いかにもワルっぽいイカつい風貌と、ギャップあるフランクなキャラクターで80〜90年代に〝イクラちゃん〟として人気を博した井倉光一さん。今回はアメリカンカルチャーに精通する〝第一人者〟でもあるそんな彼を、主催イベント『アメフェス』を前に直撃。アメ車の魅力とこれまでの軌跡をうかがった──。
好きなことはとにかく迷わずやってみる。こう見えて俺も昔は機械オンチだったしね(笑)
レアなアメ車が一堂に会する熱くてアツい夏の風物詩!
──この夏も日本最大級のアメ車イベント、通称〝アメフェス〟が富士スピードウェイで開催されるそうですね。
「いろいろあって途中で名前が変わったりもしたけど、今年でかれこれ27回目。92年に第1回を開催したときは、まさかこんなに続くとは思ってもみなかったけど、いまでもお客さんは毎年1万人近くは来てくれてる。ただの〝愛好家〟だった自分にとっても、ちょっとしたライフワークって感じにはなってるよね」
──お客さんはどんな方たちが多いんでしょう。維持や改造にお金のかかる趣味だけに、やはり年齢層は高めです?
「そうだね。始めたときは俺自身がまだ32歳で、そのひと回り上ぐらいから20代前半までって感じだったんだけど、いまは当時の客層がそのままスライドしてる。孫も連れて親子三世代でって人もけっこういるし、去年だと最高で83歳って人もいたもんね。まぁ、ひとつ確かなことは〝IT社長〟みたいな人はまず来ないってこと。学歴はないけど、ずっとマジメに働いてきてそこそこお金に余裕もある。やっぱ、そういう人が多いよね。俺らはそれを〝低学歴の逆襲〟とか〝バカの富裕層〟って呼んでるけど(笑)」
──バカの富裕層!! 愛があるけど毒もある絶妙な表現ですね(笑)
「昔はアメ車もピンキリだったから、安いやつなら30万やそこらでも買えたけど、そもそもの台数が減ってるいまは、輸入業者も淘汰されて、すぐぶっ壊れるような質の悪い車は入ってこない。つまり初期投資としてかなりの金が必要になるわけよ。しかもリッター2㎞も走らないなんてのはこの手の車じゃザラだから、日常使いには向いてない。状態がいいものになれば、車体だけで1000万以上するなんてこともあるからね」
──製造から半世紀以上のヴィンテージとなると、富士山の麓まで自走していくのもなかなか骨が折れそうです。
「質がよくなったぶん、いまはそのへんの心配はなくなってるかな。昔は東名の御殿場インターとかで、ボンネット開けて〝腐ったホタテ〟みたいになってる車がしょっちゅういたけど、最近は滅多に見ないしね(笑)それと、ヴィンテージの車のほうがメンテはしやすいって利点もあるんだよ。やたらハイテクな最近の車と違って、構造さえ分かれば自分でもイジれるようにできてるから」
──ちなみに、井倉さんご自身とアメ車との出会いはいつ頃ですか?
「俺は61年生まれだから、物心ついた頃にはまだ、テールフィンのアメ車とかがわりと普通に走っててね。そういうの見て、『カッコいい』って思ったのが最初かな。で、映画の『アメリカン・グラフィティ』(73年公開)とかに影響を受けて、自分でもいろいろ乗るようになって。とにかくダサいのが嫌だったから、暴走族やってた10代の頃も、ドカジャンとか特攻服みたいなファッションは、死んでもしたくないと思ってたね(笑)」
──その後は、23歳のときにバンドMOON DOGSのフロントマンとしてメジャーデビュー。「イクラちゃん」なる芸名で、タレントとしてもお茶の間の人気を博すようになりました。
「デビューが決まった20歳ぐらいの頃は実家のペンキ屋で働いてりゃ月40万以上は楽に稼げたのに、週4でスタジオに籠もって手取り15万とかでさ。で、ちょっとでも音楽の足しになればと思ってテレビに出るようになったら、なぜかそっちのほうで有名になっちゃって(苦笑)だから一時期、芸能界と距離を置くようになったのは、そういう自分がたまらなくカッコ悪く思えてきた、ってのが大きな理由でもあったんだよね」
──現在はIKURA&FUNKEE STYLEとして音楽活動も精力的にされています。かつての〝苦悩〟はもう吹っ切れたということで?
