「西半球一の最貧国と呼ばれる国で撮影したことによって、知ることの大切さをとても感じるようになりました。でも、堅苦しい映画ではないので気楽に観てください。」
ハイチ共和国を舞台にした映画「ミラクルバナナ」。現地での撮影は、車のパンク、スタッフの病気、夜中に聞こえる銃声と、危険やトラブルでいっぱいだった…。その中で見い出した小山田サユリの成長とは?
セリフを一字一句間違わないことより環境に溶け込むことのほうが大切です
──主演映画「ミラクルバナナ」についてお聞きしたいと思います。幸子役をやるにあたって心がけたことを教えていただけますか。「演技をする上ではいつも同じで、あまり考え過ぎず自然にまかせることを常に心がけました。今回は海外での撮影で、環境も変わるので特に意識しました」
──すぐに自然な感じに持っていくのは難しいと思うのですが、それはどのように?
「あまり自然、自然というと、逆に不自然になってしまうので、そういうことも気にし過ぎないことで、そこにある空気と雰囲気に溶け込むことによって初めて感じるものがあると思います。そういうものを感じ取るほうが、セリフを一字一句間違わないということより大切なのではないかなと」
──現場の雰囲気に自分を馴染ませるということですね。映画には現地の方が多く出演しています。言葉の違う彼らとのコミュニケーションはどうでしたか? 特に「作品の核ともなっているジャック役のスタンリーとは?
彼はハイチに住んでいる少年で、ハイチからドミニカに来てもらって(ハイチは情勢不安なため、空港などの撮影以外は、隣のドミニカ共和国で撮影している)撮影をしていたんです。彼はもちろんフランス語しか話せなくて。私はフランス語の学校にちょっと通ってたことがあったのですけれど、もうほとんど忘れてしまっていました。だからスタンリーとは、最初コミュニケーションを取るのは、どうするのがいいのかなぁと思っていたんです。でも言葉だけじゃないんじゃないかなと思うようになって。結局、撮影の後半くらいになると、もう完全に打ち解けてました。仲良くなって…彼は私のことを役名の幸子って呼んでるんですけど『サチコ。今、何してるんだ。僕はカフェにいるから来ないか?』くらいのことを言ったりするような関係になって(笑)。そのくらい本当に仲良くなったので、もう別れる時は悲しかったですね」
現地のコとは本当に仲良くなって…もう会えないと思うと悲しいです!!
──言葉が通じなくても、子供らしいちょっとしたイタズラとか、お互いにちょっかい出し合ったりすることで、コミュニケーションは深まりますよね。「すごく人なつっこいコだったので、本当にみんなから、可愛がられていて。もしかしたらもう会えないのかもしれないって思うとすごく悲しい。また行きたいなって思います。でも、やっぱり国自体が、情勢不安定ということで、ちょっと行こうかなと思っても行けないところなので複雑な思いでもあります」
──この作品に出演したことによって、ご自身で成長したなと思う部分や、ハイチのような国に対する気持ちの変化というものは何かありますか?
「最貧国っていわれている国へ行って何かをしたいっていう気持ちは当然生まれました。でも、それを超えちゃうと、何か上からものを見ているのかなあという気持ちにもちょっとなってしまったんですよね。だって向こうの人は、そこで生まれ育ってきたわけだから、それが普通なわけじゃないですか。だから何が彼らにとって一番大切なのかなっていうことは、すごく考えさせられました」
──ただお金を与えればいいっていうわけではなくて、自分たちのやる気で国を発展させようという、国民の自給自足を促すストーリーですよね。やっぱりそういう感じなんでしょうか? これも上からではないですよね、ストーリー的に。
「そうですね。そういう映画の内容にも影響されたのか、いろいろ考えたんですよね」
見どころいっぱい!現場でのワクワク感が伝われば!!
──そこをお聞きしたいです。貧しい国にお金を持って行き、ポンポンとあげたらそれはそれで向こうも喜ぶし、いいことでもあると思います。それを超えた部分で考えてらっしゃる気がするんですけれど。どういうふうに行動すべきなのかという…。「そうですね。『知ることの大切さ』ということを知って、知らなきゃ何も始まらないなと思った自分と、ただそこで、何かをすることがもしかしたら向こうにとっては、偽善的なのかなぁと思ったりとか。堂々巡りで、答えなんて見つからないのかもしれません。でも、何か考えるようになったことは確かで。それすらも私は考えてなかったから…」
──それは肌で感じたもので『知る』という。
「画面を見て感じることも大切だと思うんですが、その現場に行って、その場の空気とか、そこの環境にじかに触れるということは絶対に違うと思います」
──映画を観てくれるみなさんは、現地には行けません。どうしましょう(笑)。
「映画を観る前にあまり堅苦しい印象になっちゃうと困るなっていう(笑)。本当にそういうふうな映画じゃないと思うし。子供からお年寄りまで、みんな楽しんでもらえる、温かい映画だと思うので、気楽に素直に楽しんでもらえればいいんじゃないかなって。見て感じたことが自分の成長にもなるかもしれないし、見なきゃ始まらないですよ!」
INFORMATION
■映画『ミラクルバナナ』
たくさん実れ!!バナナの紙
【INFO&STORY】
タヒチとハイチを間違えて、ハイチに赴任してしまった大使館の派遣員・三島幸子(小山田サユリ)。カリブの最貧国ハイチでは学校に行けない子供も多くノートを買い与えてもらえない子も。ある日、バナナの木から紙ができることを知り、これは!と直感した幸子はバナナの紙を作るプロジェクトをスタートさせる。
【CAST&STAFF】
小山田サユリ・緒形拳・山本耕史・アドゴニー・津田寛治・近藤公園・小日向文世・かとうかずこ・長谷川初範・宮崎美子ほか
監督/錦織良成
音楽/角松敏生
製作総指揮/大富國正
製作/ミラクルバナナ製作委員会
制作/エキスプレス
9月16日からシネマート六本木ほか全国順次ロードショー公開
PROFILE
小山田サユリ(おやまだ・さゆり)
75年生まれ 新潟県出身 趣味/フランス語・読書 特技/水泳・乗馬
代表作に「東京ゴミ女」(廣木隆一監督)「アカルイミライ」(黒沢清監督)「オー・ド・ヴィ」(篠原哲雄監督)「Seventh Anniversary」(行定勲監督)「心中エレジー」(亀井亨監督)などがあり、映画を核に活動している。「ライオン クリニカ クイックケア」CMがオンエア中。本作では自然体で今どきの20代女性を巧みに演じている。
■映画『ミラクルバナナ』
たくさん実れ!!バナナの紙
【INFO&STORY】
タヒチとハイチを間違えて、ハイチに赴任してしまった大使館の派遣員・三島幸子(小山田サユリ)。カリブの最貧国ハイチでは学校に行けない子供も多くノートを買い与えてもらえない子も。ある日、バナナの木から紙ができることを知り、これは!と直感した幸子はバナナの紙を作るプロジェクトをスタートさせる。
【CAST&STAFF】
小山田サユリ・緒形拳・山本耕史・アドゴニー・津田寛治・近藤公園・小日向文世・かとうかずこ・長谷川初範・宮崎美子ほか
監督/錦織良成
音楽/角松敏生
製作総指揮/大富國正
製作/ミラクルバナナ製作委員会
制作/エキスプレス
9月16日からシネマート六本木ほか全国順次ロードショー公開
PROFILE
小山田サユリ(おやまだ・さゆり)
75年生まれ 新潟県出身 趣味/フランス語・読書 特技/水泳・乗馬
代表作に「東京ゴミ女」(廣木隆一監督)「アカルイミライ」(黒沢清監督)「オー・ド・ヴィ」(篠原哲雄監督)「Seventh Anniversary」(行定勲監督)「心中エレジー」(亀井亨監督)などがあり、映画を核に活動している。「ライオン クリニカ クイックケア」CMがオンエア中。本作では自然体で今どきの20代女性を巧みに演じている。
取材・文/佐々木竜太 撮影/谷口達郎 ヘアメイク/山田今日子