累計800万部を突破した大人気コミック『闇金ウシジマくん』を実写化したドラマ&映画で、ウシジマの忠実な部下・柄崎を好演するやべきょうすけ。ガラは悪いがどこか笑える天性の“三枚目キャラ”で唯一無二の存在感を発揮する名脇役が、自ら語る役者としての生きざまとはー。
非情な裏社会を描きながらも、ちっとも重たさを感じさせないのが実写版『闇金ウシジマくん』の魅力の一つ。今回は、そんな同作のもつ“軽妙さ”のキーマンともいえる柄崎役を演じるやべきょうすけさんが満を持して登場。爆笑必至のぶっちゃけトークを繰りひろげてくれた。
ウシジマと柄崎の関係は自分の“素に”最も近い
──ご自身にとって、柄崎という役はどんな存在ですか?「ぶっちゃけ、ポジション的にも一番好きな立ち位置ですね。僕は性格的にも“気にしい”なところがあるんで、上に立って物事を動かすウシジマみたいな役柄より、柄崎のようにまわりの状況を見ながら誰かを担ぐってほうが自分としても楽なんです。まさか柄崎をこんなに長く演じることになるとは思ってなかったですけど、基本的にはライフスタイルの延長線上にあるような感じなんで、毎回楽しんでやれてます」
──ということは、役作りという部分では意外とすんなり?
「そりゃもう、この業界に入ってかれこれ24年になりますけど、9割方は柄崎のようなガラの悪い人の役なんでね(笑)ただ、基本的にはどんな役柄であっても、監督が求めるものに対して、自分がどれだけ向かっていけるかっていうスタンスは変わらない。もちろん、柄崎的な役柄をやり続けてきたからこそ、どこかで変化もつけていかなきゃいけないって気持ちもありますけど、自分自身がそこを意識しすぎて、ほかの共演者とのバランスが崩れちゃったら、元も子もないですからね」
──確かに、柄崎らカウカウファイナンスの面々がみせる息のあった掛けあいは、バランスという意味でも絶妙ですもんね。
「ウシジマ社長といるときは素直に自分を表現して、高田といるときは、ちょっと先輩風を吹かしながら突っこまれ役。摩耶といるときは完全にドMキャラっていうね」
──そのあたりは、やべさんご自身の“素”にも……。
「かなり近い(笑)ある意味、過去に演じてきたどんな役より、近いかもしれないです」
──ちなみに、ウシジマ役の山田孝之さんとはプライベートでも親交があるとか。役者の先輩であるやべさんから見た山田さんというのは?
「なかなかに特別な存在ではありますね(笑)きっかけは『クローズZERO』なんですけど、あそこに大勢出ていた若い役者さんのなかでも、とりわけ魅了されたのが山田孝之という存在。僕自身、あの作品ではあんまり彼とは絡んでいなかっただけに、いつか一緒にやりたいとはずっと思っていたんです。どこかで勝負したいって気持ちもありつつ、ただ純粋に、群を抜いていい役者である彼をずっとそばで見てたいなと。まぁ、本人の前ではこんなこと絶対に言わないですけどね(笑)」
──お話を聞くかぎり、お二人の関係性は、そのままウシジマと柄崎にも当てはまりそうな気が(笑)
「そういう部分は少なからずありますね。衣装合わせとかが終わったぐらいの段階から、自然と“社長”って呼んでいましたし。もっとも、僕自身はどんな現場であれ、上下関係とかをあんまり気にしないタチ。撮影中でも次の日がゆっくりのときなんかは、劇中の関係性のまんまで、カウカウのメンバーとも普通に飲みに行ってましたしね(笑)」
──そういうときの会計は?
「もちろん社長が(笑)プライベートで会うときは奢ったり、ワリカンだったりいろいろなんですけど、ちょうどそのときは『年収序列で行こうぜ』みたいな話になって。そしたら孝之のほうから『今回は俺が誘ったんで』って言いだしたから、すかさず『よっ! 社長!!』と(笑)」
──緊迫感のありすぎる劇中とは対照的なユルさがいいですね!
「だいたい、いつもそんな感じですね。メシ食って2軒目に行くときでも『次はやべさんお願いします』って言われて、『じゃあ、そろそろ帰ろうか』とかって言うと、まわりからソッコーで、『何、言っちゃってんですか』『やべさん、相変わらずちっちゃいすね!』みたいなツッコミが入って、僕のほうが『まぁな!』っていう(笑)今回に関してはマサル役の菅田(将暉)くんも含めて、そういう関係性がこれまで以上に、いい感じで築けたなと思います」
役者としても輝きを放つ生来の“三枚目キャラ”
──ところで、やべさんの魅力でもある、そういった“三枚目キャラ”というのはいつ頃から?「もうちっちゃい頃から変わんないですね。前に向かってワーッと表現してるのが楽っていうかね。中学に入って先生のいじられキャラみたいな感じで人気者になって、途中、若干ヤンチャなこともしてましたけど、基本的にはずっとこうです」 ──ブログのプロフィール欄に書かれている“小学校でイジメられっ子”だったことへの反動も?
「ありますね。小3、小4ぐらいのときはもうクラスメイトとしゃべった記憶がないくらいシカトされたりしてましたし。いつか見返してやろうと思って、高学年ぐらいからは、筋トレとかもしたりして(笑)」
──そこから、中学デビューでいきなりヤンチャにまで?
「まぁ、当時は不良ってだけでモテた時代。だから、僕自身は親にも社会にも、何にも文句はなかったんですよ(笑)先生に怒られてばっかなのに、結局、先生のことは大好きみたいな(笑)」
──役者を本格的に志すようになったのもその頃ですか?
「当時はまったくなかったです。ただ、高校受験で滑りどめに落っこちたときに、わざわざNSC(吉本総合芸能学院)の願書を取り寄せてくれた先生から、『おまえ、こういうのに向いてると思うんだよな』と言われてね。結果的に公立受かって、そっちに行ったんですけど、内心ではちょっとその気になっちゃったんですよ。お茶の間でテレビのクイズに正解しても何にももらえないけど、自分が出る側になったら賞金までもらえるじゃん、っていうクソみたいなヨコシマな気持ちで(笑)」
──とすると、まずは芸能界に入って目立ってやろうと?
「そうですね。何にも分かんないから、とりあえず本屋で『マスコミ養成ガイド』って本を買って、面倒看てくれそうなところを片っ端から受けて。ちゃんとしなきゃいけないと思って、当時の自分にとっての“正装”だったパンチパーマをわざわざ当て直して、劇団四季とかにも行きましたから(笑)」
──まわりがレオタードで来ているなか、一人でパンチ! チャレンジングですね(笑)
「でも、そういう世間知らずだった僕を、師匠である丹波哲郎って人だけはおもしろがってくれたんですよね。面接で、自分は役者を目指してるわけじゃないってことまでぜんぶ正直に答えたら、『素直なヤツだから合格』って、その場で即決してくれて。そばにいたマネージャーさんからは『ボス、今ここで合格とか、言うの止めてください!』って止められてましたけどね(笑)」
──大御所に見事にハマったわけですね。しかも、結果的に丹波さんの眼力は正しかった。
「最初の6年間ぐらいは、丹波道場でレッスンを受けて、オーディション受けたり、野次馬気分も抜けきらないまんまでエキストラとして現場に行ったりしてただけ。映画ってもんのスゴさを体感させてくれた『キッズ・リターン』や、初めて主演させてもらったVシネ『喧嘩の花道』での三池崇史監督との出会いがなかったら、今ここにいられたかどうかも分かんないですからね」
──では最後に、そんなやべさんが思う“夢をつかむためのコツ”を教えてください!
