ヘビースモーカーで大酒飲み。納言の漫才では革ジャンに身を包み、巻き舌調でしゃべるガラの悪そうな女のキャラを多く演じていることもあり、〝やさぐれ女〟と呼ばれる薄幸さん。日常に欠かせない、趣味でもあるタバコ&お酒トークに終始しつつも、さまぁ~ずさんへの憧れも手伝って芸人になった経緯、小5から高2までやっていた子役時代の話、人気を得た街ディスりネタについて、アルバイトの話、今後の展望まで聞いてみた。酒との関係は切っても切れなそうです…。
『テレビに出始めてから同じペースで働かせて頂いているのでこれが続けば』
タバコを吸うジェスチャーをしながら街をディスったら大ウケして
──日常に欠かせないタバコの最新事情からいいですか。「日に3箱ぐらいでセブンスターメンソール12ミリ、ピアニッシモの2銘柄とIQOSを使い分けてます。基本はセッターで時間があるとまとめて吸っちゃうのでチェイサー代わりにピアニッシモを挟んでまたセッターに戻って〆る。IQOSは電子しか吸えない店用に。家では換気扇の下で吸うんですけどソファーから動きたくない時は電子タバコに手を伸ばします」
──喫煙で困ることは。
「居酒屋でも吸えない店がいっぱいあって…でも〝我慢タバコ〟が好きで1時間ぐらい我慢して喫煙スペースで吸うのってめっちゃウマいので意外と席で吸えなくても大丈夫です」
──ただ、小畑きみ役で出演のTBSドラマ「差出人は、誰ですか?」の現場では苦労されたとか…。
「学園モノなので撮影の大半が学校で、喫煙できるところが出口から3分ぐらい歩く場所にあって大変でした。出演者の多くが10代の俳優さんで18歳未満のコって22時以降は働いちゃいけないじゃないですか。私の出番は22時以降が多く、10代のメインのコたちが帰ると駐車場にある喫煙車両も帰るんです(笑)私だけのシーンになると『コイツのために喫煙車を用意するのはあれだな』って」
──そんなタバコですが、吸うフリしながら街をディスるネタで人気が出ました。
「最初は断れずに風俗嬢になっちゃうネタで分かりやすくするために鶯谷の街を選び、タバコを吸うジェスチャー入れてディスったらウケたのでそこから毎回入れるようにして。街ディスりのストックは100以上はあります。一回、お酒を飲むジェスチャーでやったことがあったけど同じことを言っても全然ウケなくて、以来ずっとタバコですね」
──話はタバコから離れますがピン芸人時代には辞めたいと思ったこともあったと聞きました。
「男性芸人がいるライブだと通用せず、オーディションも受からなくてモチベーションがなくなっていたので辞めようかな?って時に今の相方の安部から誘われてコンビを組んだらポンポンと調子よくイケたので続けたって感じです。両親にも相談しました。お父さんから『もうちょっと続けなよ』と辞めるのを止められ、親は辞めてほしいはずですが驚きました。今は感謝してますね」
──17年に納言を結成。翌年M-1ですぐに結果が出ます。
「1年目の時は2回戦で落ちたけどウケたので、来年こそイケるだろうという確信、手応えがありました。で2年目は風俗嬢をキャバクラ嬢に変えて、同じネタだったんですけど準々決勝まで一気にイケたんです」
──以降は、順風満帆な芸人人生を歩まれて。
「一度も爆発的に売れたと思ってなくてテレビに出始めてから今までずっと同じ。週1休みぐらいのペースなのでそこまで疲れない。いい働き方というか(笑)自由にお仕事をさせてもらってます」
──3年目にはテレビ出演が急増しバイト生活も卒業。
「ギャラって遅れて入るので、バイトは辞めましたが忙しいけどお金はない。借金でしのぎました。お金を持ち始めるのは19年の後半だったので、半年ぐらいはバイトをしている時より貧乏でした」
──どんなバイトを?
「一番最後は融通が効くことを最優先に考えていたので週1程度、定食屋さんにホールで入ってました。庄や、日本海庄やの居酒屋掛け持ちもしました(笑)ライブに出て22時から朝4時までとか夜勤だとそんなに仕事に影響がないので。賄いもありますし、店によっては始発までみんなでお酒を飲んで待つことができたので」
──芸人の道へ進んだ経緯を教えてください。
「歌手でもアイドルでもタレントでもよかったんですけど小さい頃からテレビの中の人になりたいと思っていて小学5年生から子役をやって。ただ破滅的に演技がヘタなんです(笑)『あなたは演技のセンスがない天性の人だ』と当時のマネージャーから言われて、諦めました。映画やドラマじゃなくテレビはバラエティばかり観ていたのでお笑いを考えるようになり、そんな時にワタナベコメディスクールの相方探しイベントを見つけて。養成所に入るつもりはなかったけどそこで相方を見つけて高校生の漫才大会に出ようかなって参加したんです。そうしたら後日、養成所から電話がきて『キミは売れるよ。才能があるし、入学金も割引するのでぜひ』と。それだけ言われたらうれしくなって入学。後で知ったんですがみんなにそう言ってるみたいで、まんまと引っかかりましたがそれでも子役時代より楽しかったです」
──加えて、さまぁ~ずさんへの憧れもあったとか。
「一番好きな芸人さんでした。大竹さんと三村さんがただおしゃべりするだけの『さまぁ~ず×さまぁ~ず』という番組がホントに面白くて。観覧にも行きましたし、ゆるい感じが大好きでした」
『仕事以外の夢は飲み友だちと一緒に芸人のサイフに優しい飲み屋を開きたい』
タバコとお酒が唯一の楽しみですけど内面はやさぐれていません!
──幸さんは〝やさぐれ女〟と称されることが多いと思いますが、ご自身では。「フジテレビの『ネタパレ』が最初かな、〝やさぐれ漫才〟と紹介されて。自ら『やさぐれてます』と言ったことがないので自分では思わないです。私生活はタバコとお酒が唯一の楽しみだったりしますけど性格もそんなにひねくれていないので内面は違います」
──そこが気になります。
「気遣いの人ではあると思いますね。酒席では特に。一緒にいる人のお酒がなくなるのがイヤでグラスを空にして欲しくないはあります。普段、先輩の男性芸人と飲むことが多いんです。トレンディエンジェルのたかしさん、トム・ブラウンの布川さん。2人がダントツ。ハゲ、ロン毛、ハゲ、ロン毛、たまにカズレーザーさん、金髪が入ります(笑)」
──このまま、お酒の最新事情を聞かせてください。
「酒量のアベレージは1日15杯ぐらい。生ビールやレモンサワーの炭酸系を2、3杯頂いた後にずっとお茶割り、ウーロンハイを。飲むのはほぼ店です。基本的に誰かとお店で飲んでますね」
──店選びのポイントは。
「一緒に飲む人によって変えます。カズさんは目立ってバレるのでなるべく個室のところを選んだり。布川さんはあまり知られていない年季の入った店が好きで、座敷を好むので座布団が敷いてあるところとか。たかしさんはタバコが吸えないとダメなので絶対に席で吸えるお店。私は飲めればキレイでも汚くても何でもいいので、こだわりはないです」
──「納言 幸のやさぐれ酒場」での新居公開の際に紹介されていた向上委員会のお酒というのは?
「フジテレビ『さんまのお笑い向上委員会』は収録が終わると疲れ果てて頭が痛くなるんです。なので、いつもは普通の麦焼酎、いいちこですけど頑張りました!のご褒美で飲むお酒。あと今、氷結無糖レモンにハマっていて毎日飲んでます」
お酒は好きなだけ飲んじゃうので何年経っても調整ができません… ──大好きなお酒が仕事と結びついて素晴らしいです。
「めちゃくちゃうれしいです。ラッキーって(笑)みなさんお仕事で飲んだ時、普段はもっと飲む人でもチェイサーで水を挟んだり調整しているんですよ。私は好きなだけ飲んじゃうので、何年経ってもできなくて…」
──大変なこともあるんですね。
「有り難い限りですけどたまに朝7時から飲酒ロケがあって、さすがにうれしくない。いつも深夜まで飲んでいるのでスタートが遅いんです。スタッフさんも『朝から飲めてうれしいでしょ』と言うんですけど早朝飲酒は……。ハシゴ酒のロケとか、スゴいスケジュールもあります」
──思い出深い番組を挙げると。
「『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)はよかったですね。本番前から楽屋で飲ませてもらって、なくなったら廊下にあるバーカウンターへ行ってお代わりをもらってまたいただいて。収録中も飲むし〝すべらない話〟のセットにいるうれしさ、そこでお酒を飲めている夢のような瞬間でした。また出たいです!」
──今後〝幸のやさぐれ酒場〟でご一緒したい方は誰ですか。
「錦鯉の(渡辺)隆さんが番組を好きらしく『あの番組を観るために長生きするから続けてよ』と私の番組のために長生きするそうなので呼びたいですね。忙しいからスケジュールが合わなくて。プライベートでも飲む機会が減りましたがこの間、ご一緒した時に誰もそんな話をしてないのに『次に旅行にいく時は誘ってよ』って急に言い出して(笑)楽しすぎたんだと思います」
──お酒絡みでいうと昨年、「今宵も、夢追い酒場にて」というエッセイ本を出されました。
「お酒の話ばかりなので、執筆中はどうしても飲みたくなっちゃうんです。番組のアンケートは休日でもお酒飲みながらはプロとしてダメだと、ちゃんとシラフで書いてますがあればかりは(笑)で、お酒を飲みながら書いていたら楽しくなって書くのを中断して飲みに行っちゃうこともありました。実は…予定より1年ぐらい発売が遅れたんです」
──そうだったんですね。ちなみに飲むとどうなりますか?
