「面白くしよう 笑わせてやろう それしか考えていない」
錚々たる芸人たちが集う、人気番組「IPPONグランプリ」でも圧倒的なセンスと強さを見せつけるバカリズムさん。その独特の世界観から“孤高のコント職人”とも称される、芸人界イチの異端児が語るお笑いへの情熱、仕事に対するスタンスとは――!? 寡黙なピン芸人の知られざる素顔に迫る必読ロングインタビュー!!
自分の好きなことなら気が済むまでやればいい
決勝初進出となった06年の「Rー1ぐらんぷり」以降、数多のバラエティ番組でその才能をいかんなく発揮。本誌では、人気番組のナレーターをはじめ本業以外でも多彩な活躍をみせるマルチ芸人の元を直撃。現在公開中の映画「『紙兎ロぺ』つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」では声優にも挑戦、ジャンルを飛び越える“いい感じに力が抜けた男”に直撃――。
僕の“色”があるなら、それは無意識でも勝手に出てくるもの
「僕自身が成功者だとはまったく思ってないのであまりたいしたことは言えないですけど、自分の好きなことは気が済むまでやればいいと思います。…芸人として面白くなれば、笑わせてやろうとは思いますが僕、あまり欲がないんですよ。芸人ぽい生活もしてませんしね」──バカリズムさんに「紙兎ロぺ」はどう映りました?
「僕が好きな世界観で、相性はいいと思います。年下ばかりとつるみたがる、後輩の前ではカッコつけたがる、アキラ先輩のキャラはすごくいいですよね。この作品の面白さは会話の内容。なんでもない話をだらだらとしているだけなんだけど、心地いい。ずっと聞いていられますよね」
──ナレーターや声優といった声だけの仕事というのは、普段とは勝手が違いますか。
「もちろん別物ではありますけど、おもしろいことをやるって意味ではコントも声優も同じ。ただ単に自分の顔が出ないってだけで、別の仕事をしてるという意識はあんまりないんです。特に今回の作品は、ふかわ(りょう)さんと一緒だったこともあって、僕の中では〝いつもやってる中の、ちょっと変わった仕事〟ぐらいの感覚でしたしね」
──ふかわさんとは、仲がいいんですか。
「一番初めに仲良くなった先輩です。お互い好きなものが同じで話が合う。アフレコも一緒で、リードして頂きました(笑)。ロペとアキラ先輩に近い感じもします。ただ…」
──なんですか?
「仲のいい先輩と『あるある〜』『懐かしいね』『ですね』と盛り上がったのはいいんですが、アフレコはふかわさんと二人きりで、アキラのお姉ちゃんもいない。僕らだけ隔離されたのかと思いましたよ(笑)」
──声優として演じられた怪盗団の首領〝ボス猫〟はストーリー上でも、重要な役どころです。
「ちょこっと出て、二、三言しゃべるだけかと思ってたら、予想以上に大事なキャラだったんでビックリしましたね。まさか、こうして取材まで受けるようになるとは思ってもみなかったんで(笑)」
──ご自身でネタを作られている芸人としての立場からすると、台本なんかもアレンジしてみたくなるのでは?
「ナレーションの時は、語尾を自分の言い方に変えるぐらいはしますけど、アニメの場合は秒数とかも決まってると思うんで、基本的にはしないです。今回のボス猫役をやる上で心掛けたのも、監督さんの大事にしている世界観を壊さないようにしようってことぐらい。もしも僕の〝色〟みたいなものがあるとしたら、それは意識しなくても勝手に出てくるものだと思いますしね」
普通に淡々とやって、最低限食っていけたらそれでいい
──作品は夏休み最期の日を描いてます。今年の夏にしたいことはありますか?「満喫できない夏を楽しもうと思います。本当は、女の子と海に行ったりキャンプに行ったりしたいんですけど一生ないと思います。自分ができない分、チャラチャラ遊んでるヤツを見るとイラっとしますよね(笑)」
──映画声優の次は、監督にまで挑戦されると聞きました。もともと映画はお好きなんですか。
「実は僕、普段から映画ってほとんど観ないんです。映画館にもこれまでの人生で数えるほどしか行ったことがなくて、『紙兎ロペ』が映画館の幕間に流れてたショートアニメだってことも全然知らなかったくらいなんで(苦笑)」
──では、「バカリズム THE MOVIE」も、基本的には番組企画の一環ですか?
「そうですね。あくまでも僕の立場は〝ほぼ〟監督なんで、現場は堂々と人にお任せして、『じゃ、それで』という感じで楽しく撮らせてもらってます。まぁ、そうは言っても、脚本・主演も〝ほぼ〟僕だから、自分でやらなきゃいけないことも結構たくさんあったりするんですけどね」
──映画観賞の習慣がないとなると、読書もあまり…。
「ないですね(笑)。読んでもマンガぐらいで、小説とかはもうまったく。あとはちょこっと音楽を聴いたりするぐらいです」
──では、その独創的な感性やイマジネーションはどこから?
「うーん。しいて言うなら、なにも知らない、ってとこからじゃないですかね。僕自身は妄想というか、ないものを作るのが好きなんで、ネタを作る時にも、自分が知らないものとか、いままで通ってこなかったものへの想像を膨らませていくことが多いんで」
──なるほど。面白さの源泉がいわば〝無知〟と〝未知〟にあるわけですね! ちなみに、キャラクターや役柄を演じる時でもそれは変わりませんか?
「キャラついては、僕がゼロから作ってしまうとリアリティがなくなっちゃうので、なるべく実在の人物をモデルにするようにはしてますね。ヒントにするのは普段接する身近な人とか、僕の人生に関わったことのある過去の誰かである場合がほとんどです」
『自分の冠を持ちたい』とかそういう欲は一切ない
──ところで、現在のような売れっ子芸人になるまでには、かなりの苦労もされてきたと思います。下積み時代でも、辞めようという選択肢が頭によぎることはなかったですか?「それは一度もないですね。当時から、なにがなんでも売れたいなんて気持ちはまったくなかったですし、最悪バイトしながらでも好きなことをやっていけたらいいな、ぐらいの感覚でずっとやってきたんで、正直、その生活を苦労と思ったこともないんです。ブレイクして消えていく芸人をたくさん見てきたからこそ、普通に淡々とやって、最低限食っていけたらそれでいいや、と」
──サントリーのCM「白い金麦」で女優の真木よう子さんと共演しているバカリズムさんが?
「…そうです(笑)」
──ご自身の中で引く手数多な現在の状況は、少しブレイクし過ぎな感も?
「もちろん、お仕事を頂けるというのはホントありがたいことですけど、『自分の冠(番組)を持ちたい』とかそういう欲は一切ない。だから、ライブをやったり、バラエティに出させてもらったり、今回のような作品に呼んでもらったり、そういういろんな面白いことに参加させてもらえるってことのほうが、僕にとってはお金がどうこうってより、よっぽど重要なことなんです」
──面白いと思えることであれば、いつでもウエルカムと。
「そうですね。もともと『ああしたい、こうしたい』という気持ちが僕自身にあんまりないので、オファーを頂けることにはドンドン挑戦していきたいとは思います。あとは芸人として、今やってるひとつひとつの仕事の精度を上げて、より良くしていきたいな、と」
──最後に、「ドカント」読者にアドバイスをお願いします!
「僕自身が成功者だとはまったく思ってないのであまりたいしたことは言えないですけど、自分の好きなことは気が済むまでやればいいと思います。気が済んだら辞めればいいし、済まなかったら人に迷惑がかからない程度に続けていけばいい。好きなのにうまくいかないのは、その〝好きなこと〟が結局そんなに好きじゃないってことなんだと思うんで」
飄々とした中にも、芸人であることへの強いこだわりを感じさせてくれたバカリズムさん。お笑いという枠を超えて多彩な活躍をみせる彼が挑む、次なる〝面白いこと〟から目が離せない。
INFORMATION
■映画『『紙兎ロぺ』つか、夏休みラスイチってマジっすか!?』
【STORY&INFO】
全国のTOHOシネマズで幕間に上映されている脱力系ショートアニメを長編化した劇場版。紙兎のロペと紙リスのアキラ先輩が、夏休み最後の日に巻き起こす騒動をシュールに描く。夏休み最後の日まで自由研究に手をつけずにいたアキラ先輩とロペは、アキラ先輩の姉のピアスを壊してしまう。ピアスの代わりにしようと美しいイヤリングを拾うが、それが美術館から盗まれた「クレオパトラの涙」だったことから、2人は強盗団に追われることになってしまう。シュールでゆる〜い会話とストーリーを伴った独特の世界観で人気を呼ぶ、映画館から誕生した〝下町系アニメ〟の劇場版。
【CAST&STAFF】
声優出演/ウチヤマユウジ 篠田麻里子(AKB48) バカリズム ふかわりょう(友情出演) ジョージ・ウィリアムズ チャド・マレーン LiLiCo ピエール瀧ら
監督・脚本/内山勇士・青池良輔
キャラクターデザイン/内山勇士
アニメーション演出/青池良輔
企画・プロデュース/日下部雅謹
配給/東宝映像事業部
公式HP
5月12日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
(C)2012映画『紙兎ロペ』プロジェクト
PROFILE
バカリズム
1975年11月28日生まれ 福岡県田川市出身
本名は升野英知(ますの・ひでとも)。日本映画学校卒。95年にお笑いコンビのバカリズムを結成。05年12月からピン芸人として活動。「R-1ぐらんぷり」決勝に過去4度進出、「IPPONグランプリ」3度優勝。番組MCや役者、ナレーション、イラスト、書籍、オジリナルグッズの製作など多方面で活躍中。フジテレビONE スポーツ・バラエティ「アイドリング!!!」、NHK Eテレ「ビットワールド」、テレビ東京「たべコレ」、テレビ朝日「シルシルミシルさんデー」、テレビ朝日「日曜×芸人」レギュラー。初めてメガホンを執った“ほぼ”監督のオムニバス映画「バカリズム THE MOVIE」は5月26日から東京・シネマート六本木で。
公式Twitter
■映画『『紙兎ロぺ』つか、夏休みラスイチってマジっすか!?』
【STORY&INFO】
全国のTOHOシネマズで幕間に上映されている脱力系ショートアニメを長編化した劇場版。紙兎のロペと紙リスのアキラ先輩が、夏休み最後の日に巻き起こす騒動をシュールに描く。夏休み最後の日まで自由研究に手をつけずにいたアキラ先輩とロペは、アキラ先輩の姉のピアスを壊してしまう。ピアスの代わりにしようと美しいイヤリングを拾うが、それが美術館から盗まれた「クレオパトラの涙」だったことから、2人は強盗団に追われることになってしまう。シュールでゆる〜い会話とストーリーを伴った独特の世界観で人気を呼ぶ、映画館から誕生した〝下町系アニメ〟の劇場版。
【CAST&STAFF】
声優出演/ウチヤマユウジ 篠田麻里子(AKB48) バカリズム ふかわりょう(友情出演) ジョージ・ウィリアムズ チャド・マレーン LiLiCo ピエール瀧ら
監督・脚本/内山勇士・青池良輔
キャラクターデザイン/内山勇士
アニメーション演出/青池良輔
企画・プロデュース/日下部雅謹
配給/東宝映像事業部
公式HP
5月12日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
(C)2012映画『紙兎ロペ』プロジェクト
PROFILE
バカリズム
1975年11月28日生まれ 福岡県田川市出身
本名は升野英知(ますの・ひでとも)。日本映画学校卒。95年にお笑いコンビのバカリズムを結成。05年12月からピン芸人として活動。「R-1ぐらんぷり」決勝に過去4度進出、「IPPONグランプリ」3度優勝。番組MCや役者、ナレーション、イラスト、書籍、オジリナルグッズの製作など多方面で活躍中。フジテレビONE スポーツ・バラエティ「アイドリング!!!」、NHK Eテレ「ビットワールド」、テレビ東京「たべコレ」、テレビ朝日「シルシルミシルさんデー」、テレビ朝日「日曜×芸人」レギュラー。初めてメガホンを執った“ほぼ”監督のオムニバス映画「バカリズム THE MOVIE」は5月26日から東京・シネマート六本木で。
公式Twitter
取材・文/鈴木長月 撮影/おおえき寿一