16年〜18年、ドラマと映画『ウルトラマンオーブ』、映画『ウルトラマンジード』でオーブの宿敵ジャグラスジャグラー役を演じ悪役から爆発的人気となった俳優の青柳尊哉さんがドキュメンタリーディレクター役を演じた映画『美しすぎる議員』が3月16日に公開。作品の魅力とともに仕事観を聞くと、男らしい決断の末に現在があることを教えてくれた。
「川村ゆきえさんが演じた〝美しすぎる議員〟の葛藤を僕が演じた村上がカメラを通して見ていくので、映画館を出た後に人との本音の向き合い方が少し変わるかもしれません」
皆さんが知りたいメディア・政治の黒さを出すためゲスに
──本作はドキュメントテイストですが普段、ご覧になりますか?
「僕自身もドキュメンタリーがすごく好きでよく観ています。観たいのは、 取材対象者の一瞬の顔色の変化。成功体験や失敗体験を見せてくれるところも魅力ですよね。成功であればあの人たちの体験を踏襲したいとか憧れる気持ちになるけれど、失敗体験であってもなぜか引き込まれる。今回は失敗を狙っていくというか、不幸のネタを探すことで人に寄り添うディレクター役だったので、ゲスな部分を大事にしました」
──確かにゲスでしたが、登場人物がほかにはない作品かと。
「川村(ゆきえ)さんが演じた議員さん自体が共感を得づらい題材で、しかも〝美しすぎる〟の冠までついていますし、僕が演じたのはドキュメンタリ ーのディレクター。言い方は悪いですが観客目線で考えたらゲスく観たいじ ゃないですか。 政治にまつわる人やメディアの黒さは、 本当はみなさんがすごく知りたい部分。 だから台本を頂いた時点で『これはどう立ち向かおうか、観る人をどうやって作品に引き込めばいいのか』と悩みましたね」
──では、役作りに関して五藤利弘監督とはどのような話し合いを。
「監督ご自身が、『ザ・ノンフィクション』などドキ ュメンタリーを手掛けられてきた方だったので、相手のどこを見ているか、何を引き出したいのかは、 かなり質問させて頂きました。見たいのは取材対象者の本音ですから、嫌われる覚悟で踏み込む努力を大胆に演じてくれと言われました」
──取材対象者である田中愛役の川村ゆきえさんとは初共演でしたよね。
「クランクインで初めてお会いしました。僕が『議員役ですね』と言ったら『困りました…』とおっしゃっていましたね(笑)でも、タレントとしての彼女の魅力を存分に出して頂けたらと思っていて、撮影以外でも取材というか、コミュニケーションは図っていました。年齢が近いこともあって、プライベートの話もお伺いしましたね。川村さんと聡太郎くんと僕の誕生日が近くて、3人とも水瓶座という共通点もあり、親近感が沸いて現場では話が盛り上がることもありました」
東日本大震災当日何者でもない自分を知り悔しかった
──作品になぞらえた質問も。○○すぎる自分の○○に当てはめるなら?
「だらしなさすぎる自分です(笑)家にいると動きたくなくなるんです。歯を磨いたりお風呂に入ったりと最低限のことはしますけど、読書をしながら眠ってしまったり、歯を磨きながら寝ていたこともあります(笑)家にいるとスイッチがオフになってしまうんでしょうね。東京の人混みが嫌いなわけではないんですけど、世間や街や人に、何かを〝もらって〟いるんだと思うんです。だから家の中に入った途端、糸の切れた操り人形みたいになってしまうのかなと」
──だからご自宅の鍵を失くされた?
「家の鍵やケータイの置き場所も忘れますし、テレビのリモコンもどこにいったか分からなくなることもあります。僕が女性だったら避けたいタイプの男性ですよねぇ(笑)だらしない自分が好きではないんですよ。友だちでおもてなし上手の俳優を見ていると羨ましくなりますし。同じ場所に戻すというルールを守れないんですよね」
──ですが仕事では27歳の時、30歳までの3年で役者として勝負するというル ールを決めましたよね。
「東日本大震災があった日に、地下の劇場で初めて主演の舞台をやっていたんですけど、お客様が1人も来なくて。発信力のない自分と何者でもない自分がとにかく悔しかったんです。何になりたかったのか? と、改めて考えさせられる瞬間でした。あの日ですね、『俳優として生きるんだ』という思いに立ち返ったのは。だから、当時していた俳優ばかりが働いているバーのバイトを辞めて、四谷の荒木町で自分のバーを開店したんです。僕はお金も必要だし生活も大切だと考えていて、そのためには時間を売るしかないと考えていたんですが、俳優として食べていきたかったんです。時間ではなく能力を売るという考え方を持っていなかった。アルバイトから経営者になることで得るものは大きかったんですけど、『ウルトラマンオーブ』の撮影が始まる前に閉店しました」
──アルバイトと経営者経験は役者業にも活きていますか?
「やりたくないことの中に何を見つけるかを学びました。やりたくない仕事をして『もう絶対にやりたくない』と思えば、二度としなければいいわけで、 予想外の能力や気づきもありますし。 人と携わる仕事をしてきて思うのは、 『仕事は人とするものだ』ということ。人との出会いを買っていると思えば、 アルバイトも違う角度から見ることができるのではないでしょうか」
──有難うございます。最後に改めて本作の魅力を。
「人間には本音と建前があって、本音だと信じたいはずなのに『何か隠しているだろう』と、疑ってしまいがちだと思うんです。でも、それは本音を知りたいからで、少し視点を変えるとゲスな部分を見て安心したい自分もいるんですよね。『キラキラしているけど、本当はこの程度だよね』と。川村さん演じる田中愛のように、正しいことばかりを言われたら苦しくなってしまうけれど、彼女のように本音しか言えない人も信じてもらえないから生きづらいと思うんです。『美しすぎる』という言葉を与えられたけれど彼女にとっては忌み嫌う言葉かもしれない。そういった葛藤を僕が演じた村上がカメラを通して見ていくので、映画館を出た後に人との本音の向き合い方が少し変わるかもしれませんね」
INFORMATION
■映画『美しすぎる議員』
【INFO&STORY】
元タレントで現在は美しすぎる議員として話題の田中愛(川村ゆきえ)。そんな彼女の取材をするため、ドキュメンタリーディレクターの村上一朗(青柳尊哉)がやって来る。最初はごく一般的な取材だったが、村上のインタビューが徐々に度を越していく。地道に地域密着型の議員として、献身的に奮闘する愛の清くて美しい政治家としての姿に、愛の裏の顔を暴こうと四六時中、愛を監視するかのような村上の取材が続くが…。
【CAST&STAFF】
出演/川村ゆきえ・青柳尊哉・聡太郎・内藤忠司・大桃美代子ら
監督・脚本/五藤利弘
配給/渋谷プロダクション
公式HP
3月16日(土)より下北沢トリウッドにて公開
(C)映画「美しすぎる議員」製作委員会
PROFILE
青柳尊哉(あおやぎ・たかや)
1985年2月6日生まれ 佐賀県出身
映画やドラマ、舞台などで活躍。16年〜18年、ドラマ・映画・Amazon版『ウルトラマンオーブ』、映画『ウルトラマンジード』にジャグラスジャグラーとしてレギュラー出演し人気を集めた。近年の出演作にドラマ「家康、江戸を建てる」「ゆうべはお楽しみでしたね」、アニメ「トネガワ」、映画『アイアンガール FINAL WARS』がある。
公式Twitter
公式Instagram
■映画『美しすぎる議員』
【INFO&STORY】
元タレントで現在は美しすぎる議員として話題の田中愛(川村ゆきえ)。そんな彼女の取材をするため、ドキュメンタリーディレクターの村上一朗(青柳尊哉)がやって来る。最初はごく一般的な取材だったが、村上のインタビューが徐々に度を越していく。地道に地域密着型の議員として、献身的に奮闘する愛の清くて美しい政治家としての姿に、愛の裏の顔を暴こうと四六時中、愛を監視するかのような村上の取材が続くが…。
【CAST&STAFF】
出演/川村ゆきえ・青柳尊哉・聡太郎・内藤忠司・大桃美代子ら
監督・脚本/五藤利弘
配給/渋谷プロダクション
公式HP
3月16日(土)より下北沢トリウッドにて公開
(C)映画「美しすぎる議員」製作委員会
PROFILE
青柳尊哉(あおやぎ・たかや)
1985年2月6日生まれ 佐賀県出身
映画やドラマ、舞台などで活躍。16年〜18年、ドラマ・映画・Amazon版『ウルトラマンオーブ』、映画『ウルトラマンジード』にジャグラスジャグラーとしてレギュラー出演し人気を集めた。近年の出演作にドラマ「家康、江戸を建てる」「ゆうべはお楽しみでしたね」、アニメ「トネガワ」、映画『アイアンガール FINAL WARS』がある。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一