「彼女の歪んだ感情には共感できなくても、根底にある“愛されたい”って想いには寄り添おうって決めたんです」
近年相次ぐ『恋の罪』や『凶悪』といった実録犯罪映画の系譜に連なる問題作『恋の病』。18年1月6日の劇場公開に先駆け、渾身の役作りでヒロイン・エミコ役を熱演した瀬戸さおりさんを、小誌が直撃。映画初主演でもある本作に賭ける想いの丈を聞いてきた。
髪の色からこだわった渾身のキャラクター作り
──映画『愛の病』は、02年に実際起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」をモチーフにしたサスペンスドラマ。これが記念すべき映画初主演作でもある瀬戸さんにとっては、いろんな意味でかなりの難役だったのでは?「そうですね。初めて台本を読んだ時は、エミコという女性のキャラクターがあまりに自分と違いすぎて、理解できない部分も多かったんです。不安は、正直かなりありました。ただ、彼女のなかに巣喰っている歪んだ感情には共感できなくても、その根底にある『愛されたい』という想いは、私も含めてきっと誰もが持っている。なので、まずは私自身が全力で寄り添うことで、彼女のいちばんの理解者になろうって決めたんです」
──田舎ヤンキー然としたダルそうな表情やガサツな物言いは、めちゃくちゃサマになっていましたよ。実際、「もしこれが本人の素だったら会うの嫌だな」と思ったぐらいでしたから。
「もちろん素ではないですよ?(笑)でも、そう言って頂けるのは演じ手として、とてもうれしいです。エミコみたいな雰囲気の女のコたちや、自分が見てきた身近な人物像をつなぎ合わせながら、イメージを膨らませていった部分もありました」
──スウェットのセットアップを着て、車はぬいぐるみを満載にした車高の低い軽ワゴン。よく行くところは近所のイオンモール、みたいな(笑)
「まさにそういうイメージです。劇中での髪の色を決める時も、私なりにかなりこだわったんです。美容室で染める時みたいにキレイに染まりすぎてしまうのは嫌だったので、『色はこの赤がいいけど、全部を赤にするんじゃなくて、このあたりは黒のままで……』とか、細かくお願いしました。そのせいか、髪を染めるのを手伝ってくれた美容師の友人からは『どんな映画なの?』って、すごい不思議がられました(笑)」
──さすがはご自身も美容師をされていただけのことはありますね。まだらで雑な感じとか、キューティクルの剥がれ具合なんかが、やけに生々しいなぁと思ってたんですよ(笑)
演じるうちに楽しく…自分の意外な一面に戦慄
──ちなみに、ご自身がエミコに変貌していくなかでは、彼女とシンクロするような瞬間もありました?「真之助役の岡山(天音)くんをいじめるシーンは、そんな感じだったかもしれないです。彼も本気で向かってきてくださるので、演じているうちに、ホントに楽しんでいる感覚というか。知らない間に自分自身の意外な一面を見つけてしまったような気がして、ちょっと怖かったですね」
──そのお話を聞いてから観ると、また印象が変わってきそうです。相手役のお二方。岡山さん、八木将康さんとはベッドシーンもありましたが。
「初めての挑戦のひとつなので、完成版を観るまでは、恥ずかしくて直視できなかったりもするのかな、とぼんやり思っていたのですが、意外と客観的に観られたことに自分でもびっくりしました。あと真之助の前と、八木さん演じるアキラの前での表情の違いにもぜひ注目してほしいです。好きな人の前では、ちゃんと普通の女のコの顔をしているので」
──してましたねぇ。どっちのエミコとも出会いたくはないですけど(笑)では最後に、難役を演じきったいま現在の、次のなる目標をぜひ。
「これまではマジメな優等生や、妹的な役を演じさせて頂くことが多かったのですが、今回の作品に出会ったことで、気持ちの上でも、新しい自分というか、成長できたと感じているので、もっともっと振り幅の大きな役者になっていけたらな、と思っています。エミコを超える悪女ですか? それは私としても望むところです。ぜひまた挑戦したいです」
INFORMATION
■映画『愛の病』
【INFO&STORY】
生活費を稼ぐために出会い系サイトのサクラとして働くエミコは、彼女に入れ込んだ工員の真之助に「私はヤクザの組長の娘。結婚を認めてもらうには組への登録料が必要」などと嘘をついて、大金を貢がせていた。ある日、解体作業員のアキラと出会い一目惚れしたエミコはアキラとデートを重ねる。しかし、重度の障害を持ったアキラの姉・香澄の存在を疎ましく思ったエミコは、香澄を殺してしまいたいという衝動に駆られ、真之助に連絡を入れる…。02年に起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」をベースに描いた官能サスペンス。
【CAST&STAFF】
出演/瀬戸さおり・岡山天音・八木将康・山田真歩・佐々木心音・黒石高大・藤田朋子
監督/吉田浩太
脚本/石川均
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
18年1月6日(土)シネマート新宿ほか公開
(C)2017「愛の病」製作委員会
PROFILE
瀬戸さおり(せと・さおり)
1989年9月19日生まれ 福岡県出身
13年に女優デビュー。近年の主な出演作はドラマ『ドS刑事』『トットちゃん!』、舞台『君が人生の時』『風紋〜青のはて〜』『胎内』など。本作で映画初主演を飾り、演技派女優として注目を集めている。
公式Twitter
■映画『愛の病』
【INFO&STORY】
生活費を稼ぐために出会い系サイトのサクラとして働くエミコは、彼女に入れ込んだ工員の真之助に「私はヤクザの組長の娘。結婚を認めてもらうには組への登録料が必要」などと嘘をついて、大金を貢がせていた。ある日、解体作業員のアキラと出会い一目惚れしたエミコはアキラとデートを重ねる。しかし、重度の障害を持ったアキラの姉・香澄の存在を疎ましく思ったエミコは、香澄を殺してしまいたいという衝動に駆られ、真之助に連絡を入れる…。02年に起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」をベースに描いた官能サスペンス。
【CAST&STAFF】
出演/瀬戸さおり・岡山天音・八木将康・山田真歩・佐々木心音・黒石高大・藤田朋子
監督/吉田浩太
脚本/石川均
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
18年1月6日(土)シネマート新宿ほか公開
(C)2017「愛の病」製作委員会
PROFILE
瀬戸さおり(せと・さおり)
1989年9月19日生まれ 福岡県出身
13年に女優デビュー。近年の主な出演作はドラマ『ドS刑事』『トットちゃん!』、舞台『君が人生の時』『風紋〜青のはて〜』『胎内』など。本作で映画初主演を飾り、演技派女優として注目を集めている。
公式Twitter
取材・文/鈴木長月 撮影/おおえき寿一