俺がジムに行って体を鍛えているのは、若い女のためという不純な動機。子供の時よりも計算された無邪気でズルい男になっているけど、若いヤツもそれでいいんじゃないかな(小沢仁志)
職種に限らず毎回大ヒットを出す必要はないと思います。僕と同じように、ブルース・リーの『考えるな、感じろ』を都合よく合言葉にしてみてはいかがでしょうか(横山剣)
小誌連載「小沢アニキの人生相談!!」20回目を記念して、スペシャル企画で俳優の小沢仁志さんが会いたい方と対談!!何歳になっても渋い&色気あるクレイジーケンバンド横山剣さんをゲストに迎え、横浜に縁がある小沢さんと横浜を本拠地に活動する横山さんが〝ハマ愛〟やCKB3年ぶりのオリジナルアルバム『GOING TO A GO-GO』について語る。仕事で肝に銘じていることや各界で第一線を走り続けているお二人の金言にも注目を!!
アルバムコンセプトは「大衆食堂」何を食べても美味しいと思うはず
──小沢さんは昔からCKBの音楽を聴いていたそうですね。小沢「俺は音楽に詳しくないから上手く表現できないんですけど、CKBの音楽は〝何を食べても美味しい〟感じなんですよね。英語やハングル語、中国語なんかが出てくるインターナショナルな楽曲揃いで、飽きようがない。俺が10代の頃に憧れていた横浜と横須賀のニオイが詰まっていますし」
横山「うわぁ、それすっごくうれしい表現です。一番、感じてほしいところを受け取ってもらえているんですね」
小沢「しかも、この年になるとカッコ良さが改めて身に沁みるんですよ。CKBの曲にもよく出てくる外車に最近、乗り換えたんです。マスタングに。以前乗っていたベンツは、職質ばっかり食らうのでやめました(笑)」
横山「僕もクライスラーに乗っていた頃、2回ほど職質されました(笑)その前にベンツにも乗っていたんですけど、またアメ車に戻したんです。いい年超えた男だからこそ、アメ車が似合うかなと」
小沢「俺、車の中で音楽を聴くから『羽田ブルース』を配信だけじゃなく、CDにしてほしいです。大人が聴いてカッコイイと思えるミュージシャンって希少なので」
横山「うれしい言葉ばかりありがとうございます。僕にとっても車内は最高の〝音楽室〟なんです。家では家族にうるさいと言われるので大音量で流しませんが、車内ではわりと大きめのボリュームで聴きます。救急車の音が聴こえるぐらいのバランスのいい音量で」
小沢「ボリューム全開で聴くと、女に『うるさい!』って言われるんですよねぇ」
横山「ああ、やっぱり(笑)」
小沢「実は俺、CKBの楽曲を基に映画を作ったこともあります。『二代目はニューハーフ』(13年公開。小沢氏監督・脚本・企画・出演)は、車の中で『黒い傷跡のブルース』を聴いている最中に方向性が決まりました。できればエンディングで使わせて頂きたかったんですけど、ニューハーフとオカマとオナベが出ているし、俺も女装しているし、横浜が舞台じゃないしでお願いできなかった…。ゲイが観て泣ける映画を作りたかったという願望は達成しましたけどね。キャパ300人の劇場で立ち見も出たんで」
横山「その映画、観てみたいですね。確かにあの曲は、ゲイの方が聴くと共感できるかもしれません。〝そばにいてやれないパパでごめんね〟とか〝なぜ別の生き方を選べなかった?〟なんかは特に」
──小沢さん、最新アルバム『GOING TO A GO―GO』をお聴きになっての感想は。
小沢「『オハヨウゴザイマス』の歌詞がすごいと思いました。〝毎・月・火・水・木・金 疲れるね〟って、あれはたぶん…」
横山「そう。『月月火水木金金』の軍歌をヒントにしたんです」
小沢「他にも諸外国の言語が散りばめられている上に、歌詞がリズムに合っているというところが絶妙ですよね。書こうと思ってできる歌詞じゃないと思います」
