HIPHOPでは全員『俺が一番だ』と言うんです。僕も言います。二番手、三番手で甘んじず、自分が一番になれる世界を見つけて下さい。
日本のHIPHOPシーン拡大の立役者Zeebraさん。デビュー時から常にトップの座に君臨し続ける彼がオーガナイズするHIPHOPフェスティバル『SUMMER BOMB 2018 Organized by Zeebra』、通称〝サマボム〟が今年は8月18日(土)に新木場Studio Coastで開催される。5回目となる今回は内容が豪華&充実。フェスへの思いや「クラブとクラブカルチャーを守る会」設立の経緯、渋谷区観光大使ナイトアンバサダー就任の経緯も聞いた。HIPHOPを愛して止まないからこその仕事観にも注目!
ブームは若い世代が作るからこそアグレッシブな人が前に出るべき
──今回の〝サマボム〟は例年より規模が大きいですが経緯は。「一番大きい理由は、代々木公園で開催されていた『BBOY PARK』というHIPHOPの祭典が去年で終わってしまったことなんです。だから今年はその代わりと言っては何ですけど、ウチがいろんなステージを見せていこうかな、ということになりました」
──ダンスエリアやアートエリアは初開催ですよね。
「HIPHOPの四大要素はラップとブレイクダンスとDJとグラフィティ・アートと言われているんですが、そもそもその全てがHIPHOPという括りではなく、同じタイミングにNYで流行ったユース・カルチャーが1つになったんです。HIPHOPの大切なエッセンスだからこそ取り入れました」
──人気番組『フリースタイルダンジョン』への出場権をかけたMCバトル〝Road To Dungeon〟を楽しみにしている人も多いかと。
「MCバトルは基本、ほとんど公募なんです。しかも最近、MCバトルのエントリー数が激増していて千通単位で来るらしいんです。その中から16名を選ぶんで、それなりのクオリティでスタートを切ることができるのではないかと」
──応募してくる年齢層は?
「10代から30代後半までピンキリですよ。若い世代が参入してくる姿を見ると、やっぱりこうじゃなきゃダメだなと思いますね。自分たちが90年代から00年初頭までシーンを盛り上げていた頃は、10代から20代前半ぐらいのファン層がついてきていたんです。でも一緒に年を重ねてしまって、若いファンがいなくなった。そうするとやっぱりブームは下火になっちゃうんですよね。だけど、『高校生RAP選手権』(12年7月開始のBSスカパー!『BAZOOKA!!!』内の1コーナー)でまた10代が盛り上げてくれたんです。やっぱりブームって若いコが作るんだと実感しましたね。ラッパーが日本全国に200人ぐらいしかしなかった時期は、人数が少ないと序列ができちゃうんです。ベテランからピックアップしたことが下の世代の空洞化を作ってしまった。今は年齢を問わず一番アグレッシブに動いているヤツが前に出るべきだと僕は思っているので、ここ数年は順番をシカトしています。一方で我々世代にしかできないHIPHOPもあると思うのでBlue NoteやBillboard Liveでやればいいのではないかと」
──なるほど。〝サマボム〟をオーガナイズする前の13年4月に「クラブとクラブカルチャーを守る会」を設立し初代会長に就任していますが、本イベントとの関係は。
「全っ然関係ないです(笑)『クラブと――』は風営法改正対策のために作った会なんです。NOON裁判(16年の大阪ダンスクラブ事件。風俗営業に当たらず無罪確定)でかなりの署名が集まったんですけど、ダンス規制の対象にはサルサダンスと社交ダンスも含まれていたから、その組織票が大きかった。その流れも受けて我々も勉強を始めたんですけど、『クラブが発端ではあるけど組合もあるサルサと社交に、クラブは置いていかれる可能性がある』という話になって。置いていかれたらクラブだけで法の動きは変えられないということで、渋谷を中心にクラブ経営者にも話を聞きに行きました。そこでディスコ時代から経営している年配の事業者さんがこう言うんです。『昔から組合を作る話は出ているけど、商売敵だから何度も話が空中分解している。だから君たちに組合を作ってほしい。Zeebraくんが会長をやりなさい』と。その瞬間、演者の先輩方から拍手が起きて『Zeebraに決定!』と。僕は神輿みたいな存在です」
HIPHOPは他の企業では雇えない人を雇う〝雇用機関〟だと思います