「僕自身がそうだったように、何かに興味をもって、何かに向かうってことを続けていれば、きっとそのなかで目標だったり、夢だったりってのは見つかると思うんです。昨日の自分よりも一歩前に出る勇気を持つことができれば、世の中の見え方も変わってくる。だから、僕としては“三日坊主”でも万々歳。思っていてやらないより、やってみて合わないってあきらめるほうがよっぽど生産的ですからね」
“三枚目キャラ”のお調子者と見せかけて、一本筋の通った男気を随所に感じさせてくれたやべさん。サービス精神にあふれる巧みなトークからにじみ出る、その人柄のよさこそが、誰からも掛け値なしに慕われる秘訣であるに違いない。
INFORMATION
映画『闇金ウシジマくん Part2』
INFO&STORY
暴利で貸し付け、容赦なく取り立てる闇金業者カウカウファイナンスの社長ウシジマこと丑嶋馨の周囲に群がる、ライバルの闇金業者やヤンキー、暴走族、極道、ホスト、風俗嬢、ストーカーといった金と欲望に踊らされた者たちの壮絶なサバイバルを描く。ある日、ウシジマの事務所に暴走族のヘッド愛沢とトラブルを起こしたヤンキーのマサルが、愛沢に連行されてくる。愛沢はマサルに借金をさせ、その金を自分への慰謝料として払うよう要求するが、マサルはウシジマに懇願してカウカウファイナンスで働くことに。当てがはずれてしまった愛沢だが、彼にもまた、すぐにでも金が必要なある事情があった…。真鍋昌平氏の人気コミックを山田孝之主演で実写化し、10年にテレビドラマが放送、12年に映画化もされた「闇金ウシジマくん」の劇場版第2弾。
CAST&STAFF
出演/山田孝之・綾野剛・菅田将暉・木南晴夏・門脇麦・高橋メアリージュン・中尾明慶・窪田正孝・希崎ジェシカ・バカリズム・大久保佳代子・キムラ緑子・マキタスポーツ・本仮屋ユイカ・光石研・柳楽優弥・崎本大海・やべきょうすけ
監督/山口雅俊
原作/真鍋昌平(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本/福間正浩・山口雅俊
配給/東宝映像事業部=S・D・P
5月16日(金)全国ロードショー
公式HP
PROFILE
やべ・きょうすけ
1973年11月12日生まれ 大阪府出身
俳優養成所「丹波道場」で演技を学び、96年に『キッズ・リターン』で映画デビュー。以降、オリジナルビデオ作品をはじめ、映画やドラマに多数出演。07年公開の『クローズ ZERO』で「第17回日本映画批評家大賞」助演男優賞を受賞。ほかの出演作にはドラマ「龍馬伝」「相棒Season7」「QP」、映画「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」「クローズ ZERO II」「夢売るふたり」「東京闇虫」「クローズ EXPLODE」などがある。フジテレビ系「ワオ」出演中。
公式Twitter
映画『闇金ウシジマくん Part2』
INFO&STORY
暴利で貸し付け、容赦なく取り立てる闇金業者カウカウファイナンスの社長ウシジマこと丑嶋馨の周囲に群がる、ライバルの闇金業者やヤンキー、暴走族、極道、ホスト、風俗嬢、ストーカーといった金と欲望に踊らされた者たちの壮絶なサバイバルを描く。ある日、ウシジマの事務所に暴走族のヘッド愛沢とトラブルを起こしたヤンキーのマサルが、愛沢に連行されてくる。愛沢はマサルに借金をさせ、その金を自分への慰謝料として払うよう要求するが、マサルはウシジマに懇願してカウカウファイナンスで働くことに。当てがはずれてしまった愛沢だが、彼にもまた、すぐにでも金が必要なある事情があった…。真鍋昌平氏の人気コミックを山田孝之主演で実写化し、10年にテレビドラマが放送、12年に映画化もされた「闇金ウシジマくん」の劇場版第2弾。
CAST&STAFF
出演/山田孝之・綾野剛・菅田将暉・木南晴夏・門脇麦・高橋メアリージュン・中尾明慶・窪田正孝・希崎ジェシカ・バカリズム・大久保佳代子・キムラ緑子・マキタスポーツ・本仮屋ユイカ・光石研・柳楽優弥・崎本大海・やべきょうすけ
監督/山口雅俊
原作/真鍋昌平(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本/福間正浩・山口雅俊
配給/東宝映像事業部=S・D・P
5月16日(金)全国ロードショー
公式HP
PROFILE
やべ・きょうすけ
1973年11月12日生まれ 大阪府出身
俳優養成所「丹波道場」で演技を学び、96年に『キッズ・リターン』で映画デビュー。以降、オリジナルビデオ作品をはじめ、映画やドラマに多数出演。07年公開の『クローズ ZERO』で「第17回日本映画批評家大賞」助演男優賞を受賞。ほかの出演作にはドラマ「龍馬伝」「相棒Season7」「QP」、映画「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」「クローズ ZERO II」「夢売るふたり」「東京闇虫」「クローズ EXPLODE」などがある。フジテレビ系「ワオ」出演中。
公式Twitter
Interview&Text/鈴木長月 Photo/白井力丸