「記憶をぶっ飛ばすので、そこから先は分からないですね。酔って先輩に怒られたことがないのでケンカになるとかはないと思いますが、どうなっているかは…」
──1月24日に30歳の誕生日を迎えられました。
「20代で結婚したいと思っていた時期もありましたが、今は有り難いことにお仕事を頂いているのでそこまで思わないですし焦りもない。周りがオジサンばかりなので年齢を言うと『若いねえ~』となるので30歳だからどうとか、驚くぐらい何もないです。17歳で養成所に入ったので芸歴は12、13年。蛙亭やオズワルドが同期としているけど私が半年上で、そこは削ってますが意外とやっちゃっているので(笑)」
──最後に薄幸としての活動で今後の展望や目標は?
「仕事じゃないですけど、ゆくゆくは芸人のサイフに優しい飲み屋を開きたい。『芸人なんです』と申告したら半額にするとか、そういう店を飲み友だちと一緒にやりたい。まだお笑いをしっかり頑張れって話なので、実現するのは10年後ぐらいですかね」
──仕事面ではどうですか。
「意識が低いワケじゃないですが冠番組を持ちたいとかはなくて、さっきも言いましたがテレビに出始めてから同じペースで働かせて頂いているのでこれが続けば。観ない日はないとかじゃなくて気づけばいるなあ、が一生続けばいいなと思ってます」
INFORMATION
薄幸(すすき・みゆき)
1993年1月24日生まれ 千葉県柏市出身
養成所を経て10年から15年まで女性コンビ朝一番として活動。解散後、BSフジ「たけしの等々力ベース」でビートたけしから現在の芸名を名付けられピン芸人に。その後、17年に安部紀克と納言を結成。「M-1グランプリ2018」で準々決勝進出と注目を集める。「R-1ぐらんぷり2020」「R-1グランプリ2021」準々決勝進出、バラエティ、TBS系ドラマ「差出人は、誰ですか?」出演、著書「今宵も、夢追い酒場にて」上梓など様々なフィールドで活躍。SBSラジオ「週刊!しゃべレーザー」、テレビ朝日公式YouTube「動画、はじめてみました」内の「納言 幸のやさぐれ酒場」(毎週木曜更新)、文化放送公式YouTube「納言の耳ごろし」(毎週金曜更新)出演中。
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薄幸(すすき・みゆき)
1993年1月24日生まれ 千葉県柏市出身
養成所を経て10年から15年まで女性コンビ朝一番として活動。解散後、BSフジ「たけしの等々力ベース」でビートたけしから現在の芸名を名付けられピン芸人に。その後、17年に安部紀克と納言を結成。「M-1グランプリ2018」で準々決勝進出と注目を集める。「R-1ぐらんぷり2020」「R-1グランプリ2021」準々決勝進出、バラエティ、TBS系ドラマ「差出人は、誰ですか?」出演、著書「今宵も、夢追い酒場にて」上梓など様々なフィールドで活躍。SBSラジオ「週刊!しゃべレーザー」、テレビ朝日公式YouTube「動画、はじめてみました」内の「納言 幸のやさぐれ酒場」(毎週木曜更新)、文化放送公式YouTube「納言の耳ごろし」(毎週金曜更新)出演中。
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花