若手実力派俳優・森岡龍さんが、10月21日より全国順次公開の主演作『地の塩 山室軍平』を引っさげて、約1年ぶりに小誌へ凱旋。「実在の人物を演じるのは初めて」だと語る森岡さんに、作品や役柄に対する思い入れ、自身の仕事へのスタンスなどをうかがった。
役作りに禁欲まで実践!?
役者と宗教者の共通点は
──今回演じられた山室軍平は、明治期から戦前にかけて活躍された実在の宗教家。役作りはどのように?「僕自身、実在の人物を演じるのは初めての経験だったので、まずは軍平さんを知るところから始めました。資料やご本人の著書を読んだり、現在の救世軍の方にお話をうかがったり。恥ずかしながら、このお話をいただくまでは救世軍という組織のこともまったく知らなかったので、本当にイチから勉強させてもらった感じです」
──東條政利監督によると、「元々、そういう人なんだ」と思わせてしまうほど、初対面の時点で、すでに役に入りこんでいらっしゃったとか。
「自分ではそんなつもりはなかったんですけどね(笑)ただ、お芝居をするときは、いつ何時、どこからカメラを向けられてもその役でいられるようにしておきたいと常々思っているので、自然とそうなってしまった部分はあるかもしれません。実際、準備期間も合わせると1ヶ月半ぐらいは禁欲的な生活をしていました」
──それは、少しでも実際の山室軍平に近づこうという意図で?
「言っても映画なので、それらしく見えればいいんですけど、やっぱり宗教家ですから目に見えない精神みたいなものと向きあう必要もあるのかなって。だから、撮影中は俗世間から離れて、スマホやテレビには極力触れない生活。『禁酒の勧め』という本まで書かれている軍平さんにならって、終わるまでは禁酒も実践してました」
──ともすれば、洗礼まで受けてしまいそうなストイックさですね!
「洗礼名はペトロ・モリオカ……って、そこまではさすがにしなかったですけど、教会には通いましたよ」
──そうした経験を通して、ご自身の価値観に変化が起きたりも?
「これまでは冠婚葬祭ぐらいでしか宗教ってものを意識することはなかったんですけど、この作品に携わったことで、『世の中ってなんだろう』みたいなことを少し意識するようになりました。うまく言葉にできないですけど、人の心を動かすって部分では、お芝居も宗教も同じ。世の中の動きを敏感に感じとって、それを自分たちのアクションに反映させるっていうプロセスは、もしかしたら近いものがあるんじゃないのかなって」
役者・表現者として
常に敏感でありたいです
──では最後に、この作品を通して森岡さんが伝えたいメッセージを。「テーマが宗教って聞くと、少し取っつきにくいかもしれないですけど、この作品で描かれているのはあくまで、軍平さんという人のもつ人間力。ひとりの人がなにかを為そうとしたときに発する情熱やエネルギー、想いの強さから、ぜひなにかを感じとってもらえたらな、と思います」
──ちなみに、森岡さん自身にも想いの強さで周囲を動かした経験が?
「うーん、どうでしょう。学校の文化祭で、映画を撮ったときですかね。クラスのみんなが『たこ焼き屋でいいじゃん』みたいになってたところで、僕が『いや、撮るんだ』とか言って巻きこんじゃって(笑)」
──12年公開の『ニュータウンの青春』ではメガホンも。また、監督として作品を撮りたいですか。
「いまは本業である役者として、役にどれだけ向きあえるかってことしか頭にないです。ただ、この先もどんな形であれ、表現せざるをえない人であり続けたいとは思います。それが役者としてなのか、監督としてなのかはともかく、表現できる場所には常に立っていたいです」
INFORMATION
■映画『地の塩 山室軍平』
INFO&STORY
明治5年、岡山の貧しい農家に生まれ、勉強したい思いから15歳で養子先の家を飛び出して上京した山室軍平。そこでキリスト教の救済の精神を知った軍平は新島襄の同志社で学ぶために京都へ向かい、同志社神学校に入学。その後、救世軍に参加し、日本人初の救世軍士官となる。世の苦しむ人たちのために戦うことを決意した軍平は、娼妓自由廃業運動をスタートさせる。社会鍋といった慈善活動を行う日本救世軍の創設者で、社会福祉の先駆者として知られる山室軍平の生涯を描いた。
CAST&STAFF
出演/森岡龍・我妻三輪子・辰巳琢郎・伊嵜充則・水澤紳吾・小柳心・芹澤興人・兒玉宣勝・おかやまはじめ・堀内正美・渡辺梓ほか
監督/東條政利 脚本/我妻正義・東條政利 配給/アルゴ・ピクチャーズ
公式HP
10月21日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(C)山室軍平の映画を作る会
PROFILE
森岡龍(もりおか・りゅう)
1988年2月15日生まれ 東京都出身
04年に『茶の味』で映画デビュー。近年の映画出演作は『エミアビのはじまりとはじまり』『ろんぐ・ぐっどばい~探偵 古井栗之助~』『密使と番人』『望郷』など。また、『名人長二』で初舞台を踏むなど活躍の場を広げている。最新作『最低。』は11月25日公開。
公式Twitter
■映画『地の塩 山室軍平』
INFO&STORY
明治5年、岡山の貧しい農家に生まれ、勉強したい思いから15歳で養子先の家を飛び出して上京した山室軍平。そこでキリスト教の救済の精神を知った軍平は新島襄の同志社で学ぶために京都へ向かい、同志社神学校に入学。その後、救世軍に参加し、日本人初の救世軍士官となる。世の苦しむ人たちのために戦うことを決意した軍平は、娼妓自由廃業運動をスタートさせる。社会鍋といった慈善活動を行う日本救世軍の創設者で、社会福祉の先駆者として知られる山室軍平の生涯を描いた。
CAST&STAFF
出演/森岡龍・我妻三輪子・辰巳琢郎・伊嵜充則・水澤紳吾・小柳心・芹澤興人・兒玉宣勝・おかやまはじめ・堀内正美・渡辺梓ほか
監督/東條政利 脚本/我妻正義・東條政利 配給/アルゴ・ピクチャーズ
公式HP
10月21日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(C)山室軍平の映画を作る会
PROFILE
森岡龍(もりおか・りゅう)
1988年2月15日生まれ 東京都出身
04年に『茶の味』で映画デビュー。近年の映画出演作は『エミアビのはじまりとはじまり』『ろんぐ・ぐっどばい~探偵 古井栗之助~』『密使と番人』『望郷』など。また、『名人長二』で初舞台を踏むなど活躍の場を広げている。最新作『最低。』は11月25日公開。
公式Twitter
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎鈴木長月