メジャーを拒否し続けたのに、メジャーが追っ掛けてきたのは音楽家冥利に尽きる
プロ野球ファンであれば一度はオリックス・バファローズの球団歌『SKY』を耳にしたことがあるだろう。大阪を拠点に活動するバンドMEGASTOPPERのメンバーとして『SKY』の制作を手掛け、今でも歌い続けているのがヴォーカル&ベーシストのDOMIさんだ。「ドカント読者に言いたい」というDOMIさんが『SKY』前後に起きた自身の経験と今後のプランについて熱く語ってくれた。
「貯めた金で夢を追え」お金は夢のために使うべき
──DOMIさんは音楽で食べていくという夢を持っていろんな仕事をされて来たそうですが、具体的にどのような仕事をされて来たんですか?
「『SKY』の前から話すと最初はアパレルの倉庫の仕事をしていたんですが、もっと長く働けるガソリンスタンドに移りました。もう時効ですから話しますけど、バイクで無茶な運転をしてベンツに当てる事故を起こしたんです(笑)それで数百万円の賠償を背負うことになりまして。ガソリンスタンドを辞めずに深夜から早朝まで時給がいい弁当屋で働きました。ホント必死でしたからね。時間を切り売りしても単価が安かったら意味がない。こんな状態になったら普通ミュージシャンは辞めると思うんです(笑)週5日は21時間バイトをして睡眠時間は2時間。目覚ましは1時間半でCDが流れるようにセットしてたんですけど、変えるのも面倒くさいので、ジッタリンジンの同じ曲が毎日流れるからあの曲がどんだけ嫌いになったか(笑)でも俺はこんなことで音楽を辞めてたまるかって思ったんですよね。残りの2日間を音楽活動に充ててたんですけど、あの頃は楽しかったですね」
──数百万円はどれぐらいで作れたんですか?
「1ヶ月に稼げるだけ稼いで、生活費なんかも切り詰めて5ヶ月で作りました。そのお金を払いに行った時、被害者の上司に『そんなエネルギーがあるヤツ見たことないから幹部候補でウチに来い』って言われたんですよ(笑)夢があるんで行けませんとお断りしたら『ここまで出来るバイタリティがあるなら、お前がもうダメだと思う日まで今の生活を続けろ。そこで貯めた金でお前の夢を追え。賠償金のためにここまで出来たんだから、夢のためなら倍は出来るやろ』と言われて、最もだなと。それでお金に対する価値観が変わりましたね。稼いで贅沢をするんじゃなくて自分に投資しようと。その後、2ヶ月続けました」
──そして『SKY』がオリックス・バファローズの球団歌に選ばれたわけですが『SKY』が世に出て何が変わりましたか。
「『SKY』を作った事で、初めて音楽でまとまったお金が入って来るんですが。これまでは時間と労力とエネルギーを切り売りして稼ぐことしか考えてなかったのが、今度はバンド資金を運用する意識に変わったんです。バンド資金を使ってバンドを大きくしていこうと。MEGASTOPPERの軍資金が入ったことで、価値観は180度変わりましたね。お金への価値観も稼ぐより増やすものだと思うようになりました。このお金がなくなったら終わりですって引退までの線引きをされたように感じましたね」
──MEGASTOPPERは18年も続けられてるんですよね。
「メジャーレーベルと契約しなくても生きていけるという一つの試験例だと思います。インディーズと言えばそれまでなんですが、俺流の言い方だと、『大人に叱られないバンドのあり方』をやってるんだと思いますね(笑)また『SKY』は、みんなにそれぞれの『SKY』があると思うんですが、コアな野球ファンの中にはオリジナル以外の『SKY』を許さないって傾向になって来てるのも事実なんです。しかし現実にBsGirlsが歌ってくれたことでメジャーのエイベックスさんからCDが出たというのは、俺らからすれば大成功なんですよ。メジャーを拒み続けた俺らの楽曲を、メジャーから追っ掛けてくれたんですから(笑)これは音楽家冥利に尽きますよね」
──今年は新しいプロジェクトとして『GRATIA』という音楽ライブと時代劇を融合させた舞台を立ち上げられましたが?
「以前『Bs大坂夏の陣』で、ゴーヤ(当時存在した非公式マスコット)が『一、二、真田幸村』になった時に殺陣の方と仲良くなって、そこからなかなか実現に至らなかったんですけど、やっと機が熟したかなと。何がやりたいねん?とよく言われるんですけど、これはひとつのテーゼなんですよね。『SKY』がキッカケで音楽家が野球ファンに認めてもらったわけじゃないですか。今度は野球以外でもこんなに面白いものがあるんだよというのを野球ファンや関西の人たちに提供したかったんです。関西は阪神、吉本、USJが強すぎるので、こちらから外に出向いて行こうと。あと逆説的にBsGirlsを卒業したメンバーの受け皿になれたらいいなという思いもありました。『GRATIA』という戦国時代を舞台にした大阪発の新しいエンターテイメントバラエティライブのパイオニアになりたいんですよ。最初にやった姫路公演の反響が凄かったので、オリックスファンはもちろん、全国の皆さんに観て頂きたいですね」
【INFORMATION】
「GRATIA SANADA 10 Mighty EPISODE ZERO 大阪公演」
日程/11月24日、25日(25日は2回公演)
会場/大阪・住之江区オスカーホール
公式HP
PROFILE
DOMI(MEGASTOPPER)
ヴォーカリスト、ベーシスト、ソングライター。99年にMEGASTOPPERを結成。以降、関西を中心に音楽活動を続ける傍ら、イベントMCやディレクターなど活動の場を音楽以外にも拡大。今年の3月から『文春野球ペナントレース』のオリックス担当としてライターデビュー。独特な観点の記事が注目を集めている。
公式Twitter
「GRATIA SANADA 10 Mighty EPISODE ZERO 大阪公演」
日程/11月24日、25日(25日は2回公演)
会場/大阪・住之江区オスカーホール
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DOMI(MEGASTOPPER)
ヴォーカリスト、ベーシスト、ソングライター。99年にMEGASTOPPERを結成。以降、関西を中心に音楽活動を続ける傍ら、イベントMCやディレクターなど活動の場を音楽以外にも拡大。今年の3月から『文春野球ペナントレース』のオリックス担当としてライターデビュー。独特な観点の記事が注目を集めている。
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取材・文/どら増田