映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)や『楽園』(2019年)、ポツドールの舞台『おしまいのとき』(2011年。オーディションで主役に抜擢)など、続々と話題作に出演している女優の篠原ゆき子さんの主演映画『ミセス・ノイズィ』が5月1日より公開。“騒音おばさん”が出てくると聞くとあのニュースを思い浮かべる人もいるかもしれないが、実写化ではないという作品の見どころとは――。
「ご覧になる前の印象や予想を、いい意味で裏切る映画だと思います。美和子の行動には 意外な真相が隠されていて、胸が締めつけられるような切なさを覚えるかもしれません」
裕一への感想は女性をどう捉えているか“踏み絵”かも
──台本を読んだ時の感想は?「3年半ぐらい前のワークショップから企画は始まっていて、天野(千尋)監督が何度も書き直していらっしゃったことを存じ上げていたので、完成台本を読んだ時は純粋に、読み物として面白いと感じました。ただ、物語はフィクションではありますが実在する方がいらっしゃるので、その点は監督が最も気遣っていらっしゃるという印象も同時に受けました。ご本人の目に触れる可能性がゼロではないので、誰が悪いわけでもないし、特定の人を傷つける作風でもないということは、特に敏感になっていらっしゃいました」
──そうした気遣いある台本を読んで、騒音と嫌がらせを繰り返す若田美和子の隣人、吉岡真紀を演じた感想は。
「人は“表面”だけでは生きていけないと痛感しました。普段は隠している人に見せたくない面や弱い部分は、私を含め誰もが持っていると思うんです。でも、真紀を演じてからは“裏面”を持っていたっていいじゃない、と思えるようになったんです」
──篠原さんにも“裏面”があるんですね。具体的には?
「お酒を飲みすぎた翌日に、二日酔いで死にそうなほどつらい思いをしたとか、でしょうか(笑)とある作品の撮影が終わった日に、女性スタッフさんとバーへ飲みに行ったんです。初めて行ったお店だったんですけど、バーテンダーさんがご好意で出してくださったショットを調子に乗って何杯か飲んだら、次の日は地獄でした…」
──(笑)映画に話を戻しましょう。小説家・真紀との共通点は。
「私は役者で真紀とは仕事のジャンルは違いますが、『認められたい』という欲求を持っている部分は共通点だと感じました。周りが見えなくなって自己中心的になってしまう性格も似ていたので、すんなりと真紀に入っていくことができた気がします。面白いと思ったのが、長尾卓磨さんが演じた真紀の夫、裕一に対しての国ごとの反応が違うというところでした。東京国際映画祭や、試写をご覧になった海外の方からは、なぜ女性ばかりが家事と仕事を頑張って、夫は文句ばかり言って応援してくれないのかという反応が多くて、とても新鮮でした。裕一に対して真紀が謝るシーンがあるのですが、仕事をバリバリ頑張る女性の中には、謝る理由が分からないと思う方もいらっしゃるみたいです」
──日本の男性からの感想は?
「裕一の妻に対するスタンスに、特に異論がない人が多いみたいです。一方で、少数派ではありますが真紀の味方側に立つ人もいるみたいで。裕一に持つ感想は、女性を本心ではどう捉えているか“踏み絵”かもしれません。上映後、涙を流しながら劇場から出てこられる男性の方が多かったのも驚きでした。女性の方が感情移入しやすい映画だと思っていたので、とても嬉しかったです」
SNSとの向き合い方は今も難しいと感じています…
──作品にちなんだ質問を。SNSとはどう向き合っていますか。「今でも難しいと思いながら向き合っています。以前は1日1回ぐらいの頻度で頻繁にブログを更新していたんですけど、ちょっとしたことでもすぐに拡散してピックアップされる時代になった感覚があるので、以前よりは距離を置くようになりました。今は、発信する時は事なかれ主義です。だから、炎上商法と呼ばれる手段を選ぶ方たちの勇気はすごいなと思います。私は10個の褒め言葉よりも、ひとつの悪口を覚えていて落ち込んでしまうぐらい、メンタルが強いほうではないです…(笑)」
──なるほど。改めて、篠原さんが思う本作の魅力もお願いします。
「作品をご覧になる前の印象や予想を、いい意味で裏切る映画だと思います。美和子はなぜ大きな音を立ててお布団を叩くのか。意外な真相が隠されていて、分かると胸が締めつけられるような切なさを覚えるかもしれません。登場人物の感情の動きはエンターテイメントで、遊園地の乗り物に乗っているかのような感覚で、フラットな気持ちで楽しみながら揺さぶられていただけたらと思います」
INFORMATION
■映画『ミセス・ノイズィ』
【INFO&STORY】
小説家で母親でもある吉岡真紀(篠原ゆき子)は、スランプに悩まされていた。ある日、突如として隣の住人・若田美和子(大高洋子)による嫌がらせが始まる。それは日を追うごとに激しさを増し、心の平穏を奪われた真紀は家族との関係もギクシャクしていく。真紀は美和子を小説のネタにすることで反撃に出るが、その行動は予想外の事態を巻き起こし、2人の争いはマスコミやネット社会を巻き込む大騒動へと発展していく……。『フィガロの告白』の天野千尋監督が、隣人同士の些細な対立が大事件へと発展していく様子を描いた作品で、「第32回東京国際映画祭」の日本映画スプラッシュ部門で上映され大反響を呼んだ。
【CAST&STAFF】
演/篠原ゆき子・大高洋子・長尾卓磨・新津ちせ・宮崎太一・米本来輝・洞口依子・和田雅成・縄田かのん・田中要次・風祭ゆき
監督・脚本/天野千尋 共同脚本/松枝佳紀
配給/アークエンタテインメント
近日公開
公式HP
(C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会
■映画『ミセス・ノイズィ』
【INFO&STORY】
小説家で母親でもある吉岡真紀(篠原ゆき子)は、スランプに悩まされていた。ある日、突如として隣の住人・若田美和子(大高洋子)による嫌がらせが始まる。それは日を追うごとに激しさを増し、心の平穏を奪われた真紀は家族との関係もギクシャクしていく。真紀は美和子を小説のネタにすることで反撃に出るが、その行動は予想外の事態を巻き起こし、2人の争いはマスコミやネット社会を巻き込む大騒動へと発展していく……。『フィガロの告白』の天野千尋監督が、隣人同士の些細な対立が大事件へと発展していく様子を描いた作品で、「第32回東京国際映画祭」の日本映画スプラッシュ部門で上映され大反響を呼んだ。
【CAST&STAFF】
演/篠原ゆき子・大高洋子・長尾卓磨・新津ちせ・宮崎太一・米本来輝・洞口依子・和田雅成・縄田かのん・田中要次・風祭ゆき
監督・脚本/天野千尋 共同脚本/松枝佳紀
配給/アークエンタテインメント
近日公開
公式HP
(C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会
PROFILE
篠原ゆき子(しのはら・ゆきこ) 1981年1月21日生まれ 神奈川県出身
05年、映画『中学生日記』で女優デビュー。以降、映画やテレビドラマ、CMなどで活躍。映画『共喰い』で「第28回高崎映画祭」最優秀新進女優賞を受賞した。近年の出演作は『ピンクとグレー』『湯を沸かすほどの熱い愛』『さよならくちびる』『楽園』など。リブート版『モータル・コンバット』が21年3月5日に全米公開予定。
公式Twitter 公式Instagram
篠原ゆき子(しのはら・ゆきこ) 1981年1月21日生まれ 神奈川県出身
05年、映画『中学生日記』で女優デビュー。以降、映画やテレビドラマ、CMなどで活躍。映画『共喰い』で「第28回高崎映画祭」最優秀新進女優賞を受賞した。近年の出演作は『ピンクとグレー』『湯を沸かすほどの熱い愛』『さよならくちびる』『楽園』など。リブート版『モータル・コンバット』が21年3月5日に全米公開予定。
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撮影◎大駅寿一 取材・文◎内埜さくら