K-1の中心っていうだけじゃなく、ほかのスポーツとか音楽とか、あらゆるジャンルを含めた上でのスーパースターになりたい
新生K-1の世界王者として、常に“倒す闘い”を繰り広げる武尊選手。テレビ出演の効果もあって女性人気も急上昇中、さらに映画にも登場と話題が尽きませんが、11月3日の大会では2階級制覇をかけて57.5kgのフェザー級王座決定トーナメントに出場することに。常に世間を意識し、五輪やEXILEもライバルだという武尊選手に、K-1の魅力と、目標とする“スーパースター”への道についてたっぷり聞きました!
SPをつけないと、道を歩けないくらいになりたい
──8月にはKrush名古屋大会にエキシビションマッチで参戦されましたが、お客さんの熱気が凄かったですね。「普段、東京での試合になかなか来れない人たちが盛り上がってくれてうれしかったですね。僕も地方の鳥取出身なんで、気持ちが分かるんですよ。プロレスの巡業とか来ると凄い興奮して(笑)」
──地方大会に出ることで、改めて武尊選手の人気を実感しました。
「会場の隅でウォーミングアップしてたら、そこに人が集まってきちゃって、控室に戻されたんですよ。そういう、お客さんが自分を待っててくれる、注目してくれるっていう感覚が本当にうれしいんですよね」
──会場の雰囲気からも、「武尊が名古屋に来てくれるのを待ってた」というファンの気持ちを感じましたよ。
「東京から来てくれたファンの人もいるし、名古屋の人もいるし、もっと西のほうから『東京は遠いけど名古屋なら』という人もいて。僕のことを見に来てくれるっていうのはパワーになりますね」
──武尊選手が東京に出てきたのは格闘家として強くなるためですけど、じゃあそれが何のためかっていったら「スターになるため」と公言してますもんね。
「SPをつけないと道を歩けないくらいになりたいんで。そういう意味ではまだまだですけど、だから余計に『もっと頑張らなきゃいけない』『もっといい試合をしなきゃいけない』っていうモチベーションにもなりますね。K-1のチャンピオンになってから、ちょっとずつ顔が知られてきたなっていうのも感じますし」
──テレビのバラエティに出演する機会も増えてますから、そこで知る人も多いでしょうね。
「そこは凄く大事だと思います。今まで格闘技を見ていなかった人たちにアピールするっていうのが僕の役目だと思ってるので。やっぱり格闘技ファンとか、もともとスポーツが好きな人たちだけに向けていても大ブームにはならないと思うんですよ。今、K-1を知らない人に好きになってほしいですよね」
──スポーツ選手のテレビ出演は向き・不向きもあると思うんですが、武尊選手はいつも楽しそうなのが印象的です。
「ファンを増やしたいっていう気持ちがとにかく強いので、自分でも積極的になれるんですよね。K-1を広めるための、自分のやりたいことの一つっていう。前は自分でプロフィールを作って、事務所に売り込んだりもしてました」
──そこまでやるということは、武尊選手としては、格闘技を知らない人にも伝わる魅力がK-1にはあると確信してるわけですよね。
「もちろんそうです! 格闘技、特にK-1の面白さは世の中のすべての人に伝わると思いますね。オリンピックだって、人気のある競技はほとんど全国民が応援する感じじゃないですか。K-1もああなるといいと思います。あと、EXILEとかジャニーズが好きな人もファンになってくれるかなと。カッコいい男の人が歌ったり踊ったりすることで盛り上がる世界ですけど、僕は格闘家のほうがカッコいいと思ってるので」
──カッコいい人が見たいんだったら格闘技だよ、と。
「EXILE見るならK-1もね、って(笑)とにかく一回、見てもらえば分かると思うんですよ。あと子どものファンも大事ですよね。男の子ってちっちゃい時は仮面ライダーとかに憧れたりするじゃないですか」
──強くてカッコいいっていうのは永遠の憧れですからね。
「で、格闘技を習うと強くなれるよって。子どもたちがもっと格闘技を習うようになるといいですよね。見る人を増やすだけじゃなくて、やる人が増えるのもスポーツでは大事なので」
──テレビだけでなく、映画『リングサイド・ストーリー』にも出ることになりました。安藤サクラさん主演の『百円の恋』で高い評価を得た武正晴監督作品だけに、話題になりそうですね。
「プロレス・格闘技がモチーフの映画で、僕も格闘家の役なんですけど、恋愛の場面もあるんですよね……」
──…そこは、やっぱり難しいですか。
「格闘技のシーンはいつもやってる通りにできるんですけどねぇ。恋愛の場面は、いつも通りとはいかなくて(苦笑)演技は難しいですけど、挑戦しがいもありますね。もっと勉強したいっていうか、うまくなりたいと思いました。目指してるのがスパースターなんで『演技はちょっと』じゃダメだなって」
格闘技のどこが面白いかといったら、やっぱりKO
──武尊選手は、面白い試合をするっていうことに関してもかなり意識的ですよね。迫力のある試合をする、そしてKOで勝つ、という。「もともと僕自身が格闘技ファンなので。格闘技のどこが面白いかといったら、やっぱりKOだと思うんですよ。勝ち負けがはっきり分かりますし。闘っててもKOで勝つのが一番うれしいですし。見るほうとしてもやるほうとしても、やっぱり格闘技はKOですね」
──そのために、危険ではあるけど打ち合いもするっていう。
「格闘技って、相手に攻めさせたほうがこっちにもチャンスが出てくるので。安全運転しててもKOにはなりにくいんですよね。それに、僕は相手のパンチをもらうと楽しくなっちゃうので」
──危ない試合のほうが充実感がある?
「それはありますね。痛いから楽しいっていうと変ですけど。試合まで何ヶ月もかけて練習して、カラダ作ってリングに上がるので、ノーダメージで勝つと『あれ?』みたいな」
──仕事した気がしないというか。
「カラダのことを考えたらノーダメージのほうがいいんですけどね。でも現役生活は太く短くでもいいのかなって」 ──K-1のチャンピオンになってからは、追われる立場ですよね。対戦要求されることも多くなって。そういうポジションはどう感じてますか?
「正直、追われる立場っていうのは好きじゃないですね。ストレスがたまるっていうか。自分から追いかけるほうが好きなんですよ、なんでも。考えてみたら恋愛もそうですね(笑)」
──じゃあ人気者になればなるほどストレスがたまっちゃうじゃないですか(笑)
「だからこれからは、ほかの選手が追いかけたくなくなるくらいの存在になりたいですね。僕のことを追いかけてくるっていうことは、僕の背中が見えてるってことじゃないですか。そうじゃなくて、もう背中も見えないくらいに独走したいです。そこまで突き抜けちゃえば、ストレスもなくなると思いますね」
──「武尊とやりたい」「武尊に勝ちたい」とすら思わせないくらい強くなる、と。
「もう勝つのは決定事項で。『今回はどんな勝ち方するんだろう』って思わせるくらいになりたいですね。そこまで突き抜けて、K-1の中心っていうだけじゃなく、ほかのスポーツとか音楽とか、あらゆるジャンルを含めた上でのスーパースターになりたいです。ジャンルとか関係なくただの“スーパースター”っていう(笑)」
──もう「K-1王者の」とか関係なく大人気、みたいな。
「田舎にいた頃からそうなんですよ。スターになるために東京に行くというのはずっと前から決めてたし、考えたのは『強くなるにはどのジムが一番いいんだろう』っていうことくらいで。普通とかみんなと同じっていうのが嫌だったんですよね。いくつかあるものの中から一つ選ぶっていう時には、絶対にみんなと違うものを選んでましたし。根拠はないんですけど『俺だけは違うよ』って思ってました(笑)」
──今回、保持していた55㎏のタイトルを返上して、11月3日に行われる57・5㎏の王者決定トーナメントに参戦することになりました。優勝すれば初の2階級制覇となります。
「55㎏だと、かなり減量に集中しないと厳しかったので、いいタイミングだと思います。試合前の2週間くらいはフラフラでしたからねぇ。体重に余裕があれば、それだけ練習もハードにできるのでいいと思います」
──減量を気にせず、より強くなることに集中できそうですか。
「階級を上げる分、もっとパワーをつけることもできると思うので。たぶん、今のベストの体重は57㎏だと思うんですよ。57・5㎏だと、それプラス500gあるので、今より筋肉がつけられますし、確実に55㎏より強くなれるなと」
──新たな目標ができるということは、新たなモチベーションにもなりますよね。
「さっきも言ったみたいに追いかけられるのが嫌いなので(笑)新しい目標を追いかけるのは楽しいですね。やっぱり、ずっと挑戦していたいんですよ。55㎏のチャンピオンだと、どうしても守るだけになっちゃうので」
──本来のギラギラした魅力も出やすいでしょうね。
「僕は、褒められて伸びるタイプなので。2階級制覇を達成して褒められたいですね(笑)」
──「さすが武尊!」と(笑)
「選手は褒められるのが一番パワーになりますから。11月3日は勝ってみんなに褒められたいですね(笑)」
PROFILE
武尊(たける)
1991年7月29日生まれ 鳥取県米子市出身
少年時代に空手を始め、高校卒業後に上京。立ち技格闘技イベントKrushの-58kgチャンピオンを経て、15年4月のトーナメントに優勝し、K-1の-55kg王者となる。大晦日の「RIZIN」でもKO勝ちしてさらに人気に。戦績は26戦25勝(16KO)1敗。チームドラゴン所属。初代スーパー・バンタム級(-55kgから名称変更)王者のタイトルを返上し、11月3日(木・祝)に国立代々木競技場第二体育館で開催される「K-1 WORLD GP 2016 IN JAPAN 〜初代フェザー王座決定トーナメント〜」(※-57.5kgから名称変更)への参戦を発表。2階級制覇に注目が集まる。出演映画「リングサイド・ストーリー」は17年春公開予定。
公式ブログ
公式Twitter
武尊(たける)
1991年7月29日生まれ 鳥取県米子市出身
少年時代に空手を始め、高校卒業後に上京。立ち技格闘技イベントKrushの-58kgチャンピオンを経て、15年4月のトーナメントに優勝し、K-1の-55kg王者となる。大晦日の「RIZIN」でもKO勝ちしてさらに人気に。戦績は26戦25勝(16KO)1敗。チームドラゴン所属。初代スーパー・バンタム級(-55kgから名称変更)王者のタイトルを返上し、11月3日(木・祝)に国立代々木競技場第二体育館で開催される「K-1 WORLD GP 2016 IN JAPAN 〜初代フェザー王座決定トーナメント〜」(※-57.5kgから名称変更)への参戦を発表。2階級制覇に注目が集まる。出演映画「リングサイド・ストーリー」は17年春公開予定。
公式ブログ
公式Twitter
取材・文/橋本宗洋 撮影/おおえき寿一