芸人、作家、料理人、俳優と幅広い分野で才能を発揮している木村祐一さんがメガホンを執った最新映画「ワラライフ!!」が遂に完成&1月29日(土)に公開される。モノ創りに対して自分なりのこだわりを持つ監督が手掛けた心がほっこりする温かい作品の気になる中身とは!? 様々な職業を経験した、“キム兄流”の人生哲学や夢を叶えるコツも伝授して頂きました!!
大切な誰かを思い浮かべつつ映画を観てくれたら嬉しい
キム兄こと木村祐一さんが監督を務めた最新作「ワラライフ!!」が公開。作品へ込めた思いやこだわり、仕事に対する信念などを聞いてきました! ──本作を楽しく鑑賞させて頂きました。淡々と物語が進みつつも観客に感動を与えるという、今ドキ珍しいストーリーですね。
「今ドキ珍しい!?…そうかも知れませんね。でも今、撮りたい映画がこれだったというだけで、作風に関しては作戦を練ったワケじゃないんですよ。映画って、狙って創れるものではないですから」
──主人公の父親役を演じた吉川晃司さんのユニークな衣装も、狙いではなかった、と?
「あの『天才バカボン』のパパみたいな服装は、僕が幼い頃のお父さんたちの、夏の定番ファッションだったんですよ。だから、狙いではないですねぇ」
──定番だったんですか!?
「あのね、バカボンのパパがあの服装をしたから世間の父親がマネをしたんじゃなくて、父親たちがあの格好をしていたからバカボンのパパもああなったんですよ(笑)。吉川さんがノリノリであの衣装を着てくれて助かりましたね。『監督、オレにそんな洋服を着せちゃうんだ?』と楽しんでくれました。実際、着た姿はメチャクチャカッコよかったですけどね。さすが吉川さん! って感じで、あの後すぐ仮面ライダーに変身してもOKなほど、カッコよかった」
──そうなんですか! 本作を制作することになったきっかけは。
「日常生活の中の普遍的な事柄…ご飯を食べて仕事に行って、お風呂に入って寝るっていう、当たり前の出来事って、何も得はしていないし損もしていないですよね。だけど、損をしていないってことは得をしているとも置き換えられる。そういう日常の小さな積み重ねができて、一日何ごともなく過ごせた日っていうのが、実は人間が最も感謝すべきことなのではないかと。ここに気付けたからこそ今回のような作品が自然に湧いてきたんだと思います」
──木村さんは『日々生きている中で、ありがとうという気持ちが芽生えてくる』とお話されてましたが、それとも関連が?
「今回の映画とも関連はありますね。ただ、ありがとうって気持ちが芽生えるのは年齢がそうさせている部分もありますよ。僕は毎年、矢沢永吉さんのコンサートに行くんですけど最近、矢沢さんの口からも『ありがとう』がめっちゃ増えていますよ。昔は『サンキューどうも!』とばかり言っていたのに。板尾(創路)さんに聞いても『年齢を重ねるごとに感謝の言葉が増える』と言っていましたから、僕も同じなんでしょうねぇ」
──感動と感謝の気持ちが詰まった本作の見どころは。
「映画に出てくる家や土地柄や家族構成とみなさんの現実は当てはまらないかも知れませんが、自分に置き換えることはできると思います。なので、スクリーンを観ながら頭の中のスクリーンでは自分の家族や友だち、好きになった人を思い出してほしい。この映画を観つつ大切な誰かを思い浮かべたら、久しぶりに一緒にご飯でも食べに行こうかとか、どうしているかなとか何か一つ感じてもらいたいですね。過去を振り返る行為は悪いことではないし、それがあるから今があるわけですから」
高い評価を得ている芸人さんの皆鋭い観察力の持ち主!
──木村さんは映画監督以外の仕事でもマルチに活躍されていますが、自分の才能を見つけるためにはどうしたらいいのでしょうか。「24時間、笑いのことを考えているつもりですし」
──えっ? 一日中ですか?
「あ、いや、寝ますから、24時間ではないですけども(笑)。でも、笑いについて考えて、夜中に何度も目が覚めた経験はありますよ。何かおもろいことないかなーって。あとは、思うのは観察力も才能のうちだということ」
──観察力…それは具体的には。
「芸人の世界で面白い人だと高い評価を得ていたり、敬うべき人やと思われている人って、必ず鋭い観察力を持ち合わせているんですよ。そんなとこ見てるか!? という細かい部分にまで目を光らせているし、メモしなくても覚えていられる記憶力の良さも兼ね備えている。観察力って、努力次第で誰にでも鍛えられる能力なんですよ。より深く脳や心に刻もうと意識すれば、誰にでも身につきます。だからねぇ、先輩芸人の家に一度だけ行った後輩芸人が、二度目によう行かんっていうのは考えられないことなんですよ、僕にとっては。『一度じゃ分かりません』って覚える気がないから行けないだけ」
──後輩に厳しいという噂がありますが、そういうとこですか。
「他人に対する期待度が高いんでしょうね。先輩に自分がしてきたからこそ、後輩にも同じようにしてもらいたいっていう、ね」
吉本100周年記念で先輩たちのドキュメントを撮りたい
──観察力を磨く以外に、木村さんのように夢を叶える方法はありますか?「先人の姿から学ぶ方法はオススメですね僕は最初ホテルに就職したんですけど、それは好きな先輩と同じ職業に就きたかったからなんです。あんなんイヤ、こんなんイヤばかり言っていても『自分はどうなりたいか』を見つけることは難しいから、先達を真似てみる。工場で染め物職人をしていた頃も一番仕事が早くて仕上がりがキレイだと言われている人にくっついていってましたからね、僕は。友だちでも後輩でも異性でもいいから、好きなヤツの真似をする。それが最初の一歩かと」
──真似を続けてオリジナリティーを出せるようになるには、何年ぐらいかかりますか。
「そもそも『自分にはオリジナリティーがない』と考えること事態が無意味。オレは人とは違うと思うとったらいいんですよ。意外と自分が思っている自分の性格と、他人から見た自分の性格って違いますからね。他人は自分のことを正確には見抜いていない。だから気にしないでいい。10年前に高校の同窓会へ行って『僕はどんな学生やった?』と聞いたんですけど、自分ではしっかりみんなをリードしてきたつもりだったのに、『あんたはいい加減な人で、私らが大変だったわ』と言われて驚いた経験があるんですよ。球技大会では出し物を決めたし、文化祭では芝居の脚本まで書いたのに」
──高校時代に脚本を執筆とは…でも現在の下地ですね。
「そうかも知れないですね。今回の撮影も前作同様に喜びの連続で、僕にとっては毎日が、『ワラライフ!!』でした。こんな幸せな環境に身をおけるのは親兄弟や友だちに当時の彼女のお陰。感謝です」
──では、今後の展望は?
「イタリア留学に行きたいなと。数年後に行っていなかったら事務所にカットされたってことで(笑)。あとは2012年に吉本興業が100周年を迎えるので、先輩芸人のドキュメンタリー映画をプロデュースしたい。上中下3部作、全6時間でいきましょう」
穏やかな口調と柔らかな物腰で、取材陣を笑わせつつ話してくれた木村さん。マルチな才能の持ち主からは、今後も目が離せません!!
INFORMATION
■映画「ワラライフ!!」
【STORY&INFO】
古川修一(村上純)は、綾城まり(香椎由宇)との結婚に向けて、2人で暮らす部屋を探していた。それと同時に修一の両親が引っ越すという。引っ越しの前日、母慶子(鈴木杏樹)から電話をもらうまですっかり忘れていた修一。久しぶりに実家に帰ると、家は留守。秘密の鍵置き場=植木鉢の下を探る…鍵がない。母も昔から忘れっぽい。靴職人の父肇(吉川晃司)、専業主婦の母、2つ上の姉和恵(田畑智子)、そして5歳離れた弟。ありふれた家族構成。家族で行った海へのドライブ、変な歌を歌う母、道端で拾った子犬。姉とごまかしたお年玉、3人で分け合ったプラッシー、001から回し続けてようやく開いた学校の3ケタ錠、ほのかな憧れを抱いた隣のきれいなお姉さん、そして姉の結婚で父が流した涙。修一は荷物が運び出されていく生まれ育った家を眺めながら、笑顔に溢れ、明るく賑やかだった日々を思い出す。そんなある日、とある事件から気まずくなっていた幼馴染みの小倉(高岡蒼輔)に偶然再会し…。
「ワラライフ!!」とは「What a Wonderful Life!!」。この映画を観た後には、きっと誰もが“小さな喜びだけど大きな幸せを感じる”そんな「ワラライフ!!」な瞬間を見つけるはずだ。
【CAST&STAFF】
出演/村上純(しずる)・香椎由宇・田畑智子・高岡蒼輔・鈴木杏樹・吉川晃司
監督・脚本・企画/木村祐一
共同脚本/井土紀州
製作/吉本興業 ファントム・フィルム
制作プロダクション/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
配給/ファントム・フィルム
1月29日(土)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
(C)2010「ワラライフ!!」製作委員会
PROFILE
木村祐一(きむら・ゆういち)
1963年2月9日生まれ
京都府京都市出身
ホテルマン、染め物職人などを経て、お笑いコンビ・オールディーズとしてデビュー。以降、芸人、作家、料理人、俳優など様々な分野で活躍、唯一無二の才能を放つ。フジテレビ系「ダウンタウンのごっつええ感じ」で構成作家デビュー。94年、東京に活動拠点を移す。俳優として数多くの映画に出演。主な作品に「誰も知らない」「下妻物語」「ALWAYS 三丁目の夕日」「花よりもなほ」「ゆれる」「松ヶ根乱射事件」「パッチギ!LOVE&PEACE」「西の魔女が死んだ」「ぐるりのこと。」「252-生存者あり-」「少年メリケンサック」「ハナミズキ」などがある。08年、実際に起きた事件を題材にした「ニセ札」で映画監督に挑戦。第33回モントリオール世界映画祭のコンペティション部門に正式出品された。
■映画「ワラライフ!!」
【STORY&INFO】
古川修一(村上純)は、綾城まり(香椎由宇)との結婚に向けて、2人で暮らす部屋を探していた。それと同時に修一の両親が引っ越すという。引っ越しの前日、母慶子(鈴木杏樹)から電話をもらうまですっかり忘れていた修一。久しぶりに実家に帰ると、家は留守。秘密の鍵置き場=植木鉢の下を探る…鍵がない。母も昔から忘れっぽい。靴職人の父肇(吉川晃司)、専業主婦の母、2つ上の姉和恵(田畑智子)、そして5歳離れた弟。ありふれた家族構成。家族で行った海へのドライブ、変な歌を歌う母、道端で拾った子犬。姉とごまかしたお年玉、3人で分け合ったプラッシー、001から回し続けてようやく開いた学校の3ケタ錠、ほのかな憧れを抱いた隣のきれいなお姉さん、そして姉の結婚で父が流した涙。修一は荷物が運び出されていく生まれ育った家を眺めながら、笑顔に溢れ、明るく賑やかだった日々を思い出す。そんなある日、とある事件から気まずくなっていた幼馴染みの小倉(高岡蒼輔)に偶然再会し…。
「ワラライフ!!」とは「What a Wonderful Life!!」。この映画を観た後には、きっと誰もが“小さな喜びだけど大きな幸せを感じる”そんな「ワラライフ!!」な瞬間を見つけるはずだ。
【CAST&STAFF】
出演/村上純(しずる)・香椎由宇・田畑智子・高岡蒼輔・鈴木杏樹・吉川晃司
監督・脚本・企画/木村祐一
共同脚本/井土紀州
製作/吉本興業 ファントム・フィルム
制作プロダクション/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
配給/ファントム・フィルム
1月29日(土)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
(C)2010「ワラライフ!!」製作委員会
PROFILE
木村祐一(きむら・ゆういち)
1963年2月9日生まれ
京都府京都市出身
ホテルマン、染め物職人などを経て、お笑いコンビ・オールディーズとしてデビュー。以降、芸人、作家、料理人、俳優など様々な分野で活躍、唯一無二の才能を放つ。フジテレビ系「ダウンタウンのごっつええ感じ」で構成作家デビュー。94年、東京に活動拠点を移す。俳優として数多くの映画に出演。主な作品に「誰も知らない」「下妻物語」「ALWAYS 三丁目の夕日」「花よりもなほ」「ゆれる」「松ヶ根乱射事件」「パッチギ!LOVE&PEACE」「西の魔女が死んだ」「ぐるりのこと。」「252-生存者あり-」「少年メリケンサック」「ハナミズキ」などがある。08年、実際に起きた事件を題材にした「ニセ札」で映画監督に挑戦。第33回モントリオール世界映画祭のコンペティション部門に正式出品された。
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一 Hair&Make/豊田千恵(e-mu)