」
──ですね(笑)農場をやろうと思ったそもそものきっかけは何ですか。
「もとは自宅の小さな庭でベランダ菜園をやっていたんです。そこでゴーヤを作って大事に育てて種を採り次の撒いたら芽が出て育って。それが楽しかった。で、当時住んでた渋谷・富ヶ谷の自宅付近の公園で、近所で声をかけたお年寄りと一緒に公園でゴーヤ畑を作っちゃったの。結構な高級住宅地にある公園で。こっそりね(笑)地元のお年寄りも楽しかったんじゃないかな、僕が仕事でゴーヤの世話をしばらくできない時なんか、やっといたよーと、水やりをしてくれるようになったりして。実ったらみんなで分けて食べて。野菜を介して『楽しいね』『美味しいね』と言い合うコミュニティができてそれが楽しかった」
──そこから栃木県小山市にギュウゾウ農場を開園した経緯は?
「僕は栃木県出身なのですが、畑は僕の地元ではなく、友だちの土地なんです。始めたきっかけは、そんなに土いじりが好きなら、普段の面倒はやっておくから一緒に広いところで畑やりましょうよと言われたのがきっかけです。広い畑があれば大きな野菜も作れるじゃん、これは面白そうだぞって始めました」
──畑を始めたきっかけ、凝り性のギュウゾウさんらしいですね。
「すぐ夢中になりますからねえ。畑仕事ってそれを生業として食っていくのは大変だけど、そこに人が集まると楽しさ、元気、癒やしが生まれるんです。自分たちで育てた物を自分たちで食べるのはものすごく楽しい。食べきれない野菜は僕の同級生が園長をしてる氏家養護院という、児童養護施設に持って行ってます」
──ボランティアしているんですね。
「ボランティアって、いい事をしているという意識から、時に心の疲弊が生まれたりもするのですが、みんなで行くとそれが和らぐし、なにしろ施設の子どもたちが元気だからこっちも元気になる。元気を貰いに行っている一面もある」
──そういう思考になったのはいつ頃からでしょうか。
「東日本大震災以降かな。人と小さなぶつかり合いをするよりも、包み込むような接し方をした方が人生が潤うんじゃないかな〜と思うようになりました」
──「包み込む」の意味とは?
「許すことですかね。他者を許す姿勢は必ず自分にも返ってくる。長い人生ずっと勝負、白と黒、◯とXだけの選択じゃしんどいでしょう?手にした物の半分は頂戴しても、半分はシェアするような、包み包まれる生き方の方が心の擦れが少ない気がします」
──半分もシェアするんですね!
「みんなで分け合うことでそれが人間関係の潤滑剤になるんなら、自分の取り分は半分でいいんじゃないですか? だって半分“も”残るし。畑仕事をやる中で人との触れ合いを大事にしてると不思議に“取りっこ”にはならないし、自分だけが全部持っていく気持ちにならなくなってくる、自然とそうなった」
──その意向は地元の栃木で10月30日に開催される『ギュウ農フェス』にも活かされているのでしょうか。
「実現できるかどうかは分からないけど、無料イベントにできたら、とは思ってます。無料なら人がたくさん集まって、そこから元気が生まれたり、地元にお金が落ちたりするんじゃないかなあ、と。今は毎週戻ってるんだけど、栃木はすごく地味な県でね。帰るたびに『人気ねえなあ』っていう思いが郷愁と共にあって、何とか人気者にしたいのが趣旨なんです」
──地元に還元したいと。
「いいカッコしたいだけなんですよ(笑)イベントの内容は基本的には型にはめない感じで、アイドルさんだけじゃなくてDJイベントでもいいし、お笑いだって落語だっていい。リレーマラソン大会もやろうと思ってますもん」
──マラソン大会まで!?
「マラソンは辛そうってイメージを持つ人もいるけど、1人3〜5キロ走り次の人にタッチする駅伝スタイルなら出来そうでしょ。遅くても良いの。よたよたになっても走り切って次の走者へタスキを手渡し、次の人がまた次の人へと回しゴールインする。タスキを介して楽しいが生まれる。これも畑と一緒なんですよ。そこに人が集まって、輪が生まれる。結局何がやりたいかっていうと、人が集まる場所を作って、そこから元気を生み出したい。それは電撃ネットワークも同じ。若い人の中には電撃を知らない人も多いけど、『これだったら自分にもできる!』と思ってもらえたらいいんです」
──思えませんから(笑)
「僕らは、なかなかアレですからねえ(笑)最近、いっつも会場を汚しちゃったりとか問題起こしちゃうんだけど、いつも許されるギリギリまでやりたいと思ってるんです。8月のライブ・イベントでは“サソリ男”もやりたいですよ」
「公務員が夢」は悪くないけれど安定という言葉は口に易しいだけ
──先ほどから「元気」という言葉を繰り返されていますが、日本は元気がないと感じますか?「感じる、感じる! だから若い世代が夢を見づらいのかなと。最近は、あまりにも窮屈ですよね。もっとユルいほうがいいと思う。安定って言葉もよく耳にしますよね。公務員になりたいって言う若者の声もよく聞きます」
──確かによく耳にします。
