山口「リアルさを出すため5.1Chにしてます。ぜひ映画館で観て下さい。 コンテナに閉じ込められたような圧迫感を覚えるはずです」
温水「僕が演じた史上最弱な男が、家族が拉致されてると分かってからの頑張りが見どころです。 試写を観て監督! この作品に出演させてくれてありがとう!!と思いました」
バラエティでは「愛すべきいじられキャラ」として、役者としては多彩な顔を持つ温水洋一さんが、ワンシチュエーション・サスペンスムービーに初挑戦。メガホンを執ったのは、映像化できそうにないギャグ漫画を実写化することに定評がある、山口雄大監督だ。この2人の組み合わせなら笑いを期待する人も多いかもしれないが、意外にも今回は笑いの要素を一切、排除している。あえて期待を裏切った理由とは? ほぼ温水さんしか出演しない映画の内容とは? 映画になぞらえてお2人に過酷だった過去も語っていただきます!
実はお蔵入り寸前でした…今も観客動員に奮闘中です
──お2人がタッグを組んだ映画『アブダクティ』が遂に10月12日公開ですね。山口「実はこの映画、お蔵入り寸前だったんです。完成した去年の10月頃、プロデューサーが制作会社を辞めたりして、一時宙に浮いてしまったんです。でもどうしても埋もれさせたくなくて、僕がゆうばりファンタや海外の映画祭に出品をもちかけて、運良く賞を頂けたりした経過で、なんとか公開までこぎつけました。温水さんにも僕から宣伝をお願いしましたよね」
温水「僕はその時初めてお蔵入りする可能性があると聞いて、ビックリしましたよ」
山口「でも、日の目を見ないまま終わるのは悔しいじゃないですか。温水さんがお笑い一切ナシの映画に出るのは珍しいですし、僕は“バカコメディー”ばかり撮ってたから、そろそろバカじゃないところを見せないとヤバかったですし(笑)」
温水「僕が山口監督と最初に仕事をしたのは03年の暮れでしたよね。『漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他)』の短編の中の『ハデー・ヘンドリックス物語』で」
山口「そうです。17歳のロック歌手役を、パンツ一丁で熱演して頂きましたね(笑)」
温水「だから山口監督が監督に決まった時、『お笑いじゃないんだよなぁ、これ』と思ったのが正直な感想です(笑)」
──確かにお笑い要素ナシですね。
温水「そう言っても誰も信じてくれないんですよ~。だって笑いが起きますもん。『どんな映画かひと言で』と聞かれて『僕がコンテナの中に拉致されて、どこかに運ばれる映画です』って言うだけで、ドーッと」
山口「僕が監督として入った段階ではまだ本が固まっていなくて、7稿ぐらい作って現状のストーリーに落ち着いたんですけど、温水さんが出るのならお笑いにした方がいいのかという揺れはあったんです。だけど結局、笑いの要素なくコンテナの中で必死にもがく温水さんを、僕が観たいと素直に思ったんですよ」
閉所恐怖症だから最初2日はイライラしましたね(笑)
──あのコンテナは本当に揺らしているんですか?山口「撮影前に僕、トラックの荷台に乗ったんです。そうしたら、真っ暗な中で揺らされるのって、すごく辛くて怖い。同じ環境に温水さんを置きたくて、両脇から6人で揺らす、人力システムにたどり着きました」
温水「だから、コンテナが斜めになって僕が壁にバーンと当たるのとか、ガチなんですよ。もちろん、肩パッドを装着しましたけど。でもねぇ、コンテナの中って仕事とはいえ、僕は苦手ですね。タイトなスケジュールで撮ったから、ほとんどコンテナ内にいたんですけど、僕、閉所恐怖症なんですよ。MRIとか以前、ドラマで入った棺桶は絶対ダメ。わーっ! てなっちゃう。コンテナも近い状態ではありましたね」
山口「最初の2日間はイライラしてましたもんねえ(笑)」
温水「もー! イライラしましたよー! こっちはコンテナの中にい続けてるのに外から楽しそうな笑い声が聞こえてきたりすると、特に(笑)」
山口「温水さん、イライラすると早口になるんですよ(笑)。でも、そのおかげでリアルないい演技をして頂けました」
──臨場感ありますよね。
山口「リアルにしたいというのが一番の狙いなんですよ。そのために6つのスピーカーを使う5.1Chにしてるから、ぜひ映画館で観てもらいたいですね。コンテナに閉じ込められたような圧迫感を覚えるはずですから」
“根拠のない自信”だけが貧乏時代を支えてくれた!
温水「臨場感があるせいか、試写で観た時に僕は、自分が出ていることも忘れて引き込まれてしまいましたねぇ。僕が演じた史上最弱な男が、家族が拉致されてると分かってからの頑張りに感動しました。監督、この作品に出演させてくれてありがとう! と思いました」山口「うれしいですねえ、そう言って頂けると」
──温水さん演じる千葉は過酷な状況に追い込まれますが、お2人が最も辛かった時期は?
