「あの時は気づかなかったけど、あれが幸せだったんだ」そんなふうに自身の身の回りにある小さな幸せに気づくきっかけを与えてくれる映画『朝日のあたる家』。山本太郎氏が出演していることでも話題の原発事故を題材にした本作に出演した女優・平沢いずみさんが込める作品への思いとは――。「もし自分が主人公と同じく避難することになったら?」と質問したところ、「紙とペンとカメラがあればほかは何もいりません」と答えた、彼女の素朴で独特な人柄にも焦点を当てました。
映画でも空想画を描いてます役は監督から指名されました!
──今日している奥歯と歯茎を形どった指輪や、趣味で書く空想画を見る限り、平沢さんは独特のセンスを持つ印象を受けました。「いつもは下の前歯の形をした指輪をしているんですけど、こういうのが『何を考えているのか分からない』って言われる理由なんでしょうか。今ルームシェアをしている女のコにも言われたことがあるんですよ。私たち、基本的に部屋の仕切りを開放しているんですね。で、私が色付きの紙粘土を壁にペタペタ貼り付けて、そこにビー玉を埋め込んでいたら、それを観察していた友だちから『怖い!』と引かれました(笑)。紙粘土だったらいつでも剥がせるから、遊びのつもりだったんですけど。23歳で、渋谷の109やクラブに行ったことがないと言うと、珍しいと言われますし。確かに、絵も独特だと言われたことがあります」
──空想画は映画でも描いていますよね。
「太田(隆文)監督とは二度目のお仕事でしたから、私の趣味を理解してくださっていたんです。だから、美大生役で脚本を書いてくれたらしいです。あかねの部屋には、私が使う絵の道具もいくつか置いてありますよ。長い間住んでいる愛着のある部屋という雰囲気を出すために、休憩時間はご飯を食べたり、絵を描いたりして、ほとんどをあの部屋で過ごしました」
──ということは、あかね役は平沢さんご指名だったんですね。
「監督から『平沢にしかできない役だから』と言われて、どんな話か分からずお受けしたんですけど、本を読んだら本当にできるのか不安になって、事前に勉強しました。実際にあった話がベースですから、原発の被害を体験した方たちから『甘いよ』と言われてしまったら、役者として失格ですから」
反原発と扱われがちだけど家族の絆を描いた人間ドラマ
──原発がテーマですが、出演に迷いはありませんでしたか。「原発を題材とした映画が少ないから、“反原発”という扱いをされがちですけど、実は家族の絆を描いた人間ドラマなんですよ、この作品って。鑑賞後に開放感があるわけでもなく課題を与えられた感覚になりますけど、きっとみなさん、今の現実につながるはずなので、考えるきっかけになると思います。私自身も、映画と似た体験をしているんですよ」
──似た体験というのは?
「5歳上のお兄ちゃんが、オーストラリアで永住権を取得するために、シェフとして働いているんですね。東日本大震災の時、海外から日本は沈没したと思われたらしくて、家族が生きてると分かった瞬間、海外に移住しようと説得されました。映画で伯父役の山本太郎さんが、私たち家族を沖縄へ移住させようとするのと同じ状況だったんです。私にはあかねのように妹がいないし、実家が神奈川ですぐ帰れるから“故郷”という感覚が薄いので、その経験は演じる手助けになりました。原発被害の体験談も、演じる上で助けられました。あかねと妹が放射能を除去するシーン、自分で洗っても除去できないから現実には作業する男性の前で裸にならなくてはいけなくて、女性は精神的なダメージが大きいらしいんです。こすり洗いすると放射能が体内に浸透するというのが理由らしいですけど」
──演じる上で苦労したシーンは。
「避難所から一時帰宅するシーンです。事実に基づいて描かれているんですけど、母親・良江役の斉藤とも子さんに3回ほど思いっきりビンタされたら、耳がキーンとして、その後しばらく何も聞こえなくなりました(笑)。心情的にも表現が難しい場面でもあったので、ぜひ観ていただきたいですね」
INFORMATION
■ 映画『朝日のあたる家』
INFO&STORY
静岡県湖西市。自然に囲まれた美しい町に住む平田一家。父(並樹史朗)はいちご栽培、母(斉藤とも子)は主婦、長女あかね(平沢いずみ)は大学生、妹の舞(橋本わかな)は中学生の平凡な家族。ただ、大学生のあかねは、就職後は都会で一人暮らしを夢見ていた。そんな時に大地震が起こり、原子力発電所で事故が発生。避難所へ移った一家は何カ月も家に帰れず、父は職を失い、母はノイローゼ、妹は病気になってしまい、家族は大きな悲しみの渦に巻き込まれていく…。
CAST&STAFF
出演/並樹史朗・斉藤とも子・平沢いずみ・橋本わかな・藤波心・金守珍・いしだ壱成・山本太郎ら
監督・原作・脚本/太田隆文
製作/「朝日のあたる家」を支援する会
配給/渋谷プロダクション
公式HP
9月28日(土)から渋谷アップリンクにてロードショー
(C)「朝日のあたる家」事務局
PROFILE
平沢いずみ(ひらさわ・いずみ)
1989年12月28日生まれ
神奈川県出身
ドラマや映画、CMなどを中心に女優として活動。主な出演作にドラマ「スロースタート」「ガチバカ!」「デスリミット・密着68日・復讐執行人」、映画「ノルウェイの森」「青い青い空」、DVD「ほんとうにあった怖い話・第十六夜:冥界からの声」「感動体験!アンビリーバボー 第ニ話:家族の守り神」などがある。
公式HP
■ 映画『朝日のあたる家』
INFO&STORY
静岡県湖西市。自然に囲まれた美しい町に住む平田一家。父(並樹史朗)はいちご栽培、母(斉藤とも子)は主婦、長女あかね(平沢いずみ)は大学生、妹の舞(橋本わかな)は中学生の平凡な家族。ただ、大学生のあかねは、就職後は都会で一人暮らしを夢見ていた。そんな時に大地震が起こり、原子力発電所で事故が発生。避難所へ移った一家は何カ月も家に帰れず、父は職を失い、母はノイローゼ、妹は病気になってしまい、家族は大きな悲しみの渦に巻き込まれていく…。
CAST&STAFF
出演/並樹史朗・斉藤とも子・平沢いずみ・橋本わかな・藤波心・金守珍・いしだ壱成・山本太郎ら
監督・原作・脚本/太田隆文
製作/「朝日のあたる家」を支援する会
配給/渋谷プロダクション
公式HP
9月28日(土)から渋谷アップリンクにてロードショー
(C)「朝日のあたる家」事務局
PROFILE
平沢いずみ(ひらさわ・いずみ)
1989年12月28日生まれ
神奈川県出身
ドラマや映画、CMなどを中心に女優として活動。主な出演作にドラマ「スロースタート」「ガチバカ!」「デスリミット・密着68日・復讐執行人」、映画「ノルウェイの森」「青い青い空」、DVD「ほんとうにあった怖い話・第十六夜:冥界からの声」「感動体験!アンビリーバボー 第ニ話:家族の守り神」などがある。
公式HP
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら