世界的に人権問題として取り組まれている「性暴力被害」をテーマにした映画『月光』が公開。被害に遭いながらも立ち直ろうとする主人公のカオリを演じたのは、ハリウッド作品への出演経験もある女優佐藤乃莉さん。「いまだに感情を引きずってしまうことがあります」と語る佐藤さんに、女優魂とプライベートを語ってもらった。
「個人的には作品が嫌われても構わないんです。毒にも薬にもならないよりは嫌いという感情も注目して頂けている証ですから」
カオリとして撮影した日を思い出すと今でも涙が……
──佐藤さん演じるカオリが性的暴行を受けるシーンは、呼吸が浅くなるほど怖かったです…。「試写でも特にあの場面は呼吸が苦しくなるとおっしゃる方が多かったんです。実はあのシーン、初日に撮影したんですね。私、この作品で初めて胸をはだけたんですけど、撮影中は胸が見えているうんぬんより、人は真の恐怖を味わうと声が出せなくなることを痛感していました。劇中で暴行を受けている時、カオリは吐瀉物を口の周りに垂れ流しているんですけど、私自身も吐く寸前でしたし。しかもトシオは暴力を一切振るっていないのに、撮影が終わったら腕がアザだらけになっていました」
──そこまで役に入り込んでいたら辛い心境が続いたのでは。
「今も思い出すだけで涙が出そうになるほど辛かったです…」
──あ、少し目が赤いです。
「思い出すといまだに泣けてきちゃうんですよ。小澤(雅人)監督から『インする前からカオリでいて』と言われて、『自殺させる気ですか!?』と反論しながらも撮影1ヶ月前からカオリの心境でいましたし、夜寝ている時もうなされて起きることもしょっちゅうでしたし。トシオ役の古山(憲太郎)さんは悪くないのに、同じ宿に泊まった日は緊張したり、同じ車での移動も嫌でした」
1日1スクリームする事で言葉なしで伝わると知って
──性的暴行は“魂の殺人”と言われていますからね。「心身の底から意味を伝える点では、役者として体験してみたい役どころではあったんです。でも、カオリで疑似体験した私がこんなに辛いんだから、実際に被害に遭った方の辛さは想像を絶するでしょうね。この撮影が終わった数時間後に別の撮影があって異動でロケバスに乗ったんですけど、車内に男性しかいなくて、恐怖を覚えるぐらい引きずりましたから」
──作風はシリアスですが、でも観やすい映画でもありますよね。
「構成や音楽のおかげでしょうね。リアルを追求してはいますけど、本物を見せるなら映画ではなくドキュメンタリーの方が向いているでしょうし」
──リアルといえば、劇中でピアノを弾いていますが。
「本当に弾いているように見えましたか? (記者が頷くと)良かった。経験がないのにオーディションで『弾けます!』と言ってしまって、4曲分の冒頭部分だけを必死に練習して何とか弾けるようになったんです。主演としての責任はきっちり果たさないといけないので」
──ピアノはもちろん、ほかにも多くの学びがあった作品なのでは?
「そうですね。ロスに4年間留学経験があるんですけど、全く英語がしゃべれない状態で渡米したんです。当時はお金もなかったから、移民用の無料教室でメキシカンたちと一緒に朝8時半から夜8時半まで勉強していました。朝5時からは木刀を持ってアクション稽古もしていたんです。あの時は英語が話せるようになるために必死でしたけど、今回の作品で1日1スクリームしてマックスの感情をずっと味わったことで、言葉じゃなくても伝えられるし感情表現もできると知りました」
叫び方も泣き方もカオリの感情によって異なってます
──叫び方も見どころということですね。「その時々のカオリの感情によって叫び方も泣き方も違うので、ぜひ観て頂きたいです。前半と母親役の美保純さんに抱きしめられて泣くシーンははっきりと違いが分かると思います。この手の作品が苦手な方もいらっしゃると思いますけど、個人的には作品が嫌われても構わないんです。毒にも薬にもならないよりは嫌いという感情も注目して頂けている証ですから」
──最後にプライベートの話も。インスタグラムでは弟さんがイケメンだと注目を浴びていますよね。
「今でも家族同士で『愛してるよ』と言い合うほど仲はいんですけど、弟と2人で食事に行くとカップルに間違えられることが多いから恥ずかしいんですよね。だから毎回お会計の時は店員さんに聞こえるように『ここはお姉ちゃんが払うから!』と姉弟だとアピールしています」
──そうなんですね(笑)佐藤さんは動物好きでもありますが。
「ふくろうカフェにも行ったりするんですけど、猫が好きなんです。でも、今や都内の猫カフェは“人カフェ”状態だから、何か違うなって(笑)本当は保健所から引き取った猫を飼わせてくれる猫マンションに住んでみたいんですけど、都内にはそういう物件が少ないうえに人気があるので、なかなか入居が難しいんですよね。だからバラエティ番組で猫好きを発揮してみたいですね」
INFORMATION
■映画『月光』
INFO&STORY
ピアノ教室を営むカオリ(佐藤乃莉)は、教え子の少女ユウ(石橋宇輪)の父親トシオ(古山憲太郎)から性的暴行を受ける。この事件で心身ともに深く傷ついたカオリは、過去の忌まわしい記憶までよみがえらせていく。一方、ユウも父親から性的虐待を受けていたが、誰にも相談できずひとり苦しんでいた。運命に導かれるように痛みを共有するようになる2人。やがて、カオリはユウの願いを叶えるためにある決断をする…。性暴力被害の問題に真正面から取り組み、人間の尊厳や希望を描いた作品。
CAST&STAFF
出演/佐藤乃莉・石橋宇輪・古山憲太郎・遠山景織子・上野優華・鳴神綾香・瑞生桜子・秋月三佳・川瀬陽太・高川裕也・黒沢あすか・美保純
監督・脚本/小澤雅人
配給/マグネタイズ
公式HP
6月11日(土)から新宿ケイズシネマほか全国順次公開中
(C)2016「月光」製作委員会
佐藤乃莉(さとう・のり)
1984年6月7日生まれ 新潟県出身
映画やドラマ、CMなど女優、モデルとして活動。近年の主な作品にドラマ「なぞの転校生」「SAKURA」「翳りゆく夏」、映画「LOVEDEATH ラブデス」「はなればなれに」「ユダ-Judas」「天使に“アイム・ファイン”」などがある。
公式HP
公式Instagram
■映画『月光』
INFO&STORY
ピアノ教室を営むカオリ(佐藤乃莉)は、教え子の少女ユウ(石橋宇輪)の父親トシオ(古山憲太郎)から性的暴行を受ける。この事件で心身ともに深く傷ついたカオリは、過去の忌まわしい記憶までよみがえらせていく。一方、ユウも父親から性的虐待を受けていたが、誰にも相談できずひとり苦しんでいた。運命に導かれるように痛みを共有するようになる2人。やがて、カオリはユウの願いを叶えるためにある決断をする…。性暴力被害の問題に真正面から取り組み、人間の尊厳や希望を描いた作品。
CAST&STAFF
出演/佐藤乃莉・石橋宇輪・古山憲太郎・遠山景織子・上野優華・鳴神綾香・瑞生桜子・秋月三佳・川瀬陽太・高川裕也・黒沢あすか・美保純
監督・脚本/小澤雅人
配給/マグネタイズ
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6月11日(土)から新宿ケイズシネマほか全国順次公開中
(C)2016「月光」製作委員会
佐藤乃莉(さとう・のり)
1984年6月7日生まれ 新潟県出身
映画やドラマ、CMなど女優、モデルとして活動。近年の主な作品にドラマ「なぞの転校生」「SAKURA」「翳りゆく夏」、映画「LOVEDEATH ラブデス」「はなればなれに」「ユダ-Judas」「天使に“アイム・ファイン”」などがある。
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