「足並みが揃わないことも多々ありましたが、野火(明)監督と亜紗美だからこそ織りなせた“不協和音”を楽しめる作品だと思います」
美貌でスタイル抜群な上にアクションもこなす芸能界でも稀有な女優、亜紗美さんが公開中の主演映画『ツングースカ・バタフライ―サキとマリの物語―』をもって女優業引退を表明。「こんなに面白い作品を残して女優を引退してしまうんですか!?」と聞くと、「有難うございます!逆に、そうおっしゃって頂けるからこそ引退できます」という彼女が本作に込めた思いと“現在地”とは──。
最後は大好きな韓国映画の
『アジョシ』の女性版で!
──引退を決意した理由は?「実は2~3年ほど前から、引退を視野に入れつつ活動を続けていました。高校を卒業後、フリーター生活を経て19歳でアダルト女優としてデビューしているので、この世界しか知らず、30歳をすぎた頃に人間的なスキルが足りないと感じたからです。芸能の世界しか知らないのに他の世界の住人を演じることに疑問を持った時期もありましたし、人間力を磨くためにも別の世界を見てみたくなりなり、引退を決めました。…と、キレイごとを言いましたが、単純に経済的に安定したかった、というのも理由であり本音です(笑)」
──現在は、正社員として働いているとか。
「休日が不定期のサービス業でOLをしていますが、正社員は生きやすいなぁ~と実感しています。感動したのは自営業と違い、保険証が紙ではなくカードだという事実です。近々引っ越しを考えているんですが、物件探しも超ラクです。今までは職業欄の『その他』に何と書けばいいのか分からなくて都度、不動産屋さんと相談していたんですけど『会社員』にはあらかじめチェック欄がありますし、審査もすぐ通って。念願だった安定を手に入れました!」
──(笑)仕事以外はどんな時間を送っているのでしょうか。
「引退作品の宣伝活動すべてを終えたら女優引退とSNSで公言しているので、取材を受けたりイベントに参加したりしています。命を懸けてでも守りたい、(愛猫の)ソボロと遊ぶ時間も増えました。独りで公園へ散歩に行く日もありますね。公園で一度、職質されましたけど(笑)1日に3回も職質された経験があるんです。警察官が私のカバンから持ち物を全部出したまま、『ご協力感謝します』と去っていくので『私は公共の場でタンポンまで出しました。協力に感謝はいらないので、せめて物をカバンにしまって下さい!』と怒ったこともあります」
──あはは!確かに。引退作のお話も。企画と立案もされていますが経緯は。
「亜紗美として最後の作品に出演するとしたら自分は何をしたいんだろうと考えた時に、大好きな韓国映画の『アジョシ』の女性版をやりたいと思ったんです。レスキュー作品の中で、孤独だけれど心が優しくて、芯の強い女性を演じたかった。大巨匠の黒澤明監督がおっしゃっていた『最高傑作は次回作』という言葉には私も同感なので、次がないから亜紗美に最高傑作はないんです。名言を言ってしまったかもしれません(笑)」
ラストはサキらしい愛情が
集約されていると思います
──映画『銀魂2』や『進撃の巨人』などで知られるアクション監督の田渕景也さんとは3度目のタッグでしたね。「田渕さんは大作を何本も抱えていて、こちら側は予算と時間がないので、断られる前提でお願いしたんです。そうしたら、『亜紗美が引退するのに俺が参加しないわけにいかないだろう』と、快く引き受けてくださって。田渕さんは、サキというキャラクターと亜紗美という人間像の数少ない理解者なんです。今の亜紗美が一番カッコよく、しびれる画にしてやる!という熱意が練習の時から伝わってきて、有り難くて何度か泣きそうになりました。プライベートの田渕さんは、おっぱい星人で『女体銃/GUN WOMAN』の頃から私の乳首に“ジュピター”“メトロポリタン”と命名するほどです。ただ、アクション面では絶大な信頼をおいていて、田渕さんが参加した時点でカッコイイ作品になることは決まっていたので、大船に乗ったつもりでアクションに没頭できました」
──では、好きなシーンは。
「定番で申し訳ないんですけど、外せないのがアクションシーンです。私が演じたサキが敵に追われる引きの場面は、実はiPhoneで撮影しています。カメラマンさんも一緒に走ってくれたからこそ出る一体感と、若干映像が荒い感じが好きなんです」
──個人的には、サキがカバンにレンガを積み込むシーンも好きです。
「あれを言ったら当たり前すぎると思って、我慢したのに(笑)私も大好きなので、好きになってもらえると一番、うれしいかもしれません。あのシーンは音楽も素晴らしいんです。友人でもある音楽ディレクターの印治正(Cjay)は、まだプロとしての活動をしていないんですが、何回も台本を読み込んでくれて、サキとマリ、マリの母親の気持ちすべてを汲み取って完璧に作り上げてくれました。音楽とアクションが見事に融合しているシーンだと思います」
