「売れない歌謡コーラスグループが各地方を巡る設定で、寅さんシリーズなき後、シリーズ化するのが夢です。魅力ある作品なので、ぜひ劇場へお越しください」
コント赤信号で渡辺正行さん、ラサール石井さんと1980年にテレビデビュー後、30代からは俳優業に専念している小宮孝泰さん。彼が脚本家の水谷龍二さんやラサール石井さんたちと始めた芝居「星屑の会」が26年目にして映画化されて3月6日から公開される(東北では先行上映が2月21日から)。御年63歳の小宮さんが考える仕事への原動力とともに、作品の魅力をインタビュー。のんさんがヒロインの本作は本当に面白いので、舞台も観に行きたくなるかも!!
のんさんは中性的で不思議な魅力を持つ女優でした!
──映画の元ネタは舞台ですよね。舞台のために「星屑の会」が結成された経緯を教えて頂けますか「僕と(ラサール)石井くんが、(本作の原作・脚本の)水谷(龍二)さんの作品でホームレスの役を演じたんです。その旅公演中に水谷さんから『歌謡コーラスグループの物語はどうだろう』という話が出まして。面白いなと思ったのがきっかけです。でも、コーラスを歌うメンバーがいなければいけないからどうしようということになって。でんでんさんは水谷さんと私たちの共通の仲間で、渡辺哲さんは水谷さんの紹介で、有薗芳記くんは、僕がアングラ劇場をやっている頃から知っていたので呼んだんです。でも、肝心のボーカルがいない。そこで、石井くんが(大平)サブローくんがいいんじゃないかと提案してくれたんです。そこで、年末にカラオケ大会と称して歌ってもらったら、みんな個性ある歌い方をするんですけど、誰もサブローくんには敵わない。で、そこで初めて舞台のボーカル役を探していたと種明かしをしたわけです。そこから舞台『星屑の町』が始まりました」
──初演は94年、下北沢にある劇場ザ・スズナリでした
「150人のキャパで100人埋まらない日もありましたが、千秋楽は満員でした。それが評判になって再演して…というのがシリーズ1作目の『星屑の町~山田修とハローナイツの物語』なんです。今回の映画も『バージョン1』を基にした物語です。26年前が初演なので、当時ヒロインに恋心を抱く菅原大吉くんが演じていた役をまた演じるのは合わないだろうということで、若手俳優の小日向星一くんが演じています」
──ヒロイン役ののんさんとは初共演でしたが、どんな印象を
「中性的で不思議な魅力を持つ女優さんでした。芝居で一番大切なことは“絡み合う”こと。その場で生でリアクションをするとも言い換えられるんですが、ちゃんとできていたし、役も向いていると思います。まさか、藤圭子さんの伝説のデビューシングル『新宿の女』を、フォークギターでブルースっぽく歌うとは想像もしていませんでしたけど、歌う姿を見ていたら、役の捕まえ方が上手だなと、見入りました。劇中で彼女が『私が入ったら、おじさんたちの運命も変わるかもしれねよ』と言うんですが、言う通りに大ヒット…とはいかなくても中ヒットぐらいにはなって、僕らの人生も変えて頂ければと(笑)」
──ほかは長年、共演してきたキャストですよね
「映画化で台本が変わるのかなと思っていたのですがほぼ変更がなかったので、演じやすかったのではないでしょうか。映画では考えられない6ページぐらいの1シーンがあるんですが、みんな舞台で体に染みついていたので何度もリハーサルをする必要もありませんでしたし。長回しの最後のほうでNGを出すとイヤ~な雰囲気になることもあるんですが(笑)この現場はありませんでした。ただ、劇中で僕と(弟・英二役の)菅原くんにスポットが当てられている兄弟関係だけは『ちょっと勝負だな』とは思っていました。個人的な話ですが、映画では弟が実家を守り、兄が上京します。僕の場合は兄が実家を守り、僕が上京するという逆の立場なので、演じやすかったです」
目標の信念を曲げなければ半分ぐらいは叶うと思う!
──お仕事のお話も。劇中で売れずにハローナイツは苦労していますが、小宮さんがお仕事で苦労した時期はありましたか?「今でも苦労していますよ(笑)でも人生は、どうしても目指したい強い未来像があって信念を曲げなければ、全部ではなくても半分ぐらいは叶うと思っています。自慢ではないですが僕は役者を目指した時に諸先輩方を見て、60歳をすぎても芝居ができればいいと思っていた夢は叶っているんです。だけどそもそも、仕事は好きなことができる場ではないですけどね。やりたい役ばかりのオファーが来るわけではないですし。好きなことを仕事にできたら一番いいのかもしれませんけど、最高に好きなことは、趣味としてやっていてもいいと思うんです。そうすれば仕事が好きではなくても生活や趣味のための原動力と割り切って働くことができますから。今、人気の職業はYouTuberらしいですけど、僕は汗水流して働く職業を目指す若者が増えてほしいとも思っています。訓練を怠らない諸先輩方をたくさん見ているので、俳優は死ぬまで脳と体を鍛え続けなければいけない職業だと感じています」
──小宮さんはどんな訓練を?
「僕は(明治)大学の英文科卒で、04年にはロンドンに演劇留学をして、今でも英語の勉強は続けています。高校時代から始めた落語を今も続けていますし、執筆作業も続けています。威張れるほど肉体トレーニングはしていないんですが(笑)舞台の稽古中の筋トレや台詞を覚えることで、体や頭が鍛えられているんじゃないかな。そう考えると年中、何かの台本を持ち歩いて覚えている気がしますね。いつも何かに挑戦して、新鮮な自分を保つ。これは、俳優以外の職業にも当てはまると思います」
──有難うございます。最後に小宮さんが思う、この映画の魅力を
「売れない歌謡コーラスグループが各地方を巡る設定なんですけど、観光地ではない場所へ行くので、日本各地の飾らない風景を美しく描いています。この設定であればどの地方にも行くことができるので、寅さんシリーズなき後、シリーズ化するのが夢です。それぐらい魅力ある作品なので、みなさんぜひ劇場へ足を運んで下さい」
INFORMATION
■映画『星屑の町』
INFO&STORY
大手レコード会社の元社員・山田修(小宮孝泰)をリーダーに、歌好きの飲み仲間や売れない歌手が集まって結成された「山田修とハローナイツ」。結成から十数年が経つ彼らだったが、これといったヒット曲もなく、ベテラン女性歌手のキティ岩城(戸田恵子)らと地方を回りながら細々と活動を続けていた。ある日、彼らは修の生まれ故郷である東北の田舎町へ巡業に訪れる。そこには修との間に遺恨を抱える弟・英二(菅原大吉)が待っていた。一方、英二の息子の幼なじみである久間部愛(のん)は、母が営むスナックを手伝いながら歌手になることを夢見ていた。そんな彼女がハローナイツに入りたいと言い出したことから、思わぬ騒動が巻き起こる。地方回りの売れないムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」の悲哀を描く人気舞台「星屑の町」シリーズの映画化。
CAST&STAFF
出演/大平サブロー・ラサール石井・小宮孝泰・渡辺哲・でんでん・有薗芳記・のん・菅原大吉・戸田恵子・小日向星一・相築あきこ・柄本明
原作・脚本/水谷龍二
監督/杉山泰一
配給/東映ビデオ
公式HP
2月21日(金)東北4県先行上映、3月6日(金)全国公開
(C)2020「星屑の町」フィルムパートナーズ
■映画『星屑の町』
INFO&STORY
大手レコード会社の元社員・山田修(小宮孝泰)をリーダーに、歌好きの飲み仲間や売れない歌手が集まって結成された「山田修とハローナイツ」。結成から十数年が経つ彼らだったが、これといったヒット曲もなく、ベテラン女性歌手のキティ岩城(戸田恵子)らと地方を回りながら細々と活動を続けていた。ある日、彼らは修の生まれ故郷である東北の田舎町へ巡業に訪れる。そこには修との間に遺恨を抱える弟・英二(菅原大吉)が待っていた。一方、英二の息子の幼なじみである久間部愛(のん)は、母が営むスナックを手伝いながら歌手になることを夢見ていた。そんな彼女がハローナイツに入りたいと言い出したことから、思わぬ騒動が巻き起こる。地方回りの売れないムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」の悲哀を描く人気舞台「星屑の町」シリーズの映画化。
CAST&STAFF
出演/大平サブロー・ラサール石井・小宮孝泰・渡辺哲・でんでん・有薗芳記・のん・菅原大吉・戸田恵子・小日向星一・相築あきこ・柄本明
原作・脚本/水谷龍二
監督/杉山泰一
配給/東映ビデオ
公式HP
2月21日(金)東北4県先行上映、3月6日(金)全国公開
(C)2020「星屑の町」フィルムパートナーズ
PROFILE
小宮孝泰(こみや・たかやす)
1956年3月11日生まれ 神奈川県出身
80年、コント赤信号でテレビデビュー。30代からは俳優業に専念し始め、「星屑の町」シリーズだけでなく自らのプロデュースで「ドレッサー」、一人芝居「線路は続くよどこまでも」、役者の落語会「ごらく亭」など。他にも様々な劇団にも客演している。主な映画出演作は『ゲロッパ!』『わが母の記』『インザヒーロー』『息衝く』。
公式HP
公式HP
小宮孝泰(こみや・たかやす)
1956年3月11日生まれ 神奈川県出身
80年、コント赤信号でテレビデビュー。30代からは俳優業に専念し始め、「星屑の町」シリーズだけでなく自らのプロデュースで「ドレッサー」、一人芝居「線路は続くよどこまでも」、役者の落語会「ごらく亭」など。他にも様々な劇団にも客演している。主な映画出演作は『ゲロッパ!』『わが母の記』『インザヒーロー』『息衝く』。
公式HP
公式HP
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら