日本全国に感動を呼んだ大名作『くちづけ』が、“タクフェス”の第3弾として、ついに再演。来たる10月7日の東京公演を皮切りに、全国10都市をめぐるツアーがスタートする。そこで、脚本・演出、そして出演の宅間孝行さんと、“兄妹役を演じる上原多香子さんを直撃。稽古入り直前の意気込みをうかがった──。
「どんなに演じても、新しい発見があるのが、舞台の良さ。今回の 『くちづけ』も、いい意味で全然違うところに進化していけたらな、と」(宅間)
「見えてくるものと、慣れてくる部分とを修正しながら、毎日新しい気持ちで公演に臨むっていうのが、舞台の難しさであり、醍醐味かな」(上原)
感動の嵐を巻き起こした名作がついに再演決定!!
──今回の舞台は、大反響を呼んだ10年の初演から、13年の映画化を経ての再演ですが、宅間さんご自身は、変わらず「うーやん」役ですか?宅間「そうですね。僕がうーやんで、タカちゃんが、映画では田畑智子ちゃんが演じていた妹のトモちゃん役。彼女とは、去年の『夕』で、初めてご一緒させてもらって、女優さんとしてホントに素晴らしかったので、『今回もぜひ』ってことでお願いしたんです」
──上原さんは、非ミュージカルのいわゆる“ストレートプレイ”は前回が初めての経験だったと聞きました。宅間さんとの共演はいかがでしたか?
上原「私にとっては、ストレートプレイはもちろん、ご自身で出演もされる演出家の方とご一緒するのも初めてだったので、日々勉強させてもらったって感じでしたね。なにしろ、演出家が役の衣装を着たまま、舞台袖でずっと観ていらっしゃるので、毎日違うお客さんの前で演じるっていうのとはまた違う緊張感もありましたし(笑)」
宅間「目線に入るから、そこに立たないでくれって感じだよね」
上原「白い衣装だったから、暗転しても目立つんですよ(笑)ただ、なにかあっても舞台上の宅間さんに助けてもらえるっていう安心感はすごくありましたね。稽古中はずっと代役を立てて演出に専念されていたから、最初は正直不安もありましたけど…。確かご自分の役に入られたのは、最終稽古の3日前ぐらいでしたもんね?」
宅間「共演者からしたら、かなり迷惑だよねぇ(笑)でもまぁ、みんなの芝居を固めるのが最優先だし、一度やっている作品ではあるから、僕自身が迷うってことはない。そもそも、舞台ってものは、やっているうちにどんどん変わっていくものですしね」
上原「そうなんですよね。お客さんの反応がダイレクトだから、自分では、『今日は上手くいった』と思えても、『こないだのほうがよかった』って言われることもあるし、その逆もある。初日から日が経ってくると、だんだん自分の中で見えてくるものと、慣れてきちゃう部分とが出てきて、そういうものを毎日修正しながら、新しい気持ちで公演に臨むっていうのが、舞台の難しさであり、醍醐味なのかなっていうのは感じましたね」
宅間「そうそう。去年の話ばかりして申し訳ないけど、『夕』なんかは、03年に初演をして以来、何度も再演している作品なのに、最後のシーンが公演中に劇的に変わったぐらいですからね。お客さんからしたら当然、賛否はあるだろうけど、それだけ回数を重ねてもまだ『コレだ!』っていう発見があるのが、舞台の良さ。そういう意味では、今回の『くちづけ』に関しても、いい意味で全然違うところに進化していけたらな、と思ってます」
他作品は“借りてきた猫”!? 本来の居場所はやはり舞台
──ところで、宅間さんはご自身で演出される以外にも、俳優として数多くの作品に出演されていますよね。やはり、そういう時のスタンスや気持ちはまったく違うものですか?宅間「違いますね。ほかに演出家の方がいる映像の現場なんかでは、僕、すんごいイイ子ですから(笑)自分がうるさいぶん、逆だったらこうあるべきじゃないかなってことで」
上原「そんな“イイ子”な宅間さんに一度会ってみたいですよ(笑)」
宅間「違いすぎて、たぶんビックリすると思うよ(笑)内心では、どんなに『つまんない』と思っていても、現場では『あ、どーも!』と努めて笑顔。やっぱりそこは、お仕事ですからね」
──だとすると、『くちづけ』が映画化された際も、ご自身は役者に徹していた感じですか?
宅間「堤さんからは『いろいろ言ってほしい』と言われたんですけど、演出家が現場に二人っていうのもよくないなと。なんで、基本的にはお任せしましたね。堤さんはもともと原作をすごくリスペクトしてくださっていたし、作品自体は監督のものとして世に出るわけですからね」
公演の最初と最後に行うライブタイムでハイタッチも
──なるほど。では、そんな宅間さんの“本来の姿”も観られる『くちづけ』の再演に向けて、最後に読者に向けてひと言ずついただければ、と。上原「そうですね。私自身が観客として観たいと思うぐらい、素晴らしい作品だと思いますし、ふだんは演劇を観ないという方でも、一度来ていただければ、きっと2回、3回と観てみたくなると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけるとうれしいです」
宅間「テーマだけ聞くと、カタッ苦しい話と思われるかもしれないですけど、エンターテインメントとしてちゃんと観られるものにはなっているはずなんで、“ナマ上原”が目当てでもいいので、ぜひ来てください。僕らの公演ではいつも、最初と最後にライブタイムみたいなものもやっているので、もしかしたら“ナマ上原”とハイタッチとかもできちゃうかもしれませんよ、ということで(笑)」
──それは行くしかないですね(笑)今回はありがとうございました!
INFORMATION
■タクフェス第3弾『くちづけ』
INFO&STORY
知的障がい者たちの自立支援のためのグループホームひまわり荘では、カラダは大人、心は純真な子供のままの人たちが、みんなで楽しく暮らしている。そんなホームにかつて大ヒット作品を一度だけ世に送り出した、漫画家の愛情いっぽんが娘のマコを連れて住み込みで働くことに…。ひまわり荘の住人となった30歳のマコの心は純真な子供のまま。そんなマコの心の扉を開けたのは、ひときわ明るく元気なうーやんだった。惹かれあった2人は、マコの誕生日であるクリスマスの日に”結婚しよう”と指きりを交わす。そして約束の日、うーやんはひまわり荘の仲間と一緒にマコがやって来るのを待つが…。タクフェス第3弾は『くちづけ』。多くの人を感動の渦へと巻き込んだ名作が待望の再演!
CAST&STAFF
出演/金田明夫・森田涼花/大和田獏・かとうかず子/弓削智久・中村有沙・布川隼汰・ハレルヤまつこ・西岡ゆん・田中卓・葉石充・町田萌香/柴田理恵・上原多香子・宅間孝行
脚本・演出/宅間孝行
チケットは前売・当日共に全席指定/税込でS席:7800円、TAKUFESシート:4000円(後方席)
主催/ネルケプランニング
公式HP
東京公演は池袋サンシャイン劇場にて、10月7日(水)から10月18日(日)まで
PROFILE
宅間孝行(たくま・たかゆき)
70年7月17日生まれ、東京都出身
脚本家、演出家、俳優。97~12年にかけて劇団「東京セレソンデラックス」(97~01年まで「東京セレソン」)現在「タクフェス」を主宰。サタケミキオ名義で脚本も手掛け(09年より宅間孝行に統一)、ドラマ「花より男子」「花より男子2」「歌姫」で一躍注目を集める。08年公開の映画「同窓会」では監督・脚本・主演の3役をこなし、13年のドラマ「間違われちゃった男」では原作・脚本・演出を手掛けた。俳優として出演の日本・トルコ合作映画「海難1890」(田中光敏監督)は12月5日公開。16年公開の映画「団地」(阪本順治監督)も控える。
公式HP
公式Twitter
上原多香子(うえはら・たかこ)
83年1月14日生まれ 沖縄県出身
96年8月、SPEEDのメンバーとしてデビュー。ドラマ「てるてる家族」「252生存者ありepisode.ZERO」「テンペスト」「SP~警視庁警護課Ⅱ」「ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事」、映画「ドリームメーカー」「ナースのお仕事ザ・ムービー」「夢のまにまに」「恋谷橋 La Vallee de l’amour」などに出演。舞台出演は「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」「ウェディング・シンガー」などがあり、宅間孝行作品への出演は「夕-ゆう-」に続き2作目。
公式ブログ
公式Twitter
■タクフェス第3弾『くちづけ』
INFO&STORY
知的障がい者たちの自立支援のためのグループホームひまわり荘では、カラダは大人、心は純真な子供のままの人たちが、みんなで楽しく暮らしている。そんなホームにかつて大ヒット作品を一度だけ世に送り出した、漫画家の愛情いっぽんが娘のマコを連れて住み込みで働くことに…。ひまわり荘の住人となった30歳のマコの心は純真な子供のまま。そんなマコの心の扉を開けたのは、ひときわ明るく元気なうーやんだった。惹かれあった2人は、マコの誕生日であるクリスマスの日に”結婚しよう”と指きりを交わす。そして約束の日、うーやんはひまわり荘の仲間と一緒にマコがやって来るのを待つが…。タクフェス第3弾は『くちづけ』。多くの人を感動の渦へと巻き込んだ名作が待望の再演!
CAST&STAFF
出演/金田明夫・森田涼花/大和田獏・かとうかず子/弓削智久・中村有沙・布川隼汰・ハレルヤまつこ・西岡ゆん・田中卓・葉石充・町田萌香/柴田理恵・上原多香子・宅間孝行
脚本・演出/宅間孝行
チケットは前売・当日共に全席指定/税込でS席:7800円、TAKUFESシート:4000円(後方席)
主催/ネルケプランニング
公式HP
東京公演は池袋サンシャイン劇場にて、10月7日(水)から10月18日(日)まで
PROFILE
宅間孝行(たくま・たかゆき)
70年7月17日生まれ、東京都出身
脚本家、演出家、俳優。97~12年にかけて劇団「東京セレソンデラックス」(97~01年まで「東京セレソン」)現在「タクフェス」を主宰。サタケミキオ名義で脚本も手掛け(09年より宅間孝行に統一)、ドラマ「花より男子」「花より男子2」「歌姫」で一躍注目を集める。08年公開の映画「同窓会」では監督・脚本・主演の3役をこなし、13年のドラマ「間違われちゃった男」では原作・脚本・演出を手掛けた。俳優として出演の日本・トルコ合作映画「海難1890」(田中光敏監督)は12月5日公開。16年公開の映画「団地」(阪本順治監督)も控える。
公式HP
公式Twitter
上原多香子(うえはら・たかこ)
83年1月14日生まれ 沖縄県出身
96年8月、SPEEDのメンバーとしてデビュー。ドラマ「てるてる家族」「252生存者ありepisode.ZERO」「テンペスト」「SP~警視庁警護課Ⅱ」「ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事」、映画「ドリームメーカー」「ナースのお仕事ザ・ムービー」「夢のまにまに」「恋谷橋 La Vallee de l’amour」などに出演。舞台出演は「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」「ウェディング・シンガー」などがあり、宅間孝行作品への出演は「夕-ゆう-」に続き2作目。
公式ブログ
公式Twitter
Interview&Text/鈴木長月 Photo/おおえき寿一