「縄はコミュニケーション」と世界でアート活動も行う緊縛師
人だけでなく岩などの物も縛る。赤い縄や光る縄も用いて、縛りをアートとしても表現する。世間では「エロス」のイメージが先行しがちな緊縛を「アート」としても表現する緊縛師がHajime Kinokoさんだ。「縄はコミュニケーション」という緊縛に対する考えや、表現者としての来歴を聞いた。
世界では〝縛り〟がアートとして確立されている
──生まれが名古屋の名和町で本籍地が柴田と、生まれから「縄」と「縛った」に運命があったそうですね(笑)
「緊縛を始めて5〜6年してから、そういえばって気づきました」
──さすがに子供の頃は緊縛のことも知らないですもんね。
「男だからエッチなことは好きでしたけどね(笑)緊縛を始めたのは、21歳の頃にフェティッシュバーの店長にな って、彼女がそういうものを好きだったからなんです。SMの知識はなかったですが、お客さんに教わったり、他のお店を回ったりして色んなジャンルをひと通り勉強しました。でも女性を汚したり痛めつけたりするのは好きになれず、縛りだけは、いいなと思ったんです」
──その縛りにも「女性に痛みを与える」というイメージがある人は多いと思いますが、そうではない部分を感じたわけですね。
「縛った時に相手との繋がりを感じて、信頼関係がないとできないなと思ったんです。よく分からない人に身を委ねるわけですから…。あと、縛った時の女性の体も美しく感じました」
──その後、様々な先生から縛りのことを教わったそうですが、岩などの物も縛る自身の活動は独自に編み出したのでしょうか。
「練習でイスを縛ったりするうち、面白くてエスカレートしていった感じですね。あと僕は物を縛る時も、女性だと思って縛ります。木でも『あ、ここらへんは足だな』『ここは顔だな』と思いながら縛ると、やっぱり美しくなります」
──触ったり、見たりする中で、場所や縛り方が見えてくるのでしょうか。
「そうですね。人を縛る時も、まず肩に手を置き、相手の状態を探ります。呼吸が早ければ、落ち着かせるために柔らかく縛る。触った瞬間にエッチな反応をしたら、エロスを求めていると分かります。あと、相手を探るのも一方通行ではダメで。『あ、私のこと知ろうとしてくれている』と思ってもらえて初めて、相手は心を開いてくれる。だから、縄はコミュニケーションだと思います」
──縛っている間にも、相手の反応はだんだん変わってくるんでしょうか。
「変わってきますね。反応に合わせて、縛るべき強さ、タイミングで縛っていくと、体は美しくなる。コミュニケーションがラインに表れるんですよね。だから縛り=亀甲縛りとか痛いもの…という印象を持っている人には、誤解を解くためにも見てほしいです」
──赤い縄で縛る作品も強く印象に残りました。縄が血管のように見えて。
「赤い縄は血に見えますよね。僕も表現者として縛りの良さを伝えたくて、赤い縄を使う『RED』のシリーズでは「繋がり」を表現しています。白のバックには無垢な気持ち、赤の縄には強い絆のようなものが感じられると思います。『RED』ではDNAを表現した作品も、繭から蝶が羽ばたくイメ ージの作品もあります」
──そのような表現活動と並行し、縛りの教室も行っているそうですね。どんな方が来るのでしょうか。
「マニアが来る雰囲気でもなく、アート活動の一貫の人も、彼女と少し遊びたい人も、お稽古感覚で来る人もいます。約3分の1は外国の方ですね」
──活動を広める中で、縛りに対する世間の印象が変化した感覚は?
「日本ではまだエログロのイメージが強いですが、世界ではアートとして確立しています。レディ・ガガも緊縛の写真を発表していますし、シャネルも緊縛を用いたビジュアルを発表しています。僕もDIESELで「SHIBARI」というバッグが発売された際、インスタレーションを行いました」
──ご自身の創作活動もさらに広がっているんですね。
「最近はアメリカのバーニング・マンという世界的なイベントで巨大なジャングルジムを作ったり、代々木公園で6メートルの人型オブジェを作ったりしました。子供が見る場所での展示もあるので、ロープアーティストとしても表現をしていますが、僕はやっぱり半分は緊縛師で。表現活動も、自分が楽しいと思うことをやっているだけなんですが、緊縛師がこのような活動を行っている部分に面白みがあると思っています」
INFOMATION
Hajime Kinokoと複数の講師がレッスンを行う「一縄教室」を高田馬場で定期開催中。見学 1000円、初級 4000円ほかレベルに応じた内容あり。また、ロープアート活動のアシスタントやスタジオ運営を行うアルバイトスタッフも募集中。縛りの世界や写真、アートが好きで、心身共に健康で責任感のある方希望。給与は日給10000円〜で能力に応じて要相談。教室の開催日や内容、場所の詳細、スタッフ募集の詳細はホームページ(http://shibari.jp)で確認を。
公式HP
PROFILE
Hajime Kinoko(はじめ・きのこ)
1977年、愛知県名古屋市生まれ。縛りをエロスと捉えるだけでなく、ポップな解釈やアートへの昇華も得意とし、生成り縄による「和の緊縛」、赤縄を使った「アートロープ」、光る縄で魅せる「サイバーロープ」といった表現活動も実施。様々な種類の縄を使った緊縛を行う。近年は写真や映像によるアートワークも精力的に発表。縛りと撮影、演出のすべてを手掛ける。またパリ、ロンドン、ミュンヘンなど20以上の世界の主要都市で公演やワークショップを行っている。
公式Twitter
Hajime Kinokoと複数の講師がレッスンを行う「一縄教室」を高田馬場で定期開催中。見学 1000円、初級 4000円ほかレベルに応じた内容あり。また、ロープアート活動のアシスタントやスタジオ運営を行うアルバイトスタッフも募集中。縛りの世界や写真、アートが好きで、心身共に健康で責任感のある方希望。給与は日給10000円〜で能力に応じて要相談。教室の開催日や内容、場所の詳細、スタッフ募集の詳細はホームページ(http://shibari.jp)で確認を。
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Hajime Kinoko(はじめ・きのこ)
1977年、愛知県名古屋市生まれ。縛りをエロスと捉えるだけでなく、ポップな解釈やアートへの昇華も得意とし、生成り縄による「和の緊縛」、赤縄を使った「アートロープ」、光る縄で魅せる「サイバーロープ」といった表現活動も実施。様々な種類の縄を使った緊縛を行う。近年は写真や映像によるアートワークも精力的に発表。縛りと撮影、演出のすべてを手掛ける。またパリ、ロンドン、ミュンヘンなど20以上の世界の主要都市で公演やワークショップを行っている。
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取材・文/古澤誠一郎