東京03さんとCreepy Nutsさんの武道館公演ゲスト出演が控える吉住さん。「第4回 THE W」王者でも知られる人気ピン芸人で、ユニット最高の人間として決勝に進んだ「キングオブコント2022」も記憶に新しい。近年はドラマ脚本執筆、小説家デビューなどマルチに活躍する吉住さんをゲストに迎えて芸人の道を選んだ経緯から養成所&事務所について、ターニングポイントとなった出会い、学生時代のバイト話、ネタ作りの苦労、今後の野望まで〝しっとりトーク〟でインタビュー。
『芸人芸人できていない歯がゆさを抱えながら生きているので名乗れて嬉しい』
佐倉さんと百田さんと両日出演の私は別枠なので心配しないで(笑)──東京03さんとCreepy Nutsさんの武道館公演に出演。オファーは飯塚さんから?
「作・演出のオークラさんからです。昨年の『キングオブコント』準決勝の審査員をされていて最高の人間を観てくださり、ほかにも私の単独を見ていただいたりというのがきっかけで声をかけていただいたのかなと思っています。先輩で元アンゲラーのサカイタカヒロさんから『出て欲しいと言ってたよ』と教えてもらい、正式にニッポン放送から文書でオファーが届きました」
──ラジオドラマで共演された、ももクロ百田夏菜子さんもいます。
「勘違いしてらっしゃる方がいて百田さんと声優の佐倉綾音さんが日替わりゲストで、発表された時に女性が3人だったんです。『佐倉さんと百田さんの中に吉住を入れるのは可哀想すぎるだろ』という声があったらしく私は両日出演の別枠なんですけど、同じ枠だと思って心配された方もいたみたいで。安心してね~。別枠だよ~とお伝えしたいです」
──一時期、飯塚さんの激推し芸人で紹介されてました。
「指針になっている先輩のお1人で第5回単独の時に『ストイックを極めろ』と言葉を置いていかれました。稽古をしている時にも03さんのお3方が入れ替わり立ち替わりで『次の単独は大事だから失敗できないよね』って言いにくる(笑)私の負けず嫌いな性格とかも分かってくださって鼓舞していただいてるのかなと受け止めています」
──事務所はどんな存在ですか?
「東京03さん、キングオブコメディさん、ラバーガールさんが特に好きで人力舎に入りたくて養成所のスクールJCAに入学。いいところは若手でも『この仕事ムリかも~』と言いやすい(笑)のとスケジュールを詰め込み過ぎない。近年は真空ジェシカさん、ザ・マミィ、岡野陽一さん、ゆめちゃんと若手同士での共演もあって。内弁慶の私にとってはありがたい環境です」
──そんな吉住さんが、お笑い芸人の道を選んだのは?
「真空ジェシカのガクさんが『一度も志してない』と書いてましたけど、私もどうせ売れるワケないと思っていたので芸人になるぞ!とはあまり。大学生の時もバイト三昧で最低限しか行かない生活を送っていて、それも友だちを作ると友人の就活に流されて私は就職しちゃうかもという意志の弱さがあったから退路を断っただけで信念もなかった。今も芸人芸人できていない歯がゆさを抱えながら生きているのでギリ芸人と名乗れてラッキー、うれしいです」
──きっかけは、東京03さんのコントに触発されてでは。
「そうです。自分もコントがやりたくて…。中学の部活でテニス部に入って高校では硬式になって、小学生の時もお兄ちゃんがやってた剣道や水泳に後を追うように通い出し一定期間続ける。辞めたいなーと思いながらも辞められない性格。自分自身では何かに興味を持つことができない人間でした。すごく好きなものがなかったけど唯一おっ!と思ったのが初めて観た東京03さんのコント。衝撃を受けて、人生で初めて好きなものが見つかったかも。初めて自分から興味を持って始めたいと思えたものでした。そして、それをきっかけにどうせ売れるワケがない、お笑いの世界はそんなに甘くない、ムリだ~ムリだ人生終わったと思いながら絶望の中、福岡から上京してきました。意味が分からないですよね(笑)」
養成所時代に言われた作家の岡田さんの言葉が自信になりました!
──上京資金や養成所の学費はアルバイトで貯めて。
「家庭教師を1年間やって中学3年生のコだったので無事、高校に入学できたのでたくさんシフトが入れるバイトを探しました。熊本は当時、最低賃金が630円とかだったんです。時給630円はキツいなあと求人情報誌を見ていたらハニーズという雑貨やお洋服を扱っているお店が900円だったんですよ。飛びつきました。当時は汚いジーンズとかヨレヨレのスウエットしか着てなくて、どうせムリだろうと思いながら面接を受けに行ったら採用。そこで高校、大学とあまり笑わない、笑顔を忘れていた日々を送っていたので鏡の前に立ち口角を上げる笑顔の練習を始めました。ドラマ出演で笑顔で見送るシーンがあった時にハニーズのことを思い出して今、私は口角が上がっているよって。不自然かもしれないですけど歯を見せられるようになったのはあの時の時給900円があったからです。3年間働いて、アルバイトリーダーにもなりました」
──話が戻りますが養成所時代の話もいいですか。
「コントユニット夜ふかしの会を主宰されていた作家の岡田幸生さんに出会えたのは大きいです。現在も単独公演に構成と演出で入っていただいてますし。ネタ見せの授業で初めて作ってみたネタを見ていただいた時、『ネタ書けるねぇ』と言ってくださって、その言葉が自分の中で自信になりました。書いていいんだって」
──早い段階で世に出たイメージがあります。ご自身では?
「芸人人生は絶望から始まっているので…。養成所に入ってから事務所ライブの『バカ爆走!』に見学に行って、初めて生でお笑いを観たんです。その時に劇場で爆笑を取られていた人力舎の先輩方が一気に解散したので、より絶望の時代がやってきて……。こんなに面白い人たちでも世に出られないのか。なんとなく人力舎という事務所の色として、キャッチーなネタというよりかは、しっかりフってネタばらししてと、世に出るまでに時間がかかりそうかなとは思っていて、熟すまでに10年はみたほうがいいと思ってました」
──20年の「第4回 THE W」で優勝を飾ります。
「フジテレビ『新しい波』レギュラーが大きくてこんな芸風でも見つけてくれる人がいるんだって。女芸人でくくられたくないのはありますが芸人の中で女性は数少ないし武器でもあると捉えていたので女芸人で誰とも被らないネタをやっていれば世に出るのは早いかもしれないと気づいた。ちょっと隙間産業というか(笑)こういう感覚を掴めたのは『新しい波』があったからです」
『自己分析するとひねくれ&こじらせの部分がネタに直結している芸人なのかな』
ハードル高めですが女のピン芸人を観て応援してもらいたいです!!──吉住さんは独創的で発想力のあるコントで知られます。ネタ作りの一端を教えて頂けますか。
「ネタ作り…いまだに分からず毎回、迷子になってます。音楽を聴くか設定から入るか、時々『このセリフを言いたい』で作る時もあります。一度、中島みゆきさんの曲を聴きながら作ったことがあったんですが、その時は最終的にカッチカチの冷たいご飯を食べるというネタができて。私はすごく好きなネタなんですけど単独でおろした時、観に来てくれたパーパーのあいなぷぅから『あのネタだけは意味分かんなかった』って言われました(笑)あと、こんな人がいたらヤダなぁということから考える時もあります。ネタばらしになるので詳しく言えないですけどアルバイトの初日に優しく教えてくれる人がいるじゃないですか。親切で質問もしやすい。その人が『今日は先に上がるから頑張ってね』と言い残し、バックヤードで着替えて出てきた時に、何を持っていたら嫌かなぁとか。そういうのを想像して。そんなことを繰り返し考えながら、第5回単独『咲かないリンドウ』で披露したネタ〝結婚の挨拶〟に落ち着きました。ヤダなぁと考える時は被害を受ける側ですけど、ネタの時は奇人側をやるのでファンの人にはあれを私だと思わないでくださいと。ああいう人に出会いたくないという体で、狂人を演じているだけとお伝えしたいです。私を好きで観に来てくれているのに悲鳴が上がったりするので」
──高い演技力がなせる業かと。
「〝たっちゃん〟のネタで営業を回っていた時期に営業だとお子さんもいるので熱演しないことを心掛けてました。トラウマにさせたくない、しちゃうと怖すぎるから。それでもファンアートとかで小さい子どもが描いた絵に、よしずみさんと書いてくれて、よく見たら私じゃなくて、たっちゃんを描いているんです。本田兄妹のあやのさんから『知り合いの5歳の娘さんが段ボールを半分にして、たっちゃんの真似をしてるって』と、教えていただいた時はマジで止めてくれ!どんな大人になってしまうんだキミは!と思いました」
──そんな吉住さんのご自身が思うウリを尋ねられたら。
「先ほど話した岡田さんが『あんなにも自分の闇をネタに昇華している芸人はいない』と言ってくださっていたらしくそれが回り回って私に届いて。それがひとつ武器かな。自分の中にあるものからしかネタは生み出せないし、生きづらいなあとか人生超ムズいんだけどと思うこともありますが、こういう人間だからこそ書けるネタがある、自分と折り合いをつけて何とか生き抜いているところもある。ネタは作り続けていきたい。昇華しないとタダのヤバいヤツになっちゃうから。ひねくれていたり、こじらせている部分がネタに直結している芸人かなって」
──次回の単独公演の構想は?
「今年もやらせて頂きたいです。ただ、ずっと言ってるんですけどみんな友だち連れて来ないんだよなあ。お客さんに言うことじゃなく自分でチケットを売れよって話なんですがアンケートに『妻に断られました』とか『ザ・マミィは彼女と行きましたが吉住さんのは1人で来ました』と書いてあって連れだってこいよという思いはあります。一回、騙されたと思って女のピンを観てもらいたい、応援してもらいたいです」
──ドラマ脚本執筆や小説家デビューなど多方面で活躍する吉住さんの今後の野望は。
「分かりやすく言うとバカリズムさんにもなりたいし、劇団ひとりさんにも友近さんにも、清水ミチコさんにもなりたい。やったことがないことをやるのが楽しい。この間の単独も『演技力が上がってたね』と芸人仲間に言ってもらって『いろいろな仕事を経てちゃんと吸収して帰ってきているからだよ』って。人力舎のいいところですよね、みんな恥ずかしがらずに伝えてくれる。芸人じゃない仕事や派生した仕事が結果的にコントに繋がっている。人気者にもなりたい。真空ジェシカさんはカルト的な人気があって、めちゃめちゃトレンド入りしているのを見るのでうらやましいです。あと『有吉の壁』でじろうさんと即興ユニットで楽しかったりとか、シソンヌのじろうさん、長谷川さん、かもめんたるのう大さん、槙尾さんも大好きなお二組なので、いつか何かできたら。やりたいことはまだまだあります」
INFORMATION
吉住(よしずみ) 1989年11月12日生まれ 福岡県北九州市出身
スクールJCAに22期生として入学し、2015年にデビュー。コンビ解散後、ピン芸人に。フジテレビ「新しい波24」や日本テレビ系「ぐるナイ おもしろ荘」などネタ番組に出演して注目を集め、18年12月、「第2回女芸人No.1決定戦 THE W」にて初の決勝進出。20年の「第4回女芸人No.1決定戦 THE W」王者に輝いた。「R-1グランプリ」は2年連続、ユニット最高の人間として「キングオブコント2022」決勝進出と賞レースでも結果を残す。近年はドラマ出演やドラマ脚本執筆、小説家デビューなど多岐に活躍。GERA「吉住の聞かん坊な煩悩ガール」が放送中。3月4日(土)5日(日)に開催される「東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない」にゲスト出演する。
公式Twitter
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吉住(よしずみ) 1989年11月12日生まれ 福岡県北九州市出身
スクールJCAに22期生として入学し、2015年にデビュー。コンビ解散後、ピン芸人に。フジテレビ「新しい波24」や日本テレビ系「ぐるナイ おもしろ荘」などネタ番組に出演して注目を集め、18年12月、「第2回女芸人No.1決定戦 THE W」にて初の決勝進出。20年の「第4回女芸人No.1決定戦 THE W」王者に輝いた。「R-1グランプリ」は2年連続、ユニット最高の人間として「キングオブコント2022」決勝進出と賞レースでも結果を残す。近年はドラマ出演やドラマ脚本執筆、小説家デビューなど多岐に活躍。GERA「吉住の聞かん坊な煩悩ガール」が放送中。3月4日(土)5日(日)に開催される「東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない」にゲスト出演する。
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花