「判断基準は現場でウケるかどうか。『客にウケれば何をやってもいいのか!?』っていう人がいたら、僕は『そうです!』と答えます。プロレスはショービジネスですから」
世界的写真家レスリー・キー撮影のヌード写真集、ドン・キホーテによる公式ドリンク、ミッフィーとのコラボTシャツ、さらに大槻ケンヂ、坂口憲二、ウルトラセブン、新旧アイドル=アップアップガールズ(仮)、LinQ、しず風&絆、新田恵利までが集結する一大コラボイベントがこの夏、開催される。しかも、それはプロレスの大会!! 多彩なアイディアで〝文化系プロレス〟とも呼ばれる団体DDTが両国国技館大会2days(8月17日・18日)を敢行。地上波中継のないインディー団体は、いかにしてここまで成長を遂げたのか。その立役者である社長にして看板レスラー高木三四郎〝大社長〟に、運営手法とエンタメ論を聞いた。
DDTプロレスは、個性あふれる選手たちが数多く所属し、常に観客を楽しませ続けている団体だ。高度な空中殺法が飛び交い、ゲイレスラーは対戦相手の股間を狙い続け、時には無機物がチャンピオンベルトを巻く(現在のアイアンマンヘビーメタル級王者は美輪明宏さんの手による書『光明』)。路上やキャンプ場、本屋、遊園地でリングなしの試合を行うことも。いったい、何がどうなるとここまでバラエティ豊かになるのか。年に一度の大勝負、両国大会を前に、高木大社長が語ったDDTイズムとはー。
「両国大会ではアイドルも試合をします。アップアップガールズ(仮)さん、LinQさん、しず風&絆さんという旬のアイドルにレジェンドの新田恵利さんが加わる。これ、アイドルのイベントでは逆にやらないですよね(笑)」
僕らがやっていることを世間に届かせたい。そうしないとプロレスが伝統芸能になってしまう
──いよいよ両国2デイズが近づいてきました。16年前、たった3人で旗揚げしたインディー団体がどんどん成長してますね。「毎年、何かステップアップしたいと思ってるんですよ。昨年、15周年で日本武道館大会をやったんですけど、そこで〝一区切り〟だと思われちゃうのが嫌で。だったら両国で二日間はどうだろうって。攻めの姿勢を崩さないぞと」
──今年の両国はゲスト、コラボ企画も話題ですね。写真集にドリンクにアイドルに…。よくここまで実現できたなと思います。
「実を言うと、最初の構想の30%しか実現してないんですけど(笑)。動いてるうちにこうなったっていう感じですね。不思議なもんで、動いてるとあちこち人脈ができたり、周りからアイディアが出てきたりする。今の時代、待ってても何も始まらないですよ」
──昔から、プロレスファンは異業種と絡むのを嫌う風潮があるような気がします。80年代にはビートたけしさんの『たけしプロレス軍団(TPG)』ですら嫌われてましたから。でもDDTには、そんなムードがないですよね。
「僕らが好きでやってるからじゃないですかね。それと、自分たちのプロレスに絶対的な自信があるので。どんなジャンルの人、どんなキャラクターが出てきても、最終的には僕らが飲み込んじゃえると思ってるんですよ」
──誰が来ても〝DDTワールド〟は揺るがないと。
「それに、プロレスでしかできないこともある。初日のアイドル4WAYランバージャックマッチ(アイドルがリングから転落したレスラーに〝公認凶器〟として攻撃する)には、アップアップガールズ(仮)さん、LinQさん、しず風&絆さんという旬のアイドルにレジェンドの新田恵利さんが加わる。これ、アイドルのイベントではやらないですよね(笑)」
──確かに、新田恵利さんは東京アイドルフェスティバルには出ませんよね(笑)。それにしても、プー・ルイさん(BiS)と福田洋選手の金的攻撃ありマッチも含め、アイドルがここまで試合に絡むとは予想してませんでした。
「変な表現かもしれませんが、プロレスという料理の中でアイドルという素材を活かしきる自信があるんです。ただゲストで来ました、歌いましただけでは意味がないですし。大槻ケンヂさんに選手の入場曲を生で歌ってもらったり、ゲストの方には全員、何らかの形で試合に絡んでもらいます」
──両国大会では、DDTが手掛ける別団体『東京女子プロレス』の試合もあります。所属は新人の練習生だけ。これまではライブハウスにマットを敷いて闘い、しかもアイドルのライブもあるという異色のイベントで話題を呼びました。
「女子をやる気はなかったんですけどね。女子プロレスラーは我が強いし、ひと言でいうとめんどくさい(笑)。でも、まっさらな新人にウチのやり方を一から教えるやり方ならいけるかなと。アイドルのライブと一緒にやるのは、観客動員もあるんですけどジャンルとして似た部分も大きいです。プロレスもアイドルも、ファンが成長を見守る、長く見て歴史を共有するという楽しみがある」
──これだけバラエティに富んだ大会の中で、メインは両日とも〝純血〟の試合ですね。初日が飯伏幸太VS男色ディーノ、二日目もダブルメインの一つが入江茂弘VSHARASHIMAの無差別級タイトルマッチと。
「やっぱり最後は団体最高峰のチャンピオンシップですよね。初日のメインに関しては、今のDDTで誰が世間に届いてるかっていったら、圧倒的に飯伏とディーノなんですよ。なら、その二人で試合するのが一番いいだろうと(笑)。初日はアイドルのファンだったり、プロレスファン以外の人もたくさん来るはず。そういう人たちに楽しんでもらうにはうってつけでしょう。言ってみれば世間に打ち出すためのカード。二人が持っているものを出してくれれば、誰が見ても楽しいし、凄いと思える試合になりますよ」
──天才的な技術と身体能力がある飯伏選手、ゲイレスラーとして会場を確実に沸かせるディーノ選手を筆頭に、DDTは個性の宝庫ですよね。現役高校生の竹下幸之助選手もいれば、ゴージャス松野さんまでいるという。人材育成のポイントはどこにあるんですか?
「大事なのは素ですね。変にキャラクターをくっつけても〝やらされてる感〟が出ちゃうんですよ。普段、接している中で、その選手がどういう人間か分かるのでリングではそれを活かすシチュエーションを作ってあげればいい。たとえば中澤マイケルという選手は、ホントにダメ人間なんですよ。30歳になってからプロレスラーを目指すだけでもどうかしてるんですけど、練習生時代に他団体に履歴書送ったりとか。普通クビですよ(笑)。でも、そのダメ人間っぷりをリングでも活かしたらウケたんですよね」
──団体の顔である飯伏選手にしても、ハイレベルなプロレスをやりながらもこう、相当に…。
「変な子でしょ(笑)。僕も知らないような、どインディーの団体が好きだっていうんで売り出し中の時期だけどあえて出したこともあるんですよ。そういえば彼は、アメリカ遠征中、会社に内緒で試合したことがあって」
──自由ですねぇ(笑)。
「それもライブハウスで、リングのないところで試合って。『ふざけんな!』って話なんですけど、映像を見てみたら面白いんですよ。それがヒントになって、僕が本を出した時の本屋プロレスっていうイベントにつながったんです。本屋プロレスとかキャンプ場プロレス、花やしきプロレスといろんなところで試合しましたけど、リングのないプロレスもお客さんに喜んでもらえるし、プロレス業界の外に届くんですよね」
──お客さんが喜ぶこと、世間に届くことが第一ですよね。
「何をやるにしても、最終的な判断基準は現場でウケるかどうかです。『客にウケれば何をやってもいいのか!?』っていう人がいたら、僕は『そうです』と答えますね。プロレスはショービジネスですから。僕らはお客さんが楽しんでくれて、チケットを買ってくれなかったら生活できない。ウチがやってることを嫌いな人もいると思うんですけど、世間に届かせたいんですよ。そうしないとプロレスが伝統芸能になってしまう」
──世間に届かせるという意味では、DDTは2017年、旗揚げ20周年の東京ドーム大会開催も宣言していますね。
「もう動いてますよ。今回の両国も、その軌跡の一つだと思ってます。最初に両国でやった時に、業界内では『両国? 一回こっきりで終わるよ。あとは下り坂になる』と言われてたんですよね。それが悔しくて、大会中に翌年の両国大会を発表したんです。お客さんに未来を見せたかったんですよね。東京ドームも同じです。でもこれ、企業ならどこでもやってるんですよ。5カ年、10カ年の中期計画を出すっていうね。僕も企業家としてそれをやったんです。もちろんレスラーとしても、ドームのリングに立ちたいですね」
