
悔やまれるワンカットがあるけど全世代が楽しめる映画
今月9日まで東京・天王洲銀河劇場で上演していた舞台ローマの休日」の稽古中だった吉田栄作さんを本誌が直撃! 独占インタビューを敢行しました!!──本日はお忙しい中ありがとうございます。公開中の映画僕たちのプレイボール」について聞かせて下さい。完成作はご覧になりましたか?
「観ましたよ。まず、最近こういった映画ってなかったな、という感じがしましたね。弱小チームが野球を通して心を一つにしていきつつ、少しずつ強くなるっていう内容は。僕は『がんばれ!ベアーズ』や『レッドビッキーズ』を見て育った世代なので、懐かしくもありましたね」
──元メジャーリーガー柊恒雄の役作りをするに際し、お尻に綿を入れたんですよね。
「EPの新庄(剛志)さんと話し合って決めたんです。野球選手のお尻って、プリッとしてしっかりした形をしているでしょう? 僕は小5から高2までやっていたバスケットボール仕様のお尻だから、野球仕様に見せる必要があったんですよね。劇中ではユニフォームを着ている時だけじゃなく、私服でも綿を入れましたよ」
──他に新庄さんからの助言にはどんなことが?
「一番時間をかけたのは、ピッチングフォーム。僕が演じた柊は、“サムライ・ソード”という決め球を武器に活躍したんですが、ソードは刀のことなので僕はサイドスローのイメージを持ったんです。でも、新庄さんは見た目が合わないのか、サイドスローのフォームが嫌いだったんですよね。だからディスカッションを重ねて、元々はサイドスローの投手だったけれど肩を壊したから球の切れが悪い、という設定にしました。個人的な役作りとしては、実際に僕が歩んできた人生や背負っているものが見え隠れすればいいんじゃないかな、と思いながら演じました」
──撮影で一番大変だったことは。
「撮影日数が少なかったから、ギッリギリで大変でした。約1週間でアメリカでの撮影シーン、すべてを撮ったんです。時間がない中での撮影だったから、実は僕には悔やまれる1カットがあるんですよね…」
──そのカットとは!?
「柊が野球人生を賭けた最後の一球を投げた後に、監督の表情が欲しかったんですよ。ランナーを背負っているのに、盗塁を避けるセットポジションではなく盗塁されやすくなるワインドアップで投げた後の。野球を知っている人が観ると邪道なんですけど、悔いのない最後の一球として投げる。そこでアメリカ映画にありがちな監督の横顔があれば、僕としてはかなり好きな作品になったんですよね。苦笑いしながら『アイツ、やりやがったな』というシーン」
──どんな人にオススメですか。
「僕の幼なじみで野球ショップを経営しているヤツがいるんですけど、野球関係者にはかなり好評みたいです。100枚単位で置いてあるチラシがすぐになくなるらしいんですよね。でも、野球以外にも親子の絆が描かれているからファミリーで観ても楽しめるし、中学生以下の女の子は、イケメン新人を堪能するも良し(笑)。文部科学省選定だから健康的な作品だし、誰が観てもかなり楽しめると思いますよ」
仕事のポリシーは仕込み8割残り2割で臨機応変に対応
──本作にはあのオレステス・デストラーデさんも出演していますね。「あれは、僕が出演交渉をしたんです。リトルリーグの関係者から紹介してもらって。三村監督と一緒に会ったんですが、監督はお疲れだったのか途中で寝てしまって(笑)。だから僕が交渉しました」
──相変わらず仕事に対して熱いですね! そんな吉田さんの仕事をする際のポリシーは何ですか?
「仕込み8割で現場に立つようにしているのが僕のポリシーですね。僕はいつも寿司屋に例えるんですけど、仕事=お客が来たら、仕入れた魚を腐らせないようにしつつ、自分ができうる最高のパフォーマンスをして、またお店に来てもらうようにしなければ仕事が成り立ちませんよね。だから8割。10割にすると臨機応変に発想の転換ができないし、お客の考えも受け入れられない。キャパシティー以上のお客を入れるとサービスが雑になるから、そういう部分にも気を遣うようにしていますね」
──なるほど。ではデストラーデさんに出演交渉をする時も8割で?
「あの時はまだ築地の段階(笑)。結果がどうなるか分からなかったですからね」
──吉田さんのその考え方、芸能界以外でも応用できますか。
「できますよ。大事なプレゼンの時なんかは、まさに仕込み8割で臨まないと。10割にすると突然の変更に対応できなくなりますから、2割は場の雰囲気に合わせて残しておく。あとは現場対応で」
──座右の銘も教えて下さい。
「サイン色紙によく書く言葉は、『Be yourself』ですね。スティングの『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』という有名な曲のサビ部分なんですけど、誰が何と言おうとあなた自身でいなさいという意味です。世間や他人がどうあろうと、あなたらしくいなさいっていう意味に置き換えてもいいかも知れませんね」
やりたい事は好きな事の隣にあるから早く見つけるべき
──吉田さんのように夢を叶えるには、どうしたらいいですか?「以前、新聞で読んだ記事に『とにかくなるべく早く自分のやりたいことを見つけられた人は幸せだ』と書いてあったんです。やりたいことが分からなくて悩んでいる場合はヒントとして、好きなことの隣りにある可能性があるとも書いてあって、なるほどな」
──なるほど。ではご自身の人生と照らし合わせると?
「僕は高2で芸能界を目指し始めて友だちとバンドを組んで、16歳の時に俳優養成所へ入りました。音楽か俳優、どちらかで身を立てたかったんです。で、19歳で映画デビューして、20歳でCDデビューをした。26歳で芸能界を休業して29歳で戻って来て、今、職業は何ですか? と聞かれたら俳優と答えますけど僕が好きなことは音楽。好きなことの隣りにあった役者という仕事を職業としてやっているんです。だから、その言葉を目にして合点がいったんですよね」
──タメになるアドバイスをありがとうございます。プライベートについても教えて下さい。休日はどう過ごしていますか。
「映画やDVDを観たり、トレーニングをしたり。夏は海にも行きますね。僕、これといった趣味がないんですよ。長期の休みが取れたらアメリカへ旅行に行きますね。長く住んでいて友人が多いから、第二の故郷みたいな土地ですね。水が合うんですよ」
──最後に今後の目標を。
「目標は、長く続けること。長く続けることが一番の才能だって言うし、一番、難しいですけどね。特に僕のような仕事は引退も保証もないから正直自信がないし、続けていけるかどうかも分からない。大先輩のご子息から芸能界に入りたいと相談を受けた時、僕は必死で止めましたからね(笑)。それぐらい大変だからこそ、目標は続けること。でも、音楽は何があっても続けるし、辞めませんよ」
取材中は親切且つ丁寧に説明をしてくれ、取材後はその場でセットポジションとワインドアップの違いを体現してくれた吉田さん。以前と変わらず熱い男でした!!
INFORMATION
■映画「僕たちのプレイボール」
【INFO&STORY】
アメリカに暮らす柊球児(小原裕貴)は親友ランディとともにリトルリーグでプレイしている。父・恒雄(吉田栄作)はプロ野球選手で、メジャーリーグで投げたこともあるピッチャーだが、肩を壊してからはマイナーリーグを転々としていた。母の加奈子(羽田美智子)は日本に帰ることを提案しているが恒雄は受け入れず、球児の将来を考え母子だけで日本に帰国することになった。球児はランディとの別れ際、リトルリーグ世界大会での再会を誓い合う。だが、恒雄との関係はぎくしゃくしたまま…。日本に戻った球児は母、祖母・野村春子(江波杏子)と3人暮らしを始める。突然の帰国に戸惑いながらも同級生の岡島沙希(沢木ルカ)らの勧めで東陽リトルというチームに入る。しかし、野球に対する姿勢の違いからチームメイトやコーチ陣と距離を作ってしまう。一方、アメリカにひとり残った恒雄は、新たな活躍の場を探して孤軍奮闘していた…。球児はチームメイトとともにアメリカの世界大会へ行けるのだろうか? リトルリーグ誕生70周年を記念して製作された本作。親友との約束のため、果たせなかったお兄ちゃんの夢のため、家族のため、そしてチームメイトのため一めざせ世界大会! 今始まる感動のプレイボール!!
【CAST&STAFF】
出演/小原裕貴 吉田栄作 羽田美智子 原日出子 高田延彦 沢木ルカ オレステス・デストラーデ(友情出演) 江波杏子ほか
監督/三村順一
製作/飯原伴光
エグゼクティブプロデューサー/新庄剛志・竹村友里
原作/鬼塚忠「僕たちのプレイボール」(幻冬社刊)
脚本/太田龍馬・三村順一
製作/「僕たちのプレイボール」製作委員会
配給/ゴー・シネマ
5月15日、渋谷東急、新宿ミラノほか全国ロードショー!
(C) 2010「僕たちのプレイボール」製作委員会
PROFILE
吉田栄作
1969年1月3日生まれ 神奈川県秦野市出身
88年、「ガラスの中の少女」で映画デビュー。89年に、「どうにかなるさ〜Chasing My Dream」で歌手デビュー。91年のフジテレビ系ドラマ「もう誰も愛さない」で大ブレイク。95年に渡米し、芸能活動を一時休止。98年、NHKドラマ「流通戦争」、NHK大河ドラマ「元禄繚乱」で活動再開。03年にはNHK大河ドラマ「武蔵」とTBSドラマ「ブラックジャックによろしく」の演技によりギャラクシー賞奨励賞を受賞。06年に「やわらかい服を着て」で初舞台を踏む。以降、ドラマ「だんだん」「再生の町」「特上カバチ!!」や舞台「三文オペラ」「オットーと呼ばれた日本人」「ローマの休日」など数多く出演し、14年振りに音楽活動も再開。09年8月5日に音楽活動20周年を記念し、「心の旅」をセルフカバーしたシングルとファンからの投票で選曲したベストアルバム「Let’s Get Out!
■映画「僕たちのプレイボール」
【INFO&STORY】

【CAST&STAFF】
出演/小原裕貴 吉田栄作 羽田美智子 原日出子 高田延彦 沢木ルカ オレステス・デストラーデ(友情出演) 江波杏子ほか
監督/三村順一
製作/飯原伴光
エグゼクティブプロデューサー/新庄剛志・竹村友里
原作/鬼塚忠「僕たちのプレイボール」(幻冬社刊)
脚本/太田龍馬・三村順一
製作/「僕たちのプレイボール」製作委員会
配給/ゴー・シネマ
5月15日、渋谷東急、新宿ミラノほか全国ロードショー!
(C) 2010「僕たちのプレイボール」製作委員会
PROFILE

1969年1月3日生まれ 神奈川県秦野市出身
88年、「ガラスの中の少女」で映画デビュー。89年に、「どうにかなるさ〜Chasing My Dream」で歌手デビュー。91年のフジテレビ系ドラマ「もう誰も愛さない」で大ブレイク。95年に渡米し、芸能活動を一時休止。98年、NHKドラマ「流通戦争」、NHK大河ドラマ「元禄繚乱」で活動再開。03年にはNHK大河ドラマ「武蔵」とTBSドラマ「ブラックジャックによろしく」の演技によりギャラクシー賞奨励賞を受賞。06年に「やわらかい服を着て」で初舞台を踏む。以降、ドラマ「だんだん」「再生の町」「特上カバチ!!」や舞台「三文オペラ」「オットーと呼ばれた日本人」「ローマの休日」など数多く出演し、14年振りに音楽活動も再開。09年8月5日に音楽活動20周年を記念し、「心の旅」をセルフカバーしたシングルとファンからの投票で選曲したベストアルバム「Let’s Get Out!
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一