業界の第一線で活躍するギタリストが「飛び出しくん」に魅了された理由とは
ギタリストとしてソロやバンドで活動するほか、過去にはB’z稲葉浩志のソロ作品や、大澤誉志幸のツアーなどにギターで参加。そんな業界の第一線で活躍するミュージシャン関将さんが、児童の飛び出し注意を喚起する看板・人形「飛び出しくん(飛び出しや)」をテーマにした書籍を発表。そのインタビューは、一見つながりの見えない2つの活動の共通点が浮かび上がる内容になった。
道を極めようとしたわけではなく度を超しちゃっただけなんです
──本業である音楽ではB’zの稲葉浩志さんのアルバムに参加されたほか、個人やバンドでも様々な活動をされているんですよね。
「はい。26歳までは音楽学校でギターの先生をしていましたが、『このままでは自分の音楽ができなくなる』と思い、先生を辞めてバンド活動を再開しました。そのバンドのボーカルがB’zのツアーに参加するようになり、その縁で僕も稲葉浩志さんのアルバムでギターも弾かせてもらいました。その後はTWINZERというバンドでも活動しながら、楽曲提供の仕事もしてきました」
──2001年にはインドネシアに音楽事務所を開設されたそうですね。
「当時の日本では3〜4カ月おきにシングルが出て、短いスパンで新曲が忘れ去られる状態で、それが僕は嫌だったんです。そんなおりにインドネシアに行くと、3年前や5年前の曲を今でも好きな人が多く、ブリティッシュロックやアジアの要素、はかない雰囲気が合わさった現地の音楽も面白かった。それでジャカルタのワーナーなどの事務所に『日本から来たんだけど一番偉い人を出してほしい』と売り込み、仕事をもらうようになりました(笑)」
──そのころから写真や旅行が好きになり、日本でも「よく知らない場所のホテルを予約し、そこに向かう」という旅をするようになったそうですね。
「そうですね。東京みたいに何でもある場所と違って、よく知らない場所や、有名な観光名所もないような場所に行くと、無理やり楽しいものを探そうという本能が働くんですよ」
──そんななかで写真を撮るようになったのが、今回書籍になった『日本飛び出しくん図鑑』(タツミムック)で紹介している全国の飛び出しくんだったわけですね。撮影のはじまりは2013年の7月の広島県三原市で、片手のもげた立体飛び出しくんや、顔面のもげた飛び出しくん、などを見て衝撃を受けたそうですね。
「めっちゃシュールでしたね。そこにはマネキンの生首が並んだ床屋さんもあって、『誰がこんなことをやったんだろう』『地元の人はこれを見てどう思っているんだろう』と衝撃を受けました」
──その体験をきっかけに、飛び出しくんや面白い看板の写真を意識的に撮りためていったわけですね。
「深くは考えず、撮りたいから撮っていただけでしたね。その写真をライブの写真に紛れてFacebookにアップしていたら、『こういうのも見つけたよ!』と反応してくれる人が出てきて、それから盛り上がっていった感じです」
──楽しんでやっていたら、結果的にそれが本になってしまったと。
「そうですね。よく『道を極める』と言いますけど、僕は道を極めようとしたわけではなくて、楽しんでいることが度を超しちゃっただけなんです(笑)」
──ちなみに本業の音楽の活動と、飛び出しくんなどを楽しむ活動は、やはりどこか通じるものがあるんですか?
「あるかもしれませんね。僕は一つの曲をやるにもアドリブ要素が多いし、音楽もロックだけではなく、ジャズ、ブルース、ポップス、クラシック、ボサノヴァと、何でも好きでやっちゃう。静岡のライブハウスの店長さんは僕のライブを見て『少年の宝探しを見ているようだ』と言っていました」
──東日本大震災の後にはじめられた、自身の音楽を全国に届けるライブツアーは今も継続されているんでしょうか。
「続けています。旅って、いつも奇跡が起こるんですよ。ちょっと入った店のマスターと話をしていたら、『じゃあ、うちでライブやってよ』って言われて、次に行ったら満員のお客さんがいたりする。それでライブが終わったら、『毎年来てくれ』と言ってもらえたりするんです」
──音楽活動でも、知らない場所に飛び込むことを大事にしているんですね。
「人間、動くと何かが起こるんですよね。インターネットで調べ物をしていれば、知識が増えていく感じはするんですけど、やっぱり自分が体を動かして、自分で肌で感じたもののほうが、その1億倍くらい学べることも多いし、楽しいことも多いんだなと本当に実感しています」
PROFILE
関将(せき・しょう)
ギタリスト、作曲家。東京都出身。B’zの稲葉浩志のソロ作品『マグマ』でギターを弾いたことをきっかけに、バンドTWINZERに参加。その後もソロや様々なバンドで活動を行い、作曲ではナベプロや大手事務所の歌手に楽曲提供を行う。そのほか舞台音楽、CM、映像音楽制作など幅広く活動。昨年12月には、全国のツアー先で撮りためた「飛び出しくん」やおもしろ看板を紹介する書籍『日本飛び出しくん図鑑』(辰巳出版刊)を発表。
公式HP
関将(せき・しょう)
ギタリスト、作曲家。東京都出身。B’zの稲葉浩志のソロ作品『マグマ』でギターを弾いたことをきっかけに、バンドTWINZERに参加。その後もソロや様々なバンドで活動を行い、作曲ではナベプロや大手事務所の歌手に楽曲提供を行う。そのほか舞台音楽、CM、映像音楽制作など幅広く活動。昨年12月には、全国のツアー先で撮りためた「飛び出しくん」やおもしろ看板を紹介する書籍『日本飛び出しくん図鑑』(辰巳出版刊)を発表。
公式HP
取材・文・撮影/古澤誠一郎 写真提供/関将