映画監督や脚本家から絶賛コメントが相次いでいる話題の、台本なしの即興芝居で紡がれた映画『無限ファンデーション』が8月24日から公開。本作で過去と未来をつなぐ重要な役を演じている俳優・嶺豪一さんが現場でのマル秘エピソードを交えつつ、作品への思いや「未来」に対する印象などを語ってくれた。
「高校生の葛藤と無限に広がる未来を描いた青春群像劇です。監督がおっしゃっていましたが僕も、特に夢を追う人や何かを始める人、自分をリセットしたい方にご覧頂きたいです」
即興劇で箱書き頼りに芝居因数分解を書くシーンは…
──本作は全編即興劇。演じるのは難しかったのではないでしょうか。「最初はシナリオがあったらしいのですが、限られた日数で面白いエンターテイメント作品にするために、あえて即興劇にしたそうです。演じる時は箱書き(台詞はなく、キャラクターや場所、時間、出来事などの要点をシーンごとにまとめたもの)が頼りでした。他には西山さんが演じた小雨と、恋愛関係ではないけれどつながりがあって今も想っているという点と、順撮りにしてもらえたことで感情のつながりが保ちやすく、それに助けられました」
──教師の滝本裕介役を演じる際に意識したことはありますか。
「滝本は数学の教師であり、演劇部の顧問なんです。顧問を演じるシーンでは、生徒役のみなさんは話し合いをしたらしいのですが、僕は教師役なので参加しませんでした。だからどんなシーンになるのか、演じている最中もドキドキしましたね。数学の教師としては南沙良さんが演じた主人公の未来に教えるシーンがあるんですが、数学教師役を演じる以上、やはり数学が強くないとと思って、偶然にも数学に強いスタッフさんがいたので、事前に教えて頂きました。本番では、黒板全体を使って因数分解を書いたんです。残念ながら、画面の端にしか映っていませんが……(笑)」
合宿所スタイルでロケ敢行監督が激怒の理由に大笑い
──未来に数学を教えている最中、「高校の時はギター&ボーカルをしていた」と語っていました。即興劇ならではで、ご自身の経験を重ねたのでしょうか。「高校時代にバンドのボーカルをしていたので、膨らませました。といっても確か当時、タワーレコードが開催した『ヘタレバンド集合』という名前のイベントに1回だけ参加した程度ですけど。4〜5曲演奏したのですが、メンバーがそれぞれ好きな曲を選んだのでテイストはバラバラ。僕は本番の日を忘れていてメンバーに電話で知らされ急いで駆けつけた上に、ブルーハーツさんの『終わらない歌』の歌詞を忘れてサビを繰り返し、本当に終わらなくなってしまって…(笑)この映画の原案になった、小雨さんとはレベルが違いすぎる過去の話です」
──ロケ地の群馬県高崎市ではどうすごされていましたか。
「合宿のように全員、一軒家に泊まり込みで撮影をしたんです。1階が女性で2階が男性と分けて。 僕は2日目に合流したのですが、人数が多いので寝床がぎゅうぎゅうで。その上、一緒に寝ていた大崎(章)監督のイビキが大音量だったんです。周りで寝ている僕らを気遣ってくれたスタッフさんが監督を起こして2階から移動させられたのですが、監督はショックだったらしく、スタッフさんに『ころすぞー』と真顔で怒っていたそうで(笑)僕はその後を知らないのですが、監督に怒られてシュンとうなだれるスタッフさんと、周りで笑いを堪えているスタッフさんの構図が面白かったらしく、夜になるたびにその話で盛り上がっていました」
──あはは!映画の原案となった楽曲は『未来へ』です。嶺さんが「未来」という言葉に持つ印象は。
「未来という単語一つだけだと、漠然としすぎていて捉え方が難しい。『未来』の前に『少し先の』や『明るい』など言葉をプラスすると、どういう未来にしたいのかを思い描きやすくなるのではないかと思いますが。未来か…探しておきます!」
──なるほど。プライベートなお話も。料理が趣味とのことですが。
「地元、熊本のばあちゃんの家がラーメン屋で、小さい頃から手伝っているうちに上達したんです。今は亡くなってしまいましたが、料理をするとばあちゃんを思い出しますね。最近、よく作っているのは餃子。完成するまでの工程の面倒くささが好きで。具材を変えるだけで味も変わるので、たくさん作って冷凍したり、友達を自宅に呼んで食べたりしています」
──改めて作品の魅力をお願いします。
「この作品は、映像に映っていない部分にとても助けられてできているんです。監督は僕と同じで地元愛が強く、しかも昔は応援団に所属していたとのことで、後輩の皆さんから差し入れを頂いたり、宿泊所を提供して頂くことで完成にこぎつくことができたと感謝しています。演劇部の生徒たちが起こす問題も、彼女たちが撮影していないところで関係性を構築していたからこそ、複雑なテイストがうまく映りこんでいると思います。僕は夢を諦めた人物を演じていますが、高校生の葛藤と彼女たちの無限に広がる未来を描いた青春群像劇です。監督がおっしゃっていましたが僕も、特に夢を追う人や何かを始める人、自分をリセットしたい方にご覧頂きたいです」
INFORMATION
■映画『無限ファンデーション』
【INFO&STORY】
人付き合いが苦手な女子高生・未来(南沙良)はある日、リサイクル施設から聴こえてくる澄んだ歌声に導かれ、不思議な少女・小雨(西山小雨)と出会う。そして、未来が描いた洋服のデザイン画を目にしたナノカ(原菜乃華)たちに誘われて、演劇部に衣装スタッフとして入部。未来は戸惑いながらも少しずつ小雨やナノカたちに心を開いていった。そんな彼女たちのひと夏は思いがけない方向へと走り出していく…。『お盆の弟』の大崎章監督が西山小雨の楽曲「未来へ」を原案に、未来へと向かう10代の少女たちの姿を即興芝居で紡いでいく。
【CAST&STAFF】
出演/南沙良・西山小雨・原菜乃華・小野花梨・近藤笑菜・日高七海・池田朱那・佐藤蓮・嶺豪一・片岡礼子
監督/大崎章
音楽・主題歌/西山小雨
配給/SPOTTED PRODUCTIONS
公式HP
8月24日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
PROFILE
嶺豪一(みね・ごういち)
1989年7月17日生まれ 熊本県出身
多摩美術大学の卒業制作作品『故郷の詩』で監督・脚本・主演を務め、PFFアワード2012審査員特別賞など数々の賞を受賞。近年の映画出演作は『菊とギロチン』『リバース・エッジ』『二十六夜待ち』など。公開待機作に『漫画誕生』『魔法少年☆ワイルドバージン』『海風』がある。
公式HP
■映画『無限ファンデーション』
【INFO&STORY】
人付き合いが苦手な女子高生・未来(南沙良)はある日、リサイクル施設から聴こえてくる澄んだ歌声に導かれ、不思議な少女・小雨(西山小雨)と出会う。そして、未来が描いた洋服のデザイン画を目にしたナノカ(原菜乃華)たちに誘われて、演劇部に衣装スタッフとして入部。未来は戸惑いながらも少しずつ小雨やナノカたちに心を開いていった。そんな彼女たちのひと夏は思いがけない方向へと走り出していく…。『お盆の弟』の大崎章監督が西山小雨の楽曲「未来へ」を原案に、未来へと向かう10代の少女たちの姿を即興芝居で紡いでいく。
【CAST&STAFF】
出演/南沙良・西山小雨・原菜乃華・小野花梨・近藤笑菜・日高七海・池田朱那・佐藤蓮・嶺豪一・片岡礼子
監督/大崎章
音楽・主題歌/西山小雨
配給/SPOTTED PRODUCTIONS
公式HP
8月24日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
PROFILE
嶺豪一(みね・ごういち)
1989年7月17日生まれ 熊本県出身
多摩美術大学の卒業制作作品『故郷の詩』で監督・脚本・主演を務め、PFFアワード2012審査員特別賞など数々の賞を受賞。近年の映画出演作は『菊とギロチン』『リバース・エッジ』『二十六夜待ち』など。公開待機作に『漫画誕生』『魔法少年☆ワイルドバージン』『海風』がある。
公式HP
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一