自ら「地下アイドル」という肩書きを積極的に名乗り、ソロでも「僕とジョルジュ」というユニットでもCDを発表。一方でライターとしての活動も行い、今年は朝日新聞出版から『職業としての地下アイドル』という新書も発表。24歳にしてそれだけ多彩な活動を行いながら、なりたいものも、やりたいことも今だ分からない……。そんな地下アイドル・姫乃たまさんにインタビューを敢行!
24歳でアイドルをしている今も「将来何になるんだろう?」と考えちゃう
中学校の頃からは妄想族とか日本のHIPHOPを聞いてました
──小さい頃は「書き初め」の授業で書くべき目標が浮かばず、絶望してしまうような子供だったそうですね。
「よくご存じで(笑)!大人になったら夢もできるはずと思っていたんですが、24歳でアイドルをしている今も『将来何になるんだろう?』とか考えちゃって。その将来、今だよ!周りの人に誘ってもらい、面倒見てもらって続けられてる感じです」
──高校時代にロフトプラスワンにイベントを見に行ったことが、地下アイドルになるきっかけだったそうですが、サブカル的なものは好きだったんですか?
「初めて読んだマンガが『ねこぢる』で、最初に読んだ雑誌が『Tv Bros.』や『Quick Japan』でした。なので産湯がサブカルという感じだったんですね……」
──好きだったミュージシャンは?
「中学校の頃からは妄想族とか日本のHIPHOPを聞いてました。やりたいことがなくて、友達もあまりいなかったので、自分の主張を言葉にできて、仲間も多い人達が羨ましかったんだと思います。今聞くと、歌詞は大麻がどうしたとかケンカがどうしたっていう歌詞ばかりなんですけど……(笑)」
──高校2年生から地下アイドルの活動を始め、月20ものイベントに出ている時期もあったそうですね。アイドルのどこに面白さを感じたんですか?
「ちょうど今の地下アイドルの業界ができあがっていく時期だったので、地下アイドルとは何かを考えるのは楽しかったです。あと活動を始めた当初は、『アイドルとして違う自分になったほうがいい』と思っていたのですが、だんだん辛くなってしまって。途中から地下とアイドルの自分と普段の自分を近づけていきました」
──それはなぜ?
「アイドルって基本的に短命で、ライブにドーピング的な楽しさはあっても、3年くらいで疲れ切って辞める人が多いんです。私は文章の仕事を始めたのがライブを続ける支えになりました。文章は自分のペースで書けて、考えをまとめる時間にもなるので、その両立が私にはいいバランスで。今もウツがひどくなる時期は文章を書くことで癒されています」
──著書の『潜行』や『職業としての地下アイドル』では、業界の裏側もかなり赤裸々に書かれていますよね。「アイドルは恋愛しないと言い張って、ファンはそれを信じたフリをして、お互いがエンターテイメントを楽しんでいる」と自分で書いちゃうのはスゴいと思いました。
「地下アイドルって、普通の女の子が『恋愛しません』と宣言することで、アイドルにしてもらえている世界だと思うんです。これまであまり言語化されていなかっただけで、当事者にとっては『まあそうだよね』と思うことじゃないかなと」
──地下アイドルと名乗るからこそできる活動も多そうですよね。
「そうですね。地下アイドル自体が曖昧な存在なので、活動内容を制限されない一方で何かはやっている人なんだなと認識してもらえる面もあるので、 人前に出たい女の子にはすごくいい肩書きだと思うんです」
──姫乃さんのCDに錚々たるミュージシャンが集まって、それが面白い作品になっているのも、地下アイドルならではなのかなと思いました。
「なんだかホントにスゴい人ばかりですよ……。私だけ楽器もできず、曲も作れず、ポリシーも特になく…。提案してもらったことを『それやりましょう!』と言っているだけなので、そこを面白がってくれているのかもしれませんが申し訳ない……」
──やっぱり歌声も、鍛え抜かれた地上のアイドルとは違うというか……。
「昨日もライブでお客さんに『聴いてると歌のピッチがどこで合ってるのか分からなくなる』と言われました」
──そこも含めて良いと思います(笑)
「ホント申し訳ない気持ちです!」
──ソロアルバムの『やすらぎインダハウス』という曲は、「ファンの人達を癒やしたい」という姫乃さんの正直な思いが伝わってくるいい曲だと思いました。
「ソロに関しては、ファンの人が『自分に歌ってくれているなあ』と感じられる歌詞を意識しています。自分にやりたいことがない分、人の期待に沿ってナンボだと思うので……」
──これだけ多くの活動をしても、まだ将来の目標は見えてこないですか?
「まったく見えてないです(笑)。ただ来年は書籍の発売がいくつか決まっているので、これまでは地下アイドル業界について書いてきましたが、そこに頼らない自分自身と向き合うための文章も多く書いていきたいです」
【INFORMATION】
最新ソロアルバム『もしもし、今日はどうだった』著書『職業としての地下アイドル 』 (朝日新書)ともに好評発売中!
PROFILE
姫乃たま(ひめの・たま)
1993年2月12日、東京・下北沢生まれ。
地下アイドル/ライター。高校在学中の16歳よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を中心に、文筆業も営む。ライターとしては、本人名義での連載が現在月に11本。他にモデル、DJ、司会としても活動する。
公式HP
公式Twitter
最新ソロアルバム『もしもし、今日はどうだった』著書『職業としての地下アイドル 』 (朝日新書)ともに好評発売中!
PROFILE
姫乃たま(ひめの・たま)
1993年2月12日、東京・下北沢生まれ。
地下アイドル/ライター。高校在学中の16歳よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を中心に、文筆業も営む。ライターとしては、本人名義での連載が現在月に11本。他にモデル、DJ、司会としても活動する。
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取材・文/古澤誠一郎 撮影/熊代紀章