「私にとってこの映画は、ターニングポイントです。今まで少し平和ボケしていたんでしょうね。生きていることそのものに改めて感謝できるようになりました」
ある日突然、大学を除籍された男がホームレスへと転落していく人生を描いた映画『東京難民』が2月22日(土)に公開される。格差社会のゆがみがもたらす壮絶な落下は、自分にも起こり得るかもしれないと誰しも切実に感じられるストーリーだ。単調な生活から一変、予想外の世界へと堕ちていく北条茜も然り。茜を演じた女優大塚千弘さんは、「この映画に出たことで見ようとせず蓋をしていたことに目を向けるようになった」と語る。価値観までも変えてしまう作品の魅力とは。
茜の活力剤が修君なら私は仕事とビールが活力剤(笑)
──主人公の修は余儀なくネットカフェ難民になります。同じ立場ならどうしますか?「負けず嫌いですからそんな苦境には私、ぜ~ったいに負けません(笑)生きて行くためにはお金が必要ですから、その日のうちに仕事を探して就くでしょうね。どん底まで落ちて這い上がったら、それは自分の実力じゃないですか。だから窮地を迎えても絶対に負けたくない。それに、ピンチの時って男性より女性のほうが、生命力の強さを発揮する気がします」
──看護師から水商売へと身をやつす茜も、生命力が強いですよね。
「茜は修くんに出会ったからこそ潜在的に持っていた強さが開花して、たくましくなったんでしょうね。服装も仕草も女性らしく美しくなって、茜にとって修くんは、活力剤だったと思います。台本を読んだ時点で茜には共感できたんです。年齢は違いますけど私も茜と同じように、夢を追いかけて15歳で東京に出てきて、孤独を覚えた時期もあったので…。だから、茜が女性として成長していく姿をきちんと見せたいな、と思いました」
──茜にとっては修が活力剤ですが、ご自身は?
「仕事人間なので、仕事です。舞台で最後にお客様から拍手を頂くと、『私、生きてる!』と感じます。『自分なんて』という思いが払拭されて、私、ここにいていいんだという気持ちになれるんです。あとは、仕事終わりのビール。炭酸を飲むと気分がリフレッシュできるんです…って言い訳ですかね(笑)」
修と茜…2人に行く末はお客さまに想像してほしい
──茜がホストに貢ぐ気持ちにも共感できますか?「何かにハマッて貢ぐって、誰にでもあることじゃないですか。私は洋服が大好きで、洋服にだけはすごくお金をかけてしまいますし。ドキュメンタリー番組で、リサイクルショップにブランド品を持ち込む女性が出ていること、ありますよね。あれは男性が貢いだ結果ですけど、人に貢ぐってああいうことなのかなって、演技の参考にしました」
──その結果、茜は風俗嬢になってしまいます。
「劇中では最後に修くんと会った以降のことが描かれていないんですけど、そこは観て頂く方々に想像してほしいんです。この作品はいろんな人の気持ちに当てはまるから、自分を投影して観られると思うんです。私はあの2人は、以降もちょいちょい会うのかな~と予想しています。でも、違う家庭を持っているかもしれないし、5年後に再会して結婚するかもしれない。自分に置き換えると、何パターンも想像できそうですよね」
この映画が私を変えました 生きることに改めて感謝!
──映画では本格的なラブシーンも初挑戦しましたよね。「リハで、佐々部(清)監督が(中村)蒼くんを相手に指導をしてくれて、蒼くんが人形のように固まっていたのは笑えました(笑)年下の蒼くんをリードしなければなりませんでしたし、『せっかくだからキレイに撮って!』と肝も据わっていました。女性って強いんですよね、そういう時」
──大塚さんの中で本作はどんな位置づけになりそうですか。
「私にとってこの映画は、ターニングポイントです。今までは少し平和ボケしていたんでしょうね。お布団で眠れること、ご飯を食べること、生きていることそのものに改めて感謝できるようになりました。だから動物愛護にも興味が沸き、ツイッターで動物愛護関係フォローしています。せっかくこの仕事に就いているので、多くの人に声を届け続けられたら、と思っています」
INFORMATION
■映画『東京難民』
INFO&STORY
どこにでもいるごく普通の大学生だった時枝修(中村蒼)は、授業料の未払いを理由に、大学を除籍される。父親が借金を抱えて失踪したため、家賃も支払えず、ネットカフェに泊まりながら日払いのバイトで食いつなぐが、ある日、だまされて入ったホストクラブで働くことに。ホストの裏側を見てしまった修はその世界から抜け出すことができず、若くしてホームレスにまで転落…。看護師の北条茜(大塚千弘)もまた、ホストとして働く修に入れ込み、人生を踏み外していく…。“ネットカフェ難民”や“ファーストフード難民”の実態、華やかなホストの秘密のビジネス、日雇い労働の信じられない条件、そして流転の先に行き着く場所一一これも現代日本のもう一つの顔なのだ。
CAST&STAFF
出演/中村蒼・大塚千弘・青柳翔・山本美月・中尾明慶・金井勇太・落合モトキ・田村三郎・岡村洋一・大谷ノブ彦・吹越満・福士誠治・津田寛治・小市慢太郎・金子ノブアキ・井上順
監督/佐々部清
脚本/青島武
原作/福澤徹三「東京難民」(光文社文庫刊)
配給/ファントム・フィルム
公式HP
2月22日(土)より有楽町スバル座ほか全国公開
(C)2014「東京難民」製作委員会
PROFILE
大塚千弘(おおつか・ちひろ)
1986年2月1日生まれ 徳島県出身
第5回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞。03年にTBS系ドラマ「ショコラ」で主役に抜擢。主な作品にドラマ「白夜行」「アテンションプリーズ」、映画「いま、会いにゆきます」「パートナーズ」「ルームメイト」などがある。舞台は03年、「シンデレラストーリー」でヒロインデビュー。11年には第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞した。4月4日からBunkamuraシアターコクーンで上演のミュージカル「イン・ザ・ハイツ」に出演する。
公式ブログ
公式Twitter
■映画『東京難民』
INFO&STORY
どこにでもいるごく普通の大学生だった時枝修(中村蒼)は、授業料の未払いを理由に、大学を除籍される。父親が借金を抱えて失踪したため、家賃も支払えず、ネットカフェに泊まりながら日払いのバイトで食いつなぐが、ある日、だまされて入ったホストクラブで働くことに。ホストの裏側を見てしまった修はその世界から抜け出すことができず、若くしてホームレスにまで転落…。看護師の北条茜(大塚千弘)もまた、ホストとして働く修に入れ込み、人生を踏み外していく…。“ネットカフェ難民”や“ファーストフード難民”の実態、華やかなホストの秘密のビジネス、日雇い労働の信じられない条件、そして流転の先に行き着く場所一一これも現代日本のもう一つの顔なのだ。
CAST&STAFF
出演/中村蒼・大塚千弘・青柳翔・山本美月・中尾明慶・金井勇太・落合モトキ・田村三郎・岡村洋一・大谷ノブ彦・吹越満・福士誠治・津田寛治・小市慢太郎・金子ノブアキ・井上順
監督/佐々部清
脚本/青島武
原作/福澤徹三「東京難民」(光文社文庫刊)
配給/ファントム・フィルム
公式HP
2月22日(土)より有楽町スバル座ほか全国公開
(C)2014「東京難民」製作委員会
PROFILE
大塚千弘(おおつか・ちひろ)
1986年2月1日生まれ 徳島県出身
第5回「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞。03年にTBS系ドラマ「ショコラ」で主役に抜擢。主な作品にドラマ「白夜行」「アテンションプリーズ」、映画「いま、会いにゆきます」「パートナーズ」「ルームメイト」などがある。舞台は03年、「シンデレラストーリー」でヒロインデビュー。11年には第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞した。4月4日からBunkamuraシアターコクーンで上演のミュージカル「イン・ザ・ハイツ」に出演する。
公式ブログ
公式Twitter
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一