漫画家、タレントという枠を超えて今や“職業・蛭子能収”という名がふさわしい御方が今回のパイセンゲスト。愛妻家としても知られているが、ココでしか聞けない奥様が知ったらマズイのでは?という内輪話や年収、印税、大好きなギャンブルまで赤裸々に暴露してくれた。時折飛び出す“黒蛭子”とともにご堪能あれ!
一時期年収1億円あったけど今はテレビも不況なんですよねぇ
──ご自身初の単行本『地獄に堕ちた教師ども』が復刊しますね。「だけど印税は期待できないでしょうねぇ。あの出版社からは『ガロ』でデビューした時から35年間一度も原稿料もらっていませんから。でも、いいんです。オレはアングラの世界が好きだし、掲載してもらえるだけで嬉しいんです」
──蛭子さんはテレビ出演で充分に稼いでいますもんね。『スーパーJOKEY』の熱湯風呂は1回につき20万円もらえたとか。
「当時、オレと同い年の会社員の月収が25万~30万ぐらいだったと思うから、1日2本撮りで1日でサラリーマンの月収を稼いでいたんですよね。そんな割のいい仕事なんてほかにはないから『熱湯風呂ぐらいドンドン入るよ!』って」
──(一同爆笑)ただ近年は、テレビのギャラも下がってきたそうで。
「そうなんですよ! 一時期、年収1億円とか稼げてたんですよ。それがここ10年、5千万もいかなくなってきたんですね」
──それでも凄い年収です。今のポジションを得るのは柄本明さんとの出会いが大きかったのでは?
「今でも感謝してますね。柄本さんからある日、電話がかかってきたんですよね。東京乾電池のポスターを描いてくれませんか? って。そうしたら『ウチの芝居に出てみませんか』と言われてオレ、断ったんですけど、台詞が一切ない役で出たんです。それを偶然観てたフジテレビの故・横澤彪プロデューサーが『笑っていいとも!』に呼んでくれて、そこから一気にテレビの仕事が増えたんです。当時、文化人をテレビに出すブームで、オレはブームに乗って出てきただけなんですよ。ただ柄本さんには、『オレがここまで来たのは柄本さんのお陰だからお金をあげたいです』と言ったら『じゃあ頂戴よ』って言われましたけど」
──でも職業は? と聞かれたら漫画家なんですよね。
「と言いたいですね。漫画は、最近あまり描いてないですけどテレビタレントと名乗るのは抵抗があるんですよ。ただ、漫画を描く見返りにお金は期待してないです。でもテレビに出てる時、即興で漫画を描いてくれって言われることも多いんですけどアレ、結構面倒くさいんですよ、実は」
──ですがその依頼も断りませんよね。蛭子さんの人生を見ていると“仕事を断らない”がキーワードという印象があります。
「お金は食う分だけあればいいと思ってますけど、漫画家になる前から夢を叶えるより生活費を確保する方が先だという思いがずっとあるんです。昔から『1日3食食べるためにはいくらかかるか』って考える癖がありました。オレが20代で独身だった頃は、300円あれば1日3食分を賄えたんですけど、高校を卒業して最初に就職した看板屋の月収が8千円だったんですよ。食費にはちょっと足らんぐらいなのに、100円持ってパチンコに行ってました」
──当時から根っからのギャンブラーじゃないですか!(笑)
「パチンコは毎日欠かせなかったですねぇ。でも昔のパチンコは安い金でかなり遊べたんですよ。50円分の玉が1800円分になることもあったんです。食費6日分ぐらい稼げちゃう。今は遊び感覚でやるから合計で1億2千万以上負けてますけど、当時は必死だったから勝つ割合も多かった気がしますね。人間、“ここで勝たにゃならん!”って時には必死になるもんです。今の競艇場は年金を使う年配の人もたくさんいて、そういう人も必死だから勝ってるんじゃないかなあ。使える金が少ないと本命狙いになるでしょう。オレは今んとこ穴狙いだけど」
──ただ蛭子さんは大負けしても人にお金を借りない主義だとか。
「借りた金でギャンブルやっても勝てんでしょう。オレは借りないし貸さない主義です。テレビに出始めた頃、『貸して』という人がわんさかいたけど、返ってきた試しがない。貸しても本人の為にならないし、人に金を借りる人生を送ってちゃ、ロクな人間にならないですよ。この前ね、兄貴と熊本の競艇場へ行ったんですけど、兄貴にも貸さない。兄貴は、少ない手持ちの金で遊んでましたよ。それを見てオレは、自分の購入金額を隠しましたけど(笑)」
どの映画にも出てて台詞も上手いリリー・フランキーに憧れてます
──なるほど。競艇場へ行く日は奥様から頂いた休暇の“よっちゃんデー”が多いんですよね。「仕事のフリして黙って行く時もありますけどね(笑)オレは競艇場で輝くために働いてて、仕事漬けじゃ変になるから時には嘘も必要かと。誰でも嘘付いて好きなことしていると思いますけどね」
──誰でも嘘を付くって(笑)ちなみに一番最近の“よっちゃんデー”はどう過ごしましたか?
「朝から映画を観て平和島に行って、夜また『女が眠る時』って映画を観たの。オレねぇ、リリー・フランキーに憧れてるんですよ。どの映画を観ても出てて、しかも台詞が自然で上手なんですよね。ホント凄いなと思って。オレ、リリー・フランキーみたいになりたいです」
──蛭子さんも長編初主演映画『任侠野郎』の公開が控えてますよ。
「リリー・フランキーが『シェル・コレクター』で主演をやったのにオレも対抗してね。絶対に負けますけど。高倉健さんになりきってヤクザの元若頭を演じて笑い一切ナシの作品ですけど、クスッと笑えると思いますよ。ウチの女房に観せたら『何コレ!?』ってずーっとツッコミ入れてました」
──やはり愛妻家で知られている通り、奥様と仲がいいんですね。
「そりゃあ家に帰った時、女房がいなかったら寂しいですからね。元からそれほど友だちが欲しいほうでもないし、女房がいれば友だちがいなくても構わないんです。世界中で1人だけ、何でも打ち明けられる人がいれば、オレは満足なんですよ。でも最近、凄くワガママになってきたんだよなあ…」
──奥様はどんなワガママを?
「一緒に食事に行くと、かなり高いものを好むね。まあ、そのぐらいの贅沢はいいのかもしれんけど庶民的じゃないんですよ。オレが稼いでいるからそうなるのか」 ◆そこまで尽くせる相手に巡り会えたことが羨ましい人もいるかと。 「いやオレ、たいていの人とはすぐ仲良くなれるし、女性に関しては一定の基準を満たしてればすぐ好きになりますよ」
──その基準は何ですか?
「丸顔でぽっちゃりしてれば好きになります。長い顔が苦手なんですよ。料理の腕とかも求めない。それだけで、後は優しければ一番いいですけど、ウチの女房は今、優しさが足りないような気がする…ちょっと怖い。人生で今が一番怒られてますから」
──あはは! それでも蛭子さんが思う、結婚の良さって何ですか?
「やっぱりタダでセックスができるってことじゃないですか? そうは言っても今オレ全然ダメなんですよ。本当に困ってる…」
──赤裸々すぎます(笑)では、夫婦円満の秘訣も教えて下さい。
「男はある程度我慢する必要があるでしょうね。男は女房の言う通りに動く。女房に主導権を渡してしまえば上手くいくことは間違いないです。女房は神社に行くのが好きなんですけど、連れてってと言われたら自分の行きたい場所よりも優先しますから。その代わり、月に1~2回は自分の好きなことをさせてもらう。男はそれぐらいワガママを抑えた方がいいですよ。じゃないと女房のストレスが溜まって後が怖いから」
──奥様が怖いと言いつつ蛭子さん、意見は男らしいです。
「そうですかねぇ。女性を守るのが男の役目だし、男は金を稼いで女性は家の中を平和に保つのが一般的じゃないんですか」
──今は男性が家族を養う収入を得られない時代なのです。その世代に結婚の良さを伝えるとしたら?
「そうですねぇ。セックスはお金がなくてもできますよ」
──またセックス!(一同大爆笑)
「だって男と女が抱き合うだけならお金は要らないでしょう? そういう相手を見つけてお金がかからない遊びを楽しむ。公園で手作り弁当を食べるとか、いいじゃないですか。オレは女房と行く高級なレストランよりも憧れますねぇ」 写真撮影時、昼前だったためか記者の空腹音が室内に響き渡ってしまいました…。すると蛭子さんが楽屋に置いてある弁当を指さし、「1つ持っていけばいいじゃない」と気遣ってくれる1コマが。テレビと同じで自然体すぎる蛭子さんの優しさに癒やされました!
PROFILE
蛭子能収(えびす・よしかず)
1947年10月21日生まれ 長崎県出身
高校卒業後、看板屋勤務の後に上京。25歳の時に「月刊漫画ガロ」で漫画家デビュー。チリ紙交換、ダスキン営業マンなどの職を経て、33歳で専業漫画家に。特異な作風で注目を集め、ヘタウマ漫画家としての地位を確立する。漫画雑誌「アックス」にて隔月連載中。また、タレント・俳優としても活躍。映画、ドラマ、情報番組、バラエティに引っ張りだこ。テレビ東京系「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」シリーズも人気で、16年に劇場版も公開された。近年の著書に「ひとりぼっちを笑うな」「蛭子能収のゆるゆる人生相談」「蛭子の論語」「僕はこうして生きてきた ーNO GAMBLE,NO LIFE.」などがある。長編映画初主演を果たし、同名挿入歌も歌う映画「任侠野郎」は6月4日公開。
公式HP
蛭子能収(えびす・よしかず)
1947年10月21日生まれ 長崎県出身
高校卒業後、看板屋勤務の後に上京。25歳の時に「月刊漫画ガロ」で漫画家デビュー。チリ紙交換、ダスキン営業マンなどの職を経て、33歳で専業漫画家に。特異な作風で注目を集め、ヘタウマ漫画家としての地位を確立する。漫画雑誌「アックス」にて隔月連載中。また、タレント・俳優としても活躍。映画、ドラマ、情報番組、バラエティに引っ張りだこ。テレビ東京系「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」シリーズも人気で、16年に劇場版も公開された。近年の著書に「ひとりぼっちを笑うな」「蛭子能収のゆるゆる人生相談」「蛭子の論語」「僕はこうして生きてきた ーNO GAMBLE,NO LIFE.」などがある。長編映画初主演を果たし、同名挿入歌も歌う映画「任侠野郎」は6月4日公開。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一