「もし誰かに『ウシジマは山田じゃねぇよ!』と 言われても『じゃあ観なきゃいいじゃねぇか。 俺はこれだと思ってやってんだ!!』って 返せるくらいでないと、役者としてつまんない」
累計600万部突破の大人気コミックを実写化した深夜ドラマ『闇金ウシジマくん』がスケールアップして待望の映画化。ドラマ版から引き続いて主演を務めた俳優・山田孝之が語る、稀代のダークヒーロー・丑嶋馨の実像とは!? 映画『闇金ウシジマくん』公開直前の“ガチンコ”ロングインタビュー!!
「そこに人が〝いる〟ってよりは、おかしな物体が“ある”という感覚。ウシジマはひと言でいうと〝異物〟なんですよ」
前号でご登場頂いた、原作者の真鍋昌平先生に続き、今回は主人公・丑嶋馨役の山田孝之さんが遂に登場。日本映画界が誇る若手実力派が自ら語る演技論、そして『闇金ウシジマくん』の魅力とは!?
特異なキャラ・ウシジマのもつ人間らしくない“異物感”
──ドラマ版に続いての丑嶋馨役。映画で演じるにあたって心境の変化はありましたか?「新たに何かを作るとかではなかったので、特にそういうのはなかったですね。自分の声の出し方や立ち振る舞いを、DVDで改めて全部、観直して、ウシジマがどういう感じだったかとかを呼び覚ます作業をしたぐらいで」
──とはいえ、映画ともなればスケールは段違い。ドラマとは環境もずいぶん違うのでは。
「ドラマの時は深夜枠で時間も予算も限られてたから、どうしてもスピード感を優先せざるをえない部分はありましたけど、映画だとそのあたりは余裕がある。そういう意味では、まだ手探りな感じのあったドラマの時と比べても、僕の思うウシジマ像により近づけたんじゃないかと思います」
──山田さんの思うウシジマ像というと、具体的にどんなイメージなんでしょう?
「ひと言でいうと〝異物感〟ですかね。そこに人が〝いる〟ってよりは、おかしな物体が〝ある〟という感覚。そういう異質なものから音(声)が出てる感じを出したいというのはありましたね。彼ってやっぱりどこか動物っぽいっていうか、人間らしさの欠落した人だと思うんで。まぁ、見方によってはすごく人間らしい部分もあったりするんですけど」
簡単に壊れるからこそ何事にも“距離感”が大切
──確かにドラマ版より、彼の冷徹で無機的な側面はさらに強調されていたような気がします。「ドラマの冒頭で入れなきゃいけなかった世界観の説明とかが、今回は必要なかったっていうのも大きいです。原作のウシジマも、最初は説明が必要だからすごくよくしゃべったけど、巻を重ねるにつれてたまに出てきてボソッとしゃべるってパターンが多くなった。そう考えると、ドラマから映画への流れも原作っぽくうまくハマッたのかなと思います」
──そんな“異物感”を出すために、役作りをする上で特に意識したことは?
「他の作品なら、怒ったり泣いたりするシーンがあって、その理由が分からなかったら、この人はどういう家庭環境で育って、どんな子ども時代を歩んだんだろうとかってことを考えるんですけど、ウシジマに関しては逆に、そこに疑問を持っても一切考えずに淡々と演じるようにはしましたね。彼の言動の意味を逐一考えて、そこに感情を乗せちゃうと、どんどん人間っぽくなってしまうんで」
──そこは「ウシジマだから」でいいというわけですね。でも、そこまで特異なキャラを演じていると、オン・オフの切り替えもなかなか難しそうですよね。
「明確なスイッチなんてないですから、撮影中は、僕とウシジマというふたつの人格が半分ずつ混ざりあってる状態。それをスタートからカットがかかるまでは100%ウシジマにするって感じですね。だから、どんな作品でも、話をもらって台本を読んだ段階から、撮影が終わってしばらくまでは、多少なりともどっちかに寄っていっちゃうことはありますよ。そもそも人って常に変わるものだから、100%素の山田孝之ってものがどこにあるのかも僕には分からないんですけどね」
──となると、カットがかかっても、ついつい周囲にウシジマっぽく接してしまうことも。
「そこまで極端なことはないですけど、感覚や思考がそれに近くなることはありますね。時代劇をやってる時は、武士道じゃないけど、物事を白黒ハッキリさせたくなるし、すっげぇいい加減な人間をやってる時は、差し当たって解決すべきことがあっても、『今はいいや』みたいな思考になる。ウシジマの時も、『おまえはそうかもしれないけど、俺はこうだ』みたいな感じにはなりましたしね。ただまぁ、撮影中は自分のことより役のことを考えてる時間のほうが長くなるから、そうなっちゃうのは当然のこと。役のことを考えないのは、寝る時ぐらいのものなんで」
お金って世界中のどんな殺戮マシーンより威力のある兵器だと思うんです
──ところで、山田さんから見たウシジマの凄味、見習うべき姿勢ってどういうところでしょう。「相手の価値観とかを度外視してしまうほど人に対して大胆に接するところ、ですね。もちろん、今の世の中で実際にそれをやったら社会不適合者になっちゃいますけど、そのぐらいの意志を持って自分の信念を貫き通すぐらいでないと人ってつまんない。もし誰かに『ウシジマは山田じゃねぇよ』と言われても、『じゃあ観なきゃいいじゃねぇか。俺はこれだと思ってやってんだ』って返せるくらいの気持ちでないと、役者としてもつまんないと思いますし」
──なるほど。そういう信念はどんな職業でも必要ですよね。ちなみに、劇中で思い入れのあるセリフってありますか?
「もう、さすがにあんまり覚えてないなぁ(笑)。でもやっぱ(大島優子演じる)未來に対しては愛のある言葉をサラッと言ってる感じはありますよね。家出したまま帰ってない未來と、ウシジマの『帰ってこい』『なんで?』『ここはおまえの家だろ』ってやりとりとか、母親の借金を肩代わりしろって言われて『なんで私が返さなきゃいけないの?』って訊く未來に『親子だから』と返すくだりなんかは、みんな聞き流すなよって感じですよ。お金ってものが介在したせいで壊れちゃったけど、親子はずっと親子なんだ、ちゃんと一緒にいろっていう、ウシジマなりのメッセージだと思うんで」
──では、ウシジマではなくご自身がこの作品を通して伝えたいことはどんなことですか?
「お金にしろ、人や社会との関係にしろ、結局一番大事なのは距離感だってことですね。未來みたいになんにも考えずにボワーッと生きていたら、どんどん状況は変わってるのにどこにも焦点があってない状態になっちゃうし、逆に純(林遣都)みたいにガーッと一点に集中しちゃうと、気づいた時にはいつのまにか周りがメチャクチャになってる。そういう距離感をもっとも分かりやすくマヒさせるからこそ、お金ってものが厄介なわけで」
──お金との距離感を見誤らなければ、人生を狂わせてしまうこともないですからね。
「僕は以前から、お金は世界中のどんな殺戮マシーンより威力のある兵器だと思ってるんで、そういう意味でも、この『闇金ウシジマくん』という作品を通して、観た人に『物事との距離感はちゃんと計らなきゃな』と感じてもらえたらうれしいですね」
──最後に、山田さんと同世代の若者もたくさんいる、ドカント読者にアドバイスをお願いします。
「やっぱりやりたいことをやるのが一番。中には、『やりたいことをやってお金を稼げてるヤツはいいよな』とかって思う人もいるかもしれないですけど、それは僕から言わせると、挑戦してない人か、してても気持ちが足りない人。ひとつのことに打ち込んでさえいれば、そのスキルは確実に自分についてくるし、スピードは速くならなくても、カタチには絶対なる。それは才能なんかとは無関係なことだと思います。この雑誌は『高収入』がキーワードのひとつかもしれないけど、所得が増えたところで人の幸福感なんてそんなには変わらない。そりゃもちろん、収入が増えればそれだけ生活レベルも上がるでしょうけど、それと同時に失うものも多くなる。所得が少なくたって幸せな人も、世の中にはいっぱいいますしね」
──今日はお忙しいところ、ありがとうございました!
クールな雰囲気を漂わせながらも、「自分を通して出たものを、最初からそこにあったように見せるのが僕らの仕事」と自身の役者観を熱く語ってくれた山田さん。縦横無尽の活躍を続ける彼の選んだ次のなる出演作にも大いに期待したいところだ。
INFORMATION
映画「闇金ウシジマくん」
INFO&STORY
コミック累計600万部、11年小学館漫画賞を受賞した真鍋昌平氏の問題作「闇金ウシジマくん」。10年10月よりTBS系で放送され話題を呼んだ深夜の連続ドラマがさらにスケールアップして問答無用の映画化。どこにでもいそうな人たちのどこにでもある欲望の結末と、救いようがない社会の闇、そしてほとんど見えない僅かだが確かな希望の光を描いた本作.普通の若者が迷い込む、究極に危険なサバイバル・エンタテインメントが今、幕を開ける!
CAST&STAFF
出演/山田孝之・大島優子・林遣都・崎本大海・やべきょうすけ・片瀬那奈・岡田義徳・ムロツヨシ・鈴之助・イケメンゴレンジャイ・金田明夫・希崎ジェシカ・内田春菊・市原隼人・黒沢あすか・新井浩文
監督/山口雅俊
原作/真鍋昌平「闇金ウシジマくん」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本/福間正浩・山口雅俊
配給/S・D・P
公式HP
8月25日(土)新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
(C)2012真鍋昌平・小学館/映画 「闇金ウシジマくん」製作委員会
PROFILE
山田孝之(やまだ・たかゆき)
1983年10月20日生まれ 鹿児島県出身
99年、俳優デビュー。05年の映画「電車男」で主演を務める。「クローズZERO」「鴨川ホルモー」「十三人の刺客」「勇者ヨシヒコと魔王の城」など映画やドラマでシリアスからコメディまで幅広い演技を披露。10年、米ハリウッド・レポーター誌が発表した「今後の活躍が期待される世界の注目俳優10人」に日本人として唯一選出された。11年にはニューヨーク・アジア映画祭で日本人として初めて「スター・アジア・ライジング・スター賞」を受賞。公開待機作に「BUNGO~ささやかな欲望~」(9月29日公開)「のぼうの城」(11月2日公開)「悪の教典」(11月10日公開)「その夜の侍」(11月17日公開)「ミロクローゼ」(12年公開予定)「俺はまだ本気出してないだけ」(13年公開)などがある。
公式HP
映画「闇金ウシジマくん」
INFO&STORY
コミック累計600万部、11年小学館漫画賞を受賞した真鍋昌平氏の問題作「闇金ウシジマくん」。10年10月よりTBS系で放送され話題を呼んだ深夜の連続ドラマがさらにスケールアップして問答無用の映画化。どこにでもいそうな人たちのどこにでもある欲望の結末と、救いようがない社会の闇、そしてほとんど見えない僅かだが確かな希望の光を描いた本作.普通の若者が迷い込む、究極に危険なサバイバル・エンタテインメントが今、幕を開ける!
CAST&STAFF
出演/山田孝之・大島優子・林遣都・崎本大海・やべきょうすけ・片瀬那奈・岡田義徳・ムロツヨシ・鈴之助・イケメンゴレンジャイ・金田明夫・希崎ジェシカ・内田春菊・市原隼人・黒沢あすか・新井浩文
監督/山口雅俊
原作/真鍋昌平「闇金ウシジマくん」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本/福間正浩・山口雅俊
配給/S・D・P
公式HP
8月25日(土)新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
(C)2012真鍋昌平・小学館/映画 「闇金ウシジマくん」製作委員会
PROFILE
山田孝之(やまだ・たかゆき)
1983年10月20日生まれ 鹿児島県出身
99年、俳優デビュー。05年の映画「電車男」で主演を務める。「クローズZERO」「鴨川ホルモー」「十三人の刺客」「勇者ヨシヒコと魔王の城」など映画やドラマでシリアスからコメディまで幅広い演技を披露。10年、米ハリウッド・レポーター誌が発表した「今後の活躍が期待される世界の注目俳優10人」に日本人として唯一選出された。11年にはニューヨーク・アジア映画祭で日本人として初めて「スター・アジア・ライジング・スター賞」を受賞。公開待機作に「BUNGO~ささやかな欲望~」(9月29日公開)「のぼうの城」(11月2日公開)「悪の教典」(11月10日公開)「その夜の侍」(11月17日公開)「ミロクローゼ」(12年公開予定)「俺はまだ本気出してないだけ」(13年公開)などがある。
公式HP
Interview&Text/鈴木長月 Photo/おおえき寿一
メイク/灯(ROOSTER) スタイリスト/窪田佳代子
メイク/灯(ROOSTER) スタイリスト/窪田佳代子