「僕らいろんなインタビューでよく、『苦労しましたね』『大変でしたね』って言われるんですけど、苦労も大変もあったけど、それよりも楽しいが上回ってたから続けてきただけなんです」
ハマカーン【はまかーん】=何かとキレて怒鳴る浜谷健司さんと、ガールズトーク好きな神田伸一郎さんが織り成す漫才コンビの名称。「THE MANZAI 2012」での優勝を皮切りに、その実力に見惚れた人も多いはずだ。実はこのお2人、そのキャラ同様に、芸人としての意識にも大幅なズレがあることを、初の回顧録『下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え』で告白している。ではブレイクに至った今、ズレたままの価値観はどう修正されたのか? 芸人として生計を立てるという夢を叶えた気になる秘訣とは? 自己分析の“極み”に迫る!
今回のゲストは「THE MANZAI 2012」で王座を勝ち取り、MC番組「ハマ3」(フジテレビ系)やラジオ番組出演などで、躍進中のハマカーン浜谷健司さん、神田伸一郎さん。テレビで目にする機会が増えてファンも激増し、初の書籍『下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え』を上梓することになった2人だが、その活躍ぶりを讃えると、「いやいや、自分たちはまだまだですよ」と低姿勢。今の立ち位置に安住していないことが伺える。では、彼らがそういった考えに至った経緯とは? 書籍には書かれていない秘話を通して、本音を赤裸々に語ってもらおう。
他人の言うことなんて関係ない!と突っ走ってほしいです!!
ハマカーンとしての処女作は、芸人としてブレイクするまでの紆余曲折を綴った「極み」本。95年の東京農工大での出会いから、00年のコンビ結成、売れずに苦悩する日々、そして「THE MANZAI 2012」で王者に輝くまでの、2人の「1人語り」をシンクロさせた異色の回顧録だ。意識のズレがあって何度も解散を考えたが、互いの違いを尊重することで絆が深まり、頂点を目指す自信も生まれていったという。ファンならずとも例えば、対人関係に悩む人たちにとって、絶好の「参考書」になるかもしれない著書をひも解くと。
この本からヒントを見つけられる人は生きているだけでいろんなことを吸収できるんじゃないですかね
──浜谷さんは「人生のヒントは載っていません」、神田さんは「何の教訓もない本ですが」とコメントを寄せてますよね。本当に人生のヒントや教訓は載っていないのでしょうか?2人「載ってないと思いますけどねー!(と即答)」
神田「この本からヒントを見つけられる人はたぶん、何を読んでも見つけられると思いますよ。生きてるだけでいろんなことを吸収できるんじゃないですかね」
浜谷「先輩の言葉、まんま受け売りを書いた場面はありますけどねえ。あのページだけでいいと思ってますよ、僕は」
──いえいえ、書いてあるじゃないですか、ココに(箇所を指差す)。
浜谷「どこですか…『13年のうちに〝どうせ僕は優勝なんてできない人間だ〟という負け犬根性が染みついてしまったのです』って、負け犬根性が染みついたらダメじゃないですか。読んで損したわ!」
──すみません間違えました(笑)。ココです、神田さんの書いた部分で〝努力というのは必要条件であって、十分条件ではありません〟のところです。
神田「それも何かの受け売りですよ。誰でも知ってる言葉じゃないですか」
──ですが今、お2人は芸人として生活を立てるという夢を叶えてますよね。秘訣をご教授頂きたいのですが。
浜谷「運ですよ、運!」
神田「僕は運とまでは自信を持って断言でき……」
浜谷「いーや! 運です! 実力でも何でもないです。完全なる運です! 運は運です!」
神田「あーあ、変なスイッチ入っちゃった。確かに僕らは運が良かったとは思いますよ。すっごく面白い人が芸人では食えてなかったりしますから」
浜谷「たーだ…!」
神田「出た! これ絶対に名言吐きますよ」
浜谷「運じゃないと思って頑張ってるヤツが、運で売れると思います! と、吉本興業の授業で木村祐一先生が言ってたらしいですよ。いい言葉だなあ、と」
神田「それ、木村さんの言葉で聞きたかったわ! 僕は、夢を叶えるって、夢の〝ライン〟によると思いますよ」
──というのは?
神田「僕は人前で漫才をやるのが最初の夢だったんで、食える食えないに関わらず、最初の夢は叶ったんですよ。食えるようになったのは運でしょうけど」
浜谷「僕はね、僕のことを売れてると思ってる人が、僕の言葉をそのまま信じちゃダメだと思うんですよねえ。他人の言うことなんて関係ない! って、突っ走ってほしいんですよ。人それぞれ違うから、僕が何を言っても当てはまらないでしょうし。それに僕ね、アドバイスとかってあんまりしたくないんです。ほとんど仕事がない時に先輩に何を言われても、『アナタは今だから、それ言えるんでしょ!』と常に思ってたんで」
神田「そうね。僕らいろんなインタビューでよく、『苦労しましたね』『大変でしたね』って言われるんですけど、苦労も大変もあったけど、それよりも楽しいが上回ってたから続けただけなんですよ。だから、秤にかけて楽しいが上回っていたら続けたほうがいいし、辛いんだったら辞めたほうがいい、としか言えないです」
──神田さんが辛いから辞めると言ってたら、浜谷さんはどうしますか?
浜谷「いやー、ピンでしがみついてたでしょうねえ。地方のイベントとか、結婚式の司会か何かやらせてもらって、ワンチャンスに賭けてたでしょうねえ」
神田「そうなの? 初めて知ったわ。僕は1人になったら、楽しいと辛いを天秤にかけてたかなあ」
浜谷「でもねえ、芸人に人生を賭けるのは辞めたほうが、幸せになる確率は上がりますよ」
──それはなぜですか?
浜谷「だって、ほんの1年前まで地獄みたいな生活してましたからね。34~35歳で、月収2万円ですよ! 6年ぐらい前にある先輩芸人から、『お前ら売れる可能性ゼロだから、辞めろ!』と言われたこともありましたから」
神田「あったねぇ。『埼玉の実家まで帰るお金あげるから辞めな』と言われました」
浜谷「だから僕『うるせえ!! 売れなくてもいいです! ホームレスになっても辞めません!』と言ってやりましたよ」
──芸人で生きていくという覚悟があったんですね。
浜谷「いや、覚悟じゃないです」
神田「違うんかーい! 覚悟のほうがカッコいいよー」
浜谷「諦めですよ。考え方ひとつで、幸せになれますからね、人は。給料2万の時代はポストの前で1人、給料明細を見ながら『ああ、もう辞めたろうかしらん』って毎月ボソッと呟いてはいましたけどテレビを観たら面白いし、布団で眠ると気持ちいいし、幸せだな、と。だからね、周りから何を言われても関係ない! とだけは言えるんです」
神田「そうね、周りは関係ないよね。僕がお笑いを始めた理由って、死ぬ前に何をしておかないと後悔するかなって思い直した時に、浮かんだのがお笑いだったんですよ。自分の人生だから、他人は関係ないって思いましたもん」
──その思いが高じて〝天狗〟になったりはしませんか(笑)?
浜谷「いやいや、今はまだまだですよ。5~10年は忙しい状態が続かないと」
神田「僕は天狗になりやすい人間だと分かっているし、才能がないって気づいたんで大丈夫だと思います」
浜谷「才能のない天狗か?」
神田「新ジャンルだ(笑)。今は毎日が楽しいの連続だったらいいなってだけですね。僕、我慢ができない正直者なんで…」
──その性格は、ツイッターにも出てますよね。
神田「暴言を吐く人につい返事しちゃうアレですよね。浜谷がやってないから、浜谷への問い合わせも何件も来ますし」
浜谷「何でやってるの? 辞めりゃあいいじゃん」
神田「浜谷はね、この強気な姿勢でブログもツイッターもやらなくていい立場を勝ち取ったんですよ。マネージャーに怒られて更新した、僕が担当になっちゃったんです。もう、僕が告知しなかったら、誰が告知するのよ!」
──告知してること以外で挑戦したいことってありますか?
神田「舞台と小説を書いてみたいですね。お笑いで食えてるのが奇跡なんで、それ以外、今は脳みそが回らないです」
浜谷「僕は某体力勝負番組の攻略ですね。30歳を超えたぐらいで自分が本気を出せない性格だって気づいたんですけど今、『爆笑オンエアバトル』で負けて悔しかった時ぐらい、本気になってます」
取材終了後、着替えに席を立った神田さんと、インタビュールームでなぜかYシャツを脱ぎネクタイを外し、最後は白Tシャツ1枚になって話を続けてくれた浜谷さん。テレビや書籍と同様に、乙女キャラと熱血キレキャラの、好対照なお2人でした!
INFORMATION
書籍『下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え』
INFO
「THE MANZAI 2012」で、見事に優勝を勝ち獲ったハマカーン。彼らが00年の結成から、いくつもの挫折や衝突を経て、遂に「THE MANZAI 2012」で優勝を成し遂げるまでの軌跡を、双方のひとり語りをシンクロさせて綴った。神田伸一郎と浜谷健司それぞれが、独断と偏見で振り返った、あの日あの時の回顧…そこで浮き彫りとなったのは、恐ろしいまでの“意識のズレ”だった。コンビでありながら、あるいはコンビだからこその“意識のズレ”が、芸人特有の笑える視点を交えて描かれていく。そしてズレとズレのオンパレード中に、時として垣間見せる、“コンビにしか生まれない絆”に、ちょっとだけ感動。ともに苦労しともに苦悩し、同じ風景を見ていながらも、心がひとつになれない日々…。コンビでいる不安と安らぎを繰り返し、遂にブレイクするまでの日々を描く、芸人青春回顧録である。
著者/ハマカーン
ぴあ株式会社から好評発売中。1260円(税込)
PROFILE
ハマカーン
浜谷健司(はまたに・けんじ)
1977年11月19日生まれ 埼玉県出身
神田伸一郎(かんだ・しんいちろう)
1977年年3月12日生まれ 神奈川県出身
東京農工大の先輩・後輩として出会い、00年にコンビ結成。「THE MANZAI 2012」で優勝し、大ブレイク。現在はバラエティを中心に活躍中。本書が初の著書となる。フジテレビ「ハマ3」(月~木曜24時35分)、NHK Eテレ「高校講座 生物」(金曜14時40分)、BS朝日「テイバン.TV」(金曜23時)出演中。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」金曜日レポーター。8月2日から4日まで東京・品川のスクエア荏原ひらつかホールで行われる『FIRE HIP’S 第5回公演「こちら自由の丘学園?a part-time high school?」』に出演。「ハマカーン ネタベストDVD2013『KIWAMI』」は8月14日発売。
公式HP
書籍『下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え』
INFO
「THE MANZAI 2012」で、見事に優勝を勝ち獲ったハマカーン。彼らが00年の結成から、いくつもの挫折や衝突を経て、遂に「THE MANZAI 2012」で優勝を成し遂げるまでの軌跡を、双方のひとり語りをシンクロさせて綴った。神田伸一郎と浜谷健司それぞれが、独断と偏見で振り返った、あの日あの時の回顧…そこで浮き彫りとなったのは、恐ろしいまでの“意識のズレ”だった。コンビでありながら、あるいはコンビだからこその“意識のズレ”が、芸人特有の笑える視点を交えて描かれていく。そしてズレとズレのオンパレード中に、時として垣間見せる、“コンビにしか生まれない絆”に、ちょっとだけ感動。ともに苦労しともに苦悩し、同じ風景を見ていながらも、心がひとつになれない日々…。コンビでいる不安と安らぎを繰り返し、遂にブレイクするまでの日々を描く、芸人青春回顧録である。
著者/ハマカーン
ぴあ株式会社から好評発売中。1260円(税込)
PROFILE
ハマカーン
浜谷健司(はまたに・けんじ)
1977年11月19日生まれ 埼玉県出身
神田伸一郎(かんだ・しんいちろう)
1977年年3月12日生まれ 神奈川県出身
東京農工大の先輩・後輩として出会い、00年にコンビ結成。「THE MANZAI 2012」で優勝し、大ブレイク。現在はバラエティを中心に活躍中。本書が初の著書となる。フジテレビ「ハマ3」(月~木曜24時35分)、NHK Eテレ「高校講座 生物」(金曜14時40分)、BS朝日「テイバン.TV」(金曜23時)出演中。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」金曜日レポーター。8月2日から4日まで東京・品川のスクエア荏原ひらつかホールで行われる『FIRE HIP’S 第5回公演「こちら自由の丘学園?a part-time high school?」』に出演。「ハマカーン ネタベストDVD2013『KIWAMI』」は8月14日発売。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一