芸能界屈指の昆虫マニアとして知られる俳優哀川翔さん主演の映画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」が4月3日に公開。本作は虫の浮気調査や虫探しの難事件に立ち向かうというシュールなストーリーで、原作漫画を読み感動した哀川さん自身が映画化を推した力作だ。撮影秘話や虫への思い、さらには仕事への考え方など、若者のためになるメッセージが盛りだくさん! 超大物アニキが遂に小誌初登場です!!
虫の事情を人に置き換えると深いテーマの映画だと思う
──哀川さん主演の映画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」が4月3日に公開ですね。原作の漫画を読んだ哀川さんが、主人公が自分に似ていることから映画化を持ちかけたと聞きました。原作を読んでかなり笑っちゃったからぜひ! と思ったんだけど、映画化は無理だと言われるのが分かっていたんだよね。だから説得の材料として、『コレ(ヨシダ)、オレっぽくない?』と持って行ったんだ。本当はまったく似てないけど(笑)。過去いろんな原作を映画化させてもらったけど、演じてるうちにいつの間にか似てくるっていうこともあったしね。
──それほど原作の漫画に惚れ込んだということですね。
『昆虫探偵 ヨシダヨシミ』の担当編集者から単行本が直接、送られてきてすぐに佐藤佐吉監督の顔が浮かんだので、監督に読んでもらったところ『あの単行本一冊に7、8年はかけてますよ』と分析して感心していたよね。
──哀川さんご自身も95年に監督を務めた経験がありますよね。
だからね、分かるんだよ。監督の辛さが。佐藤監督は天才肌だけど、役者が出ていないシーンは相当、苦労したんじゃないかな。何しろ相手が虫だから。横綱と総理大臣と映画監督は、“三大大変な職業”だね。オレは監督業は二度とやりたくないもん。
──人としゃべることが苦手であらゆる動物と会話ができる、ヨシダヨシミの役作りはどのように。
ヨシダヨシミは最初から人嫌いではなかったはずで、なぜ動物と会話ができるようになったのか? その過程は自分自身で想像するしかなかったんだけど、役作りはそれぐらいかな。それよりも、虫の微妙な動きを察知して、どうリアクションするかのほうが大変。何度も言うけど相手は意思疎通を図れない虫だから思い通りに動いてくれなくて、2時間も“虫待ち”したこともあったんだよね。
──それは大変でしたね。
撮り終わらないんじゃないの、この映画? と本気で思ったもの。オレの帽子の上にカブトムシを置いて浮気調査をするファーストカットなんて、半日もかかったからね。監督は、『こっち向け!』なんて虫に命令してたけど、向くワケないじゃない。模型を使いたい気分にさえなったけど、佐藤監督が妥協を許さない人だから、本物の虫を使ったんだ。だから今回は、CGを使っていないんだよ。
──ファーストカットから笑えますよね。
いきなりこの描写は何なんだ!? と思うかも知れないけど、あのシーンは監督がバッと閃いたんだよね。あそこでクスッと笑ってもらいたくて。 ──では、哀川さんが思う、ズバリこの作品の見どころとは。
虫にもそれぞれの事情があるってことを人間に置き換えると、ものすごく深いテーマの映画に出演している気がしたんだよね。でも人間と違って、虫同士は探り合いや駆け引きがなくて、直球のやり取りをする。それが本来の姿なんだろうけど人間は、そういった鎧がないと生きられないのかなとも思ったね。あとはね、この映画は娯楽作品だから、楽しんで観て笑ってもらえればいいかな。テーマは観る人によって変わってくるだろうから、判断は観る人に任せる。それが映画だと思うから。
交尾シーンはあるけど所詮虫子供が見てもいい映画だね
──映画には、少し際どいシーンもありますが…。際どいっていうのは、虫の交尾のこと? 教育番組でもよく流れてるんだから、この映画だって子どもが見てもいいんじゃないかな。しょせん虫ですから(笑)。年齢制限のRがかかっていないし、かけようもないでしょ。俳優さんが吹き替えた交尾中の声は、錯覚ということにしておけば(笑)。
──お子さんには、この映画を見せましたか?
小学校6年生と中学校2年生の子どもを試写会に連れて行ったよ。何にも質問されなかったね…。ホント何にも聞かれなかった。子どもが全面的に顔を背けるんじゃなくて、こういう内容の映画だって見てもいいと思うよ。
──初めてのお孫さんが今年6月に誕生予定だそうですが、大きくなったらこの映画を見せますか?
男の子だったら虫にハメたいから、見せるかもね。共通の趣味ができていいじゃない。若い時に孫ができるって、うれしいよ。オレが感じている“生きてる楽しさ”を伝えられる気がして。でも正直、まだ実感が沸かないからオレのことを何て呼ばせようかも思案中なんだよね。みんなは、オレに孫ができたからって、一気におじいちゃんとか呼ばないでよ!
──あはは! “昆虫マニア”として知られる哀川さんはご自宅で幼虫、成虫合わせて50匹以上を飼育されているんですよね。
専門的に卵を産ませて増やしたりはしていないけど、カブトムシとクワガタが好きだね。長く生きてくれればそれでいいから。飼ってみて感じるけど、虫の飼育は難しいね。温度とか、カゴに入れる木とか、とにかくいろんなことに気をつけないと長生きしてくれない。同じ種類でも、オスとメスの相性が合う、合わないもあるし。細かく考え出すと、仕事にも行けなくなっちゃうよ(笑)。
仕事をする理由を持つといいオレは遊ぶために仕事する
75
──話は変わりますが、哀川さんのように人生を謳歌するには、どうすればいいですか。働くからには、『何のために仕事をするか』というテーマを持ったほうがいいと思うんだよね。オレはね、遊ぶために仕事をしてるの。遊びたいから仕事を頑張る。食べるために仕事するなんて考えたら、辛くて仕方ないからね。
──虫の飼育以外では、キャンプも趣味ですよね。
キャンプの時も思いっきり遊ぶよ。肉30キロ以上に、築地直送の魚も持ち込んで。アウトドアは食事が大事だから、そこに命懸けてる。魚釣りやカブトムシ捕りも楽しいね。けど遊びは仕事の倍、お金がかかるんだよね。だから仕事を頑張る。お金の心配をしなくていいから毎日遊んでいていいって言われたらオレ、仕事しないかもなぁ…(笑)。
──もしそういう状況になったら俳優業は続けないんですか?
役者に戻りたいとは思わないかも知れない。仕事はどんな職種だって辛いし、役者だって大変だもん。役者を始めた頃は、大変過ぎてどうしようかと思ったんだから。学生時代のテストなら、100点満点でしょうってぐらい覚えなくちゃならないことがあるし。今だって大変だよ。仕事が終わるとメシも食わないで寝たいぐらいだからね。最後のセリフが出てこないぐらい疲れるよ、仕事は。ただね、9仕事をして1遊びに費やすと、遊びの面白さが爆発するんだよね、きっと。
──ドカント読者も思いっきり遊んだほうがいいですか。
そうだね。思いっきり遊んだほうがいい。そうしたら、仕事を頑張ろう! って気持ちになれるから。ただオレの場合は、遊び過ぎると社会復帰できない不安に襲われる(笑)。20代の頃にそういう不安に陥ったよ。コンサートを終えて休暇で1週間温泉三昧の生活をしていたら、早く帰って仕事をしないとって気分になったから。
──思いっきり仕事をして、思いっきり遊ぶ哀川さんの今後は?
物事には需要と供給があって、いくら映画に出たいと言っても、呼ばれないと仕事ができない。もしそうなったとしても、一生懸命やったと自負できるならそれはそれで割り切れるかなと思っているんだよね、オレは。
INFORMATION
■映画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」
【INFO&STORY】
「モーニング」(講談社刊)に5年に渡り掲載されていた、漫画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」が芸能界屈指の昆虫好きと自他ともに認める哀川翔主演で映画化。虫の言葉が分かり、虫の依頼で虫の世界の事件を解決し、報酬としてオオクワガタを受け取るという、とぼけていながらニヒルな昆虫探偵ヨシダヨシミ(哀川翔)。人間社会をも巻き込む難事件を昆虫専門の探偵ヨシダヨシミはどのようにこの難事件に絡み、そして解決するのか? シュールで笑える、誰も観たことがない昆虫サスペンス・ミステリーが誕生した!? 主題歌「生きていることがいい」は3月17日発売。
【CAST&STAFF】
出演/哀川翔・小山田サユリ・村野武範・水元秀二郎(声の出演)勝俣州和・猫田直・田中要次・山田広野
監督・脚本/佐藤佐吉
原作/青空大地(講談社 モーニングKC 刊)
主題歌/「生きていることがいい」昆虫探偵 ヨシダヨシミ(哀川翔)[PONY CANYON]
製作/ポニーキャニオン マジカル リベロ アイエス・フィールド 関西テレビ放送 コムセントトラヴィス・エンタテインメント
配給/リベロ
4月3日(土)より、新宿K’s cinema、シネ・リーブル池袋ほかにて全国順次ロードショー!
(C) 青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会
PROFILE
哀川 翔(あいかわ・しょう)
1961年5月24日生まれ 鹿児島県鹿屋市出身
84年、一世風靡セピアの一員として「前略、道の上より」でレコードデビュー。88年のTBSドラマ「とんぼ」や89年公開の映画「オルゴール」(黒土三男監督)での新人らしからぬ存在感が認められ、俳優として一躍脚光を浴びる。90年、東映のVシネマ「ネオチンピラ/鉄砲玉ぴゅ〜」(高橋伴明監督)が大ヒット。以降、「とられてたまるか」「ろくでなし」「極楽とんぼ」などヒットシリーズを生む。映画デビューは、88年の「この胸のときめきを」(和泉聖治監督)。91年、「獅子王たちの夏」で破滅的なアウトローを熱演しヒット。「勝手にしやがれ!!」「修羅がゆく」「借王<シャッキング>」などが人気を博し“Vシネマの帝王”に君臨。95年に「BAD GUY BEACH」(あいかわ翔名義)で監督デビュー。04年公開の「ゼブラーマン」で映画・ビデオ映画の主演は100本に達し、05年には同作で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。公開待機作に「誘拐ラプソディー」(榊英雄監督)「ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲」(三池崇史監督)などがある。
■映画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」
【INFO&STORY】
「モーニング」(講談社刊)に5年に渡り掲載されていた、漫画「昆虫探偵 ヨシダヨシミ」が芸能界屈指の昆虫好きと自他ともに認める哀川翔主演で映画化。虫の言葉が分かり、虫の依頼で虫の世界の事件を解決し、報酬としてオオクワガタを受け取るという、とぼけていながらニヒルな昆虫探偵ヨシダヨシミ(哀川翔)。人間社会をも巻き込む難事件を昆虫専門の探偵ヨシダヨシミはどのようにこの難事件に絡み、そして解決するのか? シュールで笑える、誰も観たことがない昆虫サスペンス・ミステリーが誕生した!? 主題歌「生きていることがいい」は3月17日発売。
【CAST&STAFF】
出演/哀川翔・小山田サユリ・村野武範・水元秀二郎(声の出演)勝俣州和・猫田直・田中要次・山田広野
監督・脚本/佐藤佐吉
原作/青空大地(講談社 モーニングKC 刊)
主題歌/「生きていることがいい」昆虫探偵 ヨシダヨシミ(哀川翔)[PONY CANYON]
製作/ポニーキャニオン マジカル リベロ アイエス・フィールド 関西テレビ放送 コムセントトラヴィス・エンタテインメント
配給/リベロ
4月3日(土)より、新宿K’s cinema、シネ・リーブル池袋ほかにて全国順次ロードショー!
(C) 青空大地・講談社/昆虫探偵製作委員会
PROFILE
哀川 翔(あいかわ・しょう)
1961年5月24日生まれ 鹿児島県鹿屋市出身
84年、一世風靡セピアの一員として「前略、道の上より」でレコードデビュー。88年のTBSドラマ「とんぼ」や89年公開の映画「オルゴール」(黒土三男監督)での新人らしからぬ存在感が認められ、俳優として一躍脚光を浴びる。90年、東映のVシネマ「ネオチンピラ/鉄砲玉ぴゅ〜」(高橋伴明監督)が大ヒット。以降、「とられてたまるか」「ろくでなし」「極楽とんぼ」などヒットシリーズを生む。映画デビューは、88年の「この胸のときめきを」(和泉聖治監督)。91年、「獅子王たちの夏」で破滅的なアウトローを熱演しヒット。「勝手にしやがれ!!」「修羅がゆく」「借王<シャッキング>」などが人気を博し“Vシネマの帝王”に君臨。95年に「BAD GUY BEACH」(あいかわ翔名義)で監督デビュー。04年公開の「ゼブラーマン」で映画・ビデオ映画の主演は100本に達し、05年には同作で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。公開待機作に「誘拐ラプソディー」(榊英雄監督)「ゼブラーマン2 ゼブラシティの逆襲」(三池崇史監督)などがある。
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一 メイク/c’est la vie 柏村信雄