日芸で出会った塚本直毅さん、溜口佑太朗さんの2人が、初年度の「キングオブコント」出場をきっかけにコンビを組み、ラブレターズとしてデビュー。芸歴13年超。「キングオブコント」は3度、「歌ネタ王決定戦」が2度の決勝進出を誇る新婚コンビに出会いから〝逃げ出し事件〟の裏側、事務所ASH&Dについて、栄光の瞬間と、くすぶっていた時期の話、長く続けてこられた理由、一大イベント化した溜口さんの生誕祭SPまでお二人をゲストに迎えて直撃すると!!
『粘り強く気にしてくれた先輩芸人や番組スタッフさんのお陰です!!』
お互い大学卒業後はフラフラしてたけどコント大会で勝負しようと──塚本さんが2月、溜口さんが5月に結婚発表された新婚コンビですが、生活に変化はありますか。
溜口「休日でも奥さんが『仕事、大丈夫?』って心配しないように極力、外出してます。あとは『キングオブコント2022』もココでいかないと奥さんを食わせられないぞ!と気合いが入ります。結婚したことで、ひとつプラスで乗っかったかもしれないです」
塚本「ホントそう!これまでは自分だけでしたけど今は、ななえの分も頑張らないと」
溜口「知らないよ奥さんの名前。ラジオの『オールナイトニッポン0』で電話越しに生告白して、そこからだよね」
塚本「アルコ&ピースさんから、このやり取りをやっていったほうがいいとアドバイスされて初めてやってみたんですが、ドキドキしちゃって(笑)」
溜口「慣れてないからね。そんなに面白くなかったし」
塚本「失敗しました(笑)でも家族がいると気合いが入ります」
──大学が一緒という共通項もあります。日本大学藝術学部での出会いとコンビ結成の流れは?
溜口「塚本さんは作家の仕事をしたくて、僕は役者になりたかったけど卒業しても進路を決めかねていたんです。第1回のキングオブコントが始まるタイミングで大会に出たいと連絡したら、すぐに意気投合して記念受験しようと」
塚本「放送作家になろうと作家塾にも行っていました。コントのネタ出しが楽しくて大学の卒論もコントをテーマに綴って。でも書きたいけどやる場所がない。そんな時にちょうど大会があったので、よし!ココで勝負しようと」
──塚本さんが文芸、溜口さんは映画と学科違いですが。
溜口「日芸って学生が自主公演をバンバンやるんです。塚本さんは文芸なのに当時からこういうフォルムの人だったので重宝されて、舞台や映画にキャスティングされていて、映画学科に顔を出していたからそこで知り合いました」
塚本「いつも一緒にいる仲間ではなかったけど、そういう場面で一緒になって知ってる仲でした」
──アマチュアコンビで「KOC」に出場されて。
溜口「書きたいけどやってくれる人がいない、やりたいけどネタがない2人が〝記念受験〟と称して出場しました」
塚本「08年のキングオブコント、一回戦敗退でしたけど」
溜口「振るわなかったというか、ネタ中に逃げ出しちゃって…」
塚本「溜口さんは役者として舞台経験が数多くあって『本多劇場にも立ったことがある。そこで90分芝居もやってるし、予選の2分なんか全然大丈夫!』と言ってたのに…。僕は自分で書いたネタを初めて人前にプレゼンする場所だったので、ずっとドキドキ。で舞台に立ったらツカミから1分間ぐらいビックリするぐらいウケて」
溜口「そう!めちゃめちゃウケて。演劇とは大違いで、何だこの世界は!?と。お客さんとの距離が近いんです。最前が制服姿の女子高生でケタケタと笑っているのが怖くなって……」
──爆笑を取ったのに、どうしたんですか?
塚本「それが…ウケすぎて驚いたらしくて(笑)急に真っ青な顔になって黙っちゃって僕の頭を引っ叩いて舞台から消えてしまい、ええーって!!そのまま2人で裏の公園に行き、土下座したまま大会の参加料を返されました」
──そんな〝職場放棄事件〟があったんですね。
溜口「その時、同じ一回戦にバナナマンさんも出ていたんです。荷物を取りに戻り袖で見てたらプロの芸人はカッコいいなあって。もともと好きでしたけど、とんでもないパワーと覚悟を感じました。記念受験と言ってるのが恥ずかしくて。バナナマンさんに触発されたのをきっかけに、話し合いを重ねて年明けからお笑いライブに出ようと決めました」
預かりから所属まで2年を要したけど家族に迎え入れてくれました ──今の事務所を選ばれたのは?