DDTを成功に導いたのは、プロレス界の常識に囚われない高木大社長の感性だった。それは、ショービジネスとして世間と勝負するという、いたって真っ当な感性でもある。なんだか怖そうなイメージもあるプロレスラーだが、大社長は腰が低く、ごくごく普通の感覚で話ができる人。両国2デイズから東京ドームへ〝文化系プロレス〟の世間との闘いは続く。
INFORMATION
プロレス『DDTプロレスリング両国国技館大会』
INFO
8月17、18日に東京・両国国技館で「DDT万博~プロレスの進歩と調和~」「両国ピーターパン2013 ~プロレスの傾向と対策~」と題した大会を開催する。17日にはレスラーだけでなく、アーティストやアイドル、タレントなどが登場。プロレスの試合を軸にしながらもエンタテインメント性の強い内容になる予定だ。
「DDT万博~プロレスの進歩と調和~」
▼メインイベント:男色ディーノ vs 飯伏幸太
<総合司会>山里亮太(南海キャンディーズ)・三田佐代子
日時/8月17日(土)15時から(開場13時30分)
場所/東京・両国国技館
「両国ピーターパン2013~プロレスの傾向と対策~」
▼ダブルメインイベント:
入江茂弘 vs HARASHIMA
飯伏幸太 vs オカダ・カズチカ
日時/8月18日(日)14時から(開場12時30分)
場所/東京・両国国技館
PROFILE
高木三四郎(たかぎ・さんしろう)
1970年1月13日生まれ 大阪府出身
プロレスラーで、DDTプロレスリング代表取締役社長。95年2月、デビュー。96年にPWCへ移籍するも、すぐにフリーとなる。97年にエンターテインメントプロレス団体DDT(Dramatic Dream Team)プロレスリングの旗揚げに参加、以降エースとして団体を盛り上げる。06年1月にDDTの社長に就任。文化系の発想を基に、情報を発信し続けることによって、団体の知名度と規模を拡げることに成功。飲食店経営にも乗り出すなど、業界屈指のアイディアマンとしても知られる。
公式ブログ
公式Twitter
プロレス『DDTプロレスリング両国国技館大会』
INFO
8月17、18日に東京・両国国技館で「DDT万博~プロレスの進歩と調和~」「両国ピーターパン2013 ~プロレスの傾向と対策~」と題した大会を開催する。17日にはレスラーだけでなく、アーティストやアイドル、タレントなどが登場。プロレスの試合を軸にしながらもエンタテインメント性の強い内容になる予定だ。
「DDT万博~プロレスの進歩と調和~」
▼メインイベント:男色ディーノ vs 飯伏幸太
<総合司会>山里亮太(南海キャンディーズ)・三田佐代子
日時/8月17日(土)15時から(開場13時30分)
場所/東京・両国国技館
「両国ピーターパン2013~プロレスの傾向と対策~」
▼ダブルメインイベント:
入江茂弘 vs HARASHIMA
飯伏幸太 vs オカダ・カズチカ
日時/8月18日(日)14時から(開場12時30分)
場所/東京・両国国技館
PROFILE
高木三四郎(たかぎ・さんしろう)
1970年1月13日生まれ 大阪府出身
プロレスラーで、DDTプロレスリング代表取締役社長。95年2月、デビュー。96年にPWCへ移籍するも、すぐにフリーとなる。97年にエンターテインメントプロレス団体DDT(Dramatic Dream Team)プロレスリングの旗揚げに参加、以降エースとして団体を盛り上げる。06年1月にDDTの社長に就任。文化系の発想を基に、情報を発信し続けることによって、団体の知名度と規模を拡げることに成功。飲食店経営にも乗り出すなど、業界屈指のアイディアマンとしても知られる。
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Interview&Text/橋本宗洋 Photo/おおえき寿一