──そんな経緯が(笑)16年4月からは渋谷区観光大使ナイトアンバサダーにも就任しました。「クラブ自体がもう少し社会性を持つべきだという話になったちょうどその時に、オランダのアムステルダムの市長が日本にいらっしゃったんです。で、一緒にナイトメイヤーも来ていると。『夜の市長?何だそれは!?』という話になって『クラブと――』のメンバーが会って話を聞いたんです。ヨーロッパで広がりつつあるナイトメイヤーは大半が民間なんですが、夜の世界の窓口として情報や要望を集約して、昼の行政や政治に働きかけているとのことでした。しかも翌年開催される、世界初のナイトメイヤーサミットに呼ばれまして。でも、日本にはナイトメイヤーがいない。『クラブと――』の会長じゃ弱えだろ。どうしようかという時に、渋谷区観光協会が一新されて。僕と同い年の長谷部(健)区長が、すごく進歩的な方なんです。区長は昔、代理店に勤めていてTOWER RECORDSの〝NO MUSIC, NO LIFE.〟キャンペーンを担当されていたんです。初対面の時に教えて頂き『えっ?僕と眞木蔵人をブッキングしたのはあなたでしたか!!』と、一気に距離が縮まりました。当時の彼がハーレーで現場に来たことも思い出しましたし、彼自身は原宿生まれの原宿育ち。同じ景色や流行を見て育ったという理由もあって、すごくやりやすくなりました」
──長谷部区長とは雑誌でも対談されていましたよね。
「区長のパンチラインが『渋谷の流行はストリートで生まれていますから』ですよ。それを、区長が言っちゃうんだ、みたいな。副区長は代理店時代の区長の先輩だし、完全に民間の感覚なんですよね。そのやりやすさもあり知人に『渋谷区観光大使ナイトアンバサダーになれば』という助言をもらい、今に至ります。あの時は『これで堂々とサミットに参加できるじゃん!』と、嬉しかったですね」
──Zeebraさんは好きなことを仕事にしていますが、好きなことを見つける方法は。
「とにかくやってみないと分からないと思うんですよ。例え向いていなかったとしても、そこに費やした時間を無駄だと思わないほうがいい。突っ込まないと何も始まらないんで。僕がHIPHOPを好きになったのは中学1、2年頃だったけど、当時はHIPHOPで食っているヤツなんて日本には皆無だったし、職業になるとも思っていなかった。食うためにはアメリカで売れなきゃダメなんだと思っていたんで、それは無理だなと。でも、80年代後半から90年代前半のダンスブームを誘引した『DADA L.M.D』や『ダンス甲子園』が放送された時期にHIPHOPにまつわるダンスが世界的ブームになって、日本でも流行ったじゃないですか。あの頃やっとですからね。『日本でもやっていけるかも知れない』と感じたのは。〝先物買い〟みたいなところはあるからラッキーではありましたけど。だから、できれば学生のうちに好きなことを探しておいたほうがいい。学生時代に見つからなくて社会人になったなら、学生時代を振り返って探す方法もアリだと思います。ドカントさんの読者は転職がメインですか?」
──その通りです!
「だとしたら、働いた経験があるわけですよね。それなら何となく分かると思うんです。向き不向きや好き嫌いが。向いていて好きな仕事を見つけて、一番を目指せばいい。HIPHOPでは全員『俺が一番だ』と言うじゃないですか。僕自身も言いますしHIPHOPのように二番手、三番手で甘んじず、自分が一番になれる世界を見つけて下さい。本気で好きな仕事なら辛くもないので」
──有難うございます。最後に改めて〝サマボム〟の魅力を。
「僕、HIPHOPは他の企業では雇えないヤツを雇う〝雇用機関〟だと思っているんです。自分たちのやりたいことで飯を食っているヤツらを観に来て下さい。今は多様化していて、いろんなタイプのアーティストがいるんです。昔ながらの不良が更生したバージョンも大勢いるんですが、それ以外でもAAAの日高(光啓)みたいなコもいれば、アイドルラップをするコたちもいるし、オタクの延長線上でやっているコもいる。今のHIPHOPは僕、すごく健康的になっていると思うんですよね。彼らは素直だからこそ気持ちを正直に言葉にしてしまうから悪く見えるかもしれませんが、怖いイベントではないのでぜひ!(笑)」
INFORMATION
■ヒップホップ・フェス『SUMMER BOMB 2018 Organizeb by Zeebra』
【INFO】
◆Awich / 漢 a.k.a. GAMI / Cz TIGER / SOCKS / JAGGLA / t-Ace / BAD HOP / KEN THE 390 / Weny Dacillo / Pablo Blasta / SALU / JP THE WAVY / JIN DOGG / kZm / 般若 / 唾奇 / Young Coco & more!!
◆Zeebra / LETY from Def Will
◆<DANCE AREA>BREAKIN CREW BATTLE [JUDGE] BBOY KATSU1 / FLASH / Original B-BOY CHINO [DJ] MAR SKI [MC] 105
HIPHOP DANCE BATTLE” [JUDGE] PInO / STEZO / Yusei [DJ] OBA [MC] HORIE HARUKI
◆<DUNGEON STAGE(ex.SUB STAGE)>「フリースタイルダンジョン」への出場権をかけたMCバトル「Road To Dungeon」や、ダンスバトル「BREAKIN CREW BATTLE」「HIPHOP DANCE BATTLE」が開催!公式サイトにてエントリー募集中だ!!
日程/8月18日(土)開場/開演12:00
会場/東京・新木場Studio Coast
公式HP
PROFILE
Zeebra(ジブラ)
1971年4月2日生まれ 東京都出身
K DUB SHINE、DJ OASISとのヒップホップグループKING GIDDRA(キングギドラ)のフロントマンとして名を馳せ、97年にソロ・デビュー。11年、東日本大震災を受けて活動休止中であったKING GIDDRAをKGDR名義で復活させ『アポカリプスナウ』を発表。13年にはラップを始めて25年の節目を迎え、8枚目のアルバム『25 To Life』をリリース。14年8月にはヒップホップ・フェス『SUMMER BOMB』をお台場ZeppDivercCityにて開催し、大成功に導いた。近年は、テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」MC出演や24時間ヒップホップ専門ラジオ局「WREP」の開局、「クラブとクラブカルチャーを守る会」初代会長、渋谷区観光大使ナイトアンバサダー就任など幅広いアーティスト活動を展開。著書『ジブラの日本語ラップメソッド』が文響社から好評発売中。
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■ヒップホップ・フェス『SUMMER BOMB 2018 Organizeb by Zeebra』
【INFO】
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◆<DANCE AREA>BREAKIN CREW BATTLE [JUDGE] BBOY KATSU1 / FLASH / Original B-BOY CHINO [DJ] MAR SKI [MC] 105
HIPHOP DANCE BATTLE” [JUDGE] PInO / STEZO / Yusei [DJ] OBA [MC] HORIE HARUKI
◆<DUNGEON STAGE(ex.SUB STAGE)>「フリースタイルダンジョン」への出場権をかけたMCバトル「Road To Dungeon」や、ダンスバトル「BREAKIN CREW BATTLE」「HIPHOP DANCE BATTLE」が開催!公式サイトにてエントリー募集中だ!!
日程/8月18日(土)開場/開演12:00
会場/東京・新木場Studio Coast
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PROFILE
Zeebra(ジブラ)
1971年4月2日生まれ 東京都出身
K DUB SHINE、DJ OASISとのヒップホップグループKING GIDDRA(キングギドラ)のフロントマンとして名を馳せ、97年にソロ・デビュー。11年、東日本大震災を受けて活動休止中であったKING GIDDRAをKGDR名義で復活させ『アポカリプスナウ』を発表。13年にはラップを始めて25年の節目を迎え、8枚目のアルバム『25 To Life』をリリース。14年8月にはヒップホップ・フェス『SUMMER BOMB』をお台場ZeppDivercCityにて開催し、大成功に導いた。近年は、テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」MC出演や24時間ヒップホップ専門ラジオ局「WREP」の開局、「クラブとクラブカルチャーを守る会」初代会長、渋谷区観光大使ナイトアンバサダー就任など幅広いアーティスト活動を展開。著書『ジブラの日本語ラップメソッド』が文響社から好評発売中。
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取材・文/内埜さくら