ワケありの25億円を25人の悪党が強奪し合い、結果登場人物の致死率99%という映画『25 NIJYU-GO』が11月1日に“狂宴”。主演を務めたのはパイセンインタビュー2度目の登場となるこの人、哀川翔さん。東映Vシネマ25周年記念作品となる本作ではコワモテの悪徳刑事を演じていますが、普段はバラエティ番組で見せる顔と同様の気さくなアニキなのです。「小沢(仁志)以下の後輩たちとはよく飲みに行くし、Vシネマに深入りしてるよ、俺は」と語る、Vシネマへの思いのほかに、読者へのアドバイスも頂いてきました!
“Vシネマの帝王”と言えばこの男・哀川翔さん! 11月1日公開の主演作『25 NIJYU-GO』で悪徳刑事・桜井を演じ、何でもアリの黒社会で縦横無尽に暴れ回っている。東映Vシネマが誕生してから25年、ともに歩んで来た男が、Vシネマデビュー作の秘話から打ち上げでのエピソード、仕事観まで熱く語る!
Vシネマがなかったら今頃どこにすっ飛んでたか分かんないね(笑)
──哀川さんは高橋伴明監督に見出されて『ネオチンピラ/鉄砲玉ぴゅ~』(90年)に主演したのがVシネマ出演のきっかけでしたよね。「25年前の東映Vシネマのラインナップって、メジャーどころばっかりですごかったのよ。その中にド新人の俺が載ったわけだから、最初は誰1人当たるとは思わなかった。でも、自分で作品を観てよし! と思えれば悔いはないし、フタを開けたら大ヒットだったから、結果オーライだったんだよね。『ぴゅ~』の原作の安部譲二さんにも、『チンピラをやらせたらナンバーワンだ』って言われたよ」
──主演に起用された理由は、俳優としての実績ではなかったとか。
「そうなんだよ。伴明さんが主役を選ぶ時に『今、六本木で一番元気なのは誰だ』と聞いて回って、『哀川翔だろう』っていう話になったっていう(笑)」
──光GENJIの諸星(和己)さんらと一緒にいた時に暴走族に囲まれて、諸星さんをかばって表に出た話は有名ですよね。
「バイク50台ぐらい並んでる中に諸星が出てきたら、大変な騒ぎになっちゃうでしょう。俺が『もう帰ったほうがいいよ、君たちは』って言ったら、ビシッと収まったからね。一世風靡セピアの頃は、知らない暴走族に送ってもらったことがあるから、全然平気だった。朝方に止めて、『ちょっと家まで送ってよ』って(笑)」
──(笑)そのやんちゃな経験を活かしたからこそ『ぴゅ~』も大ヒットして、Vシネマへの出演が怒涛のごとく増えたんですね。
「最高で主演10本、助演12本やって、年間で320日現場にいたこともあったからね。今考えると、そこまでやることないとも思うんだけど(笑)当時はどこまでできるか限界に挑戦したいって気持ちがあったんだよね」
──その過去があるからこそ「Vシネマがなかったら俺なんか今、何やってたか分かんない」と言えると。
「Vシネマの歴史がスタートした時から一緒に歩んで来て、出演作が40本を超えてるからね。年間10万本を売った頃に2年連続でVシネマ大賞をもらったこともあったしね。大賞の商品にロレックスか何かをもらって、『こんなのもらっちゃった』と先輩に言ったら『そんなので騙されるなよ』って言われたこともあったけど(笑)でも、Vシネマっていう存在が、俺が自分の職業を俳優と名乗ることを成立させてくれたのは間違いないね。じゃなきゃ今頃、どこにすっ飛んでたか分かんない(笑)」
──そして実績を積み重ねて“Vシネマの帝王”と呼ばれるに至り、東映Vシネマ25周年記念作でもある本作の『25 NIJYUーGO』では主演を張ったわけですが。
「いやあ、今回のドンパチは、やるだけやろうって全員決めてやったから、ものすごいよ。男同士の抗争があって、女の人はちょっとしか出てなくて、中盤と最後にドンパチがあるっていう、Vシネマ王道の形は変わってないけど、過去最大級ってぐらいすごい。撮るほうは大変だけど、観る側は面白いよ、確実に」
──特にラストは壮絶でした。
「あの倉庫の中、ハンパなく暑かったんだよね。40度ぐらいはあったんじゃないかな。みんな外に出ないで部屋で涼んでんのに、俺たちスーツ着込んで何やってんの? みたいに感じる瞬間もあったよねぇ(笑)それでも夏バテしないで爽快に過ごせたから、人間、慣れると怖いなって(笑)」
打ち上げでは年中確実にケンカすげー盛り上がって面白いよ!
──慣れと言えば、1日で100カット分撮影する日も珍しくないとか。慣れたもんですか。「やっぱり長年やってきてるから、いかに速く撮るかっていうVシネマのスタイルには慣れたって聞かれたら、慣れたよね。監督が覚えてないぐらいのカット数を撮影するわけだから、油断すると“透明人間”になっちゃうわけ。さっきまで一斗缶の裏に隠れてたのに、何で次はバスの横から出てくるんだよとか、つなぎがおかしくなる。だから、そこにたどり着くまでのアクションを自分で考えて一発入れておかないと、えらいことになるんだよ。つなぎをたくさん考えなくちゃいけないのが、対相手と自分しかいないパターン。今回は、俺たち警察とヤクザ、チャイニーズと半グレの“四つ巴”だったから、少し楽だったけどね」
──キャストのみなさんが自分なりの工夫をすることで、あんなにリアリティ溢れるケンカシーンが完成するんですね。
「テレビでも映画でもできないことをやるのが、Vシネマのテーマだからね。ただね、一時期よりも今はちょっと緩いけど、今のテレビは昔のエグさに比べると、規制が厳しいでしょう。Vシネマみたいな暴力的なシーンも含めて何に対しても規制をかけようとするけど、暴力が絶対にダメなのかっていうと、それもある程度ないと、社会が狂ってくるところがあるような気がするんだよね。一概に全部ダメとは言えないと思う。何かを規制すれば、それに台頭する別のワルが出てくるわけだし」
──そういう意味で“ガス抜き”的な役割も果たすと。
「そうそう。素手で戦うVシネマを観ると、やられるほうも痛いけど、やるほうも痛いっていう、痛み分けをしてるのが分かるでしょ。その感覚を理解するってすごく大事なこと。生き物同士のつき合いって、簡単じゃないんだよね。若い人の中には『死んだらリセットすればいいんじゃない?』ってゲーム感覚の人もいるって聞いて驚いたことがあるんだけど、死んだらリセットできないから(笑)一度死んだら次はないよっていうのは、仕事をすぐに辞めちゃうこととも同じだよね」
──確かに、すぐに仕事を辞める若い世代が増えていると聞きます。
「辞めたら“1”じゃなくて“ゼロ”に戻っちゃうんだから、もったいないよね。途中で辞めちゃダメよ。努力が水の泡になる。辞めたいって考えてる人が今、どのステージにいるか分かんないけど、だいたい第2、第3ステージあたりになると、面倒くさくなったりメゲて辞めたくなるんじゃない? そりゃあ、仕事をある程度覚えれば面倒くさくもなるし、そのステージぐらいじゃ大した仕事もさせてもらえないからさ、辞めたくなるかもしれないけど、辞めたいってその発想が怠け者だよね。ワガママもいいところだよ」
──哀川さんだって、苦手なセリフ覚えを頑張っていますもんね。
「実は、きちんとやってないんだけどね(笑)台本を台本のまま覚えろって監督はあんまりいないし、何を言ってるか、やってるかをちゃんと伝えることが映像だと思うから。たまに『一度にこんなに感情を吐かないだろ』ってセリフもあるから、そこは自分なりにアレンジして分けたりもするけど」
──なるほど。ところでVシネマは打ち上げでも必ずケンカが勃発するそうですが。
「年中、確実にケンカだもんねぇ。気づいたら『表出ろコノヤロー!』みたいになってて、すごいから。でもそれって、相当仲がいい証拠なんだよ。だって本気で嫌い合ってたら、打ち上げにはまず来ないよね(笑)みんな、今日はやってやる! って気持ちで参加してる」
──ちなみに今回の打ち上げは?
「挨拶を任されたヤツが難しいことを言おうとした時に、『つまんないからやめろ!』『しゃべってないで歌、歌え!』ってヤジが飛んで、すげー盛り上がった」
──哀川さんはケンカは?
「50歳過ぎてから、さすがにしなくなったよね(笑)俺もそういう年になったってことかな」
「仕事を辞めたいって言ってるヤツに何を言っても無駄」と言いながらも結局、映画と絡めて読者に親切なアドバイスもして頂きました。ありがとうございました!
INFORMATION
映画『25 NIJYU-GO』
INFO&STORY
半グレ集団から金を巻き上げ着服するなど、やりたい放題の悪徳刑事・桜井慎太郎と日影光一は、押収した金の行方が警察内で問題となり、翌朝までに250万円を提出するよう署長に命令される。困った2人は、巨額年金横領事件のニュースを知り、容疑者の九十九信夫に目を付ける。九十九は横領した金の大半を使いこんでいたが、まだ手元に25億円が残っていたが…。東映Vシネマ25周年を記念して製作された作品で、哀川翔を主演に、黒社会の全面抗争を描いたバイオレンスアクション。
CAST&STAFF
出演/哀川翔・寺島進・温水洋一・高岡早紀・小沢仁志・小沢和義・波岡一喜・井上正大・鈴木砂羽・笹野高史・嶋田久作・中村昌也・金子昇・本宮泰風・木村祐一・木下隆行(TKO)・ブラザートム・初音映莉子・工藤俊作・菅田俊・岩佐真悠子・袴田吉彦・竹中直人・石橋蓮司・大杉漣ら
監督/鹿島勤
脚本/柏原寛司・大川俊道・岡芳郎・ハセベバクシンオー
配給/東映ビデオ
公式HP
11月1日(土)より全国ロードショー
(C)2014 東映ビデオ
PROFILE
哀川 翔(あいかわ・しょう)
1961年5月24日生まれ 鹿児島県出身
84年に一世風靡セピアの一員として「前略、道の上より」でレコードデビュー。88年のTBSドラマ「とんぼ」や89年公開の映画「オルゴール」での新人らしからぬ存在感が認められ、俳優として一躍脚光を浴びる。90年、東映のVシネマ「ネオチンピラ/鉄砲玉ぴゅ~」(高橋伴明監督)が大ヒット。以降、「とられてたまるか」「ろくでなし」「極楽とんぼ」などヒットシリーズを生む。映画デビューは、88年の「この胸のときめきを」。91年、「獅子王たちの夏」で破滅的なアウトローを熱演しヒット。「勝手にしやがれ!!」「修羅がゆく」「借王<シャッキング>」などが人気を博し“Vシネマの帝王”に君臨。04年公開の「ゼブラーマン」で映画・ビデオ映画の主演は100本に達し、05年には同作で「第28回日本アカデミー賞」優秀主演男優賞を受賞した。公開待機作に「Zアイランド(仮題)」品川ヒロシ監督)などがある。
公式HP
映画『25 NIJYU-GO』
INFO&STORY
半グレ集団から金を巻き上げ着服するなど、やりたい放題の悪徳刑事・桜井慎太郎と日影光一は、押収した金の行方が警察内で問題となり、翌朝までに250万円を提出するよう署長に命令される。困った2人は、巨額年金横領事件のニュースを知り、容疑者の九十九信夫に目を付ける。九十九は横領した金の大半を使いこんでいたが、まだ手元に25億円が残っていたが…。東映Vシネマ25周年を記念して製作された作品で、哀川翔を主演に、黒社会の全面抗争を描いたバイオレンスアクション。
CAST&STAFF
出演/哀川翔・寺島進・温水洋一・高岡早紀・小沢仁志・小沢和義・波岡一喜・井上正大・鈴木砂羽・笹野高史・嶋田久作・中村昌也・金子昇・本宮泰風・木村祐一・木下隆行(TKO)・ブラザートム・初音映莉子・工藤俊作・菅田俊・岩佐真悠子・袴田吉彦・竹中直人・石橋蓮司・大杉漣ら
監督/鹿島勤
脚本/柏原寛司・大川俊道・岡芳郎・ハセベバクシンオー
配給/東映ビデオ
公式HP
11月1日(土)より全国ロードショー
(C)2014 東映ビデオ
PROFILE
哀川 翔(あいかわ・しょう)
1961年5月24日生まれ 鹿児島県出身
84年に一世風靡セピアの一員として「前略、道の上より」でレコードデビュー。88年のTBSドラマ「とんぼ」や89年公開の映画「オルゴール」での新人らしからぬ存在感が認められ、俳優として一躍脚光を浴びる。90年、東映のVシネマ「ネオチンピラ/鉄砲玉ぴゅ~」(高橋伴明監督)が大ヒット。以降、「とられてたまるか」「ろくでなし」「極楽とんぼ」などヒットシリーズを生む。映画デビューは、88年の「この胸のときめきを」。91年、「獅子王たちの夏」で破滅的なアウトローを熱演しヒット。「勝手にしやがれ!!」「修羅がゆく」「借王<シャッキング>」などが人気を博し“Vシネマの帝王”に君臨。04年公開の「ゼブラーマン」で映画・ビデオ映画の主演は100本に達し、05年には同作で「第28回日本アカデミー賞」優秀主演男優賞を受賞した。公開待機作に「Zアイランド(仮題)」品川ヒロシ監督)などがある。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一