横山「ありがとうございます。人が作っていない楽曲を作ろうという意識は常にあります。最近はライブでも楽曲制作でも、自分が楽しむことでお客さんにも楽しんでもらえるよう心掛けているんです。以前は自分が楽しむことよりもお客さんを楽しませることを優先していましたが、切り替えました」
──アルバムのコンセプトは。
横山「このアルバムに限らずどの作品も浮かんだらバンバン録音していっちゃうんで、途中でテーマを決めるんです。今回は『支離滅裂』と決めました(笑)昔の安くて旨い、和食や中華、洋食と何でも食べられる大衆食堂を目指したんです。作品は日中韓にフィリピン。横浜も本牧あたりだけではなく、裏横浜もイメージしました。京浜急行の日の出町あたりですね。横浜が失ってしまったものを音楽に変えたんです」
小沢「今回のアルバムも、チョイスの幅が広いですよね。どれを選ぼうかとワクワクできるんですよ。Vシネも一緒です。吉野家の牛丼と同じで早い、安い、旨いが秘訣なんです」
──お二人は脚本や楽曲制作時、行き詰まることはありますか。
小沢「最近は脚本を書いていないけど、トイレで用を足している最中に浮かんだりしたなあ(笑)」
横山「あはははは! 分かります。何かを作ることって排泄行為に近いですからね」
ちょっと不良品の方が魅力がある欠落部分こそが魅力になりうる!
──仕事をする上で肝に銘じていることがあれば教えて下さい。小沢「自分に風が吹いていないなと思う時は動かないようにする。黙っていると1年間、風が吹かなくて仕事をしていても面白くないんだけど、観てくれる人達が面白くないと判断したら観てくれなくなっちゃうから、必要最低限のことはやる。風が吹いた時に本気を出すと、周りはすごいと言ってくれるんだよね。でも、『すごい』を連発しているとキリがない。20階建てのビルから飛び降りるのが普通になったら、次は50階から飛び降りなきゃならなくなる(笑)」
横山「楽曲制作もまさにその通りです。アルバムも全てをシングルレベルで作るのは正直、難しいですし、箸休めも必要。しかもヒットすると『前作よりもっといいものを』と求められるから、やったことを忘れて前だけを向いて進んでいくしかないんです。人として生きている以上、絶対に壁にぶち当たるし、職種に限らず毎回大ヒットを出す必要はないと思います。読者の皆さんも僕と同じように、ブルース・リーの『考えるな、感じろ』を都合よく合言葉にしてみてはいかがでしょうか(笑)考えるよりもフィーリングを重視したほうが、偶然凄いことが起きたりするので」
──お二人のように、カッコイイ大人になるにはどうしたら。
小沢「自分で自分をカッコイイなんて思ったことがないからなあ。俺、自分のことはろくでもねぇ子どもだと思ってる」
横山「子どもっていうのはありますね。精神年齢は子どものままで大人になった感じです、僕も」
小沢「子どもの時よりも計算された、無邪気でズルい男になっているけど、若いヤツもそれでいいんじゃないかな。俺がジムに行って体を鍛えているのは、21歳と23歳の若い女のためなんです。一緒に海に行って父親とかパトロンと思われたくないためだけに鍛えています。不純な動機が俺を走らせているという(笑)」
横山「わははははは! 羨ましい。僕もいまだに女の人にモテたいというのが原動力。音楽をやっていなくてもモテたいと思う(笑)」
小沢「話は逸れますが自分、20歳ぐらいの時にバンドを組もうと思ったことがあるんです。『スクール・ウォーズ』に出ていた頃に」
横山「ほう。初耳です」
小沢「ガキだったから永ちゃんの『成りあがり』を読んで、本そのままに行動したんです。横浜や横須賀のライブハウスに行って声を掛けて。『俺、小沢って言うんだけど俺とバンドをやらないか?』って。なぜか毎回ケンカ(笑)あちこち出禁になって、ある時8人相手にしてボッコボコに負けたんです。路上で寝転がっていたら靴先が見えて、『お前か、最近このへんで暴れてる役者は』と言われて。見上げたら、ザ・ジャガーズの沖津久幸さんだったんです。沖津さんにギターを教えてもらったんですけど、Fが押さえられなくて断念しました。苦労して集めたバンドメンバーもライブ1週間前にケンカして解散しましたけど、横浜には縁があるんですよね」
横山「ザ・ジャガーズといえば、ザ・テンプターズやザ・ゴールデン・カップスとともに1960年代を一世風靡したグループサウンズじゃないですか。凄いですね。僕もメンバーと去年あたりにケンカしましたよ。グーでは殴っていませんよ。ヘッドロックしたくらいです(笑)役者の世界も同じかもしれませんが、ミュージシャンも大概、まともじゃありませんからね。でも、ちょっと不良品のほうが魅力があるような気がします。同じコードを弾いているのに不良品のほうが色っぽいとか、あるじゃないですか。欠落している部分こそが魅力になりえるのかなと」
──数々のいいお話をありがとうございます。最後にCKB愛の深い小沢さんからアルバムのPRを頂ければ。
小沢「CKBのライブは何が凄いって、演者自身が楽しそうで、それが観客にも伝わっていること。大人があれほど楽しそうにやっているんだから、人生に迷ったらCKBのライブに行って見習っておけ! アルバムも、説明する余地がないほど極上。四の五の言わずに買っておきな!」
PROFILE
小沢仁志(おざわ・ひとし)
1962年6月19日生まれ 東京都出身
84年にTBSドラマ「スクール・ウォーズ」で俳優デビュー。映画、テレビドラマ、オリジナルビデオ(Vシネマ)などで活躍。俳優業のみならず映画監督、プロデューサーとしても多くの作品を手掛けている。近年の出演作品に映画『CONFLICT〜最大の抗争〜』『覇王 凶血の系譜I・II』『イマジネーションゲーム』、ドラマ「ドラマ24 侠飯〜おとこめし〜」「今からあなたを脅迫します」「極道めし」などがある。
公式ブログ
公式Instagram
横山剣(よこやま・けん)
1960年7月6日生まれ 神奈川県出身
クレイジーケンバンド(通称CKB)のヴォーカリスト。81年からクールスRCのメンバーとして活躍し97年、CK’Sを母体とするクレイジーケンバンドを結成。翌98年にファースト・アルバム『PUNCH! PUNCH!PUNCH!』でデビュー。17年にバンド結成20周年を迎え、主演映画『イイネ!イイネ!イイネ!』が公開。18年8月1日にデビュー20周年記念のニューアルバム「GOING TO A GO-GO」をリリース。現在、全国ツアーの真っ最中だ。
公式HP
小沢仁志(おざわ・ひとし)
1962年6月19日生まれ 東京都出身
84年にTBSドラマ「スクール・ウォーズ」で俳優デビュー。映画、テレビドラマ、オリジナルビデオ(Vシネマ)などで活躍。俳優業のみならず映画監督、プロデューサーとしても多くの作品を手掛けている。近年の出演作品に映画『CONFLICT〜最大の抗争〜』『覇王 凶血の系譜I・II』『イマジネーションゲーム』、ドラマ「ドラマ24 侠飯〜おとこめし〜」「今からあなたを脅迫します」「極道めし」などがある。
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横山剣(よこやま・けん)
1960年7月6日生まれ 神奈川県出身
クレイジーケンバンド(通称CKB)のヴォーカリスト。81年からクールスRCのメンバーとして活躍し97年、CK’Sを母体とするクレイジーケンバンドを結成。翌98年にファースト・アルバム『PUNCH! PUNCH!PUNCH!』でデビュー。17年にバンド結成20周年を迎え、主演映画『イイネ!イイネ!イイネ!』が公開。18年8月1日にデビュー20周年記念のニューアルバム「GOING TO A GO-GO」をリリース。現在、全国ツアーの真っ最中だ。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一