今年に入り、新体制で再出発することになったプロレスリング・ノアの中心選手が丸藤正道選手だ。抜群のセンスに加え、キャリア20年を超えて円熟味も。3月10日のビッグマッチ、横浜文化体育館大会では若き王者、清宮海斗選手のGHCヘビー級王座に挑戦。重要な時期を迎えているノアについて、また自身のプロレス観について、たっぷりお話を伺いました。
「チョップ一発、蹴り一発でいかに魅せることができるか。 結局、シンプルで素晴らしいものが一番。」
全体を見渡す余裕ができるとプロレスが楽しくなります!
──昨年はデビュー20周年興行も大成功。その一方で会見などで「もう若くないから」という言葉も発しています。ご自身の変化をどんなところに感じますか?「正直、肉体的な衰えは感じますよ。若い時は何やってもすぐに回復しましたからね。どこか傷めても、次の朝起きたらもう元気だったし。動きも〝これもできちゃうんだ?〟って自分で思うような感じで。今はそういうわけにはいかないですね。今年40歳、ケガもありましたし。精神的には若いままなんですけど」
──ここ数年、試合ぶりも変化しているように見えます。派手な大技ではなく、チョップ一発、蹴り一発で沸かせるというか。
「若い時は、自分がやれることすべて見せたかったんですよ。〝俺はこんなこともできるんだ、あんなこともできるんだ〟って。そういう気持ちが先行して、技で驚かせようとしてましたね。だけどその頃は、そんなに深みがある試合ができてなかったと思います」
──ということは、今のほうが理想に近い闘い方ですか。
「今は説得力を重視してますね。チョップ一発、蹴り一発でいかに魅せることができるか。結局、シンプルで素晴らしいものが一番。僕はケーキが好きなんですけど、特にシンプルなショートケーキとかモンブランが好きなんですよ。フルーツがいっぱい乗ってたりとかじゃなく」
──イチゴのショートケーキの美味しいものが一番だと。
「ほんとそうなんですよ。チョコレートもそうですね。シンプルでいいものっていうのは長続きすると思いますし」
──先日、DDTで遠藤哲哉選手と対戦した際には勝因を「目に見えない部分」とコメントしていました。ただそれは経験の差だけではないと。「経験で済まされるのは自分も昔、納得いかなかった」という言葉が印象的でした。
「キャリアを積むだけじゃなく、その中でいい意味での余裕を持てるかどうかですよね。相手に勝つために一生懸命やるのは大前提として、その上でお客さんやマスコミ、テレビカメラまで意識しながら試合ができるかどうか。そこに気づくことで、いつの間にか技じゃない広がりが出てくるんですよ。そうすると、選手としての雰囲気も変わってくる。それは意識しないとできないことで。〝技すげえ!〟に何をプラスできるか。全体を見渡す余裕ができると、プロレスやってても楽しくなりますよ。今の自分がそうですね」
──今年、ノアは新体制に移行。大きな変化の時を迎えています。新日本プロレス、鈴木軍との闘いがメインだった時期もあり、ここ数年はリング内外とも激動でした。
「三沢(光晴)さん、小橋(建太)さん、秋山(準)さん、田上(明)さんたちによって、一度ノアというものが完成して。そこからまた新しいものを作る必要が出てきたんですよね。でも、今はまだその途中。新しいノアを作るために時間がかかり過ぎてしまったという現実もあります。ただようやく、パズルのピースが揃ってハマりつつあるなと。そのピースというのは選手でありスタッフであり、お客さんも。第二次ノアの完成形がそろそろできると思いますね」
──旗揚げ以来の団体ロゴ、緑色のリングマットも変えるということで話題になりましたが、丸藤さんの中で「ここさえ変わらなければ大丈夫」というポイントは?
「俺がいれば大丈夫なんじゃないですか。そこは自信もって言えますね。旗揚げからずっと、20年間変わらずやってきてるので」
「三沢さんは〝脱三沢〟で忘れられる存在じゃない」
──記者会見でも「俺がいる場所がノア」とおっしゃってました。「マットが変わるとかロゴが変わることで、そんなに騒ぐ必要ないんじゃないかなと思いますね。少なくともネガティブになることはない。新しくなるっていうのは、ビックリマン(シール)の第二弾が出るようなもんだと思ってもらえれば」
──古参ファンは「第一弾はもう持ってるでしょ」と。
「もしくは、探せばあるので。映像だってありますからね。全然、問題ない」
──専門誌に載った「脱三沢」という言葉が独り歩きしたのかなと。
「あれはあれで刺激的な言葉を投げてくれたと思いますね。そこで議論が生まれるのもいいことなので。ただ、三沢さんとずっと一緒にやってきた人間にとっては、脱三沢って言われたところで忘れようもないので」
──みんな「脱三沢」と言われたら忘れちゃうのか? と。
「そんな軽い存在じゃないでしょ、三沢さんは。これからのノアを心配してる人には、そう言いたいですね」
──考えてみれば、三沢さんも新しいことがやりたくてノアを旗揚げしたわけですし。
「そうですよね。三沢さんたちは底知れぬ苦労があった中で、ノアというものを作ってきたと思います。その事実、歴史は変わることがないから。その歴史の上に、今は自分たちが新しいものを積み上げていく作業をしているところで。特に今回の変化っていうのは大きいですからね。自分でも今のノアの変化を凄く楽しみにしてます。たぶんここ数年で、一番楽しんでるんじゃないかな」
──3・10横浜大会での清宮海斗選手とのタイトルマッチは、若い王者とベテランの対戦として、かつての丸藤vs三沢に例えられました。現在、三沢戦での敗北を振り返って思うことは?
「あの試合はプラスもマイナスもいっぱいありましたね。負けても俺の成長は止まらなかったし、三沢光晴という人間の凄さも感じました。三沢さんへのファンの後押しも凄かったですし。真似したいわけじゃないけど、あの時の三沢さんの域にたどり着きたいとは思いますね。ただ〝あそこで…俺が勝っていれば〟という気持ちもありますよ。そうなっていれば、三沢さんはあの後、もうちょっと苦労せずに済んだかもしれない。違う人生もあったのかなって。でも三沢さんはよく〝タラレバはないから〟って言ってたんで、関係ないのかな」
──今回の試合も、清宮選手のキャリアで大きな意味を持つことになりそうです。
「分岐点というのか節目というのか、そういうものにはしてほしいですよね。ノアが大きく変化する中で、自分が先頭に立ちたいという思いでタイトル挑戦表明したんです。〝今は俺なんじゃないか〟って。でも若い選手に頑張ってほしい、団体を引っ張ってほしいという思いもある。いずれそうなっていくわけですしね」
──いずれにしても、ノアのためにという。
「もうそういう段階ですね(笑)個人的な野心とか成長っていうのは若い選手たちのもので。自分にもあるけど、もう口にする必要はないなって」
──清宮選手との闘いでは、前哨戦でギブアップを奪った後、腕にアイシングしてあげる姿も印象的でした。ヒール化というのか、あえての上から、嫌味な感じで(笑)
「あれは自分の性格の悪さが出ましたね(笑)これまでは立ち位置的に出てなかったですけど」
──ノアを背負う、守るというポジションですからね。
「今は(清宮という)純粋なベビーフェイスが生まれたので、自分も素が出せるんですよ。そういう意味での変化も楽しいし、ファンのみなさんにも楽しんでほしい。清宮ファンはムカついてるかもしれないけど(笑)」
INFORMATION
プロレスリング・ノア 今後の主な大会予定
◆『Spring Navig. 2019』
3月29日(金)開始18:30 東京・後楽園ホール
◆『GLOBAL TAG LEAGUE 2019』
4月6日(土)開始18:30 大阪・エディオンアリーナ大阪 第2競技場
◆『GLOBAL Jr. TAG LEAGUE 2019』
6月9日(日)開始11:30 東京・後楽園ホール【三沢光晴メモリアル2019 in TOKYO】
詳細・お問い合わせ:プロレスリング・ノア
TEL/03-6261-6888(代表) 営業時間/11:00〜19:00(土日・祝祭日休)
公式HP
公式Twitter
PROFILE
丸藤正道(まるふじ・なおみち)
1979年9月26日生まれ 埼玉県出身
全日本プロレスでデビューし、ノア旗揚げに参加すると〝天才〟とも称される圧倒的な身体能力、プロレスセンスで数々のタイトルを獲得。ジュニアヘビー級のままGHCヘビー級タイトルを獲得する快挙も。またノアのGHCジュニア、全日本の世界ジュニア、新日本のIWGPジュニアとジュニア王座3冠も達成。体制、選手の変遷もある中、常にプロレスリング・ノアの屋台骨を守り続ける。
公式Twitter
公式Instagram
プロレスリング・ノア 今後の主な大会予定
◆『Spring Navig. 2019』
3月29日(金)開始18:30 東京・後楽園ホール
◆『GLOBAL TAG LEAGUE 2019』
4月6日(土)開始18:30 大阪・エディオンアリーナ大阪 第2競技場
◆『GLOBAL Jr. TAG LEAGUE 2019』
6月9日(日)開始11:30 東京・後楽園ホール【三沢光晴メモリアル2019 in TOKYO】
詳細・お問い合わせ:プロレスリング・ノア
TEL/03-6261-6888(代表) 営業時間/11:00〜19:00(土日・祝祭日休)
公式HP
公式Twitter
PROFILE
丸藤正道(まるふじ・なおみち)
1979年9月26日生まれ 埼玉県出身
全日本プロレスでデビューし、ノア旗揚げに参加すると〝天才〟とも称される圧倒的な身体能力、プロレスセンスで数々のタイトルを獲得。ジュニアヘビー級のままGHCヘビー級タイトルを獲得する快挙も。またノアのGHCジュニア、全日本の世界ジュニア、新日本のIWGPジュニアとジュニア王座3冠も達成。体制、選手の変遷もある中、常にプロレスリング・ノアの屋台骨を守り続ける。
公式Twitter
公式Instagram
取材・文/橋本宗洋 撮影/熊代紀章