大学時代にマーシャルアーツ日本キックボクシング連盟からプロデビューを果たし、現在、54戦37勝16敗1分という強さを誇る城戸康裕選手が、最強の不良でリーダー隣野ツトムを演じた映画『アキラNO.2』が9月27日に公開される。劇中でツトムは2つの場面でだけお茶目な一面を見せるが、「いつでもどこでも同じでこれが素です」と語る城戸さんの本来の姿も、茶目っ気たっぷり。キックボクシング界では“金色のヒットマン”と呼ばれることもあるが、仲間内から呼ばれている愛称“きーちゃん”を広めたいと話す、気さくな人柄と人生観に肉迫&解明します!
組織に必ず存在する二番手を主人公に据えた映画『アキラNO.2』。では、NO.1は誰が演じたのかといえばこの人、キックボクシング界の寵児、城戸康裕さんだ。映画では背中の筋肉まで8つに割れた肉体美を披露し、車にはねられても校舎の3階から落ちても死なない、規格外に強い不良を演じているが、普段の城戸さんは周囲を楽しませることに長けるエンターテイナー要素が強い人柄。今回は、格闘技ファンのみならず女性にもモテるであろう、その魅力の源を徹底的に掘り下げました。
ローラのモノマネを強要するシーンが俺から監督にお願いしました
──撮影は試合翌日からでしたよね。減量から解放されたからでしょうか。食事シーンではすごくおいしそうに食べてましたね。「でもね、実は俺は、大食いではないんですよ。回転寿司なら10皿で満腹になるから、女の子よりすこし多めに食べる程度なんです。だからあのシーンは、言ってもいいのかな、カメラが止まったらペッと吐き出してました(笑)大嫌いなエクレアを食べるのも辛かったですねぇ。甘い物は好きですけど、シュー生地が最高に嫌いで。シュー生地と生クリームの相性考えたヤツ誰だよ!? と叫びたくなりましたよ(笑)」
──でもそこは準主役だから頑張れた、ということでしょうか。
「自分の本職は格闘家ですから、俳優1本でやってる方々を前にすると、申し訳ない感はあるんですよ。でも、撮影中に気づいたんです!『ここにいる全員より俺、強いな』って。そう思えたら超規格外に強い隣野ツトムとの共通点を見出だせて、立ち位置を掴むことができたんです」
──ほかにツトムとの共通点は?
「う~ん…金髪ですかね。たまにご機嫌取りがうまいアキラになることはありますけど」
──えっ、城戸さんが?
「怖いスポンサーと一緒にいる時はなりますよ(笑)酒がなくなってないか、灰皿がいっぱいじゃないかって、常に目を光らせます」
──少しお茶目な一面を持つところも共通点なのでは。
「学校のNO.9と10にローラのモノマネを強要するところですよね。あれ、原作にはないシーンで、監督に提案したんです。映画ではツトムの背景が描かれていなくて謎に包まれてるから、好感を持てるような画があったほうがいいかな、と思って」
──原作と異なる点ほかにも?
「ツトムが脱ぎまくることですね。監督に聞いたんですよ。『原作のツトムの背中に何か入ってたらどうするんですか?』って(笑)まあ~よく脱ぎましたね。川のシーンで監督に脱ぐよう指示されて、肌にオイルを塗って霧吹きで汗の演出をしたんですけど、極寒の日にその状態で川風を浴びたら死ぬかと思いました。だけど、原作の面白さはまんま引き継いでるんで、映画を観てから漫画を読む、その逆もありで感想を聞きたいですね」
──舞台は高校ですが、城戸さんはどんな高校生でしたか?
「小中高、ずーっと変わらないですね。明るくて元気で先生とずっとしゃべるお調子者っていう、学年に1人はいたアレです。学年で一番足も速かったから、ドッジボールの時間も頑張るっていう」
──モテそうなタイプですね。
「いやいや。男にはモテるんですけどねぇ。今だって街で声をかけて来るのは90%、まあまあムキムキの男の人ばかりですよ(笑)モテ期は小4~5年がピークですから。バレンタインデーに学校でランドセルを取り出したら、チョコが30コぐらい出て来たんです。その時、『生まれてから10年間やってきたことは間違ってなかったな』って思いました(笑)」 ──今、彼女は?
「急募です(笑)例えば遊園地に行く約束をしたら当日、『楽しみすぎて眠れなかった~』って、一緒のテンションで楽しんでくれるコが理想かなぁ」
──城戸さんは格闘家ですから、料理上手も条件なのでは。
「俺、カレーすら作れないですからね。というか、15歳の時に料理は絶対にしない、自分の“仕事”じゃないって決めたんですよ」
──その理由は。
「ボーリング、ビリヤード、ダーツとか何でも毎日のようにやり込んで突き詰めるタイプなんですね。料理も始めたらきっと同じなんで、女のコが家で作るの、ハードル上がっちゃうじゃないですか。だから今は自己管理しなきゃなんですけど、朝飯と昼飯がポテトチップスって日もあります(苦笑)」
1人になるとき負の連鎖に陥るんで落ち込んだときにこそ仲間と過ごします
──城戸さんって、中高の教員免許もお持ちですよね。「人生一度しかないから、何かあったら危ないじゃないですか。だから常に保険を張るタイプなんですよ。格闘家として成功しなかったら何をしていいか分からないし、プロとして活動したことで教師にもなれるし…って言うと、先生から文句を言われそうなので、聞かなかったことにして下さい(笑)」
──しかと聞きました(笑)好きを仕事にするには?と聞かれたら。
「ちゃんと働いてないんで、デカいこと言えないんですよね…。格闘家って大変そうとはよく言われるんですけど、俺からしたら毎日、満員電車に乗って通勤するほうがよっぽどキツい。減量するほうが楽なぐらいですよ。だから、どの職業にもキツいことは絶対にある前提で言うなら、何か1つのことをずっと続けることですかね。やる前は一歩踏み出すことに戸惑いますけど、続けると必ず形になるもんですよ。今、雨でも雪でも欠かさず毎朝8キロラントレしてるんですけど、大学生ぐらいまでは走るのが嫌で嫌で仕方なかったんですね。でも、やり続けると慣れてきて習慣になるんです。その繰り返しですね、練習すべてが」
──そのぶん、城戸さんは、練習時間以外はよく遊びますよね!
「昔から『よく遊びよく学べ』は徹底してます。毎日夕方4時から7時まで練習するんですけど、そこから次の昼ぐらいまでは時間があるから、絶対に友だちと出かけます。家に1人でポツンとすることはほぼないですね」
──旅行にもよく出かけますよね。
「俺と友だち2人が中心になって企画するんですけど、毎回50人から200人ぐらい集まります。この前、54人で沖縄に行ったんですね。全員で羽田に集合して、昼は海でBBQ、夜は大広間で宴会って、想像しただけで楽しいじゃないですか。楽しそうなことを実行に移す。ただそれだけです」
──仲間が多いと助けられる機会もたくさんあるのでは。
「7月にアンディー・サワーに負けた時は、存在が本当にありがたく感じましたね。祝勝会じゃなくお疲れ会を開いてもらったんですけど、数え切れないほどの人が集まってくれて、負けた悔しさじゃなく、うれしくて涙が出ました。落ち込んだ時こそ1人になると思い詰めて負の連鎖に陥るんで、ああいう時はとにかく家を出て仲間といます。反省したら、あとは嫌なことを考えなくていいと思うんです。俺だってあの日は反省した後、2日後の朝まで寝ないで遊びましたから(笑)」
──今の20代は遊び慣れていないとも言われていますが…。
「車の免許も取らないっていうじゃないですか。考えられない! 俺なんて15歳の時、原付の免許が早く欲しくておかんに、『何でクリスマスに生んだんだ!』と怒ったぐらいなのに(笑)」
──デート代もワリカンが主流らしいですよ、最近は。
「基本、年下とつき合うことが多いから、俺は出させたことはありませんけどね。でも、仲間には20代前半も大勢いるけどそういう話は聞きませんね」
──友達の年齢層、幅広いんですね。“城戸流”の、仲間を増やす術も教えて頂きたいです。
「仲間を増やしたいなら、面倒くさがらないことですね。前回のサワーとの試合、200人ぐらい来てくれたんですね。全員に一切コピペしないでメールでお礼をしましたし、目上の方には全員、電話で感謝の気持ちを伝えました。面倒くさがることをやめるとどんどん輪が広がって、そこからすべてがつながっていくんでしょうね」
今回の「(笑)」の多さは、取材スタッフの笑いです。プライベートで仲間の牽引役を引き受けているだけのことはある“きーちゃん”のトーク力、格闘家とは思えないほどお見事でした!
INFORMATION
映画『アキラNo.2』
INFO&STORY
不良の巣窟である陸山高校の“ナンバーズ”と呼ばれる最強軍団の“No.2”であるアキラ(小澤亮太)はNo2の座にいて常にNo1を狙っているが、現実は甘くない。上からは押さえつけられ、下の連中からはNo2の座を狙われる息のつけない立場である。絶対的な存在であり、生きる伝説といわれる史上最強の不良で学校のNo.1であるツトム(城戸康裕)の機嫌を取ることで、自らの居場所を確保している。気配り、気遣い、忍耐、努力をもってして、何とか頂点に立つべく奮闘する、異色のヤンキー青春マンガの映画化。
CAST&STAFF
小澤亮太・五十嵐麻朝・橋本マナミ・福山翔大・城戸康裕ほか
原作/奥嶋ひろまさ「アキラNo.2」(「ヤングキング」少年画報社)
脚本/井上桜子・吉村典久
監督/吉村典久
配給/エスピーオー
公式HP
9月27日(土)よりロードショー
PROFILE
城戸康裕(きど・やすひろ)
1982年12月25日生まれ 神奈川県出身
キックボクシング谷川ジム所属。アマチュア時代は01年、全日本学生キックボクシング連盟ウェルター級王座、02年、全日本学生キックボクシング連盟ミドル級王座を獲得。プロ転向後は「K-1 WORLD MAX 2008」日本代表決定トーナメントで日本王者になるなどWBKF70キロ級世界王者、Krush70キロ級王者として現役のK-1ファイターでも知られる。また俳優やモデルでも活動。映画出演はほかに「疾風・虹丸組」がある。
公式ブログ
公式Twitter
映画『アキラNo.2』
INFO&STORY
不良の巣窟である陸山高校の“ナンバーズ”と呼ばれる最強軍団の“No.2”であるアキラ(小澤亮太)はNo2の座にいて常にNo1を狙っているが、現実は甘くない。上からは押さえつけられ、下の連中からはNo2の座を狙われる息のつけない立場である。絶対的な存在であり、生きる伝説といわれる史上最強の不良で学校のNo.1であるツトム(城戸康裕)の機嫌を取ることで、自らの居場所を確保している。気配り、気遣い、忍耐、努力をもってして、何とか頂点に立つべく奮闘する、異色のヤンキー青春マンガの映画化。
CAST&STAFF
小澤亮太・五十嵐麻朝・橋本マナミ・福山翔大・城戸康裕ほか
原作/奥嶋ひろまさ「アキラNo.2」(「ヤングキング」少年画報社)
脚本/井上桜子・吉村典久
監督/吉村典久
配給/エスピーオー
公式HP
9月27日(土)よりロードショー
PROFILE
城戸康裕(きど・やすひろ)
1982年12月25日生まれ 神奈川県出身
キックボクシング谷川ジム所属。アマチュア時代は01年、全日本学生キックボクシング連盟ウェルター級王座、02年、全日本学生キックボクシング連盟ミドル級王座を獲得。プロ転向後は「K-1 WORLD MAX 2008」日本代表決定トーナメントで日本王者になるなどWBKF70キロ級世界王者、Krush70キロ級王者として現役のK-1ファイターでも知られる。また俳優やモデルでも活動。映画出演はほかに「疾風・虹丸組」がある。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一