「そうだね。他のことに関してはだいたい自分が納得できるところまでは成果も出してきたから、〝中の上〟止まりだった音楽でも〝上の下〟ぐらいには行きたいかなって。若い頃から一緒にやってきて、かつては仲間うちから〝本牧コロボックル〟なんて呼ばれてた剣さん(横山剣)の活躍なんかが刺激になってる部分も少なからずあるしね」
──アメフェスでは、クレイジーケンバンド横山剣さん、ギター担当の小野瀬雅生さんお二人がFUNKEE STYLEに参加されるとか。興味はあるけど現地にはまだ行ったことがない〝アメフェス童貞〟な読者に見どころをぜひ。
「車は、エントリーだけで600台近く。本国アメリカでもお目にかかれないレアな車もたくさん来るし、本格的なドラッグレースが観られるのも、国内ではウチぐらい。一度にぜんぶを観て回るのはさすがに無理だと思いますけどその場の空気を理屈抜きに楽しんでもらえたらうれしいね」
──では最後に井倉さんから迷える若者に人生のアドバイスを!!
「こう見えて俺は自他ともに認める機械オンチ。それがいまではアメ車の〝第一人者〟みたいに言ってもらえるまでになってるわけだから、好きなことをとにかく迷わずやってみることじゃないかな。もちろん、費やした時間が無駄になる可能性もあるけど、それもまた人生。おっさんになったときに『いまの自分もけっこう悪くないじゃん!』って思えたら、 それでいいんじゃないかなって」
INFOMATION
アルバム『moon glow』
MOON DOGSの“イクラ”こと井倉光一が2年ぶりに放つ19年夏のアルバムは、ゲスト・ヴォーカルに、なかの綾をフィーチャーした「私ならだいじょうぶ…」ほか全12曲書き下ろしの新曲のみを収録!激しくパワフルに、時に甘く切なく、そしてメロウに、井倉光一のシンガーとしての魅力を存分に味わえる、昭和のサマーブリーズを運ぶ傑作の誕生!!
ヴィヴィド・サウンドから好評発売中。2800円(税込)
PROFILE
井倉光一(いくら・こういち)
1961年10月24日生まれ、神奈川県出身。
84年にMOON DOGSを結成しデビュー。以降、5枚のアルバムを発表。“イクラちゃん”の愛称で知られバラエティなどでも活躍。05年、IKURA&FUNKEE STYLEを結成、音楽活動を再開。8月18日(日)富士スピードウェイで開催のモータースポーツイベント『IKURA’S AMEFES 2019』主催者でもある。
公式HP
公式ブログ
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MOON DOGSの“イクラ”こと井倉光一が2年ぶりに放つ19年夏のアルバムは、ゲスト・ヴォーカルに、なかの綾をフィーチャーした「私ならだいじょうぶ…」ほか全12曲書き下ろしの新曲のみを収録!激しくパワフルに、時に甘く切なく、そしてメロウに、井倉光一のシンガーとしての魅力を存分に味わえる、昭和のサマーブリーズを運ぶ傑作の誕生!!
ヴィヴィド・サウンドから好評発売中。2800円(税込)
PROFILE
井倉光一(いくら・こういち)
1961年10月24日生まれ、神奈川県出身。
84年にMOON DOGSを結成しデビュー。以降、5枚のアルバムを発表。“イクラちゃん”の愛称で知られバラエティなどでも活躍。05年、IKURA&FUNKEE STYLEを結成、音楽活動を再開。8月18日(日)富士スピードウェイで開催のモータースポーツイベント『IKURA’S AMEFES 2019』主催者でもある。
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取材・文/鈴木長月