──亜紗美さんが感じる本作の魅力を頂けますか。
「ぶっちゃけ言わせて頂きますと、今回は野火(明)監督との出だしが最悪だったんです。撮影中も何となく足並みが揃わないことが頻繁にありました。でも完成作を観たら、この作品は監督と亜紗美だからこそ織りなせた“不協和音”を楽しめる作品だと思います。どんな映画でも『面白くない』という人は一定層いますけど、耳障りで気持ち悪いけれど後を引く不協和音好きも必ずいると思うので。そしてできれば、私のことをご存知ない方にもご覧頂きたいです。『どういう映画でしたか?教えて下さい』と、逆に感想をお聞きしてみたいですね」
──有難うございます。最後にファンへメッセージをお願いします。
「未来は決めないで自由に生きていきたいし『また戻ってきます』と宣言して戻らなかったら嘘つきになってしまうので、ゴールは決めません。『いってらっしゃい』と、素敵な言葉で背中を押してくださる人たちのためにも中途半端なことはしたくないですし、応援してくださる方々は、私のこの考え方を理解してくれていると信じています。今まで亜紗美という、めちゃめちゃ運がいい女優を応援して頂き有難うございました!」
INFORMATION
■映画『ツングースカ・バタフライ ―サキとマリの物語―』 INFO&STORY
過去の過ちがばらされ勤め先の工場を自主解雇させられたサキ(亜紗美)はある日、コンビニで万引きをした少女・マリ(丁田凛美)を助ける。マリはシングルマザーの母歌子(加藤理恵)に阻害され、サキと同じように心と体に傷を負う少女だった。サキは彼女の純粋さに触れ、2人の間に友情が芽生えていく。そんな中、マリの母が特殊詐欺グループのボスの罠にはまってしまい、その毒牙は娘にまでも襲いかかろうとする。サキは封印した自身の過去を振り払い、怒りの反撃を開始する……。数々のアクション映画に出演した亜紗美の引退記念作品。
CAST&STAFF
出演/亜紗美・丁田凛美・加藤理恵・施鐘泰(JONTE)ら
監督/野火明 企画立案/亜紗美 原案/久保直樹 脚本/深澤浩子・野火明 エグゼクティブプロデューサー/久保直樹 プロデューサー/岡崎光洋 アクション監督/田渕景也
配給/マメゾウピクチャーズ
公式HP
12月14日(土)より渋谷ユーロスペース、12月21日(土)より名古屋シネマスコーレにてレイトショー
(C)2019 MAMEZO PICTURES, INC
■映画『ツングースカ・バタフライ ―サキとマリの物語―』 INFO&STORY
過去の過ちがばらされ勤め先の工場を自主解雇させられたサキ(亜紗美)はある日、コンビニで万引きをした少女・マリ(丁田凛美)を助ける。マリはシングルマザーの母歌子(加藤理恵)に阻害され、サキと同じように心と体に傷を負う少女だった。サキは彼女の純粋さに触れ、2人の間に友情が芽生えていく。そんな中、マリの母が特殊詐欺グループのボスの罠にはまってしまい、その毒牙は娘にまでも襲いかかろうとする。サキは封印した自身の過去を振り払い、怒りの反撃を開始する……。数々のアクション映画に出演した亜紗美の引退記念作品。
CAST&STAFF
出演/亜紗美・丁田凛美・加藤理恵・施鐘泰(JONTE)ら
監督/野火明 企画立案/亜紗美 原案/久保直樹 脚本/深澤浩子・野火明 エグゼクティブプロデューサー/久保直樹 プロデューサー/岡崎光洋 アクション監督/田渕景也
配給/マメゾウピクチャーズ
公式HP
12月14日(土)より渋谷ユーロスペース、12月21日(土)より名古屋シネマスコーレにてレイトショー
(C)2019 MAMEZO PICTURES, INC
PROFILE
亜紗美(あさみ)
1985年8月19日生まれ 東京都出身
グラビアでデビュー後、セクシー女優を経て女優へと転身。井口昇監督の映画『片腕マシンガール』で注目を浴びる。主な出演作は『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』『アイアンガール ULTIMATE WEAPON』『KARATEKILL/カラテ・キル』など。アメリカやヨーロッパのジャンルムービーファンの間でも熱狂的なファンを生む。
公式Twitter
亜紗美(あさみ)
1985年8月19日生まれ 東京都出身
グラビアでデビュー後、セクシー女優を経て女優へと転身。井口昇監督の映画『片腕マシンガール』で注目を浴びる。主な出演作は『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』『アイアンガール ULTIMATE WEAPON』『KARATEKILL/カラテ・キル』など。アメリカやヨーロッパのジャンルムービーファンの間でも熱狂的なファンを生む。
公式Twitter
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら