「歌舞伎町のような猥雑とした街のほうが、逆になんか落ちつくんです」
昨年には『お盆の弟』『さよなら歌舞伎町』の2作で、「ヨコハマ映画祭」の助演女優賞にも輝いた河井青葉さん。まさにいまが“旬”とも言えるそんな彼女に、かねてからの念願を叶えて出演を果たした映画『続・深夜食堂』での裏話や自身の女優観を、根ほり葉ほり聞いてきた! !
落ちつく場所は歌舞伎町!?美人女優の意外な趣味とは
──本作では、オープニングを飾るエピソードのヒロイン役。実際に演じられてみて、いかがでした?「ドラマ版が始まった頃から、『いつか出たいな』と思っていたので、お話をいただいたときはすごくうれしかったですね。前作の劇場版が公開になったときに、『とうとう完結しちゃうんだ。出たかったなぁ』と勝手にショックを受けていたから、なおさら喜びも大きくて(笑)」
──しかも今回は、『めしや』のマスター役である小林薫さんだけでなく、相手役には佐藤浩市さんもいらっしゃる。やはり緊張しましたか。
「もともと“緊張しぃ”ではあるんですけど、お二方とも、すごく柔らかい空気感を持っていらっしゃる方だったので、そこまでガチガチになることはなかったですね。『めしや』のシーンなんかも、いろんなお客さんをフラットに迎え入れてくれるマスターのあの感じのまま、小林さんがカウンターにいてくれることで、自分でもビックリするぐらいにすんなり役に入っていけましたし」
──河井さんの演じる範子は、喪服を着て街を歩くことで仕事のストレスを発散するという、一風変わった女性です。同じ女性として、役柄には共感できる部分も?
「うーん。同じことをやれって言われたら、私にはちょっとできないかな(笑)ただ、一見不謹慎とも思えることでも、おそらく彼女は、人に迷惑をかけないだとか、自分なりのルールを作った上であれをやっている。だから、範子はまわりが思うよりかは、キチンとした人なんじゃないかなって気はしてます」
──喪服は極端すぎるとして、ご自身ではどういった方法で発散を。
「私自身は、ふだん通りの日常生活を淡々と過ごすことが発散になるタイプなので、気分転換のために特別になにかをしようって思うことはあんまりないですね。個人的には、洗濯をして、ご飯を作って、映画を観て、ちょっとバッティングセンターに行って……っていう、普通のことをするのがいちばんかな、と」
──女性のバッセン通いは、あんまり普通ではないような気も(笑)よく行かれるんですか?
「おうちの近所にも行きますし、歌舞伎町にも全然。ひとりでフラッと行って、いちばん奥の遅いボールのゲージで、2~3セット打つのが好きなんです。歌舞伎町はホストっぽい人とかも多くて、猥雑としてるんですけど、逆にそういう場所のほうがなんか落ちつくんですよね」
──となると、『めしや』のある、あの街の雰囲気なんかは河井さんの好みにもドンピシャなわけですね(笑)
「そうなんです。ただまぁ、わりと人見知りなので、ああいう常連さんがワイワイやってるところにいきなり飛びこむ勇気はあんまりないですけどね。(不破万作さん演じる)忠さんみたいな気さくに話しかけてくれる方がいれば、『また来ようかな』とも思えるんですけど」
──河井さんにも、『めしや』のような行きつけのお店や、食べたくなる思い出の味はあったりします?
「下北沢にあった『三福林』っていう定食屋さんには10代の頃からよく通っていて、そこの“親子オムレツ”というのが、すごく好きでしたね。鮭とイクラが入っていて、ちょっと邪道な感じもするんですけど、それがすごく安くておいしくて。お店はもうなくなっちゃったんですけど、いまだに『食べたいなぁ』と思うことはありますね」
経験を積めば積むほど役者業の難しさを痛感する
──もはや、バッティングセンターと親子オムレツで、『深夜食堂』のエピソードができそうですね(笑)ところで、昨年はヨコハマ映画祭で助演女優賞を受賞されるなど、女優としても着実にステップアップをされているように思います。目指すべき具体的な将来像などは。「とにかくあるのは、目のまえにあるものにキチンと取り組んでいくってことだけ。『ああしたい、こうしたい』みたいなことは、実はあんまり考えたことがないんです」
──あるとすれば、「『深夜食堂』に出たい!」というぐらいで?
「そうですね(笑)もちろん、お仕事をしていくなかでは、手ごたえを感じたりすることもたくさんありますけど、一方では、やればやるほどどんどん分からなくなってくる部分もやっぱりあって……。そういう意味でも、役者っていうのはホント難しいお仕事だな、と思います」
──まだ“天職”とまでは?
「全然です。『深夜食堂』を彩ってきた大ベテランの方々からしたら、私なんかまだまだですからね」
──では最後に、これから作品を観る読者にひと言、お願いします!
「登場人物の個性は強めですけど、描かれているのは、誰もが共感できる身近なお話ばかりなので、ぜひ映画館に足を運んで、なにかを感じてもらえたらうれしいです」
■映画『続・深夜食堂』
INFO&STORY
「めしや」に喪服姿の常連客が次々と訪れる中、同じく喪服を着た範子がやって来る。彼女は喪服を着ることがストレス発散になるという変わった趣味の持ち主だったが、本当の通夜の席で出会った喪服の似合う渋い中年男性に惹かれていく…。一方、近所にあるそば屋の息子・清太は、なかなか子離れしてくれない母親・聖子に、年上の恋人さおりとの結婚を言い出せずにいた…。安倍夜郎氏の人気コミックを小林薫主演で描いたテレビドラマの映画版「深夜食堂」の続編。路地裏にたたずむ深夜営業の小さな食堂「めしや」を舞台に、個性豊かな客たちが織り成す悲喜こもごもを描く。
CAST&STAFF
出演/小林薫/佐藤浩市・河井青葉/池松壮亮・キムラ緑子・小島聖/渡辺美佐子・井川比佐志/不破万作・綾田 俊樹・山中崇・安藤玉恵・宇野祥平・金子清文・中山祐一朗・須藤理彩・小林麻子・吉本菜穂子・谷村美月・片岡 礼子・/多部未華子・余貴美子/松重豊・光石研/オダギリジョー
原作/安倍夜郎「深夜食堂」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載中)
監督/松岡錠司
美術/原田満生
フードスタイリスト/飯島奈美
制作・配給/東映
公式HP
11月5日(土)全国公開
(C)2016 安倍夜郎・小学館/「続・深夜食堂」製作委員会
PROFILE
河井青葉(かわい・あおば)
1981年11月16日生まれ 東京都出身
モデルを経て、20代で女優に転身。04年に「ともしび」(吉田良子監督)主演で映画デビュー。近年の映画出演作には「マエストロ!」「罪とバス」「二重生活」「だれかの木琴」がある。16年、第37回ヨコハマ映画祭で、「お盆の弟」「さよなら歌舞伎町」の演技で助演女優賞を受賞した。現在、NHKドラマ10「運命に、似た恋」にもレギュラー出演中。
公式ブログ
INFO&STORY
「めしや」に喪服姿の常連客が次々と訪れる中、同じく喪服を着た範子がやって来る。彼女は喪服を着ることがストレス発散になるという変わった趣味の持ち主だったが、本当の通夜の席で出会った喪服の似合う渋い中年男性に惹かれていく…。一方、近所にあるそば屋の息子・清太は、なかなか子離れしてくれない母親・聖子に、年上の恋人さおりとの結婚を言い出せずにいた…。安倍夜郎氏の人気コミックを小林薫主演で描いたテレビドラマの映画版「深夜食堂」の続編。路地裏にたたずむ深夜営業の小さな食堂「めしや」を舞台に、個性豊かな客たちが織り成す悲喜こもごもを描く。
CAST&STAFF
出演/小林薫/佐藤浩市・河井青葉/池松壮亮・キムラ緑子・小島聖/渡辺美佐子・井川比佐志/不破万作・綾田 俊樹・山中崇・安藤玉恵・宇野祥平・金子清文・中山祐一朗・須藤理彩・小林麻子・吉本菜穂子・谷村美月・片岡 礼子・/多部未華子・余貴美子/松重豊・光石研/オダギリジョー
原作/安倍夜郎「深夜食堂」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載中)
監督/松岡錠司
美術/原田満生
フードスタイリスト/飯島奈美
制作・配給/東映
公式HP
11月5日(土)全国公開
(C)2016 安倍夜郎・小学館/「続・深夜食堂」製作委員会
PROFILE
河井青葉(かわい・あおば)
1981年11月16日生まれ 東京都出身
モデルを経て、20代で女優に転身。04年に「ともしび」(吉田良子監督)主演で映画デビュー。近年の映画出演作には「マエストロ!」「罪とバス」「二重生活」「だれかの木琴」がある。16年、第37回ヨコハマ映画祭で、「お盆の弟」「さよなら歌舞伎町」の演技で助演女優賞を受賞した。現在、NHKドラマ10「運命に、似た恋」にもレギュラー出演中。
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取材・文/鈴木長月 撮影/おおえき寿一