「この作品は黒澤明監督が言われていた『言いたいことは言うな』に倣った昔のザ・映画って作り。ぜひ若い人に観てもらって、今後のエンタメ業界の底上げ的存在になってくれることを願っています」
女優の岩下志麻さんや放送作家の鈴木おさむさんが大絶賛した、無名監督×原作ナシ×上映はミニシアター1館のみでスタートした映画『369のメトシエラ~奇跡の扉~』が、観客の支持を受けて全国に拡大。魅了され、キャンピングカーで映画上映地域についてくるというファンまで生まれた、作品の魅力とは? シンガーソングライターとして、本作では主演としても活躍する“歌うイケメン俳優”大垣知哉さんに話を聞いた。
被災地石巻市の応援が僕らの背中を押してくれた映画
──東日本大震災以前と以降では、評価が大きく異なると聞きました。「そうなんですよ。以前は半数ぐらいの人が難しいとか、性的マイノリティーの表現方法が嫌やーとかって意見があったんですけど、以降はそういった感想がピタッとなくなりました。作品のテーマのひとつである『都会の孤独』というものを、時代がリアルに捉え出して、映画が時代に上手いことハマったんだなぁと実感した現象ですね」
──被災地の宮城・石巻でも上映されて、大反響を呼んだんですよね。
「小林兄弟監督と僕で舞台挨拶をする時は、どの会場でも必ず質疑応答の時間を設けるんですけど、どうでした? と聞いたら、ご自分の知人や身内が津波で流されてしまった身の上話をする方がいらしたんですよね。その身の上話を聞くうちに、会場にいた全員がわんわん泣き出すこともありました。そして最後に『来てくれてありがとう』とおっしゃってくれる方が大勢いたので、もっとこの映画を全国に広めようという力を与えてもらえたんですよ。あの石巻市での上映期間に背中を押されたからこそ、今度の凱旋ロードショーもあるのかなと」
──公開から2年以上経ってから東京の大型映画館でロードショーって、異例ですよね。
「監督と単館上映で終わるんじゃないかと話をしていたんで、この現実はまったく想像していませんでしたね。でも、いい映画だから観てほしいと主張し続けた甲斐がありました。監督も僕自身もそうなんですけど、やりたいことや自分の夢は口に出すことが大切だと思っているんです」
夢は口に出すことが大切だと映画を通して実感してます
──口に出すことが重要…? その理由をエピソードを交えて教えてもらえますか。「僕ね、大学を卒業する時に、大手メーカーとコンサルティング会社の2社から内定をもらってたんですよ。なのに『音楽をやりたい!』と両親に宣言したら、『やると思ってたわー』と、反対するどころか応援してくれて。しかも内定をもらった会社の人にも相談したら、やった方がいいと言って頂けたんですよ。僕が言った時に誰も反対する人がいなかったんで、もうこれはやるしかないな、と。自分のやりたいことを口に出してがむしゃらに一生懸命やっていると、必ず誰かが手を差し伸べてくれたり、道を作ってくれるものなんだと思いましたね」
──監督は、どんな夢を口に出していたのでしょうか。
「将来、米国の6大メジャーと呼ばれる大きな映画会社から声がかかる監督になりたい、日本人初の米国アカデミー作品賞を受賞として、作品名を会場に残したいと言っていました。それはもう暑苦しいぐらいに(笑)で、そう言った第一作目が黒澤明監督の『生きる』をオマージュしたこの作品で、単館上映が全国ロードショーになった。この映画って不思議なことにリピーターの客層が一番多くて、そのリピーター客が友人知人を連れて来てくれる、“人が人を呼ぶ”作品なんです。お客さんの支持があってここまで成長したのはもちろんですけど、監督の作品への愛が通じて、自然とその強い思いが滲みで出たから、そこに人を惹きつけられたのかな、と」
若い世代に観てもらいエンタメ業界の底上げをしたい!
──規模が大きくなった本作を、どんな人に観てほしいですか?「できるだけ若い人に観てもらいたいんですよね。この映画を観てもらうには最も難しいと言われている年代ですけど」
──難しい…それはなぜですか。
「この作品は黒澤明監督が言われていた『言いたいことは言うな』に倣った昔のザ・映画って作りなんで、行間を読むというか、想像しないと分かりづらいんですよ。でも今のドラマって説明シーン満載で、想像しなくて楽しめるでしょう? だから若い人には難しいみたいです。あとは、人生経験の度合いによって感動する場所も大きく違うらしいです。でも、ぜひ若い人にはこの作品を観てもらって、今後のエンタメ業界の、感性の底上げ的存在になってくれることを願っています」
──映画にちなんだ質問も。テーマである“孤独”を感じるのはどんな時。
「今は拠点を出身の京都に移しましたけど、東京で一人暮らししてた時は周りが騒がしかったりすると、そのギャップで孤独な感覚に陥ってましたね。そして、ついつい家で一人酒をして、酒に溺れて寝てしまうという生活をしていました(笑)」
──その孤独を癒してもらうなら、どんな女性が理想ですか?
「色気のある人が好きですね。ギャップのある人に惹かれます。そういう女性とベッドの中で温め合って…って、久しぶりにこんな質問されましたよ。恥ずかしい(笑)」
INFORMATION
■映画「369のメトシエラ~奇跡の扉~」
INFO&STORY
現代社会の隙間で生きる人々の姿を通して、都会の中の孤独を浮き彫りにするファンタジー。区役所に勤める俊介(大垣知哉)は、一カ所に定住することなく引越しを繰り返していた。古びたアパートに入居した俊介は、毎日のように隣室から聞こえてくる奇妙な歌声に興味を持ち始める。引き寄せられるように隣室を訪れ、そこにいた老女から思いがけない話を聞かされる…。11年1月の単館上映から始まり、多くの観客の声に押され全国へ拡大。公開から約2年、大阪や京都、東京の大劇場で映画界の常識を覆す凱旋ロードショーを迎えた。
CAST&STAFF
出演/大垣知哉・阿部百合子・日和佑貴・別府あゆみ・矢内龍之介・河野正明ら
監督・脚本・編集/小林兄弟
製作・配給/ジャングルウォーク
公式HP
1月19日、新宿ピカデリーにてロードショー
PROFILE
大垣知哉(おおがき・ともや)
1976年11月23日生まれ 京都府出身
大学卒業と同時にシンガーソングライターとして音楽活動を開始。アルバム「呼吸」「ふと見上げた空の向こう」をリリース。ミュージシャンとしての活動の傍ら、テレビやラジオのメインパーソナリティ、イベントや舞台のプロデュース、楽曲の提供などを手掛ける。08年に俳優活動をスタート。主な出演作に映画「369のメトシエラ」「GSワンダーランド」、テレビドラマ「サンシャイン・デイズ」「リバウンド」などがある。3rdアルバム「on the corner」好評発売中。
公式ブログ
公式Twitter
■映画「369のメトシエラ~奇跡の扉~」
INFO&STORY
現代社会の隙間で生きる人々の姿を通して、都会の中の孤独を浮き彫りにするファンタジー。区役所に勤める俊介(大垣知哉)は、一カ所に定住することなく引越しを繰り返していた。古びたアパートに入居した俊介は、毎日のように隣室から聞こえてくる奇妙な歌声に興味を持ち始める。引き寄せられるように隣室を訪れ、そこにいた老女から思いがけない話を聞かされる…。11年1月の単館上映から始まり、多くの観客の声に押され全国へ拡大。公開から約2年、大阪や京都、東京の大劇場で映画界の常識を覆す凱旋ロードショーを迎えた。
CAST&STAFF
出演/大垣知哉・阿部百合子・日和佑貴・別府あゆみ・矢内龍之介・河野正明ら
監督・脚本・編集/小林兄弟
製作・配給/ジャングルウォーク
公式HP
1月19日、新宿ピカデリーにてロードショー
PROFILE
大垣知哉(おおがき・ともや)
1976年11月23日生まれ 京都府出身
大学卒業と同時にシンガーソングライターとして音楽活動を開始。アルバム「呼吸」「ふと見上げた空の向こう」をリリース。ミュージシャンとしての活動の傍ら、テレビやラジオのメインパーソナリティ、イベントや舞台のプロデュース、楽曲の提供などを手掛ける。08年に俳優活動をスタート。主な出演作に映画「369のメトシエラ」「GSワンダーランド」、テレビドラマ「サンシャイン・デイズ」「リバウンド」などがある。3rdアルバム「on the corner」好評発売中。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一