溜口「塚本さんがシティボーイズさんを好きだったのと、大学卒業して2、3年経ってから始めているので今から養成所に行くのはキツい、お互い内向的なので体育会系ピラミッド型の事務所は向いてないって話になって大手の選択は全部なくなり(笑)人数が少なく、面倒を見てくれるところを探したら、ASH&Dが募集していて事務所ライブ内の新人コーナーに出演したのがきっかけです」
──所属が決まった時は。
塚本「09年の事務所預かりから正式所属まで2年かかりました。でも決まった時は新年会でシティボーイズさんも含めた全員で食事をして『今日から家族が増えます』と迎え入れてもらったのでうれしかったです」
──13年超の芸歴において、栄光と挫折の瞬間を尋ねられたら。
塚本「栄光はロバートさんやインパルスさんなどテレビで観ていた人と競った11年のキングオブコント決勝。先輩方100人に審査してもらうなんて二度とできない経験ですし。そこから14年に『オールナイトニッポン』を始めるまでが楽しく、ご褒美をもらっていた期間でした」
溜口「ラジオに続きフジテレビのコント番組も半年で終わり、徐々に仕事がなくなった時期は辛かったです。キングオブコントが途中でルールが変わり準決勝に上がれる人数が減った年から過去のファイナリストの中で僕らだけが進めなかった。一生懸命やってるけど第七世代もきてるし〝用済み感〟が漂ってきて…」
塚本「粘ってるな、オイって。下の世代の突き上げもあって」
溜口「芸人は優しいから『いつまでいるんですか』と冗談で言ってくれるけど、リアルなお客さんの反応を見ると今までと違う」
塚本「ライブシーンで切磋琢磨してきた芸人仲間が解散したり、いなくなった。結構食らったよね」
──それでも長く続けてこられた理由を分析すると?
塚本「苦しいとなった時でも気にかけてくれるスタッフさんや先輩のおかげな気がします」
溜口「アルピーさん、元テレビ東京の佐久間さん、テレ東の板川さんたちが『いつ売れるんだよ』と構ってくれたり、三四郎さんやオードリーさん、山里さん、みなさんが『もう売れてもいいのに』と名前を出してくれたり、界隈に流してくれたのがマジでデカい。僕らが何かを変えたわけではなく、先輩たちが粘り強く気にかけてくれていたおかげです」
──小誌が求人誌なのでバイトのエピソードもいいですか。
塚本「12年までアメフト情報番組のADをやってて、MCのオードリーさんの衣装を畳んだりしてました。ある時、春日さんに『実は芸人をやってまして、今後コントの大会があるんです』と言ったら『キングオブコントね、コントをやるコなんだ?』と。続けて『決勝に出るんです!』と報告させてもらったら『け、決勝!?』と驚かれたことがありました」
溜口「キングオブコントの決勝が決まった11年まで、スワローズの本拠地でもある明治神宮野球場でボールボーイのバイトしてました。スポーツ新聞にも『ヤクルトとW優勝だ!!』とか載ったりしてたので、試合終わりのクラブハウスへ荷物を運ぶ途中に、スタンドから『キングオブコント決勝、頑張れよ!』と普通のボールボーイでは聞けない声援をもらったりしてました(笑)あと7年やっていたのもあって球団の方から『ステージを用意したからファン感謝デーでネタをやってくれないか』と有り難い話を頂き、2人でボールボーイの格好でやりました」
塚本「東京ドームシティのお化け屋敷で働いたこともあります。芸人をやっていたので、お化け役で出る予定だったんですがキャストオーディションに参加させられて元気な大学生に負けてスタッフ側に回されるという(笑)」
『ミシンで縫った両袖を裂かれる時が輝く瞬間(笑)』
思いが強いキングオブコントは存在を示せる場所なので勝ちたい!