「安定って言葉、口に易しいんですよ。将来の夢が公務員って、僕が学生の頃にはあまり聞かなかったなぁ。もちろん公務員を目指すのが悪いわけじゃないですよ。僕にも公務員になった同級生がいるんですが、彼が『ごめん、俺、公務員に“なっちゃって”さあ』と言い出したので理由を聞いたら『みんなが芸能界に入ったり、証券屋に入ってガンガンチャレンジして稼いでいるのに、俺だけ公務員でのんびりしててごめん。でも、好きなサッカーをやる時間が欲しかったんだよね』と。バブル経済真っ只中だったから、そういうことを言ったんでしょうね。今の若者が聞いたらびっくりしちゃう(笑)世間の風潮に流されず、自分の物差しで決めたその進路は尊いです。人生は自分が何を大事にしているか、何が好き、何を美しいと感じるのかっていう美学……というと物々しく感じるから、物差しと言っほうが良いかな。その物差しで測った上で決めた道が公務員だったらOKだと思います。自分の美学、価値観の物差しを持つ事が大事。人生はそれを見つけるための長い旅だと思う。価値観の物差しに合った選択が激しい世界に進むことだって良い。たぶんそこには激しいながら安定があると思う」
──美学や物差しを自分の中で育てる方法を教えて頂きたいです。
「若いうちにファッションでも音楽でも何でもいいから、興味を持てることに凝りに凝りまくって、自分は何が好きなのかっていうのを把握するのが一番じゃないですか。時代と共に考え方が変わってもいいんですよ。僕自身、物差しの尺度は何度も変わりましたから。先日、同級生と会った時、人生の過ごし方の話になったんです。会社員なんですが、彼から『お前の好き勝手してる人生も良かったと思うけど、俺の人生だって楽しいんだよ、あと10年働いて退職金貰って、孫と遊んで暮らすのも良いだろ』と言われた時は、それもいいなあ、僕も孫が欲しいし、退職金も欲しいぞってホントに思いましたよ〜(笑)退職してからの人生も長いですもんね。いろいろな選択があるし、いろいろな正解がある。僕は自由に生きてきたほうだけど、順風満帆ではなかった。売れたいという気持ちがあったし、そこには競争もあったし。ものすごい才能を持ったタレントに出会って、『僕はこうなれないんだなあ』と病んで、悩んで挫折した時もあった」
──ギュウゾウさんでも挫折を経験しているとは!それをどう乗り越えたんですか。
「挫折の解決法なんてないんですよ。ただ、立川談志さんの『時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない、現実は事実で正解だ』という言葉には救われた。今ある現状を認める。それが上手くいってないなら、具体的に考えて、具体的に行動する。そしてまた上手くいかないならまた悩んで…悩みっぱなしで良いんです。現状を認める度胸があれば大丈夫。答えなんかないんだから」
──なるほど。では答えがないギュウゾウさんのこれからの人生は?
「今52歳だからね、余生をどうするかは考え始めてますよ。ずーっと働いてる自分を想像するの、ちょっと怖い。タレントさんの中には80歳すぎまでローンを抱えている方もいらっしゃいますが…それは怖い、怖いぞ(笑)! 大きな買い物をするためにお金を借り、それを返済するために働くのは当たり前だし、その人生設計は素晴らしいと思う。だけど、僕の物差しではその選択はないな。年寄りになったら毎日ひなたぼっこして、自分が食べる分のトマトとか作ったりしてるのも悪くないなあ」
──えっ、芸能活動を辞めてしまうとか…!?
「まだ辞めないですよ。まだ体力も情熱もいっぱいあるもん。僕はステージでお客さんと向かい合った時に、自分たちの熱で客席をねじ伏せるようなライブが好きで、そういう存在でありたい。けど、それができなくなった時にいろんなことを考えるんじゃないですかね。そして悩んで、どうしたら良いか具体的に考えて、行動して悩んで……やっぱり答えはでない(笑)」
PROFILE
ギュウゾウ(ぎゅうぞう)
1964年8月7日生まれ 栃木県出身
過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のメンバー。猛毒のサソリを顔の上や口の中で遊ばせるサソリ芸など、危険な人体パフォーマンスを得意とし、海外でも人気は高い。格闘技観戦、落語観賞、偉人の墓参り、農業、映画鑑賞など趣味は多岐に渡り、空手と柔道は黒帯の腕前。パフォーマー以外に俳優、クラブDJ、漫画原作の執筆、東京・四谷の燻製居酒屋「煙人」オーナー、ギュウゾウ農場での農作物栽培など様々な顔を持つ。栃木県塩谷町ふるさと観光大使。アイドルイベント「ギュウ農フェス」は10月30日に栃木・宇都宮のオリオンスクエアで開催予定。ラジオ栃木放送「シモツカル」(水曜午前9時)パーソナリティ。
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ギュウゾウ(ぎゅうぞう)
1964年8月7日生まれ 栃木県出身
過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のメンバー。猛毒のサソリを顔の上や口の中で遊ばせるサソリ芸など、危険な人体パフォーマンスを得意とし、海外でも人気は高い。格闘技観戦、落語観賞、偉人の墓参り、農業、映画鑑賞など趣味は多岐に渡り、空手と柔道は黒帯の腕前。パフォーマー以外に俳優、クラブDJ、漫画原作の執筆、東京・四谷の燻製居酒屋「煙人」オーナー、ギュウゾウ農場での農作物栽培など様々な顔を持つ。栃木県塩谷町ふるさと観光大使。アイドルイベント「ギュウ農フェス」は10月30日に栃木・宇都宮のオリオンスクエアで開催予定。ラジオ栃木放送「シモツカル」(水曜午前9時)パーソナリティ。
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