「大切な人の死はいずれ誰もが経験すること。この映画が何かを考えるきっかけと誰かの手助けになってくれたらうれしいです」
映画『GUN CRAZY』シリーズや『復讐したい』などジャパニーズ・アクション映画界を牽引し続ける室賀厚監督が初めて挑んだヒューマンドラマ『お元気ですか?』が10月15日から公開。苦しみもがく主人公・藤木冴子を演じた、書家としても活躍する女優の宮澤美保さんに縁ある出演への経緯や撮影秘話を聞いた。
主演は35年前に亡くなった弟からのプレゼントです…
──主演が決定した時、亡くなった弟さんからのプレゼントのような気がしたそうですね。「あまり公の場で言ったことはなかったのですが、35年前に弟を交通事故で亡くしているんです。だから命の大切さを扱ったこの作品との出会いは、弟から『お姉ちゃん、よく25年も役者やってきたね』という贈りもののような気がして。室賀(厚)監督は、いつもは銃撃戦ありのアクション系の作品を手掛けている方ですが、この脚本はお父様が亡くなった病床の横で執筆した、というエピソードを聞いた時にご縁を感じました。大切なシーンを撮影した八ヶ岳は私の出身地でもある長野、というのも呼び寄せられた感じがするんです」
──その室賀監督からは、熱烈なオファーを頂いたそうですが。
「室賀監督が担当するCMで、私がオーディションを受けたことがきっかけなんです。まさか会場にいらっしゃるとは知らず私は淡々とこなしていたんですけど、監督が『櫻の園』での私を覚えていてくださって、プロフィールを保管していたらしくて。だから今回、初顔合わせの時に『初めまして』と言ってしまったのですが、失礼な対応をしたなと(笑)」
──監督はどんな人柄なんでしょう。公式サイトの「お元気ですか?TV」ではかなりはっちゃけていますよね。
「私だけが室賀組へ初参加でしたけど、常連の役者さんたちとのトークでは下ネタ全開ですよねえ(笑)でも実際の監督はとてもシャイな方でしたよ。打ち上げでも私の様子をチラチラと見ながら、ほかの人たちと下ネタを楽しんでました。きっと私に振ったら怒られるか冷たくされると思ったんでしょうね。私、実はそれほど耐性がないわけではないですけど」
死ぬ前日に電話する相手…私は10人では足りないです
──本作は「もし明日死んでしまうとしたら」という台詞が印象的ですが、宮澤さんがその立場になったら。「明日、自分が死んでしまうことが分かるって幸せですよね。普通、死は予期せず突然やってくるものですから。でも、1日じゃ短いですね…最低でも1ヶ月前には知りたいです。主演の遺作を撮影し終えてから死にたいですね」
──さすが女優ですね! では冴子のように、最後に10人電話するなら?
「それ、撮影前に考えたんですけど10人じゃ足りないんですよ。冴子は天涯孤独ですけど、両親2人と身内と友だちに電話するだけで、軽く超えてしまうので。だから冴子が最後に電話するあのシーンはきっと私は経験できません。ラストはきっと『そうきたか!』と感じて頂ける展開になっていると思います」
──ほかに撮影秘話はありますか。
「冴子が樹海に入っていくシーン、実は山梨ではなく埼玉の深谷で撮影してます(笑)監督がすごくいい場所を見つけてくださいました」
冴子を演じる期間は苦しく無になる瞬間もありました
──冴子を演じている撮影中、ずっと辛かったそうですね。「私は役とプライベートを切り替えるのがうまくない方なので。冴子は一瞬にして大切な家族を失ってしまう女性ですから、撮影前と撮影期間はずっとナーバスになっていました。ずっと苦しかったですね。私も経験者ですが、家族を失ってから乗り越えられる時間は、人それぞれ違う。実際の冴子も、家族を思い出したり忘れたりしながらゆっくり時間をかけて乗り越えていくと思うんです。でも、心にはずっと暗い影が落ちたままで。そういう女性を演じたので、無になってしまう瞬間もありました」
──そこまで入れ込んだ作品ですから、多くの人に観てもらいたいですね。
「大切な人の死はいずれ誰もが経験することですから、この映画が何かを考えるきっかけになってくれたら役者冥利に尽きます。今、自殺が増えていると言われている小学生や中学生のみなさんにも観て頂いて、自分がいなくなった時に残された周りの悲しみを想像して頂きたいです。私にとってはおそらく一生観返す宝物のような作品なので、自分の両親のほかにも、誰かの手助けになる映画になってくれたらうれしいですね」
INFORMATION
■映画『お元気ですか?』
INFO&STORY
「お元気ですか?」と、旅先から知り合いに電話を掛ける藤木冴子(宮澤美保)。かつて勤めていた美容室の店長や小学校の恩師、学生時代の悪友など、これまでの人生で関わった様々な相手に感謝や謝罪の言葉を伝えていく。やがて、旅の途中で知り合った仲の良い医大生カップルの姿を見て表情を曇らせる冴子だったが、その後も義姉やママ友、看護師、弁護士、元恋人、夫の両親と、次々と電話を掛けていく。そして、10人目の相手に電話をするが…。
CAST&STAFF
出演/宮澤美保・丸山隼人・加藤藍子・田中俊・筧礼・崔哲浩・二木二葉・菊池裕子・山野はるみ・正木蒼二・永倉大輔・菅田俊・長谷直美
監督・脚本/室賀厚
配給/KOMピクチャーズ
公式HP
10月15日よりユーロスペースほか全国順次公開
(C)2016お元気ですか?フィルムパートナーズ
PROFILE
宮澤美保(みやざわ・みほ)
12月25日生まれ 長野県出身
90年、映画「櫻の園」城丸香織役でスクリーンデビュー。以降、数多くの映画やドラマ、舞台、CMなどで活躍。05年には企画・脚本・主演を務めた「苺の破片」が公開された。映画出演はほかに「神様のカルテ2」「海賊と呼ばれた男」がある。書道家としての顔も持ち、宮沢光華名義で活動。映画や舞台などの題字制作、販売を行っている。
公式HP
公式Twitter
■映画『お元気ですか?』
INFO&STORY
「お元気ですか?」と、旅先から知り合いに電話を掛ける藤木冴子(宮澤美保)。かつて勤めていた美容室の店長や小学校の恩師、学生時代の悪友など、これまでの人生で関わった様々な相手に感謝や謝罪の言葉を伝えていく。やがて、旅の途中で知り合った仲の良い医大生カップルの姿を見て表情を曇らせる冴子だったが、その後も義姉やママ友、看護師、弁護士、元恋人、夫の両親と、次々と電話を掛けていく。そして、10人目の相手に電話をするが…。
CAST&STAFF
出演/宮澤美保・丸山隼人・加藤藍子・田中俊・筧礼・崔哲浩・二木二葉・菊池裕子・山野はるみ・正木蒼二・永倉大輔・菅田俊・長谷直美
監督・脚本/室賀厚
配給/KOMピクチャーズ
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10月15日よりユーロスペースほか全国順次公開
(C)2016お元気ですか?フィルムパートナーズ
PROFILE
宮澤美保(みやざわ・みほ)
12月25日生まれ 長野県出身
90年、映画「櫻の園」城丸香織役でスクリーンデビュー。以降、数多くの映画やドラマ、舞台、CMなどで活躍。05年には企画・脚本・主演を務めた「苺の破片」が公開された。映画出演はほかに「神様のカルテ2」「海賊と呼ばれた男」がある。書道家としての顔も持ち、宮沢光華名義で活動。映画や舞台などの題字制作、販売を行っている。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一