11月24日(日)のK―1横浜アリーナ大会でフェザー級王座決定トーナメントに挑む、卜部弘嵩選手にインタビュー!弟の功也選手と兄弟ファイターとして活躍、モデルの高橋ユウさんとの結婚も話題になった卜部選手は今回、2階級制覇をかけての闘い。新世代の台頭が著しいリングで、ベテランとしてどう闘うのか。格闘技に対する〝イズム〟をたっぷり聞きました。
負けて這い上がる選手の強さもあるんですよ。そこは僕は鍛えられてると思います。どんなことでも乗り越えられる自信がある。
格闘家にとって世代交代は避けて通れないもの
──今回のトーナメントは、30歳になって初の試合ですね。「18歳でデビューして、10年できたらと思ってたんですよ。それプラス2年ですね、もう」
──KrushでもK―1でもベルトを巻きました。そこからのモチベーションは?
「モチベーションをどこに持っていくのか自体がテーマでしたね。ただ大きいテーマはなかったかたもしれないです。最初は2階級制覇も考えてなかったですし。逆に今はモチベーションが高いです」
──今はどんなテーマで?
「もちろんまずは2階級制覇。階級を下げての逆2階級は初ですし。それと若い世代との闘いですね。格闘家にとって世代交代っていうのは避けて通れないものなので。若い頃は上の世代を倒しにいって、今度は受けて立つ立場で。そこで〝絶対に負けないぞ〟と」
──ポジションが変わってきたわけですね。
「僕が若い頃は昔のK―1が低迷してきた時期で〝Krushを大きくしなきゃ。自分が引っ張っていかなきゃ〟と思ってたんですよ。それで実際、ベルトを巻いて今のK―1もできて。そこで出てきた若い選手と、自分もやっていかなきゃいけない」
──昔の自分もベテランに試合を受けてもらったわけですしね。
「キャリアが下の選手に負けるっていうリスクもあるんですけど、嫌な対戦カードこそやらなきゃと思ってますね。お客さんが見たいのはそういうカードだと思うし、それをやれば業界も盛り上がる。自分にも結果としてプラスなんですよ。外国人とやるよりシビアな面もあるから、余計やならいと」
──ベテランになってみると「もう若い選手の時代だから…」とはならないという。
「そうなったら僕のモチベーションがもたないです(笑)」
──現在のK―1は本当に若い選手が大活躍してますよね。
「そういう選手と闘うべきだと思ってますね。これは僕にとってのチャレンジでもある。若い選手を見ていると、純粋にレベルが高いなって思うんですよ。僕が若い頃よりテクニックのレベルが高い。そういう選手たちに、僕なりの武器、たとえば向かっていきたいっていう気持ちですね」
──このトーナメントに出場する日本人選手たちが、まさにハイレベルな新世代ですよね。となると一周して自分が追う側というか。
「そんな感じはあります(笑)それが面白いなって。今のK―1は毎年のようにレベルが上がってるので。人気が出てくることで選手層も厚くなってますから余計ですよね」
──選手層が厚い中で切磋琢磨するからレベルも上がると。ヒジ打ちなし、組み付き完全禁止のK―1ルールに特化した練習、技術なんでしょうね。
「僕はどのルールでも勝ってやろうと思ってやってましたけど、今はアマチュアからK―1ルールに特化して仕上げてくるので。今もですけど、これからどんどんレベルが上がる一方だと思います」
──所属するジムKRESTにも若い強豪がひしめいてます。
「僕も若い選手の試合をよく研究しますね。分からないことがあったら聞きますし。同世代の選手の試合は見ないんですよ(笑)むしろ10代の選手の試合のほうが勉強になる。〝こういうテクニックを使うのか〟って。他のジムがどんな練習してるのかも気になりますし。今度、アマチュア大会も見てみたいんですよね」
やりたくてやってるというレベルの練習は練習じゃない
──そんな選手たちに対して、卜部選手の強みは?「何よりの武器は経験だと思ってます。今の技術、王道スタイルを磨きつつ、自分なりの武器も持って闘いたいですね」
──卜部選手はケンカの強さというか、キレイじゃない部分での強さもあるような気がします。修羅場のテクニックというか。
「そこで勝負する部分もありますね。グレーゾーンの闘いも知っている。僕が若い世代に負けてないのは修羅場をくぐった数。メンタル面で違うだろうなって」
──負けも含めて経験値になってますよね。
「勢いで連勝してる選手も凄いんですが、負けて這い上がる選手の強さもあるんですよ。そこは鍛えられてると思います。ちょっとしたことじゃへこたれないというか、どんなことでも乗り越えられる自信があるので」
──30歳をすぎて、ご自身のキャリアについてはどう考えてますか。
「自分の中でゴール、終わり方は決めてるんですよ。そこまでは毎回、命がけでやろうと思ってます。一日も無駄にしないで生きようと。ゴールを決めたからこそ練習で追い込めるのかなと」
──キャリアを重ねる中で生活や練習内容も変わったと聞きます。
「20歳頃から〝こういう生活がしたい〟という理想はあったんですよ。365日アスリートとして生きる、食事も睡眠も全部きっちり管理する。数年前からそれができる環境になってきました」
──じゃあ今は生活すべてが格闘技のためというか。
「何のためにやるかというと、リングに上がる時に自分が納得できているためなんですよ。〝これだけやったんだから〟という状態でリングに上がるのが大事で。不安が残っている状態では勝てないですから」
──練習の中で意識していることはどんな部分ですか?
「なんでも疑問を持つことですね。教わった通りじゃなく、自分の頭で考える。それとジムでは僕は先輩の立場なので、弟がトレーナー(の立場)なんです。弟なら何でも言えるし、向こうも言ってくれるので。話し合いは大事ですね。格闘技に対する考え方のレベルも一致しますし。あと引き算を覚えましたね」
──引き算ですか?
「練習内容であれもこれもと足していくと、身体が壊れてしまうので(笑)若い頃は練習をやりすぎてたんですけど。どれくらい引いていけば自分のパフォーマンスがMAXになるのか、いろいろ試しました。今、やっとですね、いろいろとできるようになってきたのは」
──きっちり考えて、自己管理する生活に充実感を感じられるかどうかがポイントなんでしょうね。
「充実感はあります。でも好きではないです(笑)やりたくてやってるというレベルの練習は、練習じゃないと思ってるので」
──嫌なことこそ練習だと。
「朝、憂鬱な気持ちで起きて、どんな理由つけて休もうかって思うような練習じゃないと強くなれないなって。その気持ちに打ち勝つのも練習なんですよ。〝よし、やるぞ!〟ってノリノリでやってるうちは甘いんじゃないかって。もう毎日〝朝が来ちゃった…〟って思ってます(笑)」
──結婚されたことで格闘家としての生活にもプラスは大きかったですか?
「すごくサポートしてくれますし、精神面での安心感は大きいですね。一人暮らしだと考えこんで寝れない日とかもあったんですけど、そういうことはなくなりましたから」
──「奥さんもいるし頑張らなきゃ」みたいな感覚も?
「そこは正直そんなに(笑)独身でも結婚してても、自分は格闘家としてやるべきことをやらなきゃいけないので。そこは変わらないですね」
──もともと結婚して変わるようなレベルでやってないと(笑)
「はい(笑)そういうレベルは、とっくにすぎちゃってますね」
INFORMATION

K-1 WORLD GP 2019 JAPAN ~よこはまつり~
11月24日(日)横浜アリーナ
開場11:00/開始13:00
〈対戦カード〉
「第3代フェザー級王座決定トーナメント」
卜部弘嵩 vs ブランドン・スぺイン
安保璃紅 vs ジャオスアヤイ・アユタヤファイトジム
江川優生 vs ホルヘ・バレラ
西京春馬 vs アーサー・メイヤー
皇治 vs 川原誠也/武尊 vs 村越優汰 ほか
公式HP

11月24日(日)横浜アリーナ
開場11:00/開始13:00
〈対戦カード〉
「第3代フェザー級王座決定トーナメント」
卜部弘嵩 vs ブランドン・スぺイン
安保璃紅 vs ジャオスアヤイ・アユタヤファイトジム
江川優生 vs ホルヘ・バレラ
西京春馬 vs アーサー・メイヤー
皇治 vs 川原誠也/武尊 vs 村越優汰 ほか
公式HP
PROFILE

卜部弘嵩(うらべ・ひろたか)
1989年5月13日生まれ 千葉県茂原市出身
18歳で全日本キックボクシング連盟からデビュー。弟の卜部功也とともにK-1、Krush戦線で活躍。Krushでは-60kg初代王者に。K-1では同級王座を功也との兄弟対決を制して獲得している。その後、結果を残せない日々が続くが復活を期して昨年から階級を-57.5kgに下げ、11月24日の第3代フェザー級王座決定トーナメントで再び2階級制覇を目指す。K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST所属。
公式Twitter 公式Instagram

1989年5月13日生まれ 千葉県茂原市出身
18歳で全日本キックボクシング連盟からデビュー。弟の卜部功也とともにK-1、Krush戦線で活躍。Krushでは-60kg初代王者に。K-1では同級王座を功也との兄弟対決を制して獲得している。その後、結果を残せない日々が続くが復活を期して昨年から階級を-57.5kgに下げ、11月24日の第3代フェザー級王座決定トーナメントで再び2階級制覇を目指す。K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST所属。
公式Twitter 公式Instagram
Interview&Text/橋本宗洋 Photo/おおえき寿一