国際派俳優、武道家であり、ボランティア活動でも活躍する藤岡弘、氏が本誌二度目の登場。今回の東日本大震災という緊急事態を受けて、「日本人ひとりひとりがサムライ魂と底力を発揮せよ!」と、力強いエールを送ってくれた。両親から武士道精神を叩き込まれた、正統派リアル・ラストサムライからの声をしっかりと頭に刻み込むべし!!
生かされた我々が大和魂で難局を乗り越えて行くべき
東日本大震災の被災地である宮城県石巻市と縁の深い藤岡弘、さんに緊急独占取材! 前を向いて一歩踏み出せるような、力強いメッセージを頂いてきました!!──今回の大震災に関して、藤岡さんご自身が感じたことをお話して頂けますか。
「最初に、犠牲になったすべての方たちの冥福を謹んでお祈りし、被災された方たちへのお見舞いとお悔やみを、心から申し上げます。震災があったあの日、私はすぐにでも被災地に飛んで行きたいと思いました。ニュースで、映像を見て、涙が止まりませんでした。ショックでしたね…」
──「仮面ライダー」
の原作者である故石ノ森章太郎さんの出身地、宮城・登米市と隣接する石巻市には記念館がありますよね。
「あの作品は私にとって貴重な存在です。石巻に『石ノ森萬画館』がオープンした際には、開館式に出席もさせて頂きました。人ごとでいられるはずがありません。ですから、今の私にできることはすべてさせて頂こうという決意でいます。ただ、今回の震災は、神の試練かもしれないとも感じているんですよ」
──神の試練ですか?
「大和魂という言葉がありますが、これは大いなる和をもってひとつの魂となす、という意味なんです。今こそ残された我々がひとつになって、この難局を乗り越えるべき、ということ。いや、乗り越えなければ、犠牲になった多くの尊い命が無駄になってしまう。日本人はもう悟らなければならない、目覚めなければならない、大転換期を目の前に迎えたんですよ。今がまさに、日本という国の真価が問われる時。見事に復興して世界から大変な賞賛と畏敬の念を受けるか、国としての存続ができなくなって歴史から抹消されるか…。日本人ひとりひとりの底力が試されているのが、今なんです」
──不謹慎かもしれませんが、本当に復興できるのでしょうか…。
「大丈夫。絶対に復興します。歴史を振り返ってみて下さい。日本は世界で初めて核を落とされた国なんですよ。しかも二発も。当時は世界中から、日本は終わった、向こう数十年は不毛の地になるだろうと、悲観的な哀れみの目で見られていました。そんな同情を寄せられていた国だったのに結果、どうなりましたか? 経済大国へと成長したでしょう。日本人には危機を乗り越える人間力がある。だからこそ今回の大震災は、日本で起きてしまったのだと思います。他国なら復活できずに潰れてしまうかもしれません。でも、日本人が世界に範を示すことができる民族だからこそ、神は試練を与えたのではないかと」
──確かに。国民の意識がガラッと変化した気がします。
「これは震災が起こる何年も前から私が感じていたことですが、日本は愛の国であると、みなさんは理解しただろうと感じています。家族愛、夫婦愛、隣人愛、師弟愛、祖国愛、郷土愛。震災前には目も向けなかったこれらの愛情を、再認識されたことでしょう。権力や金といった目に見えるものよりも、目に見えないもののほうが大事。愛と命が最も大切なんです。こういった最悪の形で、失ったものの大切さを知らされたのは残念ですが、それでも私たちは前に進まなければなりません」
愛と命が大切だと悟る以外に大事なこと。それが武士道の精神を持つことだと藤岡さんは語る。
──前にご登場頂いた際も武士道について教えて頂きましたが、再度レクチャーを願います。「人と人との和を重んじ、正義を主とす。勤勉で、耐え忍び我慢する。誇りを失わず、恥を知り、分をわきまえて足ることを知る。そして、他力本願ではなく自力本願ですべて責任は自分でとる…武士道は奥が深いので、まだまだ他にもあるんですよ」
──ぜひ、他も教えて下さい!
「そうですね。武士道精神について勘違いしている人が多いのですが、武士道とは刀で敵を切り捨てることではありません。本義は我欲を捨て虚心坦懐(わだかまりのない、素直な心で物事に臨む姿)に向き合うことで、相手を制するところにあります。戦わずして勝つこと。いわば、争いを治める道こそが武士道の精神なんです。剣は人を生かすもので、殺すものではないんです」
──その言葉、今だから心に染み入りますね。
「己の心の中の奢れしもの…、エゴイズムという名のショッカーをまず治めてから、自分の周りを守る。加えて無欲、無我が武士道精神の基本。そういった精神は、この危機の時代にこそ、ますます重要視されますからね。ただなぜか、日本人だけは武士道精神をいまだに受け入れようとしない傾向があるんですよ。そこは不思議な民族だな、と。先人からの財産を捨てているも同然ですから、嘆くべき現実ですね。海外からは注目されているのですが…」
──武士道精神が海外から注目?
「今回の件で略奪や騒乱が起こらなかったことで、世界中の友人が『日本はサムライの国だ』と賛美してくれましたよ。サムライとは武士道精神の持ち主。若い人に継承してもらいたいですね」
藤岡さんによれば、武士道精神を以てすれば、被災地へ行かずともお金がなくとも、日本の復興に協力は可能だという。
──個人レベルで今日からでもできることって何なのでしょうか。「どんなに些細なことでもいいので、率先して世のため人のために、我欲ではなく無欲の精神で動く。思いやりと奉仕の気持ちを、頭で考えるだけではなく実行する。これは私が世界100ヶ国以上を訪れ、ボランティア活動などを通して実体験し、学を得た、実践行動哲学に基づいています。実際に行動せず机上論だけの人には、経験や体験が伴わないからどうしても説得力が弱くなる。これからは本質的に物事を見る時代がやって来ますから、口先だけの人は信頼されず、失脚していくはずです。あとは、男女の役割も震災前とは変わるかもしれません」
──男女の役割が変わる?
「戻る、といったほうが近いかもしれませんね。今までは草食系という言葉がありましたが、これからは雑食系。何でも食べて、生きて生き抜き他を守り抜く男しか、このサバイバル時代では女性から支持されなくなるはずです。そういう強い男を女性が支える。本物のサムライがいた時代はこれが一般的な男女のバランス関係でしたから、そういった意味では、甦りの日本として復興することでしょう」
──他に私たちにできることは。
「また来るかもしれない危機を察知するためには、野生の感覚を失わないよう第六感を磨き続けること。錆びた感覚を復活させるには感じる力と情緒感を大事にしましょう。桜が散る様子を見て儚さを覚えるのは、日本人ならではの感覚。それを忘れないようにするのです。あとは、コンピューターと勘ピューターからの情報をバランス良く吸収して、直感を無視しないことです」
──最後にメッセージを。
「これだけの災害でしたから、復興は簡単なことではありません。今後も長く辛い道のりが続くことは容易に予想ができます。そういう大事業に向かう時こそ、武士道精神を大事にしましょう!」
震災以前から日本人の危機意識の低さに憂いていた、と語る藤岡弘、さんの言葉の裏にはたっぷりの愛情が。アニキからのメッセージをお忘れなく!!
PROFILE
藤岡弘、(ふじおか・ひろし)
1946年生まれ 愛媛県久万高原町出身
松竹映画ニューフェイスでデビュー後、青春路線で活躍。俳優養成所などを経て、71年に主演した「仮面ライダー」本郷猛役でブレイク。主な出演作に映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」、ドラマ「勝海舟」「白い牙」「特捜最前線」「あすか」などがあり、テレビ朝日系「藤岡弘、探検隊シリーズ」は有名だ。84年、米映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、全米映画俳優組合のメンバーに。武道家としても知られ柔道、空手、刀道、抜刀道、小太刀護身道など合わせて二十数段の腕前。民間ボランティア団体の理事も務め、世界中の紛争地域、難民キャンプで救援活動を展開している。仮面ライダー生誕40周年を記念して製作された劇場版最新作「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」公開中。新著に「藤岡、イズム。」がある。1946年生まれ 愛媛県久万高原町出身松竹映画ニューフェイスでデビュー後、青春路線で活躍。俳優養成所などを経て、71年に主演した「仮面ライダー」本郷猛役でブレイク。主な出演作に映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」、ドラマ「勝海舟」「白い牙」「特捜最前線」「あすか」などがあり、テレビ朝日系「藤岡弘、探検隊シリーズ」は有名だ。84年、米映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、全米映画俳優組合のメンバーに。武道家としても知られ柔道、空手、刀道、抜刀道、小太刀護身道など合わせて二十数段の腕前。民間ボランティア団体の理事も務め、世界中の紛争地域、難民キャンプで救援活動を展開している。仮面ライダー生誕40周年を記念して製作された劇場版最新作「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」公開中。新著に「藤岡、イズム。」がある。
藤岡弘、(ふじおか・ひろし)
1946年生まれ 愛媛県久万高原町出身
松竹映画ニューフェイスでデビュー後、青春路線で活躍。俳優養成所などを経て、71年に主演した「仮面ライダー」本郷猛役でブレイク。主な出演作に映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」、ドラマ「勝海舟」「白い牙」「特捜最前線」「あすか」などがあり、テレビ朝日系「藤岡弘、探検隊シリーズ」は有名だ。84年、米映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、全米映画俳優組合のメンバーに。武道家としても知られ柔道、空手、刀道、抜刀道、小太刀護身道など合わせて二十数段の腕前。民間ボランティア団体の理事も務め、世界中の紛争地域、難民キャンプで救援活動を展開している。仮面ライダー生誕40周年を記念して製作された劇場版最新作「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」公開中。新著に「藤岡、イズム。」がある。1946年生まれ 愛媛県久万高原町出身松竹映画ニューフェイスでデビュー後、青春路線で活躍。俳優養成所などを経て、71年に主演した「仮面ライダー」本郷猛役でブレイク。主な出演作に映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」、ドラマ「勝海舟」「白い牙」「特捜最前線」「あすか」などがあり、テレビ朝日系「藤岡弘、探検隊シリーズ」は有名だ。84年、米映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、全米映画俳優組合のメンバーに。武道家としても知られ柔道、空手、刀道、抜刀道、小太刀護身道など合わせて二十数段の腕前。民間ボランティア団体の理事も務め、世界中の紛争地域、難民キャンプで救援活動を展開している。仮面ライダー生誕40周年を記念して製作された劇場版最新作「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」公開中。新著に「藤岡、イズム。」がある。
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一