『レ・ミゼラブル』や『レミング』など大舞台で実力を研磨してきた女優の万里紗さんが、渾身の体当たりで挑んだ初主演映画『眼球の夢』が7月30日から公開。カメラを手に魔都TOKYOを、生き別れた眼球を探し求めて彷徨うという難役とどう向き合い演じたのか、話を聞いた。
佐藤監督にはすべての面で愛情で導いて頂きました
──本作で一糸纏わぬ姿を披露していますが、撮影前に戸惑いが生じたりはしませんでしたか。「麻耶の苦しみを受け入れて表現させて頂くためには必要なシーンでしたし、フランス映画の女優さんたちはキャリアの一貫として潔く脱ぎますよね。だから戸惑ったりはしなかったんですけど、完成作を観たら意外に長いな、と思いました」
──確かに見応え抜群です。
「(桜木)梨奈ちゃんとの濡れ場は、中野(剛)さんとのシーンより先に撮影したんです。中野さんが事前に細かな段取りをしてくださった時に気づいたんですけど、梨奈ちゃんとのシーンは役柄的に私が率先して段取りをしなければいけなかったんです。あとから分かったことだからどうしようもないんですけど、ゴメンナサイ!と今でも思います。現場では、とにかく彼女が美しく見えるよう必死だったので」
──佐藤寿保監督からはどのようなアドバイスがありましたか。
「濡れ場の撮影は現場でアドリブ的に追加の要求が増えて、演じてから微調整して頂いたんですけど、すべてにおいて愛情で導いて頂きました。『映画を撮る時にタブーなんてない』という気概がある、カッコイイ方でしたね。佐藤監督と川瀬(陽太)さんの打ち合わせを聞いた時は、この人たちすごい!とビックリしたんです。監督が『脳みそは動いているんだけど体は言うことを聞かない感じ』とおっしゃったら川瀬さんが『ああ、そういう感じですね』と即、感覚を共有し合っていたんです。死んだこともないのになぜそれほどスムーズにイメージを共有できるの!?と驚いたんですけど、撮影を通じて私、何となくその感覚が分かるようになったんです。お芝居をしている中で初めての経験で、監督の持っていらっしゃるセンスの片鱗をもらえたのかな、と感じました」
現実と夢の間を浮遊する感覚おとぎ話のような作品です
──ほかに監督からアドバイスで印象に残っていることは。「麻耶はとにかく走るシーンが多いんです。でも私、実は小中とリレーではビリになるぐらい走るのが遅くて。それを初めて知った監督が衣装合わせの後、渋谷でランニングレッスンをしてくださいました。フォームも修正して頂いたんです」
──生き別れた眼球を探し求めるという難役ですが、麻耶をどう捉えたのでしょうか。
「作品の登場人物ってみんなちょっとずつおかしいんですけど、麻耶はざっくり言うと不器用でこの社会では生きづらい人間にカテゴライズされるので、実は共感できるキャラクターだと思うんです。異性に見られる存在である自分とどう向き合っていくかという過程も描かれているので、特に女性が観たら分かる!と感じてもらえると思います。観ていると現実と夢の境目をたゆたうような感覚になる、おとぎ話のようなストーリーなので、この浮遊感を劇場で体験してみてほしいですね」
──作品になぞらえた話も。麻耶は眼球に執着しますが、ご自身がハマっていることは?
「カレーライスの食べ歩きです。仕事で地方に行った時はカレー屋さんをチョイスすることが多いです。都内だと恵比寿のシャナイアや高円寺のネグラによく行きます。高円寺のお店はインドに一度も行ったことがない方が妄想で本場のインドカレーを作っているんですけど、すごく美味しいんですよ」
──なるほど。ところで万里紗さんは純日本人ではないですよね。
「父にスペイン、フィンランド、アイルランド系と複数の国籍が混ざっています。だから私自身も国に対する帰属意識はそれほど強くないんです。でも英語がしゃべれなかったので、英会話教室に通って習得したんです。幼い頃ちょうどウエンツ瑛士さんたちが人気で、私も英語がしゃべれなくて同級生にからかわれたのが悔しくてモノにしたんです。なので今後は英語を活かしていきたいのはもちろん、コンタクトできれば表現の場は制限せずにお芝居を続けていきたいですね」
INFORMATION
■映画『眼球の夢』
INFO&STORY
“生き別れた眼球”を探し求め、カメラを手に魔都TOKYOを彷徨う麻耶(万里紗)。浮遊するがごとく眼球を探し求める麻耶の姿を記録する脳外科医の佐多(中野剛)と、麻耶の眼球を狙う黒ずくめの怪しい眼球コレクター蟻塚(PANTA)。点であった3人が1つの線となった時、血の惨劇が魔都に繰り広げられる…。ピンク四天王・佐藤寿保監督が追い続ける“視線の暴力”、その根源である眼球を巡るアバンギャルドな世界を描いた日米合作映画。
CAST&STAFF
出演/万里紗・桜木梨奈・中野剛・PANTA・小林竜樹・佐川一政・シャイリー波輝・川瀬陽太・和女
監督/佐藤寿保 脚本/夢野史郎 配給・宣伝/太秦
公式HP
7月30日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(C)2016 Arrete Ton Cinema, Stance Company
PROFILE
万里紗(まりさ)
1990年11月19日生まれ 神奈川県出身
00年から芸能活動を開始も、学業優先のため一時休止。11年より再開。近年の主な作品に舞台「レ・ミゼラブル」「レミング」「ブエノスアイレス午前零時」「残花~1945 さくら隊 園井恵子」、映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」などがある。10月7日より上演の舞台「るつぼ」に出演する。
公式Twitter
■映画『眼球の夢』
INFO&STORY
“生き別れた眼球”を探し求め、カメラを手に魔都TOKYOを彷徨う麻耶(万里紗)。浮遊するがごとく眼球を探し求める麻耶の姿を記録する脳外科医の佐多(中野剛)と、麻耶の眼球を狙う黒ずくめの怪しい眼球コレクター蟻塚(PANTA)。点であった3人が1つの線となった時、血の惨劇が魔都に繰り広げられる…。ピンク四天王・佐藤寿保監督が追い続ける“視線の暴力”、その根源である眼球を巡るアバンギャルドな世界を描いた日米合作映画。
CAST&STAFF
出演/万里紗・桜木梨奈・中野剛・PANTA・小林竜樹・佐川一政・シャイリー波輝・川瀬陽太・和女
監督/佐藤寿保 脚本/夢野史郎 配給・宣伝/太秦
公式HP
7月30日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(C)2016 Arrete Ton Cinema, Stance Company
PROFILE
万里紗(まりさ)
1990年11月19日生まれ 神奈川県出身
00年から芸能活動を開始も、学業優先のため一時休止。11年より再開。近年の主な作品に舞台「レ・ミゼラブル」「レミング」「ブエノスアイレス午前零時」「残花~1945 さくら隊 園井恵子」、映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」などがある。10月7日より上演の舞台「るつぼ」に出演する。
公式Twitter
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら