卓越した話芸と巧みな企画力で熱狂的なファンを持つ伊集院光さんが企画・構成・演出・主演を務めた「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ第4弾「超難解 間違い探しの旅」が1月20日に発売。本作はBSで放送された人気番組だが、テレビとはまったく内容が異なるため、放送を見た人も楽しめる。類い希なるトーク力で作品、ラジオ、さらには人生観まで語り尽くしてくれました!! 伊集院劇場、始まります。
人体実験の要素を兼ね備えた三度は楽しめるDVD
──「伊集院光のでぃーぶいでぃー」第4弾「超難解 間違い探しの巻」が発売されます。本作は、BS11デジタル放送の人気番組がDVD化されたんですよね。「形上はそうなんですけど、イチから編集し直してるし、本編自体もテレビで放送した40分ぐらいのものを80分ぐらいにしているから、まったく別物の仕上がりになっているんですよ。追撮も25分ぐらいしていますしね。この辺をテレビを録画したからいらないという人にもアピールしときたいんですよね。僕の中では、メディア特性の整理をしてから取り組んでいるんですけどね。これが最近のテーマです。」
──メディア特性の整理とは?
「各メディアが持っている強みと弱みは違うから、それを流さずしっかりと考えてから取り組もうということです。DVDの特性のひとつはとにかく何度も見られるということ。今回のDVDは特典映像に特性が色濃く出るんですけど、今回は三度まで楽しめる、がテーマ。第3弾の『夢にときめけ仲間を疑え草野球芸人対抗連係プレー選手権の巻』は、二度見るがテーマでした」
──伊集院さんは、映像編集にも携わっているんですよね。
「機材を買って編集作業に取り組みました。編集の専門家に勝ってるとは思いませんけど、地味な作業は好きなんで。あと、具体的な金額は言えませんけど今回、かなり予算を抑えています。字幕起こしも僕がやりましたし。そういった意味では、スタッフ含めみんなの力で完成した作品ですね。エンジニアの女の子なんて、48時間も寝ないでおかしくなってましたから(笑)」
──今回は、収録内容を知らせずに若手芸人さんたちを呼び出したんですよね。
「彼ら彼女たちには、フラットに臨んで不安を覚えてほしかったんです。内緒にして始めることがマストではないし電波少年的なノリでもないんですけど、演出として。内容を教えないほうが良いかどうかは、すごく考えましたね」
──では今回の内容は。
「『間違い探しです。あなたたちが最初にこの部屋に来たときと比べて、部屋の中に物が1つ増えているので当てて下さい』と伝えて探させるんです。で、本当は何も増えていないんです。でも、クイズに外れたら二度と番組に出られなくなるって僕が言うんで、みんな必死。いろいろ妄言を言い出すんですけど、人間ってそんな曖昧なことをそんなに強く主張できるんだ!! と感じましたね。漠然としているんですけど、人間はもれなくマヌケで、マヌケはもれなく面白い。そして美しいということが見ると分かってもらえると思います。僕のDVDは軽い人体実験みたいなものなんですよね。見てもいない物を見た! と言い出す様子を楽しんでほしいです」
──人間はもれなくマヌケ、ですか。
「むしろマヌケな人間じゃないと、信用できないですよ。一度もパンツにウンコが付いたことがないヤツなんて、信用できないでしょう(笑)。問題は、付いてた時の振る舞いだろうっていう。例えば5年同棲してて相手が『一度たりともついていたことはない』って言い張ったら、僕は寂しいですね。コンスタントに付着する僕も、それはそれで問題なんですけど。」
“顔テーマ方式”で企画を考案複雑な表情を撮るのが課題
──問題ですね(笑)。次々に面白い仕掛けを考案していますが、企画はどうやって考えていますか。「今は“顔テーマ方式”ですね。この顔が見たい! っていうところから企画を考えます。笑ったり泣いたりしているだけではなく、微妙な表情。今回のDVDでいうなら、最後の最後で『実は…間違いはないんですよ。お疲れ様でした!』と言われた時の顔です。結果、尋常じゃないですよ、あれは」
──ところで今、取材に応じている伊集院さんは“白伊集院”ですか? “黒伊集院”ですか?
「あぁ、それね。白黒論。ウーンその期待に応えようとする期間が半年間ぐらいあったんですけど、結局よくわからないですね。正直未だにやっぱりそう言われるのかなって感じですね。週刊朝日で僕の似顔絵を募集したことがあって、ラーメンを食べてる姿が描かれている似顔絵が結構、多かったんですよ。ラーメンなんてテレビで5年ぐらい、食べてないのに。そんなものですよ。まあその第三者の視線の中にも、僕が分かりえない本質がある可能性までは否定しませんけど」
──話は変わりますが、40歳を迎えたのを期に仕事量を減らしたと聞きました。
「今は週2〜3日しか働いていませんね。ドカントは求人誌だから『このご時勢に贅沢言ってるんじゃねえよ!』との批判もあるかと思いますが、しいて言えば休む地獄を味わっています。この職業、ホント休むの勇気いりますから」
現実と折り合いがつく場所でベストを尽くすことが大事
──オフは何をしていますか。「今まで携わっていなかった、編集作業をしています。クオリティーを上げるなら、手間暇をかけないとということで、1つ当たりの仕事にかける時間をかなりとるようになりました」
──すみません、仕事量を減らしたと聞いて悠々自適な生活を送っていると勘違いしていました。
「僕ら夫婦は子供がいないので、そういう意味では悠々自適ですよ。僕はカミさん以外の人と関わらない狭い世界に生きてるし、車の免許は持っていないから高級外車もいらないし、女遊びもしないし。生活にかかるお金も少ないから、1足6000円の長靴を2足買った時は、『こんな贅沢していいのかな?』と思いました。ビニール傘は8本ぐらい持ってるし、いただいた餃子の王将の無料券はあるし(笑)」
──では、伊集院さんは現在、夢が叶った状況ですか?
「僕ね、壮大な夢は持ったことがないんですよ。精神的に追い詰められない場所はどこだろうと探してきただけ。DVDを作りつつラジオをやっていくという今の生き方も、嫌じゃないだけと言えますね。逆に追い詰められてまで仕事しても僕の才能じゃ、億万長者になれるわけでもないし、女の子にチヤホヤされないし、親戚の自慢にもならないし。…結果今のスタイルでとりあえず、と」
──でも、その生き方を羨む人もいるかと思います。
「自分の中で、これぐらいのお金があると幸せって基準を決めることが大事なんじゃないでしょうか。少しでも多くと望むと、一生満足できませんから。前にドキュメンタリー映画を観てたら『手に届くものは理想、届かないものは空想』と断言したおばちゃんがいたんですよ。その通りだな、と。僕なりの言い方をすれば、現実と折り合いをつけられる場所、目の前にあるものの中でベストを尽くすということです」
──伊集院さんの手に届く理想を教えて下さい。
「こいつに任せておけば間違いないと信頼を勝ち得て、過不足なく仕事が来るタレントですね」
INFORMATION
■DVD「超難解 間違い探しの巻」
【INFO】
企画・構成・演出・主演を手掛けた、BS11デジタルで放送されていた人気番組「伊集院光のしんばんぐみ」からの蔵出し特別編集版「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ。第1弾「アクトレスが泣くのです!選手権の巻」、第2弾「箱庭カウンセリングの巻」、第3弾「夢にときめけ仲間を疑え草野球芸人対抗連係プレー選手権の巻」に続く最新作がこちら。第5弾となる「しゃしんの巻」はポニーキャニオンから2月17日発売予定だ。
【内容】
若手芸人たちをいたずらに追い詰め、人間の記憶力を弄ぶ人間観察実験企画。収録内容を何も聞かされずに呼び出された若手芸人たちに、伊集院自らがたくさんの料理を振る舞う。みんなで食事を楽しむが、そこには“番組出演停止”の罰を賭けたドッキリ企画が仕掛けられていた…。
出演/伊集院光・西尾季隆・イマニヤスヒサ・今野浩喜・浜ロン・サードメン高橋・GO・のり・白鳥久美子
ポニーキャニオンから1月20日発売(3990円)。
PROFILE
伊集院光(いじゅういん・ひかる)
67年11月7日生まれ 東京都出身
TBS-R「伊集院光 深夜の馬鹿力」(毎週月曜25時〜27時生放送)やバラエティ番組などで活躍する他、エッセイ「のはなし」「のはなしに」(宝島社)を執筆するなどその活動は多岐にわたる。DVD「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ(ポニーキャニオン)では企画・構成・演出・主演に加え、編集作業にも携わり、その才能はとどまることを知らない。
公式HP
■DVD「超難解 間違い探しの巻」
【INFO】
企画・構成・演出・主演を手掛けた、BS11デジタルで放送されていた人気番組「伊集院光のしんばんぐみ」からの蔵出し特別編集版「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ。第1弾「アクトレスが泣くのです!選手権の巻」、第2弾「箱庭カウンセリングの巻」、第3弾「夢にときめけ仲間を疑え草野球芸人対抗連係プレー選手権の巻」に続く最新作がこちら。第5弾となる「しゃしんの巻」はポニーキャニオンから2月17日発売予定だ。
【内容】
若手芸人たちをいたずらに追い詰め、人間の記憶力を弄ぶ人間観察実験企画。収録内容を何も聞かされずに呼び出された若手芸人たちに、伊集院自らがたくさんの料理を振る舞う。みんなで食事を楽しむが、そこには“番組出演停止”の罰を賭けたドッキリ企画が仕掛けられていた…。
出演/伊集院光・西尾季隆・イマニヤスヒサ・今野浩喜・浜ロン・サードメン高橋・GO・のり・白鳥久美子
ポニーキャニオンから1月20日発売(3990円)。
PROFILE
伊集院光(いじゅういん・ひかる)
67年11月7日生まれ 東京都出身
TBS-R「伊集院光 深夜の馬鹿力」(毎週月曜25時〜27時生放送)やバラエティ番組などで活躍する他、エッセイ「のはなし」「のはなしに」(宝島社)を執筆するなどその活動は多岐にわたる。DVD「伊集院光のでぃーぶいでぃー」シリーズ(ポニーキャニオン)では企画・構成・演出・主演に加え、編集作業にも携わり、その才能はとどまることを知らない。
公式HP
取材・文/内埜さくら 撮影/池田 悟