温水「貧乏暇なし、風呂なしアパート住み時代の25~26歳ぐらいですかねぇ。32歳までバイトしてたんですけど、サイフの中に50円しかない時は、スーパーで半額の豆腐を買って食いつないでましたね。事務所からオーディションの電話がかかって来ても、交通費がないから別の劇団の友だちに『電車賃で300円貸してくれない?』とお願いしたこともあります(笑)。バイトも劇団公演のたびに休むから、すぐクビになりましてねぇ。だから、日中は日雇いの引っ越し作業をして、夜22時から朝6時まで荷物の仕分け作業をして、13時から稽古に行って。でも、帰って来ても風呂がないから汗を流せないという(笑)。週3でそんな生活をしてしのいでました」
山口「僕もそんな生活してましたよ。朝10時までファストフード店、11時から19時までレンタルビデオ店、22時から朝5時まで空港で。たまにシフトを間違えてその生活が連続してキツイなあって(笑)。ところで温水さん、当時借りたお金、返しました?」
温水「いや、実はまだ…(笑)」
山口「僕も結構借金しましたけど、まだです(笑)。だけど当時はプロになれる根拠はなくても楽観的だったんですよ。どうにかなるだろうと思ってました」
温水「僕もそうですよ。結果論ですけど、根拠のない自信が当時の自分を支えてました。でも、その自信が間違ってたら今頃大変なことになってたから(笑)…誰にでもオススメできる方法ではないですよ~」
INFORMATION
■映画『アブダクティ』
INFO&STORY
家族にも見捨てられ、借金を抱えた史上最弱の中年ダメ男・千葉厚志は、目を覚ますとコンテナの中に閉じ込められていた。トラックから船に積まれてどこかへ運ばれていき、やがて千葉と同じように拉致され、コンテナに閉じ込められている被害者が何百人もいることが分かる。隣り合うコンテナの壁越しにほかの被害者と会話するうち、別れた妻と娘も拉致されて積まれているかもしれないことに気づく。誰が何のために千葉たちを拉致したのか…? 実力派俳優の温水洋一と、「地獄甲子園」の山口雄大監督がタッグを組み、密室に閉じ込められた男がたどる顛末を描くシチュエーションサスペンス。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で準グランプリ受賞。
CAST&STAFF
出演/温水洋一・麻亜里・仁科貴・播田美保・正木佐和・清水智史・田中敬司・長島すみれ・椿かおり・犬塚征男・ジジ・ぶう
監督/山口雄大
脚本/牧野圭祐
企画・製作/ティー・オーエンタテインメント
配給/TOブックス
公式HP
10月12日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトショーほか全国順次公開
(C) 2013 ティー・オーエンタテインメント
PROFILE
温水洋一(ぬくみず・よういち)
1964年生まれ 宮崎県出身
88年から数々の舞台出演を経て、「ラブコン」「パッチギ!LOVE&PEACE」「伊藤の話」「ALWAYS 三丁目の夕日’64」など数多くの映画やドラマ、バラエティに出演。個性派俳優としてまた気弱キャラ、愛すべきイジられキャラとして老若男女から支持されている。映画は公開待機作に「タイガーマスク」「ペコロスの母に会いに行く」「天心」「あさ・ひる・ばん」「麦子さんと」などがある。
公式HP
PROFILE
山口雄大(やまぐち・ゆうだい)
1971年生まれ 東京都出身
02年、月刊ジャンプに連載されていた漫☆画太郎原作の「地獄甲子園」を映画化し、03年度の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」ヤングコンペ部門グランプリ受賞。以降、「ババアゾーン」「魁!!クロマティ高校」「激情版エリートヤンキー三郎」「板尾創路の脱走王」「極道兵器」「デッドボール」「メンズエッグ・ドラマーズ」などを手掛け、ジャンルを問わずマルチな才能を見せつけている。
■映画『アブダクティ』
INFO&STORY
家族にも見捨てられ、借金を抱えた史上最弱の中年ダメ男・千葉厚志は、目を覚ますとコンテナの中に閉じ込められていた。トラックから船に積まれてどこかへ運ばれていき、やがて千葉と同じように拉致され、コンテナに閉じ込められている被害者が何百人もいることが分かる。隣り合うコンテナの壁越しにほかの被害者と会話するうち、別れた妻と娘も拉致されて積まれているかもしれないことに気づく。誰が何のために千葉たちを拉致したのか…? 実力派俳優の温水洋一と、「地獄甲子園」の山口雄大監督がタッグを組み、密室に閉じ込められた男がたどる顛末を描くシチュエーションサスペンス。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で準グランプリ受賞。
CAST&STAFF
出演/温水洋一・麻亜里・仁科貴・播田美保・正木佐和・清水智史・田中敬司・長島すみれ・椿かおり・犬塚征男・ジジ・ぶう
監督/山口雄大
脚本/牧野圭祐
企画・製作/ティー・オーエンタテインメント
配給/TOブックス
公式HP
10月12日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトショーほか全国順次公開
(C) 2013 ティー・オーエンタテインメント
PROFILE
温水洋一(ぬくみず・よういち)
1964年生まれ 宮崎県出身
88年から数々の舞台出演を経て、「ラブコン」「パッチギ!LOVE&PEACE」「伊藤の話」「ALWAYS 三丁目の夕日’64」など数多くの映画やドラマ、バラエティに出演。個性派俳優としてまた気弱キャラ、愛すべきイジられキャラとして老若男女から支持されている。映画は公開待機作に「タイガーマスク」「ペコロスの母に会いに行く」「天心」「あさ・ひる・ばん」「麦子さんと」などがある。
公式HP
PROFILE
山口雄大(やまぐち・ゆうだい)
1971年生まれ 東京都出身
02年、月刊ジャンプに連載されていた漫☆画太郎原作の「地獄甲子園」を映画化し、03年度の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」ヤングコンペ部門グランプリ受賞。以降、「ババアゾーン」「魁!!クロマティ高校」「激情版エリートヤンキー三郎」「板尾創路の脱走王」「極道兵器」「デッドボール」「メンズエッグ・ドラマーズ」などを手掛け、ジャンルを問わずマルチな才能を見せつけている。
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一