──原点でもある「KOC」は、お二人にとってどんな存在ですか。塚本「僕らがコンビを組むきっかけになった大会ですし思い入れは強い。存在を示せる場所でもあるので出続けたい」
溜口「何が何でも優勝を勝ち取らないと。ザ・ギースさん、ラブレターズのどっちでもいいからバンと跳ねたら『3組抱えの営業があるから』と事務所から言われていて。みんなが幸せになるからと」
塚本「じゃあ営業の窓口かな」
溜口「あっ、キングオブコントは営業の窓口で(笑)」
塚本「今年は我々が手の届くところにいるので何とか」
溜口「ASH&Dの宣伝、みんなの人生がかかった広報番組になれたらいいな(笑)トロフィーを事務所に持って帰りたい」
塚本「溜め込んできたものがあるのでほかのコンビよりは決勝に行きたい気持ちがあります」
溜口「意気込みの手応えはあるかもしれないですね」
塚本「このインタビュー記事掲載が結果が出た後と聞いて、言葉を選ぶ自分がいますけど(笑)」
──楽しみにしてます!溜口さんのソロライブ、次回が10月に開催。1月には生誕祭も控えます。
溜口「1人で何かは、頭にあったのでディナーショーをやってみるかと17年からスタート。だいぶ端折っちゃいましたけどバカバカしい歌や踊りをやりたい、僕がディナーを楽しんでいるところを見せるショーにしようと。それが評判良くて続いて変なお客さんがいっぱい増えて(笑)」
塚本「変なって言うな。毎回、後ろの方で観てるんですけど食べる瞬間にカメラのシャッター音だけが鳴り響いてます」
──構成もお一人で?
溜口「コントのピンネタは相方や作家のせきしろさんが書いてくれて助けてもらってますが、ほかは自分で考えてます」
塚本「人情劇の演目もあるよね。毎回、二度とやりたくないと言ってますけど」
溜口「相方がいるのに何でやらなきゃいけないのって。でも楽しいし、甘やかしてくれる。チヤホヤされるのが好きなので(笑)」
塚本「ずっと活動してきて来年1月は事務所が『全面的に絡んでいいですか』とバックアップを約束してくれました」
溜口「1人で会場を押さえたり、スタッフを集めていたけどようやく事務所が動いてくれた。確定ではないですけど『生誕祭SP』の日は所属タレント全員のスケジュールを空けておきますと言ってました(笑)みなさん忙しいでしょうけど、もしかしたらシティボーイズさん、阿佐ヶ谷姉妹さんが出るかもしれない」
──最後に今後の抱負や目標を聞かせてください。
溜口「キングオブコントの優勝はマストで取らなきゃいけない。直近だと何だろう、先々の目標を立てても横から『うるせえよオマエら!』って人たちが次々と現れるから意味がないんですよ。なので積み上げた缶を、おりゃあ!と先輩芸人に蹴飛ばされるような状態にしていければ、ガシャンと倒されるの待ちで(笑)コントをやり続けて、塚本さんだったらミシンのYouTube」
塚本「今日の服も上下、ミシンで縫いました」
溜口「そのうち両サイドをビリッてやってくる先輩が現れるから。でもそれって僕らが輝く瞬間なんです」
塚本「せっかくつけた両袖がなくなった時が一番輝く…(笑)自分たち的には今まで通り地道に」
溜口「『ちょっとやめてくださいよ!』待ちでね。それが面白くなるように形を作っていければ」
PROFILE
ラブレターズ
ともに日本大学芸術学部卒業。09年にコンビ結成。11年、14年、16年と「キングオブコント」で3度決勝に進出し今年の「キングオブコント2022」も準決勝進出を決めた。事務所主催のライブ「東京コントメンR」が9月30日(金)19時から渋谷ユーロライブにて開催。10月22日(土)に「溜口スーパーディナーショー」、23年1月に「生誕祭SP」が行われる。YouTubeラジオ「ラブレターズの階段腰掛け男」(毎週月曜23時)配信中。
塚本直毅(つかもと・なおき)
1984年12月28日生まれ 静岡県出身
公式Twitter
溜口佑太朗(ためぐち・ゆうたろう)
1985年1月19日生まれ 埼玉県出身
公式Twitter
公式Instagram
ラブレターズ
ともに日本大学芸術学部卒業。09年にコンビ結成。11年、14年、16年と「キングオブコント」で3度決勝に進出し今年の「キングオブコント2022」も準決勝進出を決めた。事務所主催のライブ「東京コントメンR」が9月30日(金)19時から渋谷ユーロライブにて開催。10月22日(土)に「溜口スーパーディナーショー」、23年1月に「生誕祭SP」が行われる。YouTubeラジオ「ラブレターズの階段腰掛け男」(毎週月曜23時)配信中。
塚本直毅(つかもと・なおき)
1984年12月28日生まれ 静岡県出身
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溜口佑太朗(ためぐち・ゆうたろう)
1985年1月19日生まれ 埼玉県出身
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花