ベトナム発の総合武術“ボビナム”の伝道師 マスターフゴ
かの橋本真也が旗揚げしたプロレス団体『ZERO-ONE』などでも活躍してきた現役プロレスラー・富豪富豪夢路氏が、ベトナム発祥の総合武術『ボビナム』の普及に取り組む、もう一つの顔“マスターフゴ”となって本誌に登場。格闘技を知り尽くした百戦錬磨のプロ格闘家をも虜にする未知なる武術、ボビナムの魅力とは果たして──!?
プロの格闘家を唸らせた豊富な戦闘技と奥深さ
──まずはボビナムと出会ったいきさつから教えてください。「09年から、日本での活動とは別に、欧米やアジアを中心とした世界各国でプロレスの興行をやってきて、そのなかで『ベトナムって国はどうなんだ』って興味が沸いてね。調べてみたら社会主義国だからプロレスはなくて、その代わりにボビナムってもんがあると。ただ、当時はインターネットで検索しても、日本語のサイトは2つしかヒットしなくて、まったくその実態がつかめない。だったら、実際に行ってみようってことで、3年前に行ったんだ」
──ベトナムではわりとメジャーな格闘技ではあるんですか?
「ホーチミンの街中では、私が今日着ているのと同じ、青い道着の若い女の子が当たり前のようにスクータ ーに乗っていたり、公園なんかじゃ青のボビナム、白の空手、黒の中国拳法と、子どもたちが3色に分かれて稽古をしてたり、かなり生活に溶け込んでる様子は見てとれた。けど、それを本格的に教えてくれる道場の場所が分からなくてね。5日ぐらい方々を探して、ようやく人づてに聞いたら、『明日、ちょうど世界大会があるよ』と。で、次の日、そこへさっそく乗り込みに行ったんだ」
──まるで道場破りに行くかのようなアグレッシブさですね(笑)。
「まぁ、実際はもっと丁重に行ったけど、似たようなもんだよね。ただの観客のくせに、部外者が入れない選手団の待機スペースまでズカズカ行って、関係者を捕まえて、『30ヵ国近くの人が集まってるのに、なんで日本人はいないんだ』とか問いつめてさ。その日のうちに、ホテルの近所にあった刺繍屋で、会場で買った道着に“JAPAN”って入れてもらって、2日目はそれを着て行って、直談判。グローブと防具をつけてラウンド制&体重別で戦う“ドイケン”を指差して、『アレに出してくれ』って交渉したよ。もちろんエントリーはしてないし、そのときはまだルールなんかも、全然知らない状態ではあったけどね(笑)」
ボビナムの根底にある根強い人間力こそがいまの日本人には必要なんじゃないのかな
──無茶にもほどがあります。しかし、そこまでボビナムに魅了された理由とは何だったんでしょう?「やっぱりいちばんは、お金の取れる技ならたいていのものを見尽くしてきたはずの私さえもが、想像だにしない技や動きがそこにはあったってこと。自分の頭のなかにある『こう動けば、こうなる』っていうそれまでの“常識”からは考えられない受け身の技術や技の組み立て、身体の動かし方を目の当たりにして、純粋にその仕組みをもっと知りたいと思ったわけ。まぁ、ボビナム自体は、型や演舞のジャンルひとつを取っても多種多様で、さっきも挙げたドイケンなんかもある総合武術だから、ひとくちに『ボビナムとは、こういうもんです』っていう説明ができるものでもないんだけど。でも、受け身で音を立てないとか、自分の心臓をガードしたまま、相手の眼を見すえて礼をする……なんて、いかにも実戦向きって感じでしょ?」
──やるときはやってやるぞ、っていう肚のすわったベトナム人の国民性みたいなものは感じますね。
「そうそう。いまの日本人には、そういうベトナムをはじめとした大陸の人たちが持ってるたくましさ、言わば人間力が決定的に不足してると思うんだよ。原爆を二度も落とされて日本がボロボロにされたことを知りながら、そのアメリカと戦争をしても『負けない』と思えるベトナム人の人間力。それを象徴するものこそが、ボビナムなんだよね」
──そんなボビナムを今後、マスターはどうして行こうと?
「全国を飛びまわって試合をするプロレスラーという立場を活かして、いま現在もいろんな場所で教室を開いているんだけど、まずはその場所ごとにインストラクターを置けるぐらいにはしていきたい。ベトナムは日本にいちばん近い親日国でもあることだし、国内外のいろんな人の協力を仰ぎながら、いいサイクルを作っていけたらうれしいね」
PROFILE
マスターフゴ/ますたーふご
1969年、福岡県生まれ。96年にプロデビュー。“富豪富豪夢路”のリングネームで『プロレスリングZERO-ONE』などで活躍した。現在はボビナム普及に邁進する一方、所属する『プロレスリングFTO』をはじめとした全国各地のプロレス団体が加盟する『日本列島プロレス連盟』でも、初代筆頭理事相談役を務める。
INFORMATION
社団法人 日本ボビナム協会
公式HP
新宿クラス■毎週火曜18時~
飯田橋クラス■毎週水曜19時~
横浜クラス■毎週日曜20時~ ほか、全国各地で開講中!!
1回1000円の体験コースほか、各種料金、アクセスなどの詳細は、協会ホームページまで。
マスターフゴ/ますたーふご
1969年、福岡県生まれ。96年にプロデビュー。“富豪富豪夢路”のリングネームで『プロレスリングZERO-ONE』などで活躍した。現在はボビナム普及に邁進する一方、所属する『プロレスリングFTO』をはじめとした全国各地のプロレス団体が加盟する『日本列島プロレス連盟』でも、初代筆頭理事相談役を務める。
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社団法人 日本ボビナム協会
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1回1000円の体験コースほか、各種料金、アクセスなどの詳細は、協会ホームページまで。
取材・文/鈴木長月