「映像化不可能」と言われていた脚本家・宍戸英紀さんの城戸賞受賞作『クロス』が映画化され7月1日より公開。女の執念をむき出しにして築き上げた幸せを死守しようとする知佳役を好演したのはシンガーでもある女優のSharoさん。罪を背負い過去に囚われ欲望の中でもがく人間に再生の光は射すのか――。人間の本性をえぐり出す話題作の見どころに迫る。
“スポットライト症候群”がきっかけで女優になりました
──Sharoさんは早稲田大学を中退して芸能界に入ったそうですね。中退してまで目指した経緯は?「ミュージカルサークルに入り、1年生でヒロインを演じさせて頂いて“スポットライト症候群”にかかってしまったのがきっかけです(笑)舞台の上に立った時『ああ、生きてるな』という感覚を味わいました。ちょうど東宝ミュージカルアカデミーが開校した年で、記念受験したら受かったという偶然も重なったんです」
──では大学生当時、目指していた職業などは。
「高校生の頃、薬剤師を目指したのですが受験で挫折しまして。メイクや美容に関することが好きだから化粧品の開発をしたくて勉強したんですけど、実現できなかったから将来を考える時間を確保するために文学部に入ったんです。昔から母には『女性が結婚して家庭を持つにしても手に職はつけておきなさい』と教育されていましたし」
──演じられた知佳とは真逆の人生を歩んできたということですね。
「知佳は若くして子どもがいる専業主婦で、私は仕事一筋。確かに真逆ですが、知佳も私ももう1つの人生を選べなかったわけではないんですよね。だから知佳の気持ちも理解できるんですけど、子どものことだけは産んだ経験がないから理解をするまでに時間がかかりました」
──具体的な役作りの方法は。
「高校時代の知佳はたぶん、スクールカーストの上位にいたコなんです。派手なグループのリーダー格だったと思います。私はカーストの外側にいて一匹狼的な行動をしていたので、知佳に似た同級生たちのその後をSNSでチェックしました。個人的なデータでしかありませんけど、彼女たちのようなコって“仕上がり”が早いんです。子ども時代と学生時代を年相応に謳歌して、今はきちんと母親になっているんです。私は学生時代、勉強しかしてこなかったから今を謳歌しているんだという差を知りました」
真っ直ぐで折れそうな3人のぶつかり合いを見てください
──知佳は殺人事件に関わった過去を隠して結婚します。ご自身が相手に秘密を持ったら?「えっ、普通は隠し通しますよね?(笑)私なら墓場まで持っていきます。後ろめたい過去を自ら打ち明けるのって、重い荷物を相手に背負わせてしまうだけのような気がしますし。秘密を隠し通すことができれば、知佳と孝史と真理子のような展開にはならないとも思います。ただ基本的には女性の勘は鋭いし、男性は隠すことが下手ですけど…」
──その基本に則ったラストの知佳が怖すぎました…!
「あそこまで全力を出し切れたのは、孝史を演じた山中(聡)さんのおかげなんです。本気で怖がってくれたので、そのお芝居に私も引っ張って頂いて怖い脅迫シーンを演じることができました。あのシーンは2人の顔の距離感がものすごく近くて、息がかかってカメラが視界に入らないほどだったんです。だから完成作を観るのが楽しみな場面でもありました」
──ほかにもヒヤヒヤする展開の連続ですが、本作の魅力は?
「3人のまっすぐなぶつかり合いには引き込まれると思います。世間から見れば歪んでいるかもしれませんが、3人とも正しいと思うことに対してまっすぐに向かっていくんです。特に女性2人は何かの拍子に折れてしまいそうなほどの頑ななまでの強さで自分の世界を守ろうとします。最後の捉え方は人それぞれですが、3人の未来には光があるような感じが個人的にしています。今はなくなってしまった、ドロドロの昼ドラのようなテイストも楽しんで頂きたいですね」
INFORMATION
■映画『クロス』 INFO&STORY
あるジャーナリストによって過去の集団リンチ殺人事件の加害者の現在が白日の下に晒され、それをきっかけに、人間の欲望のマグマが燃え上がり、もうひとつの封印されていた殺人事件が呼び起こされる…。その過程で人間の欲望や嫉妬、贖罪とは何かを描いていく。「第39回城戸賞」を受賞した脚本を映画化したエロティックサスペンス。
CAST&STAFF
出演/紺野千春・山中聡・Sharo・ちすん/秋本奈緒美/斎藤工(友情出演)ら
原案・脚本/宍戸英紀 監督/奥山和由・釘宮慎治 撮影/釘宮慎治 音楽/木下航志(主題歌「Just a Closer Walk with Thee~輝く明日へ僕は歩く~」) 配給/太秦
公式HP
7月1日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
(C)2017「クロス」製作委員会
PROFILE
Sharo(しゃろ)
福岡県出身
12年にドラマ「結婚しない」でデビュー。以降、「密会の宿」「緑川警部VS」「警部補 矢部謙三2」「味いちもんめ2013」「お助け屋陣八」「シンデレラデート」「◯◯妻」「偽装の夫婦」など数多くのドラマに出演。また、「光~Hikari~」で歌手デビューを飾り現在は音楽ユニットLove=Creatureとして活動中だ。
公式ブログ
公式Twitter
■映画『クロス』 INFO&STORY
あるジャーナリストによって過去の集団リンチ殺人事件の加害者の現在が白日の下に晒され、それをきっかけに、人間の欲望のマグマが燃え上がり、もうひとつの封印されていた殺人事件が呼び起こされる…。その過程で人間の欲望や嫉妬、贖罪とは何かを描いていく。「第39回城戸賞」を受賞した脚本を映画化したエロティックサスペンス。
CAST&STAFF
出演/紺野千春・山中聡・Sharo・ちすん/秋本奈緒美/斎藤工(友情出演)ら
原案・脚本/宍戸英紀 監督/奥山和由・釘宮慎治 撮影/釘宮慎治 音楽/木下航志(主題歌「Just a Closer Walk with Thee~輝く明日へ僕は歩く~」) 配給/太秦
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7月1日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
(C)2017「クロス」製作委員会
PROFILE
Sharo(しゃろ)
福岡県出身
12年にドラマ「結婚しない」でデビュー。以降、「密会の宿」「緑川警部VS」「警部補 矢部謙三2」「味いちもんめ2013」「お助け屋陣八」「シンデレラデート」「◯◯妻」「偽装の夫婦」など数多くのドラマに出演。また、「光~Hikari~」で歌手デビューを飾り現在は音楽ユニットLove=Creatureとして活動中だ。
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撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら