〝芸能界最強のアマチュア雀士〟と呼ばれた俳優・萩原聖人さんが7月21日、日本プロ麻雀連盟に加入しプロ雀士に。麻雀のプロスポーツ化を目的として今年7月に発足した「Mリーグ」のドラフト会議で「TEAM RAIDEN」から1位指名されたニュースを目にした人も多いはずだ。今回は初代Mリーガーの代表としてプロリーグに懸ける想いとともに、愛が爆発!「麻雀に恩返しがしたい」という真意とは。若者をリスペクトしつつも役者歴31年で培った男らしく泥くさい仕事観にも迫る!!
我慢は必要だし辛さに耐えられないのは楽をしたいだけ。根気よくやり遂げると信用を得られて、自然と人が集まってくる気がします。
Mリーグに参加して麻雀に恩返ししたいし挑戦できる場が有り難い
──萩原さんが麻雀を打つ動画を観ました。〝魅せながら勝つ〟と言われている通り美しかったです。「観てくれている人が楽しめる麻雀を第一に考えて打つ、というのは昔から今も変わっていないのでうれしいですね。『麻雀は勝たなくちゃ意味がないだろう』という人たちからすると、僕の打ち方は邪道かもしれませんが、それを踏まえても僕は勝てると思っているので。最近の麻雀界は何巡目でリーチをして、(牌)山に残り何枚あったら何%上がれるといったパーセンテージでの表示をしていますけど、必要があるのかなと思うんですよね。麻雀は偶然の要素も不可欠で、たった1枚でもそこにあってそれが3回続けば100%になるわけで、そういった数字で表せない部分を表現できないかなと模索しながら打ってきたので」
──麻雀は数値化できないからこそ楽しいゲームなのでは…。
「もちろん、絶対にそうなんですよ。〝運ゲー〟と言われても否定はできないですけど、『これは運じゃない。僕は上がれると思ってこの待ちに賭けました』と言える麻雀が人を惹きつけるものにならないかと思っているんです。難しいですけどね。一生理解できないし、人間の能力で凌駕できるゲームではないので。『麻雀をグレーなスポーツとしてではなく、頭脳をフル回転させるプロスポーツとして広めましょう』と謳うMリーグも然り。勝負であることを重々承知した上でエンターテイメント性を意識しつつ、麻雀に取り入れていきたいです。僕は天才じゃないし、勝ち上がるためには技術が必要ですが、結果と内容の両方にこだわりつつ〝強い自分〟というインパクトを残したい。プロになったことで趣味だからと笑って済まされなくなったので、よりシビアに向き合わなくては、とも考えています」
──Mリーグのドラフトで「TEAM RAIDEN」に指名されたことで、麻雀にクリーンなイメージを持った層も多いと思います。
「もし本当にそうであれば有り難いです。例え話ですが、大谷(翔平)君がエンゼルスに入ったことで他のメンバーのことも知る、みたいな現象ですよね。マニアックですがアルバート・プホルスやマイク・トラウトといった偉大な成績を残している選手を大谷君が入ることによって知る、みたいな。僕が大谷君と一緒というわけではないですよ(笑)ただ、僕がMリーグを知ってもらうきっかけになるのは良かったのかな、と。プロテストに合格した時、なぜか他にトピックとなるような話題がなかったことも手伝ってくれたのではないかと…(笑)」
──萩原さんは麻雀歴が30年強。芸能界デビューが今年31周年。どちらの歴が長いのでしょうか。
「生を受けて47年。当然ですが、自分をやっている時間が一番長い。次に何を長く続けているのかなと考えたら麻雀は14歳から、役者は15歳からなので自分、麻雀、役者の順番なんです。麻雀は中学生時代、同級生に教えてもらったことがきっかけで始めました。まさか麻雀がここまで自分に好影響を与えてくれるとは思っていなかったので、今度は自分が恩返しする番です」
──麻雀に恩返し!?その真意は。
「萩原聖人=麻雀となったのは僕が22〜23歳の頃、ある大会に出てたまたま優勝したことが発端なんですけど、当時はわりと爽やかな人気がある時期だったんです。でも、麻雀に対してグレーなイメージが根強くて、真面目に打ちたい本位がなかなか伝わらなかった。唯一理解してくれたのは、事務所の社長だけだったんです。そこから『麻雀が強いとカッコいい』と言われる時代になったかもしれない今まで、20年かかりました。僕は自分がカッコいいと思われたいわけではないんですが、麻雀へのイメージがクリーンになりつつある今だからこそ、Mリーグを盛り上げるという使命感の元、参加することで麻雀に恩返しができるかな、と。50歳手前にして新しい挑戦ができる上に挑戦できる権利も得られたので、やるべきだろうと決断したんです」
いずれは若いプロが彗星のごとく現れ僕らを倒す世代交代の場に
──「RTDリーグ2018」(AbemaTV主催の麻雀タイトル戦)の実況では、20代の松本吉弘プロに厳しい言葉を掛けて話題になりました。「厳しいと言われましたけど、かなり言葉を選んだつもりですよ。僕は松本のことが大好きだし、よくセット(麻雀)もしていたからこそ、厳しさが必要だと思ったんです。裏話を明かせば、松本にはかなり感謝されましたよ。アイツは気持ちのいいヤツだからふて腐れたりはしなかったですし。公共の場で人の麻雀にダメ出しをするとコメントで非難される事態を恐れているのか、どうでもいいと考えているのか。指摘しないのはこのどちらかなんです。僕はズバズバ言う分、逆も受け入れるので」
──成長する過程には厳しさが必須ということでしょうか。
「優しさは人をダメにすると思うんです。例えば僕が人に麻雀を教えている時に横から優しく教えようとする人がいたら『お前がそれを言ったらダメになるじゃん。少し黙っててくれよ!』と言いますから。人は優しい意見しか聞きたくないし、優しさを後出しされると僕の厳しさが薄れてしまう。自分の言っていることにある程度確信があるとするならば、厳しさという父性は必要だと信じています。厳しく言われた側にも意見はあるでしょうから、ディスカッションできると最高ですけどね」
──その観点で、今の若者は萩原さんにどう映りますか?
「今やYouTuberという職業が生まれる時代ですし、僕は古い時代の人間になってきているので、感心することのほうが多いですね。やりたいことを成し遂げるためにはどんな辛いこともいとわない、みたいな時代ではないんですよね?でもやっぱり僕は、我慢は必要かな、と。簡単に結果なんか出ないですし、我慢して努力すれば結果が出るかと言えば、それも違うと思う。だけど世の中ってそういうモノですよ。きっと上手くいくというポジティブな思考は大事ですけど、上手くいかないことのほうが多いと思って生きたほうが生きやすい気がするんです。長く生きるほど辛いことが増えますし。僕はなりたくて役者になりましたけど、数え上げたら辛いことのほうが多いですよ。役者の仕事は一見、華やかに見られがちだけどめちゃくちゃ大変な仕事なんです。麻雀だって多分、負けている数のほうが多いと思う。それでも続けられるのは魅了されているからですけど、辛いことに耐えられないのは楽をしたいだけ。楽をしたい人に何を言っても響かないんですけど、その層を切り捨てずに何か言うって、僕にはできない。『そこまで俺も大人じゃねえ』となるので」
──あはは!それでも若者にメッセージを頂きたいです。
「言葉の意味を理解できる若者が増えてくれたらいいですよね。ただ、先輩の言うことが全て正しいかというと、そうでもないんです。年上でも人生薄めて生きているヤツはいっぱいいるし、年下だけど人生濃いヤツもいる。それを見極める目を持ってほしいです。素敵な先輩と後輩に囲まれる環境を作るためには、自分が魅力的であればいい。魅力的になるためには、やらなくてはいけないことを根気よくやり遂げる、嘘をつかないとか、難しいけど難しくないことが肝になります。続けることで信用を得られて、自然と人が集まってくる気はしますね」
──有難うございます。最後にMリーグへの意気込みを。
「残念なのは20代がほとんどいないことなんですよね。20代は高宮(まり)と松本(吉弘)ぐらいかもしれません。1人ぐらいは22〜23歳で名前は知らないけどすごく強いプロとか、たまたまリーグ戦では昇級できないけど実力はあるというコが出てこないかな、と。今年は1年目だから企業も冒険できないとは思うんですけど、いずれはそういった層が育たなければMリーグは盛り上がらないと思います。いつまでも僕や(佐々木)寿人や多井(隆春)が上でふんぞり返っていたら、麻雀界は駄目になってしまう。今は環境が変わってインターネットでもゲームができますから、ビジュアルも整っていて強く若いプロが彗星のごとく現れて、僕らを倒すというドラマティックな展開が起きないかなと期待しています。麻雀の性質上、40代から50代が脂が乗りきる気もするので難しいかもしれませんが、Mリーグが世代交代を謳う場になることが理想ですね」
PROFILE
萩原聖人(はぎわら・まさと)
1971年8月21日生まれ 神奈川県出身
87年、ドラマ「あぶない刑事」第32話「迷路」の回にて、置き引き少年の役でテレビ初出演。89年に『ウォータームーン』で本格的に映画デビュー、90年のTBS「はいすくーる落書2」の松岡直次郎役がきっかけで、一気に注目を集めた。以降、ドラマや映画、舞台で俳優として活躍。またドラマ、映画の日本語吹き替えをはじめアニメーションのアテレコ(「闘牌伝説アカギ」「賭博黙示録カイジ」など)、CMやドキュメンタリー番組のナレーションなどでも高い評価を得ている。近年の出演作にドラマ「日曜プライム 復讐捜査〜警察犬と刑事の殺人追跡行〜」、映画『きみの鳥はうたえる』、舞台「死神の精度」など。テレビ朝日系ドラマ「乱反射」が9月22日(土)22時15分放送、映画『こんな夜更けにバナナかよ』は12月28日公開。麻雀に関してはフジテレビ系「芸能界麻雀最強位決定戦 THEわれめDEポン」で13回の優勝。96年には「第6回麻雀最強戦各界雀豪大会」で優勝を飾るなど芸能界最強の腕前の持ち主として知られ、麻雀のプロリーグとして10月1日に開幕する「Mリーグ」への参戦のため日本プロ麻雀連盟に加盟し、資格を取得してプロ雀士に。ドラフト会議で電通「TEAM RAIDEN」に1位指名された。
公式HP
萩原聖人(はぎわら・まさと)
1971年8月21日生まれ 神奈川県出身
87年、ドラマ「あぶない刑事」第32話「迷路」の回にて、置き引き少年の役でテレビ初出演。89年に『ウォータームーン』で本格的に映画デビュー、90年のTBS「はいすくーる落書2」の松岡直次郎役がきっかけで、一気に注目を集めた。以降、ドラマや映画、舞台で俳優として活躍。またドラマ、映画の日本語吹き替えをはじめアニメーションのアテレコ(「闘牌伝説アカギ」「賭博黙示録カイジ」など)、CMやドキュメンタリー番組のナレーションなどでも高い評価を得ている。近年の出演作にドラマ「日曜プライム 復讐捜査〜警察犬と刑事の殺人追跡行〜」、映画『きみの鳥はうたえる』、舞台「死神の精度」など。テレビ朝日系ドラマ「乱反射」が9月22日(土)22時15分放送、映画『こんな夜更けにバナナかよ』は12月28日公開。麻雀に関してはフジテレビ系「芸能界麻雀最強位決定戦 THEわれめDEポン」で13回の優勝。96年には「第6回麻雀最強戦各界雀豪大会」で優勝を飾るなど芸能界最強の腕前の持ち主として知られ、麻雀のプロリーグとして10月1日に開幕する「Mリーグ」への参戦のため日本プロ麻雀連盟に加盟し、資格を取得してプロ雀士に。ドラフト会議で電通「TEAM RAIDEN」に1位指名された。
公式HP
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一