身長192センチ+甘いマスク+モデル経験アリ+相撲部屋育ち(お父様は元大関の清国氏)という、幾つもの“武器”を持つ、イケメン噺家として人気急上昇中の林家木りんさんが小誌初登場。下積み時代の苦労話から、結婚観まで語ってくれました。最近は女性落語ファンが増えつつあるため、5月28日(土)に横浜・桜木町で開催される独演会『林家木りんチャレンジカップ』はデートにもおススメだ!
「下働きは本当に嫌でしたけど、あの時代があるから今がある。下積みを経験しないのは、砂の上に家を建てることと同じだと今は捉えています」
気遣い気働きができないと前座失格で仕事も貰えない
──木りんさんが木久扇師匠に入門した経緯を教えて頂けますか。「毎年ゴールデンウイークに浅草演芸ホールでウチの師匠がトリを務めるんですね。その10日間のうち数日、屋外で木久蔵ラーメンを販売するんですけど僕が偶然、販売中の師匠を見つけたんです。その時に自分から師匠に入門をお願いしました」
──落語家は前座見習と前座、二ツ目を経て真打ちに昇進しますが、二ツ目以前は大変だとか。
「1日5時間ほど寄席で働いた前座の給金を、予想できますか?」
──想像もつかないのですが…。
「交通費と飲食代込みで1年目は1000円です。2年目は1500円でマックス1700円。ほかの師匠からもお声掛け頂いて地方の公民館等の仕事でまとまったお金をもらいつつ食い繋いでいくんですけど、500円アップした時に、お金の有り難さが身に沁みるわけです。その時代で落語家は金銭感覚を養うから落語家は、売れても金銭感覚が狂う人が少ないんです」
──ほかの師匠から仕事を頂くにもコツがいるのでは。
「ただ黙って突っ立っているだけじゃ、仕事を振ってくれませんからね。お客さまから高評価される寄席をやることはもちろん、気遣いや気働きができないと師匠の目には留まりません」
──どういった気遣いや気働きを。
「それって完全にセンスなんです。前座が寄席に行ってまずやることは高座返し(※1)。その後、師匠たちの着付けをして、出演が終わった師匠の着物を畳みます。師匠1人につき最低必ず3回、お茶出しをするのも仕事です。そのお茶の好みが師匠によってすべて違う上に、1杯ごとの好みも違う。着物の畳み方もしまう順番もパターンが異なりますが、前座は全部覚えなければならない。いちいち紙を見ながらじゃ気遣いや気働きにならないから、当然のようにできなくちゃ駄目なんです。煙草を吸う師匠もいらっしゃるんですけど、楽屋には灰皿を置きません。師匠が吸うタイミングで前座が出すんです。ゴミ箱に関しても然り。それができないと気が利かないと評されます」
下積みを経験し得意分野の発見が夢実現の近道では
──想像以上に大変そうです…!「下働きは本当に嫌でしたけど、あれがあるから今があると思っています。僕が前座2年目ぐらいの時、3年で二ツ目に昇進できたのが4年半に延長されたんですね。もし3年で二ツ目になっていたら、未熟なまま一人前の落語家として振る舞わなければならなかったはず。この1年半がかなり自分を育ててくれました。下積みがないのは砂の上に家を建てることと同じだと今は捉えることができますから」
──
下積みが大切という以外に夢を叶える秘訣はありますか。 「自分の得意分野を見つける嗅覚というか、これもセンスでしょうね。僕より落語が上手い二ツ目は大勢います。でも僕の得意分野は漫談で、僕より上手い二ツ目はいないという気概を持っています。野球に喩えるなら、肩が弱い選手が外野を守っても力が伸びないのと同じですね」
──木りんさんが得意分野を見つけられたきっかけは?
「無茶振りする師匠のおかげですね。ある日突然、『落語の前に5分、マクラ(※2)をやって』と開演10分前に言うんですよ。前座はマクラを振ってはいけないんですけど師匠の命令は絶対ですから、必死に考えるわけです。追い込まれた時に作ったマクラは未だに使えますからね。追い詰めてくれた師匠がいたからこそ、今の自分があります。でも師匠は本当に優しい方で、高座がない見習時代に『5分でいいから時間あげてよ』と頼んでくれたり、誰にでも紹介してくれるんです。森元首相にまで『ウチに入った木りんです』と紹介して下さるんですよ(笑)ウチの師匠じゃなきゃ僕、落語を辞めていました。それと、笑点メンバーの師匠や(春風亭)小朝師匠にも鍛えられましたね」
木久扇師匠に「売れることが恩返しだよ」と言われてます
──そのお話も聞きたいです!「同じく突然、30分の相撲漫談をやってくれと言われたんです。30分もですよ! 僕は相撲部屋で育ちましたけど、相撲マニアではないんです。合計3回もやることになって、『相撲大辞典』を読み込んだりもしましたね」
──その努力の甲斐あって二ツ目に昇進しましたが目標は。
「売れて有名になることです。売れている先輩方から頂くアドバイスって言うことに間違いがないし、説得力があるんです。その世界で何かを残す人の言うことは聞いておくべきかなと実感させて頂いたから、恩返しをしたいんです。師匠からも『礼は要らない。売れることが恩返しだから』と言われ続けているので」
──となると結婚はしばらく先?
「最近、周りが結婚ラッシュで僕も結婚したいなと思うようになったんですよ。ただ、落語家の妻は気遣いと気働きができる人じゃないと師匠に会わせられませんから、申し訳ないとは思うんですけどハードルが高くて見つけるのは苦労するでしょうね…(苦笑)」
(※1)前座の仕事の1つで、前の演者が終わり次の演者が上がる前に出て座布団をひっくり返し、羽織や湯呑みがあれば片付け、次の演者の「めくり」(演者の名前を書いた紙の札)を返すまでの仕事。
(※2)落語はマクラと本編、オチの3つの順で構成されている。マクラとは、演じる落語の演目に関連した話をする事。観客が本編の落語に入りやすい状態にほぐす、前フリのような割を担う。
INFORMATION
■独演会『林家木りんチャレンジカップ~林家木りん独演会~』
INFO
今年で3回目を迎える、「林家木りんチャレンジカップ~林家木りん独演会~」。長寿番組「笑点」でお馴染みの林家木久扇の8番弟子で、持ち前のルックスを生かし、メディアで取り上げられる機会も多い若手二ツ目イケメン落語家として人気。「若手落語家3人会」などで鍛えた高座に注目だ。ゲストにイワイガワ、立川仮面女子が出演予定。
日時/5月28日(土)開場13時30分開演14時
場所/横浜にぎわい座小ホールのげシャーレ
料金/前売2000円(当日2500円)
公式HP
PROFILE
林家木りん(はやしや・きりん)
1989年2月10日生まれ 東京都出身
大相撲の元大関清国を父に持ち、身長192センチと落語界一の長身で、高校時代にモデル経験もある。09年3月に林家木久扇に入門。前座見習から同9月、前座となる。13年11月に二ツ目昇進。BS日テレの演芸バラエティ「笑点特大号」若手大喜利出演など注目を集めている。
公式ブログ
■独演会『林家木りんチャレンジカップ~林家木りん独演会~』
INFO
今年で3回目を迎える、「林家木りんチャレンジカップ~林家木りん独演会~」。長寿番組「笑点」でお馴染みの林家木久扇の8番弟子で、持ち前のルックスを生かし、メディアで取り上げられる機会も多い若手二ツ目イケメン落語家として人気。「若手落語家3人会」などで鍛えた高座に注目だ。ゲストにイワイガワ、立川仮面女子が出演予定。
日時/5月28日(土)開場13時30分開演14時
場所/横浜にぎわい座小ホールのげシャーレ
料金/前売2000円(当日2500円)
公式HP
PROFILE
林家木りん(はやしや・きりん)
1989年2月10日生まれ 東京都出身
大相撲の元大関清国を父に持ち、身長192センチと落語界一の長身で、高校時代にモデル経験もある。09年3月に林家木久扇に入門。前座見習から同9月、前座となる。13年11月に二ツ目昇進。BS日テレの演芸バラエティ「笑点特大号」若手大喜利出演など注目を集めている。
公式ブログ
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一