名優水谷豊さんが監督第2作&初脚本を手掛けた映画『轢き逃げ ―最高の最悪な日―』が5月10日より全国公開される。親が認めた男性を愛し、順調な結婚生活を送るはずだったが一転、轢き逃げ犯の妻となってしまった令嬢の白河早苗役を演じた小林涼子さんは、本作をどう捉え、どう向き合ったのか。自身の価値観も踏まえて深掘りした。
水谷豊監督はすごく優しい方結婚式の衣装を選ぶ時には…
──水谷豊さんとは初タッグですが、どんな監督でしたか?「ドラマ『相棒』のイメージが強い方は常に淡々と話していて、お会いしたら紅茶をいれてくれるのかなと思うかもしれませんが(笑)すごく優しくてチャーミングな方でした。撮影が始まる前はいつも、スタッフさんやキャストに『よろしくね』と言ってアメリカ的な爽やかなハグをしてくださるんです。私は人としても監督としても、役者の先輩としても尊敬しています。現場でも全員から愛される監督でした」
──その愛情や尊敬の念が、ロケ地探しにも活きたとか。
「監督は『僕はイメージを伝えるだけ。口だけ(笑)イメージとピッタリの場所をスタッフが探してきてくれて驚いた』とおっしゃっていましたが、実は監督ご自身も神戸の街中をかなり歩き回って、頭の中にある画コンテに沿う場所を探したそうなんです。役者ですから、ロケ地に助けられることも、場所によって残念な結果になることも経験で知っている上でこだわられたのかな、と思いました」
──白河早苗役を演じる上で、小林さんにはどんな演出を?
「一例を挙げるなら、早苗の婚約者から夫になる宗方修一役を演じた、中山麻聖さんとのシーンです。2人は警察署の接見室で会うんですが、同じ場所にいるのにガラスで隔てられていて触れ合うことができない。触れたいのに触れられないという、すごく切ない場面を演出するために、『ガラスに手を当てて話してみて』と言われた時は、『こういう表現方法もあるんだ』と勉強になりました。うれしかったのは、早苗がウエディングドレスを着るシーンでの打ち合わせです。事前に準備したカタログに、監督が付箋を貼っていたんです。ページを見ながら『う~ん。どれがいいかな』と真剣に悩む姿を見て、実の父とのような距離感を味わいました。あの姿を見て安心感を抱くとともに、頑張ろうと思えました」
世の中の縮図を表現した作品誰にでも刺さる映画なのでは
──中山麻聖さんや秀一の友人役・森田輝役を演じた石田法嗣さんとは現場でどんな話を?「実は麻聖さんは高校の1歳年上の先輩で、学生時代からの知り合いなんです。法嗣くんとは以前に一度、夫婦役を演じたことがあるので『ゴメンね。両方ともと夫婦役を演じて』なんて、キャッキャしながら話していました。3人で『輝はダメ男だよね』という話でも盛り上がった記憶があります」
──確かに。ほかに役作りとして空き時間にケーキ屋巡りをしたそうですね。
「早苗が秀一さんとデートをするならどんなカフェに行くんだろう、好きなデートスポットが絶対にあるはずだ、と思って探し回ったんです。監督とスタッフさんがあれほど頑張っているのに、私1人だけがダラダラしているのは何か違うな、と思って。見つけたのは『カファレル』というお店。セレブなマダムらしき人が多くて、建設会社副社長の令嬢である早苗も愛用していたかも、と想像できました。私は仕事を頑張らないと、ああいった場所には行けないので…」
──いえいえ。小林さんもセレブぽい雰囲気が漂っていますよ!
「それはイメージです(笑)神戸ではチェーン店のうどん屋さんを探して食べたり、都内では牛丼屋さんにもよく行くので。監督のおかげで“いいとこの子”に生まれた気分を堪能させて頂きました」
──あはは(笑)作品の魅力も。
「加害者であり被害者であるという仕組みで成り立っていますが、何かが起こることには必ず理由があると思うんです。SNSを含め、複雑になってきている世の中の縮図を表現したような映画だと捉えています。『隣の芝生は青く見える』という気持ちを感じることは少なくないと思うので、誰にでも刺さるのではないでしょうか」
──本作は亡くなったお祖父様にも観てもらいたかったのでは。
「『やってみりゃ分かる』精神の持ち主で、小さい頃から気球やソーセージ作り、吹きガラスなどいろいろな経験をさせてもらいました。祖父の影響で、乗馬の免許も取得したんです。『もう1回』とお願いすれば何度でも経験させてくれる祖父で、今も私の血肉になっています。亡くなってしまったのは悲しいですが、直前にこの作品に出演できると報告できたので、天国で喜んでくれていると願っています」
INFORMATION
■映画『轢き逃げ ―最高の最悪な日―』
INFO&STORY
ある地方都市で轢き逃げ事件が起こり、一人の女性が命を落とす。車を運転していた宗方秀一(中山麻聖)と、助手席に乗っていた親友の森田輝(石田法嗣)は、秀一の結婚式の打合せに急いでいた。婚約者は大手ゼネコン副社長の娘・白河早苗(小林涼子)。悲しみにくれる被害者の両親、時山光央(水谷豊)と千鶴子(檀ふみ)。事件を担当するベテラン刑事の柳公三郎(岸部一徳)と新米刑事・前田俊(毎熊克哉)。平穏な日常から否応なく事件に巻き込まれ、それぞれの人生が複雑に絡み合い、抱える心情が浮き彫りになっていく……。「相棒」シリーズでおなじみの俳優・水谷豊の長編映画監督第2作。
CAST&STAFF
出演/中山麻聖・石田法嗣・小林涼子・毎熊克哉/水谷豊・檀ふみ・岸部一徳
監督・脚本/水谷豊
配給/東映
5月10日(金)全国公開
公式HP
(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会
PROFILE
小林涼子(こばやし・りょうこ)
1989年11月8日生まれ 東京都出身
主な出演作にドラマ「砂時計」(TBS)「魔王」(TBS)「主婦カツ!」、映画『大人ドロップ』『MARCHING-明日へ-』『ピンクとグレー』『猫は抱くもの』『ハッピーメール』『ひとりじゃない』など。テレビ朝日開局60周年記念ドラマ「やすらぎの刻~道」に出演中。
公式Twitter
公式Instagram
■映画『轢き逃げ ―最高の最悪な日―』
INFO&STORY
ある地方都市で轢き逃げ事件が起こり、一人の女性が命を落とす。車を運転していた宗方秀一(中山麻聖)と、助手席に乗っていた親友の森田輝(石田法嗣)は、秀一の結婚式の打合せに急いでいた。婚約者は大手ゼネコン副社長の娘・白河早苗(小林涼子)。悲しみにくれる被害者の両親、時山光央(水谷豊)と千鶴子(檀ふみ)。事件を担当するベテラン刑事の柳公三郎(岸部一徳)と新米刑事・前田俊(毎熊克哉)。平穏な日常から否応なく事件に巻き込まれ、それぞれの人生が複雑に絡み合い、抱える心情が浮き彫りになっていく……。「相棒」シリーズでおなじみの俳優・水谷豊の長編映画監督第2作。
CAST&STAFF
出演/中山麻聖・石田法嗣・小林涼子・毎熊克哉/水谷豊・檀ふみ・岸部一徳
監督・脚本/水谷豊
配給/東映
5月10日(金)全国公開
公式HP
(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会
PROFILE
小林涼子(こばやし・りょうこ)
1989年11月8日生まれ 東京都出身
主な出演作にドラマ「砂時計」(TBS)「魔王」(TBS)「主婦カツ!」、映画『大人ドロップ』『MARCHING-明日へ-』『ピンクとグレー』『猫は抱くもの』『ハッピーメール』『ひとりじゃない』など。テレビ朝日開局60周年記念ドラマ「やすらぎの刻~道」に出演中。
公式Twitter
公式Instagram
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら
衣装協力/AМAIL
衣装協力/AМAIL